謹賀敦賀♡

謹賀敦賀♡


「ーーちゃん、…キョーコちゃん!」

「…ッハ!!」

キョーコは下宿先であるだるま屋の女将の声で我に返った。

「す、すみません!私ったらまた…」

居間で年末特番を観ていたキョーコとだるま屋夫妻だが、キョーコは0時まで僅か数分という時に、事務所の尊敬する大先輩であり、密かに想いを寄せているあの人は今頃どう過ごしているだろうかと考えて、ついつい意識を飛ばしてしまっていたのだ。

「いや、私らは別に構わないんだけどね…さっきから携帯が鳴ってるよ。」

「…へ?!」

言われて視線を落としてみれば、テーブルの上に置いていた携帯が己の存在を主張するかのように激しく振動していた。

その事にも気付かないほど妄想脳を働かせてしまっていた自分を誤魔化すように、キョーコは慌てて携帯を手に取り立ち上った。

「す、すみません!ありがとうございます。ちょっと出てきますね!」

そう言って居間を出ながら着信者の名前を見てドキリとキョーコの心臓が大きく跳ねた。

今正に考えていた人物からの電話に、後ろ手で襖を閉めつつ、頬を染め胸を高鳴らせながら恐る恐る通話ボタンを押し耳に当てる。

「お、お疲れ様です!最上ですっ!!」

『クス。お疲れ様、俺だけど…今大丈夫?』

少し笑い声を含んだ優しい低音ボイスが耳に響く。
口元がふよっと緩みそうになるも、密かな恋心がバレたら蓮のそばにいられなくなると思い込んでいるキョーコは、そんな想いを上手に隠して先輩を崇拝する完璧な後輩として元気よく返事を返した。

「はい!大丈夫です!如何なさいましたか?」

『いや、今年ももうすぐ終わるなって思ったら、何となく最上さんは今どうしてるかな?なんて思ってね。』

蓮の言葉に、キョーコは驚き目を見開いた。

「え?!」

『ん…?何?どうかした?』

いつもより蓮の声が甘く聞こえてしまうのは、電話だからだろうか?
蓮が自分のことを考えてくれたことが嬉しくて、キョーコの口がつい滑った。

「いえ、あの、私も…その、敦賀さんどうされてるかな?ってちょうど考えてたので…」

ごにょごにょと恥じらいながら告げた言葉に、少し妙な間が開いた。

『………そう、なんだ…。ゴホッ』

「え?敦賀さん、もしや風邪ですか?」

『…あ、いや違うよ。気にしないで。…あ、それより最上さん、カウントダウン始まったよ。』

「え……?」

『3…2…1…』

低い蓮の声が静かに優しくもカウントダウンを告げてくれた。
キョーコの胸がドキドキと高鳴る。
居間のテレビからわあっと言う歓声が聞こえると同時に、蓮の柔らかな声が耳に飛び込んできた。

『明けましておめでとう。最上さん。今年もよろしくね。』

「あ、明けましておめでとうございます!!こちらこそ!!今年もどうぞよろしくお願い致します!!」

キョーコは深々とお辞儀をして恐縮しつつ新年の挨拶を返したが、その胸の中は驚きと喜びで溢れていた。
世界一贅沢な年越しかもしれないなんて思いながら、偶然とはいえ蓮に一番に新年の挨拶出来たことが嬉しくて堪らない。
思わずキョーコの口元には笑みが溢れていた。

「ふふ。」

『ん?どうかした?』

「いえ、何だか新年早々敦賀さんを独り占めしてる気がして…贅沢だなぁって…」

キョーコはクスクスと嬉しそうに笑った。

『俺だって今最上さんを独り占めしてる気分だよ。』

「ふふ、私なんて独り占めしたところで喜ぶ人なんていませんよ。でも敦賀さんは…」

『…いるよ。』

「ふぇ?」

『いるよ。ここに。』

蓮の言葉に、キョーコは頭の中に沢山の疑問符を浮かべた。

「え…?何がいるんですか?」

『だから、最上さんを独り占めできて喜ぶ人だろう?』

「…??そこにいるんですか?」

『だから、俺』

一瞬、ヒュッと息を呑み目を見開き、キョーコの時が止まった。
だが、すぐにキョーコは目を閉じると、口をキュッと結び、ジト目で窘めるように低い声を発した。

「…………敦賀さん。」

『何かな?』

対する蓮が涼し気なことが人の気も知らず腹立たしい。

「からかわないでください。」

ーーー 一瞬ドキッとしちゃったじゃない!

