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なくした記憶を終えて。

あとがきのようなもの。


皆様、こんにちは。
風月です。

皆様の拍手やコメントなどの応援のおかげで、漸く『なくした記憶』を無事完結させることができました!!

今まで応援してくださった皆々様に心から感謝しております。

『なくした記憶』は風月のスキビだよりのスタートと、ほぼ同時期(ブログ開設で二次デビューホヤホヤの三日目)に無謀にも連載をスタートした話なので、風月の中で恐らく一番思い入れの深いお話でした。

コメントやメッセージを頂けるたびに一喜一憂し続けてきたこの話は、楽しんで書けたり、書きたい方向に話が持って行けなかったりとかなり悩まされた作品でもありましたが、やっぱりいざ最後にENDを付けるとなると、寂しくなってしまい付けることに凄く勇気がいりました。

可愛い久遠くんな蓮様が無邪気にキョーコちゃんを翻弄していく話を一緒に楽しんでくださる皆さんがいてくれて本当に嬉しかったです。

連載を再開するまで紆余曲折がありましたし、期間もだいぶ空いてしまったので、最初に読んでいてくださった方が今どのくらい残ってくださってるかもわかりませんが、ずっと応援してくださった皆さんも、最近新しくアメンバー様になってくださったみなさんも、これからなってくださる皆さんも楽しんで頂けるお話になってたらいいな。って思います。

最後の最後でローリィがでしゃばってきてクーまで出てきた時は、もうダメだ…終わらせられる気がしないかも…なんて思い、ぼやいて弱音を吐いたりもしましたが、頂いたコメントのお陰で楽しみにしてくださってる方がいらっしゃるって再確認できて、再度頑張ることができました。


書き直しも検討しましたが、やはりがっつり書き直したとしたら、ここまでの話を読んで続きを楽しみにしてくれてる人にはガッカリな感じになるかもと思い直しやはり、このままラストまで繋げることにしました。

今後は、残ってるお話の以降作業と、それに合わせての続きリク頂いてる分の続きを書けるものから書いたり、恋の季節は…の連載を再スタート…そして、思いつく話が出てくれば、なくした記憶の番外編的なものも書けたらいいかなー?って思います♪

正直なくした記憶のラストは詰め込みすぎた感満載じゃないか?!って思わなくもないのですが、とりあえずもうそろそろ終わらせないと本当にダメだ!と思い直して何とかラストという形で終わらせました。

消化不良な方がいたら申し訳ありません。
でも、風月の中で蓮様は記憶を全部取り戻す予定ではなかったので、最後は全部思い出して『おかえり』で終わらせることが出来てちょっとホッとしました。


53話なので他の長期連載をされてる方に比べれば大したことないでしょうけど、風月の中では元々30話ぐらいのつもりで書いてたので、結構なボリュームに感じてます。
不自然な部分があってもこれも風月ワールドということで、大きな心で受け止めて頂けたら幸いです。



さーて、なくした記憶の連載を終わらせてやっと肩の荷が下りたどー!!って感じなので、これからは伸び伸びとしていくつもりです。
今日は仕事終わったらカラオケでも行って歌いまくってきます!

連載の大変さを知ってても、また連載を書きたくなってしまう脳内には一度パンチをくらわせたい気分ですけど、今後もぼちぼちやってくので、これからもお付き合い頂けたら幸いです。


なくした記憶を長い間、応援してくださった皆様、本当に本当にありがとうございました!!
皆様には言葉では表現できないくらい感謝しております。

これからもよろしくお願いします。


風月

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なくした記憶 53〈完結〉

※今回、「」は日本語、『』は英語だと思って下さい。
※関西弁は間違ってても大目にみて頂けたら幸いです。


長かったですが、ようやくラストです!!


*****


なくした記憶 53


「Ladies and gentlemen!!さぁ!これから、ここにいる皆さんの時間を頂戴して、敦賀蓮、京子の婚約緊急会見を行う!!」

スポットライトが集まり明るく照らされた天井付近には、何故かアラビアン国王風の格好をした男がロープに捕まった状態で喋っていた。


「「「しゃ、社長〜〜?!」」」

ブリッジロックのメンバーはその人物、ローリィを見て驚いていた。

「え?!あれ?敦賀さんは?!」

「京子ちゃんもおらへん!」

ザワザワと客席も混乱する中、いつの間にか蓮とキョーコの姿がなくなってることに気づいたブリッジロックだったが、すぐにローリィの仕業だと気付く。
目眩しなのか、派手にしたいだけなのかダンサーズ数人がまだ素晴らしい腰の振りを披露しながらスタジオの真ん中で踊っていた。

「ちょっと社長!どういうつもりですか!!」

「とにかく、そんなところ危ないですから降りてきてください〜!!」

ローリィはスタジオの天井近くでぶら下がっているため、5メートルほど高い場所にいるのだ。

ハーハッハッハッと上機嫌で笑っているローリィにとりあえず何を言っても無駄だと思いながらもとりあえず声をかけていた。

「蓮と京子は今、ダンサーズに導かれて衣装チェンジに行っている。なぁに、すぐに戻ってくるから心配することはない!!」

「はぁ…」

「それはそうと、これ、俺たちの番組なんですけど…。」

「細かいことはいいじゃねぇか。そこはお前、同じ事務所のよしみってやつで。勿論、お前たちの番組だから婚約会見の司会進行はお前たちに任せる。」

「え?!任せるって社長?」

「あれ?そう言えば付き合いだしたのって先月だって敦賀さんさっき言ってへんかった?!」

「せや!スピード結婚やんっ!」

「でも京子ちゃんってまだ…」

「はっ!高校生やないか!」

ブリッジロックがそんな会話を交わしていると、客席から悲鳴が上がった。
慌ててその視線の先に目を向ければ、ローリィがものすごい速さで落下していた。

「「「しゃ、しゃちょーーーー!!!!」」」

青い顔でローリィの身を案じて叫んだ三人だが、ローリィの身体の下に一頭の動物が走り込んできて、ローリィを上手い具合に背中で受け止めた。
どうやらこれもいつもの傍迷惑な演出の一つだったようだ。
しかもそこに現れた動物は…

「「「ラクダー?!?!」」


ーーーあのおじさん…一体何者?!?!

