恋の季節は…7《春一番》


恋の季節は…7
《春一番》


「敦賀君の家って、お金持ちだったんだね。」

キョーコは、一人で暮らすには広すぎる蓮の部屋に感心しながら、キラキラした目で部屋を見回した。

「そう?あんまりわかんないけど…」

「ソファもTVもおっきい!!うわぁ!ガラスのテーブル!!絨毯も気持ち良さそう!!」

大興奮のキョーコに苦笑を漏らしつつ、蓮はバスルームに向かい、キョーコの為にお湯をバスタブに張り、タオルなどを準備する。

「あ!敦賀君ありがとう!!」

何時の間にか後ろを着いてきていたキョーコが遠慮気味に蓮に声をかけると、蓮はキョーコを安心させるように優しい笑顔を向けた。

「うん。どうぞお姫様。ごゆっくりお楽しみ下さい。」

蓮に促されて覗いたバスタブには、色取り取りの薔薇の花びらが浮かべられており、キョーコは目を真ん丸に見開くと、一気にメルヘンの世界へと旅立って行った。

「わぁ!!薔薇のお風呂だぁー!」

「母さんからたまに送られてくるんだけど、中々自分じゃ使わなくてね。…って聞いてないね。」

蓮は、薔薇の花びらが家にある理由をキョーコに説明しようとしていたのだが、キョーコの目は何処かにトリップしており、一人であははうふふと、メルヘンの世界に頬を染めている。
そんなキョーコに苦笑しつつ、蓮は優しい目を細めてキョーコを見つめた。

ーーーメルヘンチックなのも、昔と全然変わってないな。


蓮から優しい笑顔で見つめられてることに気付いたのか、覚醒したキョーコが頬を染め、罰が悪そうに蓮を上目遣いで見上げた。

そのキョーコの表情を見下ろした蓮は途端に無表情になり、ふいと視線をそらす。

「あぁーっと…じゃあ、入る?」

「うん。…でもいいのかな?こんな素敵なお風呂…私なんかが独り占めしちゃって…」

「ん?一人だと遠慮しちゃう?じゃあ一緒に入ろうか??」

「けっ!結構です!結構です!結構です!!結構です!!結構です!!結構です!!結構です!!結構ですぅーーーー!!!!」

蓮がさり気なくサラリと言った言葉に、キョーコは即座にその光景を想像してしまったのか、顔を真っ赤にして後ずさった。

「つ、つつつつ敦賀君の破廉恥いー!!!!」

ーーゴイン

後ろに下がりながら盛大に扉にぶつかり鈍い音がしたのだが、本人は蓮から1cmでも離れようと必死だった。

「も、最上さん…今扉に…」

「きゃーーー!!お風呂一人で入るからぁ!!出てってぇぇぇぇ!!!」

キョーコは、蓮を脱衣所から追い出すと、ドアを背にしてゼーゼーと荒い息を吐いた。

「何もそんなに嫌がらなくても…。あ、最上さん気持ちいいからってお風呂で…」

「寝ないよ!!!!」

「あんまり長風呂すると…」

「のぼせないもん!!!!」

「浮かれすぎて風呂場で…」

「転ばないったら!!!!」

扉を挟んで、蓮とキョーコは息の合いすぎる掛け合いがしばらく続くのだった。




「あの…敦賀君…。お風呂…ありがとう。」

蓮が教科書を開いて予習をしていると、ホカホカとした湯気を身に纏いキョーコがリビングに現れた。
制服もススで汚れてしまった為に、洗濯しており、キョーコは蓮のジャージを借りていた。

ぶかぶかの蓮のジャージを沢山折り曲げ現れたキョーコの姿を見て、蓮は軽く吹き出す。

「あ!!今笑ったぁ!!酷い!!」

「ごめんごめん。あまりにもサイズが違い過ぎたから…。そっか、最上さんが着ると俺の服はそんなにぶかぶかになるのか…」

蓮は苦笑しながら、キョーコの頭をヨシヨシと撫でると、キッチンに向かった。

「飲み物は、コーヒーでも平気??」

「うん。何から何までありがとう。」

「良いんだよ。立ってないで座ったら??」

「だって、高そうなソファよ!それに、絨毯も!!!!汚してしまったら私とてもじゃないけど、弁償出来ないわ。」

「いいんだよ。俺なんてしょっちゅう汚してるし。」

「嘘嘘!だって凄く綺麗だもの!」

「ハウスキーパーさんが綺麗にしてくれるから大丈夫なんだ。」

蓮の言葉に、キョーコはあんぐりと口を開く。

固まったキョーコを自然な動作でソファに座らせた蓮は、キョーコの隣に腰を下ろした。

「は、ハウスキーパーさん?!」

「うん。そんなにビックリすること?」

「普通の家にはそんな人いないよ!!いや!既に、見た目から家具から普通の家とは呼べないけどっ!!」

キョーコの力説に、蓮は苦笑を漏らした。

「まぁ、親がずっと家を空けてるからね。一人じゃ何かと大変だろうってお世話になってるんだ。」

「あ、そっか…敦賀君お母さん達と離れて暮らしてるんだもんね。」

「うん。そうなんだ。ま、だからどうってことじゃないけどね。」

「ご飯とかは?」

「え?」

「ご飯とかはどうしてるの?」

キョーコの質問に、蓮は不思議そうに答える。

「ご飯は、まぁ、最近は最上さんがお昼ご飯わけてくれるからね。不自由してないよ?」

「じゃなくて!!!!晩御飯とか!!朝御飯とかは?!」

「あー。まぁ、適当に…?」

蓮の誤魔化すように濁した言葉にキョーコは立ち上がり、スタスタとキッチンへ向かって冷蔵庫の前に立った。

「失礼します!!」

一応、一言家主に断りを入れてガバリと冷蔵庫の扉を開けると、中にはサプリメントゼリーやミネラルウォーターがそれぞれ数本、ビタミンドリンクが二ダース程と、あとはささやかに、ケチャップと封が空いてないミニタイプのマヨネーズ。

食材と呼べるものは何一つ入っておらず、キョーコはガックリとその場に崩れ落ちた。

「敦賀君!!!!ご飯はちゃんと食べなきゃダメなんだよ!!体を作る基本なんだから!」

「まぁ。わかってはいるんだけどね…。」

蓮が苦笑しながら言うと、キョーコはジトリと咎めるように蓮を見つめた。

「う…。わかったよ。これからはなるべく食べるように精進します。」

「絶対に?」

「うん。絶対に。」

蓮の目をじっと見つめて言質を取ると、キョーコはにっこり微笑んで立ち上がった。

「良かった!じゃあ今日は何がいい?何もないから買い出しに行かなくちゃ!!」

「え?最上さんが作ってくれるの?」

「うん。今日はお風呂を貸してもらったもらったお礼も兼ねて。」

「じゃあ最上さんの好きなものがいいな。」

「え?私の好きなもの?」

「うん。」

蓮の言葉にキョーコはニッコリと微笑む。

「じゃあ、今晩はハンバーグね!!目玉焼きが乗ったやつ!!」

キョーコは元気いっぱいの笑顔で答える。

「うん。楽しみにしてるよ。」

キョーコの予想通りの返答に、蓮は内心で可愛いなと思いながら、愛おしそうな笑顔を浮かべたのだった。


(続く)

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*****

訂正前では、キョーコがこの日から蓮の家に晩御飯作りに毎日通うことにしてたのですが、思う所があり無くしました。
まだ二人の距離がそこまで近付いてないですからね!

※Amebaで2012/01/21に公開したお話に加筆訂正したものです。
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