恋の季節は…8《割と穏やかな天気が続くでしょう》

恋の季節は…8
《割と穏やかな天気が続くでしょう》


キョーコの制服が乾かないので、ぶかぶかのジャージで買い出しに行かせる訳にもいかず、なんとか渋るキョーコを部屋に残して、蓮が近くのスーパーに買い出しに出掛けた。

キョーコの書いたメモを覗き込み、キョロキョロと辺りを見回しながら必死に食材を探して行く蓮。

「あれ?蓮??」

「ん?あ…瑠璃子…。」

そんな蓮の姿に、最近付き合い始めた瑠璃子が突然声をかけてきた。

「わぁ!蓮ってこの辺に住んでたの??」

「まぁ…ね。」

「えー!!知らなかったぁ!蓮の家に行きたい行きたい!!ねぇ、今から連れてって!!」

瑠璃子のお願いに、蓮はやんわりと掴まれた腕を解きながら、断わりの言葉を口にした。

「悪いけど、今日はダメだよ。家に大事なお客様が来てるんだ。」

「えぇ?!そうなんだ!じゃあ明日は?明日は行っていい?」

「明日?…ごめん。明日もダメだ。」

「むぅー。それじゃあ次に都合いい時はいつなの?」

「う…ん。まぁ、確認してからまた大丈夫な時は教えるよ。」

「わかった!ちゃんとお母さんに紹介してね。あ!蓮はご飯は何が好き?私、今度お弁当作ってこようかなぁ。」

瑠璃子の言葉に蓮は狼狽える。
弁当はキョーコのもので充分足りているのだ。正直もらっても困る。

「え?いや、お弁当はいいよ。俺、実は好き嫌いが激しいから、食べれないもの作られても困るし。」

蓮は言いながら自分の中に矛盾を感じた。

今までの自分は異性が自分の為に用意する料理が好きになれず、食べることさえ拒否していたのだ。なのに、何故かキョーコの料理は楽しみにしている自分がいる。

それに、今思えば、完全にプライベートな家の中に社以外の他人を上げたのは、蓮にとっては初めてのことだった。

今までの彼女たちからもせがまれたことは何度かあったが、なんだかんだはぐらかして来たのに、気づいたらキョーコのことは自分から誘っていた。

ーーー何でだろう?

「れん!!…蓮!聞いてる?」

「え?!あ、なに?ごめん。聞いてなかった。」

「もー。今度の日曜日、デートしよ!!って言ったの。」

「え?日曜日?」

「うん。何か予定ある??」

「いや、日曜日は予定ないけど…。」

「ふふ。じゃあ決まりね!!日曜日はデートで。サンドイッチは好き??」

「え?あ、まぁ…」

「じゃあ、お弁当、サンドイッチ作ってくるね!!天気がよかったらピクニックしましょ。この間、特注の日傘が手に入ったんだ。持っていくわね。あ!じゃあ私はそろそろ行かなきゃ!!またねー。蓮!」

あっという間にデートの約束を取り付けられ、瑠璃子は嵐のように去って行った。


「…日曜日に、デート…か…。」

ーーーどうせなら、最上さんと行きたいよなぁ~。…???ん?何で最上さんなんだ??