その時の唖然とする観客の顔にはそう書いてあったという。

「さぁ、準備は整ったようだっ!それでは、頼んだぞぉっお前たちっ!さらばだっ!」

しっかりとラクダの手綱を引いたローリィがラクダを巧みに操り回れ右をさせるのと同時に、セットが回転して、着物を着せられ緊張気味のキョーコと、その隣に袴を着た蓮が椅子に座った状態で現れ、その隙にローリィは姿を消した。
蓮の袴姿にキャーっと黄色い歓声が飛ぶ。

「敦賀さんかっこええー!」

「うわぁ!京子ちゃんも着物姿綺麗やなぁ。」

リーダーの光が思わずそう感嘆の感想を正直に述べれば、キョーコは真っ赤になりながらも、「あ、ありがとうございます!」とはにかんで見せるので、その可愛さに思わず光は心臓を撃ち抜かれてしまった。

「うっ!」

「リーダー!しっかりせい!」

「リーダー!!大丈夫か?!」

雄生と慎一がすかさず両側から支える。

「だ、大丈夫や!俺も男や。」

「なんかようわからんけど、大丈夫なんやな?」

「あぁ。大丈夫や!」

「よし。じゃあ行くで!」

蓮とキョーコの向かい側には三人分の椅子が並べられている。

そこに腰掛けながら、三人は突然企画に盛り込まれた婚約会見コーナーにアドリブで対応した。
流石に長年レギュラーで司会を勤めてるチームだけあって、チームワーク力は抜群だった。

「まずはご婚約おめでとうございます。」

「「ありがとうございます。」」

「でも、まだ京子ちゃんは高校生やったって記憶してるんやけど…」

「勿論、結婚を急いでるわけではないので、彼女が高校卒業したあと、時期を見てから結婚するつもりです。」

「え?じゃあ何で今の時点でプロポーズしたん?指輪まで用意してはったよね?」

雄生の質問に、蓮は少しだけ考えるそぶりを見せた。

「宣言…ですかね?彼女は他の誰にも渡さないっていう…一応、指輪は付き合いだした時から用意してました。時期を見て渡そうと…。それに、漸く念願叶ってお付き合いができたので、テレビで公開プロポーズしちゃえば、彼女が逃げたりできなくなるからちょうどいい機会かな?って。」

「な?!に、逃げたりなんてしませんよ!」

「そうかな?さっきだって逃げようとしてただろう?」

「あ、アレはだって…」

確かに逃げようとしていたのは事実なので、キョーコは赤い顔で答えに詰まって俯いた。

「強引にゴメンね。でも、30秒以内に見つけ出さないと社長から君と本気で引き離されそうだったから、慌てて探してたんだ。」

「あぁ、せや!同棲してるって…」

「ええ。ですが、同棲というと語弊があります。正確にはルームシェアですね。記憶をなくしてる間、社長から彼女が俺の世話係に任命されまして、住み込みで食事の世話などをしてくれてまして、記憶を取り戻してから漸く付き合うことになったのでそのまま…。みなさんのおっしゃる通り彼女はまだ高校生なので、さすがに寝室は別々ですし。健全なお付き合いをさせて頂いてますよ。」

ニッコリと似非紳士な笑顔で微笑む蓮に、キョーコ以外は皆が騙され見惚れてしまう。

ーーー嘘!確かに部屋は別にあるけど、最近は殆ど一緒に寝てるじゃない!!お風呂だって乱入してくるくせにっ!

