月夜の契り*2*

月夜の契り*2*


「あ、貴方達は一体…!」

キョーコは学校からの帰宅途中、突然人通りの少ないトンネルの途中で複数の妖しげな男達にぞろりと取り囲まれていた。

「え?レイノくんホントに本当?これがあの噂の?」

「間違いない。しっかりあの男にマーキングされている。」

「噂だけ聞いたら、もっとこう、ほら、絶世の美女とかだと思ってたんだけど…」

「こんなののどこが良いわけ?」

「よくわからない趣味だよね。」

「はは。俺だったら絶対パス〜。ありえねー!」

煌びやかで見目麗しい男達はキョーコを取り囲んだまま好き勝手なことを口にする。
そのビジュアルの良さに最初は圧倒されていたキョーコだったが、なんとなく自分を見て馬鹿にされてることだけはよくわかった。

「あの、特に用がないのなら失礼させていただきますね?」

初対面の相手に向かって失礼なことを言う人たちだと、キョーコは青筋一つ立てつつも、女将修行の成果、愛想笑いでスススとさり気なく立ち去ろうと試みる。
男達の姿格好、そして醸し出す雰囲気から、一緒にいたら危ない、危険だということが目に見えていた。

特にリーダー格と思われるレイノと呼ばれた男は只者ではないオーラが尋常ではないほど出ていた。
キョーコはこの男から無表情でジィッと瞬き一つせずにジロジロと上から下まで眺められると、何故か服の中まで全てを見透かされ、透視されてるような気がしてならなかった。
とても居心地の悪さを感じて、一刻も早く逃げなければと思った瞬間、無表情だったレイノの口角が不意に二イッと弧を描くように形を変えた。

その瞬間、キョーコの全身に悪寒が走り、何故か金縛りにあったかのようにピキンと動けなくなってしまった。
頭の中では危険を知らせる警報がけたたましいくらいに鳴り響いているのに、蛇に睨まれた蛙のように一歩も動けず、声も出ない。
心臓だけがドクドクと心拍数を上げていた。

レイノが勿体ぶるように一歩、また一歩とキョーコに近づく。
キョーコは顔面蒼白で震えることも叶わず、その場に根が生えたかのように立ち尽くしていた。

「確かに…容姿はイマイチだが、コレに流れる血は極上のようだ。なぁ、キョーコ。」

先の尖った長く鋭い爪がスゥッとキョーコの髪を滑り、頰に触れた。
そのままキョーコの背後に気配もなくスイッと回り込んだレイノは制服の裾から無遠慮に手を突っ込み、あろうことかキョーコの素肌に模様を描くように爪を滑らせる。
声を出して助けを呼ぶこともできず、キョーコは恐怖を感じるしか出来ない。

「良い子だ…。楽しみだな。コレが奪われたと知った時、あの男がどんな顔をするのか…」

喉の奥でクッと嗤ったレイノがキョーコの首に牙を突き立てようとした瞬間、レイノはビリっと電気が走ったような衝撃を受け、慌ててキョーコから手を離し、3メートルほど飛び退いた。

キョーコの呪縛は解けたが、その身は体温を感じることができないほど恐怖で震えていた。
自由になったことがわかった瞬間、足からガクリと力が抜けたようだったが、その身体は正面から誰かに抱きとめられた。
キョーコは誰に支えられているのかわからなかったが、直感的に安心出来るぬくもりだと感じとり、どうしようもない恐怖に突き落とされないように、震える手で力一杯縋り付く。

キョーコを抱き締めたまま尋常ではない怒りのオーラを放つ男は、レイノを鋭い目つきで睨みつけていた。
その男を警戒するように、レイノはジリジリと後ずさりしながら、顔を強張らせる。

