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My HOME-オマケinだるま屋-

My HOME-オマケinだるま屋-


「おやおやまぁまぁ」

だるま屋の女将が、入り口から入ってきた人物を見て、驚きで目を見開いていた。

「女将さん、ご無沙汰しております。」

キョーコがいつものように綺麗なお辞儀をして挨拶をすると、女将も微笑み返した。

「あぁ、キョーコちゃん、久しぶりだね。元気にしてたかい?」

「はい。とても。女将さんも元気そうで…」

「元気だけが取り柄だからね。それにしても…随分と珍しいお客様を連れてきたねぇ…。」

女将の視線はキョーコの後ろから現れた大きな男に釘付けだった。

「あ、えっと…いつもお世話になってる事務所の先輩の敦賀さんです。」

「はじめまして。敦賀蓮です。お忙しいところお邪魔してしまい申し訳ありません。」

頬を染めて恥じらいながら可愛らしい笑みを浮かべて隣の男を紹介するキョーコを見て、女将は全てを察することができた。

「まぁまぁ、ご丁寧にどうもありがとうございます。キョーコちゃんが会わせたい人がいるって言うから…どんな方が来るかと思えば…まぁぁぁぁ…」

テレビでも見ない日はないというような人気絶頂の男が目の前に立っていて、驚かないはずがない。
キョーコの部屋にも顔写真が貼られていたことから察して相当なファンなのだろうと思っていたら、まさか、店を閉めてた間にこのようなことになっていたとはと、驚きすぎて言葉にならない。
キョーコと蓮の顔を何度も見比べてしまっていた。

「あの…これ、つまらないものですが…」

居た堪れなくなって困った蓮が持っていた紙袋の中身をおずおずと差し出せば、漸く、女将はハッと我を取り戻した。

「あらあら、ごめんなさいね。わざわざありがとうございます。まぁどうしましょ。とにかくこんな所ではなんですから、上がって下さいな。キョーコちゃん、お茶の間にお通しして。」

「あ、はい!敦賀さん、どうぞ。」

「お邪魔します。」

大慌てで女将が奥に引っ込み、キョーコが先導し、蓮も後に続いた。



そして、お茶の間では上座にドドンと腕を組んで胡座をかいて座る強面のだるま屋の大将と、その隣に女将、女将の正面にキョーコ、そして大将の正面に蓮という配置で座っていた。

4人の間にピンと糸が張ったような緊迫した空気が流れる。

「…………。」

「はじめまして。キョーコさんと同じLMEの敦賀蓮と申します。」

1番に口を開いたのは蓮だった。
大将は眉間に皺を寄せ、ジッと蓮を品定めするように見つめていた。

「先日からキョーコさんと真剣にお付き合いをさせて頂いてるので、ご挨拶に参りました。挨拶が遅れまして申し訳ありません。」

「…………。」

相変わらず、無言の大将に変わって女将がおずおずと口を開く。

「キョーコちゃん、あんた今…どうしてるんだい?事務所の先輩の家でお世話になってるって聞いてたけど、もしかしてその先輩ってのは…」

女将の目がチラッと蓮を見る。

「はい。あの、今は敦賀さんの家に…置いて頂いてます。」

「やっぱりそうなのかい?」

女将が驚いて目を見開いた。

「私らが口出しすることじゃないかもしれないが、年若い男女が…一つ屋根の下ってのは…キョーコちゃんもまだ高校生だろう?少し早いんじゃないのかい?」

女将さんが心底心配そうに口を開く。
蓮は女将の真意を受け止めてしっかりと女将の目を見て答えた。

「彼女には、今鍵付きの個室を使ってもらってますので寝室は分けてあります。それに彼女は俺にとって唯一無二の特別な存在なので、無理強いをするつもりはありません。彼女のペースを尊重するつもりです。そして勿論、結婚もしっかり視野に入れて付き合ってます。」

「え?!」

キョーコは驚いて蓮を見つめた。
今、結婚という言葉が蓮から聞こえなかっただろうか?
キョーコの驚きの声に、蓮もキョーコを見つめて首を傾げた。

「…嫌?」

蓮がそっと囁くように問いかけると、キョーコは頬を染めてフルフルと首を振って、小さな小さな声で「イヤじゃないです。」と答えて、蓮の服の袖をチョミッと掴んだ。
その答えに蓮がホッとしたように嬉しそうに頬を緩めると、そんな二人を見ていた大将が目を見開き、フッと一度目を伏せると、再び顔を上げて二人を見て、漸く重い口を開いた。

「敦賀さん…と言ったか…。」

今まで一言も喋ろうとしなかった大将の口が開いて、蓮は驚いて背筋をピンと伸ばした。

「っ!はい!」

「俺はこいつの親じゃねぇ。…だけど、本当の娘みたいに思ってる。」

「はい。お二人のことは良くキョーコさんから聞いてます。だからこそ、ご挨拶に伺いました。」

「…遊びじゃねぇだろうな?」

「遊びだなんてとんでもない。俺は真剣です。真剣にキョーコさんとの将来を考えてます。」

蓮が言い切ると、大将と蓮の間に沈黙が落ちた。
大将の視線が蓮の目の奥の真意を探るように突き刺さる。
蓮は臆することなく、大将のその強い視線を受け止めて、大将を見つめ返していた。
視線をそらすことなく、ずっと。
バチバチッと二人の間に火花が飛んでいるようだった。

ほんの数十秒のことだったと思うが、緊迫した空気は何十分にも何時間にも感じた。
キョーコも女将も息を詰めて二人の顔を不安げに見つめていた。

そうして大将が先に目をそらすと、フッと顔に優しい笑みを浮かべて蓮を見た。

「幸せにしてやってくれ。」

「ありがとうございます。」

大将の言葉に、蓮が深々と頭を下げ、キョーコと女将もホッと息を吐いて女同士二人で目配せをして微笑みあったのだった。




「敦賀さん、キョーコちゃんを独り占めしないでくれよ。キョーコちゃんにたまには遊びに来てもらわないと、この人だって寂しがるからさぁ。」

同棲を認めてもらえたキョーコと蓮が帰るのを見送る大将の横で、女将がにこやかに口を開いた。
それに蓮がしっかりと微笑む。

「ええ、もちろんです。」

「キョーコちゃん、ここをもう一つの家だと思ってまたいつでも遊びに来ておくれよ?」

「はい!ありがとうございます!大将、女将さん、また遊びに来ますね!」

そして大将も口を開いた。

「敦賀さん、アンタもキョーコと一緒にいつでも来い。うめぇ飯食わしてやる。」

「はい。ありがとうございます。また伺います。」

だるま屋の大将と女将に深々とお辞儀をして、二人で仲良く並んで歩き始める。
車を止めた公園までのほんの短い距離を、手を繋いで歩く初々しいその二人の姿が見えなくなるまで大将と女将が温かい目で見守っていた。

