恋の季節は…6《雨のち晴れ》

恋の季節は…6
《雨のち晴れ》


「あれ?ないわ…。」

キョーコは自分の下駄箱を見て、やられた…と小さく溜息を吐いた。

帰ろうと思ったら、女将さんに買ってもらったローファーがなくなっているのだ。

取り敢えず学校の敷地内にあればいいな。と思いながら、思いつく限りの隠されそうな場所を探し歩く。
ゴミ箱、掃除用具の入ったロッカー、トイレの中など探すのだが、中々見つからない。

外かもしれない!と思ったキョーコはその足を焼却炉へと向けた。

ススだらけになりながら、焼却炉の周辺を探すと、ようやくススの中から見つけることが出来た。

「はぁ。良かったぁ!あったわ。」

キョーコが安堵の息を吐いていると、そこへ蓮が小走りでやって来た。

「最上さん?!どうしたの?!」

驚いてキョーコを見る蓮に、キョーコは慌てて立ち上がると、靴を後ろに隠した。

「あ、ううん。何でもないよ」

「何でもないことないだろ?!上履きのまま、そんなススだらけになって!何を探して…」

蓮は言葉の途中でキョーコの背中に隠した靴がチラリと見え、言葉を切ると、一気に近付いて、キョーコからヒョイと靴を取り上げた。

「あ!!か、返して!!」

キョーコは反射的に出てしまった悲鳴に近い自分の言葉に驚く。
蓮もキョーコを見て淋しそうに微笑んだ。

「俺は…君のものを隠したり捨てたりしないよ。」

蓮の言葉にキョーコは「はい…わかってます。」と頷きながら、下を向く。

すると、蓮の大きな手が、キョーコの頭に突然触れて来たので、キョーコはビクリと身体を震わせた。

「ススだらけだ…。」

蓮は言いながら、優しい手つきで、キョーコの頭や、顔についてしまったススを払う。

キョーコの胸がドキドキと高鳴る。
こんな風に人に触れられるのは始めてのことだった。

肩や腕についたススやゴミを払うと、蓮はキョーコの腕を引いて思わず抱きしめていた。

「つっっつつつ敦賀君?!」

キョーコが真っ赤になりながら狼狽えて、蓮の腕の中で暴れる。

「敦賀君まで汚れちゃうよぉ!!」

「構わないよ。俺のことはいいから。」

蓮は、キョーコを抱き締める腕に力を込めた。

「俺にまで、心の中を隠さないでいいから。」

蓮の言葉に、キョーコは「ズルい…」と呟く。

蓮の制服をギュッと掴んで、キョーコは声を殺して震えながら涙を流した。

蓮は、そんなキョーコが落ち着くまで、まるでキョーコの心を包み込むかのように、何も言わずにそっと抱き締めていたのだった。




蓮がここに来た理由は、数分前に遡る。
放課後の教室で社と二人で例の如く女子達に囲まれて会話をしていると、チラリと見下ろした窓から、キョーコが慌てて外を走る所をたまたま見かけた。

キョーコの向かう先は焼却炉ぐらいしかなく、人目に付きにくい場所だったため、蓮は心配になった。

もしかして誰かに呼び出された…とか?!

蓮はキョーコが心配で堪らず、適当に誤魔化してその場から抜け出すと、急いでキョーコの姿を探した。

ようやく見つけたキョーコは、汚れることも気にしてないのか、膝を地面に付け、馬立ちになりながら何かを探していた。
あまりの体制に、蓮は眩暈を覚えつつ、某然としながらも何とかキョーコに声をかけた。

慌てて立ち上がったキョーコが背中に隠した靴を取り上げると、咄嗟に出たキョーコの悲鳴混じりの声に苦笑が漏れる。

君は俺まで敵だと認識してるのだろうか?

そんなことを思いながらキョーコを見れば、キョーコの髪や顔や制服をススが汚しているのに気付いた。
思わず抱き締めようとして伸びた手が、キョーコの身体についたススをそっと払う。

なかなか取れないススが、彼女の心についた傷のようだに思えて、蓮は無性に心が焦った。
払えば払うほど広がるように感じてしまう。

だったら払わずに、洗い流してしまえばいい…。
そう思った蓮は、キョーコが泣けるようにただ強くキョーコの身体を抱き締めた。

こんなに細くて小さな身体で耐えるにはあまりにも辛すぎる。その痛みを涙で洗い流して。せめて安心して泣ける場所を作ってあげたい。

蓮は、声を殺して泣くキョーコを抱き締めながら、宥めるようにキョーコの頭をポンポンとなでるのだった。




「え?そのまま帰る気?」

「うん。」

蓮の驚いた声に、キョーコはケロリとして答える。

「でも、そんな格好じゃお家の人びっくりするんじゃない?」

「大丈夫だよ。お世話になってる旅館のそばにね、綺麗な小川があるの。そこで汚れを落とせば大丈夫。」

ーーーあぁ、あの小川か…。

蓮は心の中でこっそりと森の中にある小川を思い出した。
キョーコちゃんと初めて出会った想い出の小川だ。

「でも、小川って、まだ水冷たいだろ?」

「うん。でも平気だよ。慣れてるもの。」

キョーコの言葉に蓮は顔を歪ませる。

「そんな…。それなら…俺の家に来たらいいよ。今、俺は一人暮らししてるんだ。家のシャワー使ってよ。ね?」

「え?!…でも、そんなの迷惑なんじゃ…。」

「迷惑なんてとんでもない。川で水浴びなんて、それこそ心配でいても立ってもいられないよ。」

「敦賀君…。ありがとう。そんな風に言ってくれるの敦賀君ぐらいだよ。」

「じゃあ、決まりだね。もう帰れるんだろ?」

「うん。大丈夫。」

「じゃあ行こうか。」

蓮は、キョーコの汚れた制服を見て自分の上着をバサリと肩から掛けると歩き出した。

キョーコはそんな蓮の背中を見て、何故か胸がキュンと締め付けられる感覚を覚える。

人目につかないように裏口からこっそりと抜け出して、二人は蓮の家に向かって並んで歩き出した。

蓮の足はキョーコよりも長いはずなのに、スピードはキョーコのペースに合わせている。

いつも小走りで松太郎の後を付いていっていたキョーコは、そんな蓮の気遣いに胸が再びキュンと締め付けら胸がドキドキと弾むのを感じるのだった。


(続く)

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*****


まだ焼却炉ってあるのかなぁ??高校はないんでしたっけ??

うーん??高校いってたのが、5年以上も前のことなので、色々変わってるだろうから、今の学校の決まりとかとは無視な感じで読んでもらえたらと思います!

※Amebaで2012/01/20に投稿した記事に加筆訂正をしたものです。
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