なんてキョーコは心の中で思いながらも、そんな事実恥ずかし過ぎて口に出せない。

「そうやったんか〜。」

「いやー。良かった!だって、もし敦賀さんが高校生相手に手出してたらなんか犯罪チックやもんな。」

そう言われた蓮は笑顔で固まった。
サクッと刃物が心臓に突き刺さっている。

「あー!わからんでもない!何か見た目が大人過ぎてな。」

「年齢のギャップがねー!」

盛り上がったブリッジロックに、気づかれないようにショックを受けている蓮のためにキョーコが慌ててフォローを入れた。

「でも、敦賀さんこう見えてまだ21ですし。年齢は私とも4つしか違いませんし…」

「キョーコ…こう見えてって…」

落ち込み気味の蓮に漸く気づいて、ブリッジロックのメンバーも慌ててフォローを入れた。

「せ、せや!まだ敦賀さんもまだ21なんやもんな!」

「ほら、何かドラマでも大人の男の役をすることが多いやん?やから、イメージがさ…」

「敦賀さん色気すごいから、隣にいるのは絶世の美女のイメージが…」

光のフォローの言葉に今度はキョーコがズンっと落ち込んだのを見て、光が真っ青な顔になって慌てた。

「え?!いや、違うっ!キョーコちゃんが絶世の美女やないってことやなくてやな。」

「いいえ、私は地味で色気のない女なので…」

「キョーコは綺麗だよ?地味だなんてことはないって、いつも言ってるだろ?…この子、素がいいので、メイクや衣装によって変幻自在なんですよ。」

蓮がそう言うと、光がカンペが出されてることに気付いた。

「え?あ、写真あるんや?京子ちゃん七変化の?それでは京子ちゃんの七変化があるようなので、紹介します。モニターをご覧くださいっ!」

カシャという音と共に、キョーコが初めてメイクを施された瑠里子との演技対決の時の艶やかな着物姿が映し出され、会場は騒然となった。

「わっ!ベッピンさんや!!これ、ホンマに京子ちゃん?!」

「全然わからへん!!」

「めっちゃ綺麗やなぁ〜。」

そしてまたカシャと切り替わり、そこには不破のプロモに出た時の天使の格好をしたキョーコが映し出された。

「うわっ…」

「やばっ…」

「ほんまの天使や…」

その後も次々とキョーコの変身写真が映し出され、会場は興奮に包まれていた。

「いや、ホンマに凄いわ!キョーコちゃん!!」

「全部同一人物とやなんて言われるまで…いや、言われても絶対わからへん!!」

「これみたら納得や!!敦賀さんと京子ちゃんは文句なしのお似合いカップルや!」

「地味で色気ないやなんてとんでもあらへん!寧ろそんなこと言う奴がおったら、そいつの目が節穴やわ!!」

「いや〜ホンマにビッリしたわっ!!」

「な?!みんなも二人お似合いやと思うよな?!」

慎一が会場に同意を求めると、割れんばかりの同意を示す拍手が起こった。

「ほら、みんなも納得やで!」

「ビッグカップルの誕生やなぁ〜!!これからが楽しみや!」

その後もブリッジロックにより、記憶をなくしてた間のことを掘り下げられたり、二人の馴れ初めや、過去の出会いについて様々な質問がされ、一時はどうなるかと思われた番組はブリッジロックの手腕により無事和やかな雰囲気で終了した。

その後、蓮とキョーコは高級ホテルへ連れ去られ、今度は集められた記者の前で改めて婚約記者会見が行われた。
ローリィが珍しくスーツを着てるものだから違和感しかなくてキョーコは思わずガン見してしまった。