「キョーコちゃん、幸せそうだったねぇ。」

「…あぁ。いい顔してた。」

「ふふ。寂しくなるけど、キョーコちゃん若いのに人生諦めてるみたいなところあっただろ?だからこれで良かったのかもしれないねぇ。」

「…まぁ子は親からいつかは巣立って行くもんだ。」

「それにしても実の親でもないのに、あんな風に挨拶に来てくれるとは…嬉しいねぇ。」

「あぁ…。」

女将が顔をほころばせる。大将も優しい笑みを浮かべていた。

「…それにしても敦賀さん、テレビで見るより良い男だったね。」

「テレビではいけすかねぇ笑顔浮かべやがると思ってたが、しっかりした芯がありそうだ。」

「あの子も沢山、苦労してきてるんだろうねぇ。」

二人で何気ない会話をしながら仕込みの準備に取り掛かる。
暖かい気持ちの中に若干の寂しさを感じながらも、寂しさを会話で紛らわせていた。

「結婚もあの様子じゃ早いかもしれないねぇ。」

「さぁ、どうだろうな。」

「呼んでもらえるかねぇ。」

「…どうだろうな。」

二人の会話は、お店が開店するまで続いたのだった。


END

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My HOME-30-《完結》

My HOME-30-《完結》



キョーコと蓮が心を通い合わせた翌日。
その連絡は突然やってきた。


「…はい。わかりました。ありがとうございます。」

電話を終えたキョーコは、ハァと一つ大きく息を吐いた。

「そっか…そうよね…。いつまでもこのままなんて…無理だもんね。」

寂しそうにキョーコは呟く。

蓮と暮らし始めたのは下宿先のだるま屋の改装工事のためだ。
頼りにしていた奏江は長期の地方ロケで、行く当てなく途方にくれたキョーコに蓮が空いている部屋を提供してくれたのだ。

その改装工事がもうすぐ終わりそうだというのが、先程の電話でわかった。
元々一ヶ月ほどの約束だったのだ。

蓮との生活は居心地が良くてすっかり忘れてしまいそうになっていた。

「改装工事…終わったら帰らないと駄目、よね…」

キョーコは行儀悪くクッションをギュッと抱えて座り込んだ。
蓮と所謂恋人同士というものになったのは昨日のことだ。

ずっと片想いで実ることはないと思っていた想いが奇跡的に実ったのだ。
イルミネーションの煌めく中でされたキスは昨夜のことで、記憶に新しく目を瞑っただけで思い出してしまう。

恋人同士として迎えた初めての夜は、ゲストルームにキョーコが逃げ込むということで、あっけなく幕を引いてしまったのだが、それはキョーコの知るところではないのでただの補足という名の余談である。

何はともあれ、居候の身なのだ。
事実上の蓮の恋人になってしまったので、これ以上一緒にいてスキャンダルになりにでもしたら大変だとキョーコは変に気を回してしまった。

「うん。そうよね!改装工事が終わったら、敦賀さんの為にも早々にここから退去しなきゃ!」

それが恋人としてはちょっと寂しい考え方だとはちっとも思っていないキョーコは、その方向で決意を固めると、夕食の準備に精を出すのだった。



丁度そろそろ蓮が帰ってくるという時間帯に、チャイムが鳴った。
インターフォンに出ると、それは蓮でキョーコはいつもそのまま鍵を使って入ってくるのに何故蓮がわざわざインターフォンを鳴らしたのだろう?と不思議に思いながらも玄関までパタパタとスリッパを鳴らして迎えに出る。

「ただいま。キョーコ」

「きゃっ!あ、あの…。お、おかえりなさい。つる…じゃなかった。えっと、久遠…」

玄関を開けた瞬間、その手を引かれて抱き締められて、キョーコは蓮の腕の中で真っ赤になってしまった。

「逢いたかった…」

今朝もちゃんと顔を見て送り出したのに、気持ちをたっぷり込めて蓮に言われて、キョーコの中でじわじわと幸福感が湧き上がる。

「私も、お帰りを…お待ちしてました。」

キョーコも精一杯の気持ちを込めて照れ照れと答えると、蓮はとっても嬉しそうに顔を輝かせた。

「ほんと?!」

まるで無邪気な少年のようだ。

「嬉しいよ…。」

だけど、その後の熱っぽい視線に、少年のようだと思った思考をすぐさま撤回する。
そっと頬を撫でられて顎をくいっと固定されると、真剣な顔が近づいて来た。
キョーコは真っ赤になりながらもキュッと目を瞑って迎え入れた。

優しく重なった唇は中々外れず、「んん〜!!んんん〜〜!!」というキョーコの抗議が通じたのか、キョーコの息が止まりそうになった頃に漸く離れてくれた。

ハァハァッとまだ慣れず、キスに翻弄されてるキョーコを愛おしそうに愛でて、蓮はキョーコの存在を確かめるように再び抱きしめる。

「あぁ、家に帰ったらキョーコがいてくれるって本当に幸せだ…」

しみじみと言われる言葉にキョーコの胸にチクリと罪悪感が生まれた。

「あ、あの、その話なんですけど…」

「そうだ!アレ!アレ言ってくれない?」

「え…?アレ…ですか??」

「お風呂にする?ご飯にする?それとも…ってヤツ!」

「ええぇ?!」

話さなければと思っていたことが蓮の言葉を聞いて思考から吹っ飛ばされてしまった。
期待を込めた目で見つめる蓮。キョーコは真っ赤になった顔で口をパクパクさせてしまう。

「うっ…えっと、その…」

「うん。」

ウキウキと顔に書いてある蓮を前に、キョーコは勇気を持って言葉を絞り出す。

「ご飯になさいますか?お風呂になさいますか?それとも…あの…あのっ…わた…わたっ〜〜っ〜!!つ、敦賀さんのいじめっ子〜ぉ!!!!」

キョーコは涙目になって一目散に逃げ出した。
後にはぽかんとそんなキョーコの後ろ姿を見守ったのち、クスクスと幸せいっぱいというように笑う蓮が残されていたのだった。


蓮が着替えなどを済ませて遅れてリビングに入ると、テーブルにはカセットコンロと鍋が用意されていた。グツグツと煮立つなべからは美味しそうな湯気が出ている。

「今日はお鍋?」

蓮が問えば、キョーコはニッコリと微笑んで答える。

「すき焼きです。今日も寒いのでちょうど良いかな?と思いまして。」

「へぇ〜。それは楽しみだな。何か手伝うことある?」

「いえ、すぐに準備できますから、久遠は座って待ってください。」

「ん。ありがとう。」

蓮はキョーコに言われるまま大人しく待つことにした。
キョーコの働きを目に焼き付けるかのように幸せそうに見守る。
こんな時間がいつまでも続いてくれると良いなという思いを大切に抱き締めて、支度をするキョーコを優しい眼差しで見つめ続けるのだった。