蓮は突然浮かんだキョーコの事を疑問に思いつつも、瑠璃子に捕まって思いの外時間を取られていた事に気付いて、慌てて買い物の続きを始めたのだった。



「あ!おかえりなさい!敦賀君!」

家に着くと、キョーコに出迎えてもらえ、蓮の顔には知らずに笑みが零れる。

「ただいま。遅くなってごめんね。」

「ふふ。随分時間かかったね。やっぱり普段買い物し慣れてないから?」

「うん。それもあるかも。あと、さっきクラスメートの…ほら、松内瑠璃子ってわかる?あの子とスーパーでばったり出くわしちゃってさ。大変だったんだ。」

「そう…なんだ。たしか敦賀君って、松内さんと付き合ってるんだよね?」

「え?…あ、うん。そう…だね。」

キョーコに瑠璃子との関係を指摘されたことが何故か胸に突き刺さり、蓮は違和感を覚えて戸惑った。

「じゃあ、敦賀君のお家に来たがったんじゃない?」

「うん。まぁ来たがってはいたけど、ちゃんと断わったよ?」

「それ…は、私がいるから?」

「いや、そうじゃなくて、俺元から他人を自分のプライベートに入れるのが苦手な質なんだ。だから瑠璃子の申し出も断わったんだよ。」

「…え?でも、私は?」

「あぁ、うん。それは俺もさっき驚いてたんだ。社以外でここに他人を入れたのは、最上さんが初めてだよ。なんでだろう?」

「…そうなの?何でだろうね?」

二人で不思議そうに首を傾げ合うと、一瞬の間の後、二人は吹き出した。

「ぷっ!そんなに考え込まなくても…!」

「ふふ。敦賀君こそ!さぁ、あんまりもたもたしてると遅くなっちゃうから、急いで作るね。」

蓮から買い物袋を受け取って、キッチンに駆け込むキョーコの後ろ姿を優しい目で見つめる蓮。

「もしかしたら、妹がいたらこんな感じなのかな?最上さんって見てて飽きないよなぁ。」

キョーコの鼻歌交じりに料理をする気配を感じながら、蓮はノートを広げた。


勉強始めて20分。何となく集中出来ずに落ち着かなくなって来た蓮は、いそいそとキョーコのいるキッチンに向かった。

楽し気に料理をする後ろ姿を見て、蕩けるような笑顔を向けるのは本人も自覚出来ていないところであろう。

「最上さん、何か手伝うことない?」

「敦賀君、勉強してていいのに。手伝ってくれるの?」

「うん。何だか落ち着かなくって。」

「ふふ。じゃあ、このサラダが出来たのでお皿に盛り付けてもらえる?」

「うん。わかった。」

蓮はお皿を棚から出すと、キョーコの料理する姿を盗み見つつ、言われた通りサラダを盛り付けた。

「何作ってるの?」

キョーコの鼻歌を聞きながら蓮は、楽し気に料理をするキョーコの手元を後ろから覗き込んだ。

「これ?ハンバーグにかけるデミグラスソースだよ。ちょっと味見する?」

キョーコがにっこりと微笑んで、スプーンを持ち上げると、蓮は嬉しそうに口を開いた。

「うん!…ん。驚いたな。美味しいよ。」

「ふふ。良かった。ありがとう♪」

キョーコは出来上がったデミグラスソースを脇において次々と料理を作り出す。

「最上さんの手って、魔法みたいだなぁ。」

「え?!魔法?!」

キョーコの目がキラキラと輝き出す。

「うん。だって次々と新しいものを作り出して行くから。魔法使いみたいだ。」

「ふふ。敦賀君って不思議ね。ショーちゃんは、魔法なんてこの世にないっていうのよ。」

キョーコの口から出たショーちゃんという単語を聞いて何故かモヤモヤした感情が出て来て蓮は戸惑った。

「そ、うなんだ。でも、君は信じてるんだろう?」

「うん。昔、私妖精の王子様に会ったことがあるのよ!コーンって言うの。コーンに魔法を見せてもらったんだ。」

キョーコの笑顔で言う言葉に、蓮は柔らかい笑みを浮かべてキョーコを見る。

「そうなんだ。魔法ってどんなの見せてもらったの?」

「空を飛んで見せてくれたり、あと石!」

「石?」

「うん。コーンがくれたの。太陽にかざすと、色が変わって見えるのよ。今も私の宝物。」

そう言ってキョーコは、首から下げた巾着袋からコーンの石を取り出した。

「これだけは、隠されたり取られたりしたくないから。ずっと肌身離さず持ってるの。」

大切そうに優しい目で石を見つめるキョーコの表情に蓮は釘付けになる。

「キョーコ…ちゃん…」

「え?!敦賀君?」

思わず呼んでしまった名前に、キョーコが驚きの声を上げたので、蓮ははっと我に返って、口元を抑えた。

「あ…ごめっ。何でもない。」

そう言って、そのままくるりと背を向けてキョーコから離れる。

そんな蓮を見てキョーコは心配そうな目を向けるのだが、蓮は直ぐにキッチンから姿を消してしまった。
首を捻るしかないキョーコは、そのまま夕食の支度に取り掛かったのだった。


(続く)

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*****


…やっぱり蓮もまだ自覚しておりませんでしたね。
出会いのシーンからなので、恋愛初心者の蓮君が気づくのはもう少し先になりそうな予感??

出来心で遊びに来させたけど、これからどうなるのか全く考えれてません。
このままでは、考えてた全体の骨組み無視する形になりそう~!
どこかで修正しなければ!!

↑ふふん。今ようやく加筆修正中なのだ(笑)

※Amebaで2012/01/25に投稿した話を加筆訂正したものです。
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