「これはこれは、クオン殿下ではありませんか。ご機嫌ーー…」

「名を名乗れ。」

クオンは怯えるキョーコを腕の中に抱きしめたまま、眼光鋭くレイノを睨みつけた。
唸るように問われたレイノは苦々しげに口を開く。

「…私の名はレイノです、殿下。」

「この娘に何をしようとしていた!!答えろ!」

クオンの怒りの波動にレイノは少しまた後ずさりしたが、その顔には何故か不敵な笑みが浮かんでいた。

「クッ。やはりな。よほどのお気に入りと見える。その娘に付けられたあんたの強烈なマーキング。キョーコにとっても不幸なは…グハッ」

突然、レイノが喉を抑えて苦しみ悶え始めた。
キョーコを怯えさせた男に対して、クオンの怒りはピークに達していたため、冷静に話を聞くことが出来なかった。

「キョーコだと!?馴れ馴れしく呼ぶな。」

それを見かねて、レイノと一緒にキョーコを取り囲んでいたロン毛の男が前に進み出ると、クオンの気を引くように仰々しくも礼を取った。

「殿下。お初にお目にかかります。わたくしの名はミロク。このレイノのお目付役でございます。」

「お目付役か…。では貴様に聞こう。何を企んでいる?」

「殿下、貴方の力は偉大なもの。しかしながら、私共は貴方をお慕いするあまり、その地位がどうしても欲しくなりましてね。」

「なに…?」

「ふ。これも計画の内。まぁ予定していた以上に貴方の到着が早かったのですがね。でも、本当のお楽しみはこれからなのですよ、殿下。…さて、おしゃべりはこのくらいにしましょう。うちのレイノはこれ以上今の貴方の力に耐えられそうにない。失敬。」

そう言い残して、その複数の男達は突然忽然と姿を消した。

「な?!」

キョーコを抱えているため、追うこともできず、クオンはチッと舌打ちした。

「逃げ足の速い…。レイノとミロクか…。あちらは他に調べさせるとしよう。おっと。」

キョーコはレイノの気配がなくなったことに安心したのか、クオンの腕の中で糸が切れたように気を失った。

「くそっ。まさかこんなことになるとは…。油断した。」

クオンは深々とため息を吐いた。
そこへ一匹の黒猫が走って近づいて来た。
同時にどこかからか羽音も聞こえる。

「…してやられた。俺の地位を狙ってるという奴らがキョーコを奪いに来た。キョーコをこのまま一人にしておくのは危険だ。」

独り言を言ってるかに思えたが、その猫は一瞬にして一人の女性へと姿を変えた。
そこに立っていたのは、クオンの腕の中で気を失っているはずのキョーコと瓜二つの女性だった。
しかし、クオンは顔色一つ変えず、瓜二つの偽キョーコを見つめた。
見つめられた偽キョーコは、ニッと笑ってポーズを決める。

「わかったわ。じゃあ、クオンちゃんはこの子をしっかり守ること。この子の代わりはこのテンちゃんに、まっかせなさーい!」

「…頼む。」

そしてクオンはトンネルの真っ暗な天井を見上げた。

「ヤシロ。話は聞いていたな。キョーコを我が屋敷へ迎え入れたい。その準備を。」

すると真っ暗なトンネルの天井から「わかった。」と短い返事ののち、何かが飛び立つバサバサという羽音のみが聞こえた。

クオンはキョーコを大切そうに抱えるとその場から闇へ溶けるように姿を消した。


(続く)

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*****

この続きも書いていたのだけど、思いの外長くなっちゃったので取りあえずここで区切ることになりました。
多分この続きは万人ウケする内容ではないと思うので、今のところ限定にする予定です〜!

スキビキャラの中でもやはりレイノさんは苦手意識があります…!
なんかこの流れだとまた何処かで登場させなきゃいけない感じ。
さーどうしましょ!

ヴァンパイアの細かい設定は完全オリジナルなので、そんなバカな!と思うことがあっても、風月ワールドではこうなるんだなーとあたたか〜い目で楽しんでいただけたら嬉しいです。
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きゃあきゃあ!!

しばらくは、夜のお忍びと、学園内を舞台に二人の関係変化の描写が続くのかとおもいきや、急展開ですね!
しかも、キョコさんがピンチ!!
ヒイィィ(゜ロ゜;三;゜ロ゜)ヒイィィ
クオンさん、間に合ってよかったです。
しかし、レイノたちのグループは、「自分の好み」「美形」以外なら、何を言っても良いと思ってるところがダメダメですね〜。いや君たちだって、顔は綺麗でも、爽やか青年が好きな女性からすれば、軟弱ナルシスト自己中危険思考集団だから〜〜!と誰か教えてあげてほしいです。(笑)

クオンさんが、キョコさんを馬鹿にするやつらにちゃんと勝てますように〜!

しかし、身代わりがテンさんとは!!面白いです。

Re: きゃあきゃあ!!

まじーん様

わーい♪きゃあきゃあ!頂きました!!笑
本当に急展開ですよね〜!
しかし妖しげな役はレイノ達がいい味を出してくれそうです!

でも風月も本当は、学園内と夜の部屋を舞台にドキドキワクワクで描きたかったはずなのに、何故かこんな展開に…!
連れ去られなくて良かったー!!

風月もびっくりしながら書いてますけど…もう、久しぶりにお話が降りて来たのでそのまま描きなぐっちゃえ!って感じです(笑)

まじーん様のおっしゃる軟弱ナルシスト自己中危険思考集団という表現には、かなりしっくり感じましたよ〜笑
本当に危険思考すぎて恐怖でしかないですよね!

身代わりテンさんもどうなることやら♪

楽しんでいただけるよう楽しみながら書いていきますね!
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