体が温まる美味しい食事も終え、キョーコと蓮が体を寄せ合ってソファの上でいちゃいちゃしていたところで漸くキョーコが大事なことを思い出した。

「あ、そうだ!忘れるところでした。」

「ん?どうしたの?」

「だるま屋の改装工事なんですけど、もう少しで終わるそうなんです。」

「え?…あぁ、そうなんだ。」

一瞬キョーコが何の話をしているのかわからなかった蓮は、取り敢えず相槌を打った。

「なので、私も5日後にはだるま屋に帰ろうかと…」

さらりと言われた言葉に蓮は目を見開いた。

「ええ?!何で?!」

キョーコの寝耳に水な話に大きな声を上げてしまう。

「え?いえ…、あの、いつまでもここにいても迷惑でしょうし…」

おずおずというキョーコの言葉に蓮はとんでもないと言葉を返す。

「迷惑だなんて…そんなわけないだろう?!やっと…やっとキョーコと恋人同士になれて、これからずっと一緒だと思ってたのに…!嫌だよ。キョーコ…出て行くなんて言わないでくれ!」

「え?!でもあの、一緒に住んでるなんて、スキャンダルになっても困るでしょうし…」

手をぎゅっと握り締められ蓮から行かないでくれと懇願されるとは思ってもなかったキョーコは困惑してしまった。

「スキャンダルになんてならないよ。なったとしてもキョーコとのスキャンダルなら問題ない!それに、恋人同士なんだから、一緒に住んでも何の問題もないだろう?」

「えぇ?!そ、それはそうですが…でも、あの…いいんでしょうか?」

キョーコも出来ることなら蓮と一緒にこのまま暮らしたいと思っていた。
食生活も心配だし、撮影現場が違えば何日も…下手すれば一か月以上会えない日もあるだろう。
一緒に暮らせば地方ロケでもない限りわずかの時間でも顔を見ることが出来るはずだ。
だけど、相手は芸能界でもトップクラスの人気を誇る俳優なのだ。
その俳優敦賀蓮の名前に傷を付けることになってしまったりしないだろうか?

「もちろん!良いに決まってるだろう?!キョーコが心配することは何もない。キョーコが出て行ったりしたら俺、寂しくて死んじゃうよ。」

「な?!そ、そんな…天下の敦賀蓮がそんなことで死ぬわけ…きゃ!」

キョーコは蓮に押し倒されて、ソファに縫い付けられた。

「だーめ。キョーコはかえさない。だって君の家はもうここだろう?」

「で、でも…」

キョーコが渋っていると、蓮は寂しそうな顔で仔犬モードを発動させてきた。

「ね?お願い…キョーコ…。出て行ったりしないで…」

押し倒したキョーコの身体にゆっくりと己の腕を巻きつける。

「や…く、久遠…」

「お願い…お願いだから…」

「ん…ふ…」

お願いと何度も呟きながら丁寧にキスを施す。

「ね?オネガイ…キョーコ…」

耳にも口を近付けて色っぽい声でしっとりと囁くと、キョーコの体がボッと熱を持ったのがわかった。
それに気を良くして、キョーコの耳の後ろから首筋にも唇を這わせる。

「〜〜〜〜!!わ、わかりっ!わかりました!!わかりましたからぁ!!た、大将と女将さんに、話してみますからぁっ!だからっ!んっ…やぁ〜〜やめ…」

「ん…ダメ。ちゃんと俺が愛してることをしっかりと教え込まなきゃ。身体にね?」

「ふぇ?!」

「そしたらちゃんと、ここに帰ってきたくなるだろう?他のところに帰る気なんて起こらないはずだよ。ね?」

「ちょ、ちょっと!久遠っ!!それ以上はっ!やっ…あんっ!ちょっと…やだぁ…」

真っ赤になって何とか蓮の腕の中から逃れようとするキョーコを蓮は難無く絡め取っていく。

キョーコの指と己の指を絡めて再びキョーコをソファに縫いとめると、蓮はその潤んだキョーコの瞳をしっかりと覗き込んだ。

「ほら、言って?キョーコ。君の家は?俺たちの家はどこ?」

「ここ…です。久遠の家が…ここが私の…私達の家デス。」

「うん。よく出来ました。」

極上に甘い顔をした蓮の顔がご褒美とばかりにキョーコの顔に覆いかぶさる。

「ん…」

二人の足が絡まり、キスも徐々に深まっていく。

ここは超高層マンションの最上階。厳重なセキュリティに守られた場所が二人のマイスイートルーム。
キョーコと蓮のためだけの部屋だ。

二人の愛は厳重なセキュリティ管理の元、順調に深まっていくのだろう。



この先も、ずっと…ずぅっとね。




END

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いつも応援ありがとうございます!!


*****


漸く、漸く完結させることが出来ました!!!!感無量です。

これもひとえに暖かく見守り応援してくださった皆さまのお陰です。

コメントやメッセージで応援してくださった皆さま、拍手でエールを送ってくださった皆さま、本当に本当にありがとうございます!!!!
皆さんのお陰で完結まで辿り着けました!!

My HOMEは一話だけのつもりで書き始めた話だったので完全ノープランで予想外の展開になりまくりで大変でしたが、最後まで何とか楽しく書くことが出来ました。

長いことお付き合い頂き、本当の本当にありがとうございました!!

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

My HOME-29-

My HOME-29-


玄関先で無事にお互いの想いを結びつけられた二人は、予定通りそのままデートに行くことになった。

キョーコが居候を始めてから約一ヶ月。密やかな想いが漸く結ばれ、晴れて恋人同士となった二人の初デートに浮かれ気味の蓮と、照れているキョーコ。

移動のために用意されていた車も、いつもの蓮の愛車ではなく、シルバーのスポーツカーだった。
助手席のドアを開いてくれた蓮に手を預けて、促されるままキョーコは乗り込んだ。
キョーコの乗り込んだのを確認してドアを閉めた蓮も、運転席側からいそいそと乗り込む。

車が違うと流れる景色も違って見える気がするから不思議だ。
車を走らせる蓮の横顔をこっそりと盗み見てはドキドキと心臓を高鳴らせるキョーコは、蓮が浮かれながら話している言葉を全く聞いちゃいない。

ーーー敦賀さんとデートだなんて夢みたい…。

自分と蓮が恋人同士になる日が来るなんて思ってもみなかった。
夢のまた夢…いや、夢でもおこがましいと思っていたほどだ。

ーーーしかも、敦賀さんがあのコーンだったなんて…本当に、出来すぎじゃないかしら?