そして質問が飛び交い白熱している記者会見の会場に雪崩れ込むように一人の男が駆け付けた。

「キョォォォォーコぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「っっっ?!?!」

その人物の姿を見て、キョーコは驚いて思わず立ち上がった。

「えええええぇ?!?!せ、先生?!」

ハリウッドスターのクーの突然の登場に一同は騒然となった。

「やぁーっと来やがったか…」

ローリィがニヤニヤと笑うと、遅れてヒールを履いた背の高い女性も息を切らして走り込んできた。

『アナタッ!置いて行くなんて酷いわっ』

『す、すまんジュリ…』

女性はクーの妻のモデルのジュリエラだった。
突然の世界的に有名なビッグカップルの登場にもう何が何だかわからなくなり、集まった記者たちもパニック状態だ。

『あの子は?!あの子はどこ?!』

キョロキョロとしていたジュリエラがキョーコと蓮の姿を見た瞬間、ポロポロと涙を流し始め、崩れ落ちそうになった。

そんなジュリエラを慌ててクーが横から支える。

『ジュリ…』

『あぁ、アナタッ!私の寿命はあと10秒よ。』

『えぇ?!ジュリ!ジュリ!!しっかりしてくれぇっ!!』

ジュリエラの言葉とクーのドラマチックなやり取りに会場がドヨドヨとどよめく。

そんな二人に呆れた目をしていたローリィだったが、蓮はスッと立ち上がると、無言でキョーコの手を引き記者をかき分けて二人の元に向かった。

「ちょ、く…つ、敦賀さん?!」

そして蓮はクーとジュリエラの前に立った。

『落ち着いてください。ミセス、ミスター…』

英語で呼びかける蓮の声に、ジュリエラがハッとしたように潤んだ瞳で蓮を見上げた。

『久遠…』

小さな小さな声だったが、キョーコには確かに聞こえ、そして真近で見たジュリエラの美しさに息を飲んだ。


クーが一度気づかれないように息を吐き出して、スッと立ち上がると蓮に対峙してその目を見つめた。

「キョーコは私の娘も同然。親の承諾もなしに、婚約会見か?」

「その点については申し訳ございません。ちゃんとお二人にも挨拶に伺うべきでした。」

蓮は二人に頭を下げる。

「何分、先ほどプロポーズを受けてもらえたばかりなので。順番が逆になってしまいましたが、大切なお嬢さんを私に頂けないでしょうか?」

「えぇ?!つ、敦賀さん?!」

クーとジュリエラにとって二人の本当の子供は蓮のはずなのに、何故かお嬢さんを下さいと頭を下げている蓮に驚いてキョーコが慌てた声を上げる。

「本気なんだな?」

「勿論、本気です。」

二人は視線をぶつけ合った。
暫し、緊迫した空気がぶつかり合う。
目だけで本気度を測り、そしてクーが先にフッと笑みを作った。

「じゃあ、お前を私とジュリの息子と認めよう。」

蓮はその言葉を聞いて目を見開いた。

「私たちの娘であるキョーコと夫婦になるなら、お前は私とジュリの息子だろう?」

「あ…」

キョーコはハッとした。優しくて暖かいクーの眼差しの中に、少しだけ混じった不安に揺れる色を見つけた。

固まってる蓮を見上げ、キョーコはクイっと蓮の腕を引いた。
蓮もハッとして、長い息を吐き出して、少しだけぎこちなく笑った。

「ありがとうございます。キョーコを幸せにしてみせます。……お父さん…『お母さん…』」

蓮の言葉に、ジュリは再び感極まって涙を流し、クーの胸に縋り付いた。
クーは嬉しそうな顔で、優しくジュリの頭を撫でる。

『ありがとう。どうか娘を幸せにしてやってくれ、息子よ。』

まだここでは正体を明かさないと決めた蓮の意思を汲んで、クーもジュリエラもキョーコの婚約者として蓮を受け入れることで妥協した。

『あぁ、キョーコ…!』

ジュリエラも初めて会ったキョーコに抱き付いた。
そして小さな小さな声でキョーコだけにつぶやいた。

『ありがとう、キョーコ。久遠をありがとう…私達と久遠をまた繋いでくれてありがとう。』

『いえ、そんなっ私…っ!』

キョーコは突然、妖精界のクイーン様を彷彿とさせる美女に抱き着かれて驚き、目を回しそうになってしまった。
慌てるキョーコの背に蓮がそっと手を伸ばして支えると、キョーコも蓮の温もりを感じて、落ち着きを取り戻した。

『久遠…』

小さな声で蓮の本名を呟いたキョーコにハッとして、ジュリエラも蓮を見上げる。

『心配おかけして申し訳ありません。私はこの通り、大丈夫ですから。』

ウンウンと頷いて、ジュリエラは蓮の代わりにキョーコをギュウギュウに抱き締めたのだった。

「おい、お前ら…」

そこへローリィの呆れた声が響く。

「ボスッ!」

「記者会見の途中だぞ。邪魔するんじゃねぇよ。」

「すまん、ボスッ!可愛い娘の婚約を聞きつけて慌てていたのだ。」

クーが慌てた。

「じゃあ、キョーコを頼んだぞ!敦賀君!」

「はい!父さん。」

蓮の返事に、クーは満足そうに笑った。

「キョーコ。」

「は、はいっ!先生!!」

キョーコの返答には、クーは不満そうに眉を上げた。

「なんだ?敦賀君は、私のことをちゃんとお父さんと呼んでくれるのに、お前は私のことを父さんとは呼んでくれないのか?」

「は!い、いえ!すみません。えっと…お、おとっ、おとっ…おおとっちゃま!」

「ブックク…今度はおとっちゃまか…それもいいな…。」

自分の口から飛び出した呼び名に、キョーコは一人ああああああああと悶えていた。

『キョーコ…私のことは?!ねぇ、私のことは?!』

『ふぇ?!せ、先生のおくさま?!』

『違うでしょ!ママって呼んで!』

『ま、ママママママ…』

『キョーコ、テンパり過ぎだから…。』

くすくすと楽しげなやり取りを見ていたローリィの痺れがとうとう切れた。

「あーもー!仕方ねぇな!こうなりゃもう祭りしかねぇ!会見祭りだぁ!」

「「「えぇー?!?!」」」

「??」

皆がローリィの意味不明な発言に驚きの声を上げる中、ジュリエラだけがキョトンとした顔をしていた。

ローリィの言い出した会見祭りは混乱した会場を収拾するどころか、またさらなるパニックに包んでしまうのだった。




翌日の新聞の見出しは荒れに荒れた。

ーー敦賀蓮、京子と熱愛発覚!!

ーーヒズリ夫妻、娘の婚約で来日?!

ーーW嘉月、まさかの親子に?!

ーー衝撃!クーに娘?!世界のクーおとっちゃま!!

ーービッグカップル誕生!!

ーー蓮、熱愛で京子と同棲?!

ーーヒズリ夫妻と涙の再会!

ーー敦賀蓮、生放送中に堂々プロポーズ!!

ーー京子溺愛!クーと蓮の男のバトル

ーー京子七変化に驚きの声

ーー敦賀蓮、記憶喪失を告白!

ーー蓮と京子、石が繋いだ運命の出逢い!


など、新聞社やテレビ局によって様々な切り取り方をされていた。



「ん…。」

「おはよう、キョーコ。」

ベッドの中でキョーコが目覚めた。
目覚めたばかりのキョーコに、蓮は神々しい笑顔を見せ、そっと優しい口づけを送った。

「くぉん…おはよ…」

朝日の光を浴びて、明るく輝く蓮の素肌に、急に同じベッドで横になってるという気恥ずかしさが生まれてキョーコはシーツを掻き集めた。
その姿に蓮はクスクスと笑い、そしてベッドのそばに備え付けられているテレビを指差した。

「テレビ…凄いことになってたよ?」

「え…あ…っ!昨日のっ!!」

キョーコも蓮の言葉を聞いて慌てて身を起こした。
付いていたテレビでは昨日の生放送の様子も取り上げられていた。

「これで、これからはキョーコが俺のものだって堂々と口に出来るね?」

ベッドの上で身を起こしたキョーコを後ろから抱き寄せて、蓮は嬉しそうに笑ってキョーコのこめかみにキスをした。

「もうっ。久遠ったら…そんなの恥ずかしいだけなのに…それに私なんて…」

困ったように笑うキョーコを抱きしめたまま、蓮は言葉を続ける。

「昨日、ちゃんと証明されただろ?君は私なんて…なんて自分を卑下しなくていいんだ。客席のファンもみんな、俺たちを暖かい拍手で認めてくれた。君は誰が見ても魅力的ってことだ。」