『からかってないよ。本気だよ。』

「もう、すぐそうやって…敦賀さんの悪い癖ですよ!私じゃなかったら勘違いしちゃうところなんですからっ!」

『勘違いってどんな?』

「もういいですっ!」

『…教えてくれないの?』

「教えませんっ!」

余裕な蓮の声に腹をたてるふりをしつつ、キョーコは自分の気持ちがこれ以上期待しないよう精一杯のセーブをかけた。

『そう。残念。じゃあ勘違いついでに一つお願いしていいかな?』

「え?お願い…?何ですか?」

『お雑煮が食べたいなって思ってるんだけど…』

蓮の言葉に、キョーコは悲鳴を帯びた驚きの声を発した。

「ええ?!敦賀さんが…!自分から自分から食べたいだなんてっ!!」

『…何だか、未知の生命体が現れたような反応だね…傷付くな…』

「いえ!決してそんなつもりはっ!!あのっ私で良かったらお雑煮お作りします!!今日はお仕事ですか?」

『いや、1日オフだよ。』

「じゃあ、お昼頃伺っても良いですか?」

『…良いの?』

「はいっ!!やります!やらせてください!!この最上キョーコ、謹んで敦賀さんの新年をお祝いするため腕をふるわせていただきます!!」

キョーコは力一杯返事を返した。

『クス。じゃあ、お願いするよ。10時頃で良いかな?』

「へ?」

『だるま屋さんまで迎えに行くよ。』

「え?そんな…悪いですよ!勝手に向かいます!」

『俺がお願いして来てもらうんだから…』

「でも…」

『じゃあ10時に行くから。最上さんは待ってること。いいね?』

「…わかりました。」

キョーコは蓮に言いくるめられ、渋々了承した。

『じゃあ、おやすみ。良い夢を見てね。』

「あ、はい!おやすみなさいませ!敦賀さんもゆっくり休んでくださいね。」

切れた電話に少しの寂しさを感じながらも、取り付けられた約束にじわじわと胸が踊りだす。

「何だか、今年はとっても良い年になりそう。」

キョーコはそっと携帯を握り締めながら、頬を染めて微笑んだ。


ーーー世界中のみんなが笑顔で過ごせる素敵な年になりますように。

*Happy new year♡2017♡


END

スキビ☆ランキング


*****


…ということで、明けましておめでとうございます!
昨年はあまり更新できずすみませんでした。
そんな中でもアメンバー申請くださった皆様、ありがとうございます!
今年も、あまり出来ないかもしれませんがあまり期待せず、のんびりとでもお付き合い頂ければ光栄です。
久々に書いたのでキャラがブレてたらすみませんっ(汗)
こんな風月ですが、2017年もどうぞよろしくお願いいたします( *´艸`)

皆さんにとって素敵な一年になりますように♡


風月
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新年明けましておめでとうございます!

「謹賀敦賀♡」

一瞬普通に読んでしまいました。
敦賀教では当たり前なのかもですが。(笑)

二人っきりでお正月を過ごす蓮さん、キョコさん。

それがただの先輩後輩の男女だと異常だといつ気づけるんですかね。(笑)

でも、キョコさんはまだ気づかない方が、遠慮なくいけて良いかもですね。

謹賀敦賀!本年が風月さんにとって良い年となりますように。
2017年もどうぞよろしくお願いいたします。

Re: 新年明けましておめでとうございます!

まじーん様

ふふふ♡何だか違和感ないタイトルですよね!笑
2人きりでのお正月、普通の男女ではほぼないシチュエーションですよね!早く気付け〜って思うけど、気付かないならまだ気付かないでもいいかなぁなんて思わせるのがこの2人のにくい所です。

ありがとうございます!
まじーんさんにとっても良い年でありますように((*´∀`*))

2017年もよろしくお願いします!
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