今までの自分の身に起きた過去を振り返っても、こんなことが起こるとは全く想像もしてなかった。大どんでん返しを喰らった気分だ。

ーーー良いのかな?こんなに…幸せで…。

ホワホワと心が温かくなる。
大好きなコーンが、大好きで尊敬する蓮で、しかもその蓮が、キョーコの大好きな父を持つ久遠なのだ。

不思議な巡り合わせと偶然だったの一言では片付けられない奇跡にキョーコは心から感謝した。

ーーー今ならアイツのことも許せる気がする…。

自分を利用するだけ利用して、ゴミのようにあっさりと捨てた幼馴染に少しだけ意識を飛ばして、蓮と自分が出会う為に必要な出来事だったのだと今なら思える。

ーーー思えば、アイツにあんな酷い捨てられ方しなければ、芸能界に入ろうなんてきっと思いつきもしなかったわよね。

それより以前に、尚がキョーコを連れて上京しなければ…

ーーーきっとコーンと再会することも出来なかった…。

そう思って、頬をほんのり赤らめて再びそろりと蓮の横顔を盗み見れば、何故かムスッと拗ねた蓮がいて…その身体から静かな怒りの波動が発せられており、キョーコの怨キョレーダーが久しぶりに反応し始めた。

ーーーハッ?!私っ!今…っ!

思考の内側に入り込むと周りの声や音が聞こえなくなる自分の悪い癖を思い出したキョーコは、慌てて意識を車の中に戻した。

「あ、あのっ…」

「………」

おどおどと蓮の機嫌を伺うように声をかけたキョーコに、チラリと一瞬だけ視線を向けた蓮は、そのまま何も答えずに眉間にシワを寄せ機嫌の悪さをそのままに、前を見つめて運転に集中している。

「も、申し訳ございません…私っ!」

「…何、考えてたの?」

ムスッとしたままの口から蓮が問いかけて、キョーコは慌てて答えた。

「あ、あのですね!敦賀さんがコーンで付き合うことになるなんて夢みたいだな〜って、こんな偶然あるのかな?なんて思ってて…」

キョーコの言葉に蓮の機嫌が少しだけ回復したのも束の間。
素直なキョーコは言わなくて良かったことまで全てを話してしまう。

「こんなに幸せでいいのかな?って思ってたところで、アイツの行いも今なら許せるかもって…」

蓮の眉がピクリと反応する。

「アイツとのことも色々思い出して、それが全部あったからこんな風に…敦賀さん、と……ヒッ!」

蓮の空気が闇の国の蓮さんになっていて、キョーコは真っ青になった。

「君は…」

運転席の男から金髪のキラキラしたその姿に似つかわしくないオドロオドロシイ地を這うような低い声が漏れ聞こえる。

「俺と一緒にいるのに、ずっとアイツのことを考えてたんだね…?」

脅すような声の癖に顔はキラキラと突き刺さる似非紳士スマイル。
機嫌の悪い時ほど蓮の似非紳士笑顔が深まることを知っているキョーコは蓮の最上級の似非紳士笑顔を前に…

「ヒィ〜!!ご、誤解ですぅ!!ごめんなさぁぁぁぁい!!」

蓮の悪くなった機嫌を回復させるため、半泣きになりながらも無実を訴えたのだった。



「ーーーですからして!!断じてっ!!あんな奴のことを考えてたのではなく!!敦賀さんとの運命の再会を果たす為にはアイツの所業はなくてはならなかったのだと!!なので言わば、踏み台として、アイツは私の為に活躍してくれたわけです!!」

キョーコが鼻息荒く全力で蓮との出逢いと運命について熱く語るのを聞きながら、蓮はにやけそうになる顔を必死で抑え無表情を保っていた。

漸く目的地に着いた蓮はひたすら弁解を続けるキョーコの言葉を無言で聞きながら車をバックで留めると、シートベルトを外して、そのままずいっと身を乗り出し、キョーコの顔を固定した。

「もう、わかったから…君は俺のことだけ考えてーー」

そう言いながらゆっくりと近付く秀麗な顔にキョーコは金縛りに遭ったかの様に固まってしまった。

目を見開いたままのキョーコの唇に吐息が掛かり、間も無くその唇が重なるかに思えたちょうどその時ーーー

「ぁ…」

ーーブブブッブブブッ

キョーコの口から漏れた期待するかのような僅かな声に重なる様に、蓮の胸ポケットに入れた携帯電話が突然震えだした。

一瞬だけピクッと止まった蓮の動き。
その動きにキョーコもハッと意識を取り戻し、パッと顔を赤らめてアワアワとしながら手で口元を覆ってしまった。

ーーチッ

軽く舌打ちをしてしまったのもタイミングの悪さに悔しがる蓮の気持ちを考えると仕方がないだろう。

仕方なく体を再び運転席に戻すと、携帯電話を取り出して耳に当てる。

「……はい。俺ですが…。」

その間に、キョーコはシートベルトを外してさっさと車から降りてしまった。

「えぇ、あぁ…はい。わかりました。いえ、ありがとうございます。」

仕方なく蓮も車から降り、車にロックをかける。

「えぇ、それでは。明日10時に…はい。」

短い会話を終えて携帯を胸ポケットに仕舞う蓮の目の前では車体の反対側でキョーコの百面相が繰り広げられていた。

自分との出会いが運命だと車の中で熱弁してくれたキョーコを思い出し、愛しさがこみ上げて蓮の顔に笑顔が広がる。
ゆっくりとキョーコに近付いて、髪に触れた。

髪に触れられたことで百面相をピタリと止め、そろりと伺うように視線を上げたキョーコに向かって蓮はふわりと微笑むと、その可愛い額にキスを一つだけ落とした。
キョーコの頬がまた再びパァッと染まる。
それに気を良くして、蓮はキョーコの手を取った。

「電話、社さんから。明日は10時からになったって。」

「ソウ…デスカ」

「うん。じゃあ、行こうか。」

怨キョが干上がってしまうような蓮の甘い甘い微笑みに、キョーコの顔は益々真っ赤に染まってしまうのだった。




蓮がキョーコをエスコートして連れてきたのは、ハンバーグがジューシーで美味しいとスタッフが話していた店だ。
店内の照明も抑えられたオレンジ色で優しい雰囲気の隠れ家ような雰囲気のある素敵な店だった。


「わぁっ」

店内の雰囲気に感嘆の声がキョーコから漏れる。

予約名を告げると、店員から個室に通された。

個室には更に抑えられた照明にキャンドルが灯されており、また幻想的だ。

大好きなハンバーグのメニューを前にしてキョーコの目が輝く。
蓮はそんなキョーコの姿をいつまででも見ていたい気分になってしまいメニューに見向きもせず、ずっとキョーコを見ていた。
それに途中から気付いたキョーコはおずおずとしながらメニューを蓮に差し出した。

「あっ!すみません。独り占めしてしまって…えっと…敦賀さんはーーー」

「久遠。」

キョーコの言葉に被せるように、蓮は己の名前を口にした。

「…え?」

目をパチクリさせてキョーコが首を傾げると、蓮が極上に甘く低い声で囁く。

「二人っきりの時は久遠って呼んで?」

「ふぇ?!」

蓮の甘えたような声にキョーコはボンッと音がしそうなくらい一気に真っ赤になった。
オレンジ色の炎の光が淡くキョーコのそんな顔を浮かび上がらせており、蓮は目を細めてその姿を柔らかく見つめる。