「久遠…」

「自信を持って、キョーコ。君のことを誰よりも愛してる俺が言うんだから間違いないだろう?」

「ふふ。ありがとう。」

怒涛の記者会見の後、ローリィによる婚約パーティがローリィ邸にて開かれ、それは深夜にまで及んだ。

当然、予約していたレストランは行けず、二人で静かに過ごす甘い誕生日の夜とはならなかったが、それでも大好きな人達に誕生日と婚約をお祝いされてキョーコは幸せだった。

キスを交わしてベッドに沈められそうになったところで、キョーコは蓮の頬を両手で挟んで、その目をじっと見つめた。

「ん?どうかした?キョーコ…」

「ううん。何でも…。」

そう言いながらも、尚もじっと見つめてくるキョーコに蓮は首を傾げた。

「何?キョーコ、言いたいことがあるなら何でも言って?」

「えっと、何だかね、変だけど、何故か久遠におかえりって言いたい気分になっちゃって。」

「え…?」

「言ってもいい?」

「え…あ、あぁ、うん。」

戸惑いながらもそう答えた蓮に、キョーコは嬉しそうに笑いかけた。

「ふふ。おかえりなさい。久遠。」

言われた瞬間、蓮の心の中で何かがフワッと軽くなった気がした。
蓮は目を見開き、そして幸せそうに無邪気な顔でふわりと笑って答えた。

「ただいま、キョーコ。そしてありがとう…。愛してるよ。」

優しいキスが降る。

朝日が差し込むベッドの中へ身を沈めて、二人は記憶をつなぎ合わせるように互いを求めあい、夢中でキスを交わすのだった。


END

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*****


長い間、応援ありがとうございました!!

これで完結です。
後日、後書きなようなものを書こうと思います。

なくした記憶 52

※関西弁は似非関西弁です。関西は旅行で1、2回行った程度なので、間違ってる部分多いと思います。深く考えずニュアンスで読んでくださいませ。


ラストまであともう少し、お付き合い頂けたら光栄です。


*****


なくした記憶 52


「みつけた。キョーコ。まさか君が彼だったなんてね…。」

蓮がそう言った瞬間、30秒をカウントしていた音が止み、カンカンカーンと時間を締めくくる音がなった。
鶏の図体の上にチョコンと乗った汗だくの女の子の顔が画面いっぱいに映しだされる。

「誰?あの女…」

「蓮の彼女?!アレが?」

「あれって、京子じゃない?」

「え?京子ってダークムーンの美緒様?えぇ?!違うでしょ?」

「いや、絶対そうだって…」

「何で美緒が着ぐるみに入ってんの?」

「同棲って…一緒に住んでるってことよね?」

「蓮と京子が?!全然釣り合わないし!」

「あの女ー!私の蓮をー!!どんな手を使ったのよぉ?!」

騒がしくなる客席の囁き声もキョーコの耳まで届いた。

ーーーイヤァァァ!私の人生、もうここで終わりよぉぉぉぉぉ!!!!

「京子、ちゃんが…敦賀さんと同棲…?」

ブリッジロックのリーダーである光はその事実を知って青ざめた。

「ってかどうするん?!」

「物凄い騒ぎになるんやない?!」

二人と同じ事務所に所属するブリッジロックのメンバーも気が気じゃない。
敦賀蓮の交際発覚なんて今までなかったし、恐らく大スキャンダルになるだろう。
メディアも放っておくはずがなく、キョーコも追いかけ回されることになるだろう。

誰もが固唾を飲んで見守る中、蓮は鶏の腰を引き寄せ、ピタリと横にならぶと、カメラを向いてスッと頭を下げた。

「まず、皆様を驚かせてしまい申し訳ありません。」

蓮が頭を下げたことで、客席からのザワメキが大きくなるが、蓮が顔を上げるとピタッとその声が止んだ。
すっと真剣な目でカメラを見据えた蓮の表情に皆が息を飲む。

「ご紹介します。私敦賀蓮と同じ事務所に所属する後輩のタレント京子です。実は先月から真剣に交際しております。」

ザワザワと客席のザワメキが再び大きくなる。

「どんな彼女なのか一言で紹介すると…ゴホン。えー、そうですね…まず彼女はーー」

ーーーまず?!まずってなんなの…?一言のはずよね?!

キョーコは心の中で嫌な予感を覚えた。

「笑顔が凄く可愛い。」

蓮の照れたような神々しい笑顔に客席の女性達が唾を飲み込み釘付けになった。

「それに素直で純粋でまっすぐで、何事にも一生懸命な頑張り屋さんで、やるならとことんやらなきゃ気が済まない。負けん気が強くて、人知れず努力して、逆境に強いかと思えば弱くもあって、時々思考に嵌って謎の言動も多いから驚かされることも多いけど、なんでも一人で溜め込んで、甘え下手で、恥ずかしがり屋だけど、そんなところも可愛くて…あとは、役に入るととことんスイッチを入れて走り出しちゃうところも次はどんな演技で返してくれるのかと思うし、あぁ、そうだ!あと料理の腕もピカイチで、彩り、味付け、香りはまさに高級料亭顔負けで、料理のレシピも創作料理も豊富で、食に興味のなかった俺が食べ物を口にして美味しいと感動できたのも彼女の料理が初めてで、それに手先が器用で裁縫も得意で、ペンダントトップだって手作りできて、この間なんてーー」

ペラペラペラと一言のはずがキョーコ自慢が止まらなくなってしまった蓮に、会場の客もどよどよと若干引き気味だ。
キョーコも、「ちょ、ちょっと…敦賀さん?恥ずかしいのでそのくらいに…」と止めようとしてみるが、オンステージに立ってしまった蓮は止められない。

「役によって別人になりきるその姿も目を奪われるし、時々メルヘンなところも全部ひっくるめてすごく可愛い。それにーーー」

うっとりと酔いしれるように幸せそうな顔でペラペラと語る蓮を見て、雄生と慎一は額を突き合わせた。

「な、なぁ…敦賀さんって…こんなキャラだっけ?」

「な、なんか…いつもと違う気が…」

ひそひそと、雄生と慎一が言葉をかわす。その間のリーダーはポカンと蓮を眺めていた。
キョーコは真っ赤な顔で口をパクパクさせている。

「はにかんだ時の笑顔なんて本当に可愛くて、所構わず抱きしめたくなるし、可愛い反応をされるともっといろんな表情が見たくなる。記憶をなくしてた間も、最初はあんなにひどい態度取っちゃったのに、それでも近くにいてくれて…」

キョーコは不意に蓮が事故に遭ったと聞きつけて病院に駆けつけ、目を覚ました蓮から「君……誰?」と言われた時の蓮の表情と声の調子を思い出した。
警戒するような冷たい視線を投げかけられて、本当にショックで思わず泣いてしまったっけ…
それでも、思い出さなくてもいいから近くにいて力になりたいと思った。

「慣れない言動して疲れてた時も、ずっと側にいて癒してくれた…。記憶が混乱して暴走していた時も抱き締めて俺の気持ちごと全部包んでくれた…」

キョーコは話を聞きながらハッと何かに気付いて顔を上げた。
蓮がしている話は、自分が蓮に話したことのない蓮の記憶をなくしていた間の記憶と重なっている。

「彼女がいたから、俺の心は壊れなくて済んだ。キョーコちゃんが側にいてくれたから、俺は俺でいられた…。」

蓮の優しい眼差しの中に、懐かしい色を見つけた気がした。
もしかして…とキョーコの心臓がトクトクと音を立てる。
もしかしてと思いながらも、確信の方がどちらかといえば大きかった。

震える唇で恐る恐るその名を呼んだ。

「…コーン?」

蓮が記憶をなくしていた間、長いこと呼んでいた呼び名で疑問符を付けながら呼びかけると、その呼びかけに、ふわりと申し訳なさそうな笑顔が答えた。

「キョーコちゃん…。」

キョーコの目からポロリと涙が溢れる。

「うそ…じゃあ…」

「やっと今、全部思い出したよ。」

「全部?」

「君とLMEの事務所で再会してからのこと。事故に遭って目覚めた後の事も含めて、あの時差し出されたリンゴの味も、全部。」

キョーコの涙が決壊して涙がボロボロと流れた。

「コォォォン!!」

ーーボヨーン

「うわっ!」

泣きながら両手を広げて抱きつこうとしたキョーコだったが、着ぐるみを着ていたことを失念していて、蓮を押し倒してしまっていた。

「わっ!ご、ごめんなさいっ!わたしったら!」

着ぐるみなのでなかなか起き上がることが出来ず、バタバタしてると、蓮はクスリと笑い、押し倒されたままの体勢で上半身だけ起こし、キョーコの頬にそっと右手を伸ばして、溢れていたキョーコの涙を愛おしむように拭った。

「寂しい思いをさせてゴメンね。キョーコちゃん。」

「こぉん…」

キョーコの口から嗚咽が漏れる。
その二人のやりとりを呆然と見ていた客とブリッジロックだったが、蓮の言葉とキョーコの涙に首を傾げて雄生が口を開いた。

「え?思い出したって…」

それに続き慎一も口を開く。

「もしかして、さっき言ってた記憶を失ってた間の記憶ってことかいな?忘れてたっていう…」

蓮は雄生と慎一に向かって照れくさそうに頷いた。それは今までテレビで見たことのある蓮のどの表情とも違っていた。

「えぇ、今、キョーコちゃんへの想いを口にしていたら不思議なことに全ての記憶が次々と蘇ってきまして…」

そう言いながら、蓮は立ち上がり、キョーコの手を取りそっと立たせた。

その二人を見ながら、感心したように慎一が口を開く。

「はぁーー。なんか、凄いな…愛の力ってやつか?」

そして助け起こしたキョーコの隣に並び蓮が語り始めた。

「彼女との最初の出会いは実は幼少期なんです。俺が10歳、彼女が6歳。数日間だけだったけど、俺にとっても、そして彼女にとっても、かけがえのない宝物のような思い出だったので、二人ともその時のことは覚えてました。ただ、互いが変わりすぎて、芸能界という舞台で再会しても最初は彼女だと気付きませんでした。俺が気付いてからも敢えて彼女にその時の話は持ち出さなかったので、彼女は俺が記憶を無くすまで、その事実を知りませんでした。」

観客もブリッジロックも二人の出会いが幼少期だったことに驚きを隠せなかった。

「え?でも変わってて気づかなかったのに、なんでその時の子やってわかったん?」

雄生が当然の疑問を口に出せば、蓮は答えた。

「10年前に別れ際に俺があげた石を、彼女は宝物にして今もずっと大切に持っててくれたんです。」

「へぇー。その石をたまたま見て?」

「ええ、最初は彼女が落とした石を俺が拾ったときに。そして記憶をなくしてた時は、記憶がなくなって不安定になってた俺の力になれるようにってその石を渡してくれて…。記憶をなくしてたのはここ5年分だけだったので、すぐにあの時の石をあげたキョーコちゃんだってわかって、感動して…その時、彼女もそれで俺があの時の少年だと気付いたんです。」