「うっ…えっ…えっと…」

自分だけが知っている蓮の本名。
特別なその名前を口にすることが許されているのが自分だけだということに気づいて、更にその口元を見てしまって先ほどのキスを期待してしまっていた自分のことも思い出してしまい、キョーコは真っ赤な顔のまま音にならない声を出し口をハクハクさせてしまう。

そんなキョーコを見つめる蓮の眼差しは何処までも優しくて、キョーコは目線をうろうろと彷徨わせた。
暫くそんな時間が流れたが、敦賀さんと呼ぶことは折角変装をしているのにそれを台無しにしてしまうということにも思い当たり、漸くキョーコの中で決心が固まった。
深く深呼吸をして、ゴクリと唾を飲み込む。
そして小さくキョーコの口が開いた。

「コー…」

「く・お・ん」

コーンと呼ぼうとした音は直ぐさま蓮に一文字づつ丁寧に訂正される。

「う…く、くおん…さん」

尻窄みになりながらも、何とか音にして言えたキョーコはこれ以上ないくらい真っ赤だ。

「さんはいらないよ?コーンだと思ってた時はコーンって呼んでただろ?」

「だ、だって…」

「ね?」

いつになく強引な蓮に、キョーコは押し切られてしまった。

「……っ…、く、おん…?」

「うん。なぁに?」

答える蓮の声も表情もドロドロに甘い。

「く…久遠、は…どれにしますか?」

「キョーコはどれにするの?」

「私は…これにしようと思ってるんですけど、ソースで悩んでまして…。これとこれ、どっちも美味しそうで…」

「ん…。じゃあ俺がこっちのソースにするから、キョーコはこっちのソースで頼んだら?」

「え…?」

「半分こ、しよ?」

金髪の貴公子にニコッと無邪気に真正面から微笑まれては、真っ赤になったキョーコに拒むことなどできなかった。



運ばれてきた鉄板に乗せられたハンバーグに目をキラキラと輝かせるキョーコを眩しそうに眺めながら、二人で遅くなった夕食を楽しむ。
蓮は運転なので、二人揃ってソフトドリンクで乾杯をして、特別なディナーに舌鼓を打つ。
蓮に見られていることにドギマギしながらも、一口口に運ぶたびに、幸せそうな顔になるキョーコ。
そんなキョーコに少し悪戯をしたくなった蓮は、自分の分を一口サイズにしてフォークに載せると、キョーコに向かってそれを差し出した。

その仕草にキョトンとした視線を向けるキョーコ。
蓮は首をコテンと傾げて甘い顔と甘く低い声で、「はい、あーん。」と言った。
キョーコには意味が通じなかったのか、最初はぽかんとしていたが、時差があったかの様に少しの間を置いて今日何度目かと思えるほどのボンッという爆発音を響かせてまた赤くなった。

「や…そ、それは…あの…流石に…」

キョドキョドと周りを見回すキョーコ。
そんなキョーコに笑みを深めて、秘密の話をする様に囁く。

「個室だから誰も見てないよ?ほら。キョーコちゃん?」

「あぅ…」

困った様に眉を寄せるキョーコの唇にチョンとハンバーグを当てると、漸くキョーコがおずおずと口を開いた。
小さな口の中にハンバーグが収まるのを眺めながら蓮はまた密やかな声で尋ねる。

「おいしい?」

「はい。おい…ひい…デス」

蓮の問いにモグモグとしながら答えると、ごっきゅんとハンバーグを飲み込んだ。
そして赤い顔をキャンドルの所為にして、キョーコは己のハンバーグをフォークの先に乗せると、お返しとばかりに蓮に差し出した。

「あの…食べ…ますか?」

「ん…」

何の躊躇もなく大きな口があーんと開いてキョーコのハンバーグをパクリと攫っていく。

「ん…美味しいね?」

自分が差し出したものを物凄く幸せそうに食べる蓮の顔に、ドキドキと少しの感動を覚えてしまったキョーコは、「あの…もう一口…如何ですか?」と、ついつい差し出してしまったのだった。

いつの間にか食べさせあいっこになってしまったので何時もの倍くらいの時間をかけて食べ終えると、デザートが運ばれてきた。
デザートも少しずつ食べさせあって、幸せなディナーは終了した。


「このあとは…どうしますか?」

「んー。キョーコは明日撮影ないんだよね?」

「はい。明日は学校も休みなので、家のことしちゃおうと思います。」

「じゃ、もうちょっとデートしよう?付き合ってくれる?」

「はい。勿論です。」

ディナーでまた少しだけ縮まった二人の距離。

車で少しだけ移動して、たどり着いたのはイルミネーションで話題になってるスポットだった。

「わぁ!素敵!久遠見てみて!!」

はしゃぐキョーコが蓮の手を取り駆け出す。

「うん。凄いね。」

「わっ!ここから色が変わってますね!」

「本当だ…ここからはピンクだね。」

二人でLED電球が散りばめられた光のトンネルを手をつないでゆっくり歩く。
トンネルを抜けた先には通るための道の周りに光る花畑の様に一面にキラキラと輝くイルミネーションがあった。

「わあ〜」

その景色に思わず目を奪われ暫し立ち止まる。
メルヘンの世界に今にも飛び立ちそうなキョーコをリードして蓮も光の間の道を進んだのだった。


自動販売機で暖かいコーヒーとココアを買った蓮はキョーコと一緒に歩いてきたところが一望できる公園のベンチに腰掛けて二人で眺めていた。
吐息が白いのも忘れてしまうくらいキラキラと輝く光の中で、キョーコがそっと蓮に体を預けてきた。
蓮もそれを受け止めて、手で肩を抱く。

「素敵ですね。」

「…うん。」

「敦賀さんとこんな景色を見れるなんて夢みたいです。」

「久遠だろ?」

「ふふ…そうでした。久遠と、こんな風にしていられるなんて夢みたい。」

優しい時間が流れているのを感じながら、蓮は少し迷って、キョーコにずっと気になっていたことを問いかけた。

「………聞かないんだね?」

「何をですか?」

蓮の突然の問いかけの意味がわからず、キョーコは蓮を見上げた。

「俺が、何故自分の過去を隠していたのか…過去に何があったのか…」

蓮はずっと気になっていたのだ。いつ聞かれるだろうと思っていたが、キョーコは全くその話題に触れてこない。
キョーコはあぁ…と小さく呟いて、少し考えながら口を開いた。