「石が二人を繋いでくれたんや…それってもう運命やん!」

「えらいロマンチックな話やでっ!そんなことが現実にあるん?!」

二人の出会いの話に観客は興味津々に惹きつけられていた。

「再会してからも、俺は彼女を誤解していて、随分意地悪な態度をとったりしました。それでも彼女はめげずにしっかりと己の芯を持って立ち向かってきました。誤解していたことに気付いてから、段々彼女から目が離せなくなり、気付けば愛おしく思うようになってました。演技に行き詰まって、スランプになり身動きできなくなった時も、この鶏が現れ、いつも助けてくれました。まさか、その鶏まで彼女だったなんて…今の今まで知りませんでしたけど…それにしてもこんなずんぐりむっくりな姿も似合うね?」

「ほっといてください!」

キョーコが真っ赤になって答えるので、蓮がクスクス笑うと、つられたように会場からも笑いが起こった。

そして不意に蓮は真剣な表情を作ると、その場に跪き、鶏の羽を掴んだ。

「君がいてくれたから今の俺がいる。こうして記憶を取り戻して敦賀蓮としてここに再び立つことができた。…ということで、突然ですが最上キョーコさん。」

その体制はもしや?と会場が一気にざわめき、キョーコも蓮の突然の行動とフルネームを言われたことに驚いて固まっていた。

「俺には、君が必要だ。きっとこれから先も様々なトラブルが起こるだろう。だけど、君がそばにいてくれたら、君と二人なら俺はどんなトラブルも乗り越えられる。そう確信してる。君と歩む未来を俺は望んでる。そして君を世界一幸せにするって誓うよ。だから、俺と…俺とどうか結婚してください。」

シンッと会場中が水を打ったように静かになった。
蓮の声は緊張に震え、真剣だった。手の平にはポケットから取り出した小箱が掲げられ、パカリと開いたところに煌めく指輪が乗っていた。

ゴクリと会場中が、キョーコの返事を生唾を飲んで見守った。

蓮の言葉と真剣な目を見て、再びキョーコの目から涙が溢れる。
それは煌めく指輪よりも美しく蓮の目には映った。

「はい…私でよければ…喜んで。」

コクンと小さく頷きふわりと笑顔になったキョーコに、蓮はパァァっと明るい笑顔を見せた。
それは、蓮が記憶を取り戻す前によくキョーコに見せていた無邪気に喜んだ時の表情だ。

「ありがとう…キョーコ…。絶対、絶対に幸せにするから…」

蓮はずんぐりした鶏の身体を抱きしめた。
指輪は着ぐるみを着ている今、嵌めることは叶わないが、幸せいっぱいの気持ちでキョーコを抱きしめて、その頬に愛おしげにチュッチュッとキスを送った。

二人の様子を見守っていた会場から、パラパラといつの間にか疎らな拍手が起こり始め、やがてその音は大きくなり、二人はスタンディングオベーションを受けていた。

蓮の本気が伝わったのか、客席のそこかしこから「おめでとうー!蓮!」「幸せになってー!!」「京子おめでとうー!!」「坊可愛い〜!!」という温かい歓声も沸き起こった。


そして一緒に「良かったなぁー!敦賀さんも京子ちゃんもっ!」と感動しながら一緒に拍手をしていた雄生は何かを思い出した。

「はっ!リーダーは?!」

慌てて、光を振り返った雄生につられて、慎一も振り返ると、そこにはショックを受けるでもなく妙に納得したような表情の光がいた。
不思議そうに二人が近づくと光は二人にだけ聞こえるようにポツリと呟いた。

「敵うはずなかったんやな…。」

「「リーダー…?」」

二人にはたくさんの拍手とピューピューという口笛が降り注いでいて、その中で、キョーコは驚いて赤くなりながらも、蓮と顔を見合わせて幸せそうに笑っていた。

「京子ちゃん、幸せそうに笑っとる。敦賀さん見ても京子ちゃん見ても、お互いを想いあってるのがヒシヒシと伝わってくるわ。俺が入り込める隙間なんて何処にもあらへん。」

「あぁ…」

「まぁそうやな。何より敦賀さんの方がベタ惚れみたいやからなぁ〜。」

「会場だって最初は二人を認めてなかったのに、いつの間にか味方にしてしもうた。」

「せやな。」

「あぁ、びっくりやで。」

「認めるしかあらへん。二人はお似合いの至上最高のカップルや。そんなカップルの婚約成立…俺らが盛大に盛り上げてやらなな。」

「リーダー…」

「あぁ、あぁそうや!リーダーの言う通り!これは俺たちの番組やで!いっちょ盛り上げてやろか?!」

三人は頷き合うと、拍手をしながら舞台中央の二人の元に近付いた。

「いやぁー、まさか二人がそんな関係やったやなんてな!」

「ビックリしたで!ホンマに!」

「婚約おめでとう!京子ちゃん!敦賀さん!!」

「光さん、雄生さん、慎一さん、ありがとうございます!お騒がせしてすみません。」

ぺこぺこと頭を下げるキョーコと蓮に、三人はいーっていーって!水臭いな〜と手を振りながら、和やかな雰囲気を作って番組を進行しようとしたのだが、振り返って確認したカンペには「舞台中央を空けるように」と書かれていた。
その指示に不思議に思いながらも従い、中央を空けるため脇へ下がったブリッジロックのメンバー達。

すると会場に派手な謎の音楽が響いたかと思えば、照明が切り替わり、まるでどこぞのディスコかというような赤黄緑青の光の線が動き回り、スモークが焚かれ、数十人の女性の腰振りダンサーズが雪崩れ込んできた。

「「「ルルルルルル〜リフォ〜」」」

突然の乱入者達にあっけに取られた会場内で、あの人の声が低く響くのだった。


(続く)

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*****

うう…予想以上に長くなってしまいました。
多分、うまくまとめられれば次がラストになる…はずっ!!