「敦賀さんが…久遠が、話したくなった時でいいです。その時が来たらいつでも聞きます。」

「…でも俺が黙ってた理由がとんでもない罪を犯してしまってたからだったとしたら?キョーコに嫌われたくなくて話せないんだとしたら?」

「貴方が過去にどんなことをしていたとしても、それがあったから、私は貴方に再び会うことが出来たんじゃないですか?」

キョーコの言葉に蓮は目を見開く。

「私は敦賀さんを…久遠を信じてます。過去にどんなことがあったとしても、私が貴方を嫌いになったりすることはありません。だって私は貴方に出会う運命だったんですから。苦しい過去も、苦い思い出も、全部が今の貴方を作ったものなら、私はそんな貴方を嫌いになったりできるはずがありません。」

キョーコの言葉はどこまでも真っ直ぐで蓮の心に突き刺さった。知らぬ間に蓮の頬に涙が伝った。

「最上さん…キョーコ。ありがとう。」

堪らず、蓮はキョーコを抱き締める。

「わっ!は、恥ずかしいです。みんな見て…」

「見てないよ。誰も。みんなこの景色に夢中だよ。」

蓮はキョーコを抱き締める腕に更に力を込めた。
腕の中の存在に愛しさが溢れる。

「キョーコ…キョーコ…愛してる!」

「久遠…?」

蓮の腕の中で、震える蓮の体に気付いたキョーコはそっと蓮を見上げた。

すると、涙を流している蓮に気づいてキョーコは驚いてしまった。

そっと蓮の濡れた頬に手を伸ばす。涙の跡を指で撫でると、蓮はキョーコに見られたことに気付き、バツが悪そうに視線をキョーコに向け、おデコをコツンと突き合わせた。

「ぃった…」

キョーコの痛むその額。責めるような蓮の目がおデコを付き合わせたままなので間近でキョーコの目を覗き込み、キョーコはドギマギしてしまった。

「見たお仕置き。」

言った後に、少しだけ口を尖らせて赤くなった蓮の顔。
その蓮の照れた顔を見たキョーコが目を見開き、そしてクスっと笑みをこぼした。
クスクス笑うキョーコに蓮が慌てる。

「あ、コラッ。」

「ふふふ。ふふふふ。」

蓮の涙を笑ったわけではない。赤くなった顔をみて何故だか凄く幸せな気持ちになってしまって気付いたら笑ってしまっていたのだ。

なかなか笑いが収まらないキョーコに焦れた蓮は、強行手段を取った。

「そんなに笑うキョーコには、お仕置きだ。」

そう言って笑みの形を作っていたキョーコの頬をムニッと摘む。
びっくりして目を見開いたキョーコは笑うのをやめてしまった。
絡み合った視線。
目をパチパチさせるキョーコの顔は両方の頬を引っ張られていることで、変な顔になっていた。

「ぷっ。はは…」

蓮が笑うと、キョーコもハッとして慌てて蓮の手から逃れると、真っ赤な顔でポカポカと蓮の胸を叩く。

「酷いです〜!!」

「ははっ。ごめんごめん。」

笑う蓮を残してキョーコは立ち上がった。

「もうっ!帰りましょう!!」

「え?もう?」

「そうですよ!明日も仕事なんですから。」

放っておいたらそのまま一人で帰ってしまいそうなキョーコの腕を掴んで慌てて引き止める。

「きゃっ。つ…久遠っ…?!」

ぐいっと腕を引かれて、座ったままの蓮にあっという間もなく唇を奪われた。

ちゅっと密やかな音を残して離れた唇。
見つめ合い強く絡まった二人の視線。

蓮の燃えるような熱い瞳に浮かされて、キョーコは蓮の首に腕を回すとそっと目を閉じた。
その動きに応じるように蓮は顔を傾け、キョーコの顔に己の顔を近付けながら身体を抱き寄せる。
再び重なった唇は甘く溶けて、時間の感覚を狂わせた。
一瞬にも永遠にも感じるそのキスを交わす二人は、イルミネーションの光の中に包まれてキラキラと祝福を受けているようで絵画ように美しく、訪れていたカップルたちの目を奪ったのだった。


(続く)

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*****


漸くここまで来ました!!
次でラストの予定です。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

My HOME-28-

My HOME-28-


「これで晴れて恋人同士ってことで良いのかな?」

キョーコがキッチンで忙しなく朝食の支度をしていると、蓮が嬉しそうに顔を緩ませて問いかけてきた。

「こっ恋っ人?!」

キョーコが顔を真っ赤にして食器を落としそうなほど狼狽えるので、蓮はそんなキョーコが可愛くて笑みを深める。

「ん?だって最上さんも俺と同じ気持ちってことだろう?」

「お、同じ?!同じだなんてそんなっ…!」

キョーコは狼狽えた。蓮も本気…なのだと思う。
蓮から今まで散々アプローチをされてきた。それは事実だ。
だけど、キョーコの中では今までの経験上、愛した人から同じ想いをもらったことがないのだ。
母親からも、大好きだった幼馴染からも。
その経験から、蓮がどんなにアプローチをしてきても、反応が面白くてからかってるんじゃないかとか、いまだけなんじゃないかとか、そのうち飽きるのではないかとか、そんな思いがどうしても湧き出てきてしまう。
不安なのだ。怖いのだ。愛を認めて、その愛が裏切られてしまう日が来ることが…。

ずっと一緒にいたいとは蓮に伝えたが、好きだという気持ちはまだ言葉にする勇気が出来ない。

自分と蓮は本当に同じ気持ちなのかと不安気に心は揺れる。

キョーコのそんな不安を感じ取ったのか、蓮はそっとキョーコの顔を覗き込み、にっこりと優しく微笑んだ。

「ねぇ最上さん、デートしようか?」

蓮の提案に、キョーコは目を大きく見開いて驚いた顔をした。




蓮のデートの提案から五日後、二人揃って夕方からのオフをもぎ取ることが出来た。
社の協力もあり、椹には、ラブミー部のキョーコに重要な任務を依頼したいと言って何とか合わせることが出来たオフだ。

キョーコは自室になっているゲストルームの鏡の前で何度も服を確かめながら、おかしなところはないかと入念にチェックをしていた。

そうしてピンポーンとインターフォンが鳴った。
無遅刻キングの名にふさわしく時間ぴったり。蓮が来たのだ。

「はーい!い、今行きますっ!!」

キョーコは慌てて鏡の前から身を剥がすと、玄関に走り、ドアを開けた。

扉の前に立っていた蓮が頬を緩ませて微笑みかけたのは一瞬。

「わあっ」

蓮の顔よりも差し出されたバラの花束に目を奪われていたキョーコの姿を見て目を見開いた蓮は、一瞬の間を空けて、盛大に吹き出していた。

「プッ…クク…ハハハっ!」

渡されるはずだった花束を手に持ったまま急にお腹を抱えて笑い始めた蓮を見てキョーコは真っ赤になった。

「な?!やっぱり、お、おかしかったですか?!」

キョーコは真っ赤になって被っていたスカーフを両手で握った。
蓮とデートだなんてバレたら大変だとスカーフを頭に巻いて頭巾のようにして、目も隠れるように大きなサングラスにマスクをしていたのだ。
変装は完璧なはずである。
これでは誰か知っている人が近くで見てもキョーコだとよくわからない。

「ごめっ…。クク…でもそれ…逆に怪しまれると思うよ?」

完全に変装してることがバレバレだと思えるキョーコの装いに、蓮は笑いを何とか収めて、そっとキョーコの顔を半分隠しているスカーフとマスクを外した。

「あっ…!」

「これじゃあ君の可愛い顔が見れないし…。」

「な?!」

蓮の言葉にキョーコが真っ赤になる。

「君も俺のことが見えないだろう?」

そして、最後にそっとキョーコの顔を半分ほど隠している大きな茶色のサングラスも外して、優しく微笑みかけた。

「普通にしてれば、案外バレないもんだよ?」

「でも…っ……っ?!」

フワリと微笑んだ蓮の姿を見てサングラスを外されたキョーコは目が釘付けになった。
信じられないというようにこれでもかと目を見開いたまま、口をポカンと開けて固まってしまった。

「やっぱりちゃんとキョーコちゃんの可愛い顔を見てデートしたいな?」

神々しく微笑んだ蓮は、蓮であって蓮ではなかった。
ふわりと風に舞った金髪、不思議な色彩の綺麗な瞳。
数ヶ月前グアムで偶然再会したキョーコにとって大切な大切な…

「こぉん…?」

固まっていた口が僅かに震え、恐る恐るというように声が発せられた。

キョーコの言葉に更に笑みを深めた蓮は、改めて持っていた花束をキョーコに差し出した。
赤とピンクのバラがバランスよく配色された豪華な花束だ。

「キョーコちゃん、お待たせ。迎えに来たよ。今日は俺とデートしてくれる?」

まるでおとぎ話に出てくる王子様のような蓮が、茶目っ気たっぷりに言う。
差し出された花束を受け取りつつも、混乱したキョーコの頭は今この場でおきてることの処理にいっぱいいっぱいで付いていけない。
今日は蓮とデートする予定だった。
でも目の前にいるのは蓮の姿を借りたコーンなのだ。
いや、コーンなのだろうか?
蓮の声で、蓮の体で髪の色と目の色だけがコーンで、何が何だかわからない。

「な…んで…敦賀、さん?コーン?」

「最上さんと、ちゃんとしたデートがしたくて、ミス・ウッズに我儘言って本来の姿に戻してもらったんだ。」

「…ミス・ウッズ?…本来の、姿…?」

「そうだよ。ビックリさせてごめんね?」

頭がグルグルしてしまっているキョーコに気付いて蓮は苦笑する。

「突然こんなこと言われても、理解できないかもしれないけど、敦賀蓮は芸名で、本当の名前は久遠なんだ。久遠・ヒズリ。」

「久遠…さん…?ん?ヒズリって…え?!えええぇええええぇぇえぇぇ?!」

キョーコが驚愕に目を見開いた。

「せっ!先生のっ、むむむむむむ息子さん?!」

「うん。」

「久遠さん…くおんさん…くぉん…こぉん?コーン?」

キョーコは何度も何度も反芻してショートしそうな頭の中でいろいろなピースを必死に繋ぎあわせた。

そうして全てが繋がったキョーコがハッとして、恐る恐る顔を上げ、蓮を見上げた。

「も、もしかして…つ、敦賀さんが久遠さんで、先生の息子さんで、コーンなの?!?!」

キョーコの問いかけに、蓮はゆっくりと頷いた。

「うん、そうだよ。キョーコちゃん、ごめんね。ずっと黙ってて。」

「うそ…」

キョーコの目からポロリと涙が零れた。
その涙を指でそっと受け止めながら、蓮は申し訳なさそうに微笑む。

「なんで…っ!!今まで黙って…!なんでっ今っ!」

ブワッと決壊したようにキョーコの涙が流れ出す。

その一粒一粒を指で拭いながら、蓮は優しく…でも強い言葉で言った。

「それは、最上さんのことが…キョーコちゃんのことが好きだからだよ。心から愛してるんだ。」

まっすぐな蓮の言葉がキョーコの心に突き刺さる。

ーーーずるい…

キョーコは涙を流しながら思ってしまう。
蓮はズルい。
蓮の言葉がいとも簡単にキョーコの心の壁にヒビを入れてしまう。
誰からも愛されることはないと思っていた。愛される必要もないと、そう強がってきた。
それは自分を守るための、これ以上人から傷つけられないための鉄壁の壁となって無意識にキョーコの心を守っていたはずなのに…。

「君のおかげで俺は、彼を…久遠を許すことが出来た。君がそばにいてくれたから、やっと乗り越えることが出来たんだ。」

BJを演じる時、苦しんでいた蓮を知っているキョーコ。コーンの昔の優しさと笑顔を知っているキョーコ。久遠を演じたことのあるキョーコ。演技に懸ける蓮の想いを知っているキョーコ。人の心の動きに敏感なキョーコ。そんなキョーコだからこそ、想像できてしまったのだ。

蓮の過去に起きたであろう苦しみと葛藤も、蓮がコーンであることを単なる意地悪で自分に正体を隠していたわけではないことも…。
そうしなければならなかった理由があって、苦しんで苦しんで、黙っていたことも。

ガラガラと心のバリアが崩れるのを感じながらも、それと同時に湧き上がってくる不思議なほど熱い想いがあった。

「乗り越え、られたんだね。自分の力で飛べるように…なれたんだ…」

父の手が大きすぎて飛べないと寂しそうに言っていたコーン。
その父の手はキョーコもよく知るクーのことだったのだ。

溢れ出すほどの熱い想いは、キョーコの頬をハラハラと涙に姿を変えて濡らしていく。

「違うよ。自分の力だけじゃない。君がいたから…乗り越えることが出来たんだ。」

「私…?」

涙を溢れさせた目で見つめてくるキョーコの手をとり、その場に片膝をつくと、請うようにキョーコの手の甲に蓮が甘く口づけた。
蓮の目がキョーコを見上げる。
甘く熱い想いがキョーコの中で嵐となって吹き荒れる。

「お願い。俺を受け入れて?キョーコちゃんを守る王子様を俺にやらせて。俺はもう君なしでは生きていけない。俺にも久遠にも他の誰でもない君が必要なんだ。」

「貴方は、ズルいです…。」

キョーコの心のバリアは完全に崩れ去り、消えてしまった。
替わりに全身を駆け巡る激しいほどの想い。

「ねぇ?俺たちの出逢いは運命だって思わない?」

目の前に会いたくて逢いたくてたまらなかったコーンが微笑んでいる。
キョーコはそんなコーンの、蓮の顔を熱い視線で見つめ続けた。
だが、言葉が思うように出てこない。
ポロポロと流れる涙をそのままにコクコクと頷いてみせた。

「だからね。俺のお姫様になって?」

「お、姫…様?」

「そうだよ。俺にとってのたった一人のお姫様。君のこと、心から愛してるんだ。俺の全部をあげる。誓うよ。君を決して手放したりしない。君のことをずっとずっと大事にするって。」

「こぉーん…」

「ダメ…かな?俺がコーンなのは嫌だった?」

蓮が子犬を背後に背負ってくぅーんと寂しそうに見つめてくる。
その顔に弱いキョーコは、やっぱりズルいと呟いて、一つ深く息を吸い込むと、その息を全部吐き出して、ゆっくりと目を開き、嬉しさに顔を綻ばせた。

「もう!ダメじゃないです!立ってください!!」

蓮を立たせて、キョーコは薔薇の花束を足元に置くと、蓮の身体にぎゅうっと抱き付いた。

「嬉しいです。敦賀さんがコーンで…大好きな二人がどっちも貴方だったなんて…もう、貴方に惹かれるのが当然のことだったみたい。」

「じゃあ、俺と付き合ってくれる?」

「絶対に私のことを好きでい続けて大切にしてくれるなら。」

「もちろん、大切にするよ。やった!!キョーコちゃん大好き!」

「ふふ。私も大好き!!大好き!!」

「キョーコっ!!」

「きゃっ!ふふ。苦しいです。敦賀さん…」

「絶対に離さないから…覚悟してね?」

「望むところです!!」

とても幸せに満ちた元気なキョーコの声が廊下に響いたのだった。


(続く)


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*****

なんか色々詰め込み過ぎて違和感。
なんだこれはっ!!
ブランクを感じさせちゃうような文章になって本当すみません(>_<)
これが今の風月の精一杯でした。
漸くまとまった二人です!
My HOMEはあと2話の予定です。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

My HOME-27-

My HOME-27-


ーーブ…

「はいっ!!もしもしっ?!」

『っ……!!』

携帯の着信音が鳴るよりも早く、バイブが震えたコンマ1秒ほどで電話に出たのは、言わずもがな蓮である。
蓮の電話を取る素早さに驚き、一瞬息を飲んだ相手の気配に相手を確信して蓮は必死に呼びかけた。

「もしもしっ?!もしもしっ?!最上さん?!最上さん?最上さんだよね?!」

『…は…い…あの、お、はよう…ございます』

おずおずと答えた声に安堵の息が漏れる。

「あぁ良かった!昨日から何度も掛けたんだよ?ずっと電源を切っていただろう?」

『はい。すみません。あの、モー子さんの家にお邪魔してまして…。』

「あぁ、そっか。琴南さんの…。」

心底ホッとした蓮は、良かった…と呟きながらその場でハァァーと息を吐いた。

『もしかして…ずっと起きて…?』

「あ、いや…まぁ、うん…心配で…」

少しばかりのバツの悪さを抱えながらも返事をする。

最近アプローチが必死になってきたのを自覚していた蓮は、最初はこのまま帰ってこないのではないかという不安から電話をかけていたのだが、何度電話をかけても繋がらないので何か事件に巻き込まれたのではないか、キョーコの身に何かあったのではないかと心配で堪らなくなり、社に相談までしていたのだ。
社からは琴南さんのところだろうと言われてはいたが、もしそうじゃなかったら?と気が気じゃなかったので眠れなかった。

『っ!!ご心配おかけしてしまい、申し訳ありません!!』

青い顔しているキョーコが目に浮かんで蓮は何でもないことのように言う。

「いや、無事ならいいんだ。今何処?」

コートを腕にかけ、キーを片手に掴みながら蓮は言った。

『いえ、あの…実は…』

言い淀むキョーコを逃がしたくなくて、玄関へ向かい靴を履く。

「迎えに行くよ。今ど………こ……」

ガチャリと玄関を開けたところで蓮は驚いて立ち止まった。
エレベーターと玄関のドアの丁度中間に耳に携帯電話を当てたキョーコが立っていたのだ。

蓮はゆっくりと耳に当てていた携帯を下ろした。

「見つけた…。」

安心してふわっと嬉しそうに柔らかく微笑んだ蓮に、キョーコはぶんっと音がしそうな勢いで思い切り頭を下げた。

「ご心配おかけして申し訳ありませんでした!!」

「本当にね…。もう、帰ってこないかと思ったよ…。」

蓮がゆっくりとキョーコに近づく。
頭を下げたままのキョーコの視界に蓮の靴が入ったところで、キョーコはゆっくりと身体を起こした。

「最初は…そのつもりでしたけど…でも…。」

モジモジとキョーコが何かを言おうとしているので、蓮はじっとその言葉の続きを待った。
キョーコはパッと顔を上げて、蓮を見上げた。

「敦賀さんに逢いたくなっちゃって…帰ってきちゃいました。」

赤くなった顔でにへらと笑ったキョーコの言葉と表情に、蓮は一瞬にして心を奪われ目を見開いた。

「それで…あの…。」

すると再びモジモジしだしたキョーコは、目を左右に彷徨わせながら更に言葉を探す。

「私…も、敦賀さんのことが…あの、えっと…」

キョーコはそろりと真っ赤な顔で蓮の顔を伺うように上目遣いで見上げた。
蓮は食い入るようにキョーコを見つめ息をすることすら忘れてしまっていた。
キョーコが何かを伝えようとしているのが蓮にもわかった。良くないと思いながらも僅かな期待が蓮の中でムクムクと湧き上がる。
目が合ってほんの数秒、だが永遠にも感じる沈黙の後、キョーコがドキドキしている心臓の音を押さえ込みながら、瞳を潤ませ、ゆっくりと口を開いた。

「私…あの、敦賀さんと、一緒にいたいです…!出来れば、あの……っきゃっ!!」

キョーコは突然蓮に力一杯抱きしめられていた。
苦しいくらいの抱擁に、キョーコは真っ赤になりながら口をパクパクさせてしまった。
暖かい蓮の腕に包まれて、蓮の想いも一緒だということが何となく伝わってきて、キョーコはドキドキしながらもキュッと蓮の服の裾を握りしめた。先ほどの緊張が嘘のように、幸福感に包まれていくのを感じながら、キョーコは深く息を吐くとゆっくりと目を閉じ口を開いた。

「…貴方と一緒にいたいです。出来れば…ずっと…ずっと…」

キョーコの言葉に答えるように、蓮は更に強くキョーコを抱きしめた。
蓮は胸がいっぱいになりながらも口を開く。

「俺もだよ。俺も、ずっと君と一緒にいたい。…おかえり。最上さん。」

「ふふ。ただいまです。敦賀さん。」

朝日の光に包まれて二人はいつまでも抱きしめ合っていた。


(続く)

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*****

キョーコちゃん朝帰りの巻〜☆

テーマ : 二次創作:小説
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