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なくした記憶 51

久しぶりになくした記憶を心から楽しんで書けましたー!!
まだ終われなかったです。

もう少々お付き合いくださいませ。

ふふ♪ではでは、どうぞ!!
※関西弁…想像で書いてるので、間違ってたらごめんなさい。間違ってる時はニュアンスで読んで頂けたら嬉しいです。


*****

なくした記憶 51


撮影は順調に進んだ。
蓮の所作一つ一つに観客からは甘い溜息が漏れ、時々黄色い声援が飛びかう。
それに笑顔で応えながら穏やかに番組は進行した。

クリスマスということもあって、会場とお茶の間への蓮の私物プレゼントがあったりと番組も大いに盛り上がっている。

キョーコは薄暗い舞台裏で次の進行に必要なネタタマゴを探した。

「あれ?ない…?」

いつも置いてる場所になくてキョロキョロ探していると、肩を叩かれた。
目の前にスッと差し出されたネタタマゴを受け取りお礼を言うとリーダーの光の元へ急いで向かった。

「さぁ、ではいよいよ、敦賀さんへの質問コーナー!会場やお茶の間からの厳選された質問がこの坊の持ってきてくれたネタタマゴの中に入ってるんやで〜!」

相変わらず客席からは蓮の名前が黄色い声援に混じって何度も呼ばれている。

「では、最初のネタタマゴ行ってみましょう〜!……って…あれ?」

番組のチェックが入っていればちゃんとその印がネタタマゴに入れられた用紙の隅に入ってるはずだが、その印が見当たらず、光はそれに困惑して助け舟を求めるように、カンペを持ってるADに視線を送った。

「なんや、リーダーどうしたん?」

「なんか変な質問やったんかいな?」

二人も横から覗き込み、印が入っていない紙に目を丸くした。
以前全く印の入ってない質問が紛れ込んでいて番組進行が危うくなった事件があったのだ。
すると、何か指示でもあったのかカンペには『そのまま読んでいいから続けて』と書かれていたので困惑したまま光はその紙を読み上げた。

「よ、よっし。じゃあ行くで。まず最初の質問や。『風の便りで聞いたのですが…』」

ーーーえ…?

キョーコは坊の中で何処かで聞いたことのあるフレーズに自分の耳を疑った。

「『敦賀さんの本名は、敦賀蓮じゃないそうですね。本当の名前が知りたいので、教えてください。』やて。」

ーーーえ…えええええぇ?!

キョーコはバレてはいけないはずの質問が飛び出したことに度肝を抜かれて坊の中で悲鳴を必死で噛み殺した。

「本名…ですか。どこから漏れたんでしょうね。確かに、敦賀蓮は芸名です。でも俺は、ある理由があってそれをまだ明かすつもりはありません。もっと役者として高みを目指し、いつか自分の敦賀蓮としてのこの足でハリウッドに立ち、成功したその暁には名前も公表し、自分の本名で活動したいと思ってます。」

「「きゃー!!」」

「痺れるわぁ〜!蓮〜!!」

「かっこいい!私絶対応援スルゥー!!」

客席からも拍手喝采が起こり、蓮は内心ヒヤリとした心を撫で下ろし、ありがとうございます。と客席に応えながらにっこりと微笑んだ。

「敦賀さん、ハリウッド目指してはるんやなぁ〜。いやぁ敦賀さんなら絶対行けると思うで!」

「楽しみやなぁ〜。俺も同じ事務所の後輩として心から応援してます!」

「もちろん俺も応援してます。やっぱり敦賀さんが言うとキマるなぁ〜。よっしゃ!次の質問いくで!!…あ…」

「ん…なんや…?あ…」

「どうしたん?…あ…」

次の内容を目にした三人の間に微妙な空気が広がり、蓮は首を傾げた。

「どうかしましたか?」

「あぁ、いや…」

相変わらず、スタッフからはゴーサインが出ているため、読まないわけにはいかない。

「じゃ、じゃあ、読むで!『風の便りで聞いたのですが…』」

ーーーえええぇ?!ウソォォォ?!?!?!

キョーコは内心大慌てだ。自分が過去に幼馴染への復讐のため同じ始まりで弱味をネタタマゴに忍ばせたことがあるのだ。
嫌な予感しかしなくてキョーコは背中に冷や汗を掻くのを感じた。
そして思わずプロデューサーを見ると眉間に皺を寄せた物凄い怒り顔でキョーコを睨み付けていた。キョーコは慌てて首を振り自分の無実を訴えた。

ーーー違います!違います!!私じゃありませんー!!きっと誰かが…はっ!そうよ!あの人!!!!暗くてよく顔もわからないままネタタマゴを受け取っちゃったけど、さっきの人に中身がすり替えられたんだわっ!!

キョーコは先ほどいつもの場所にネタタマゴがなかったことを思い出し、差し出された時のことを思い出そうとしたが、舞台袖は暗すぎて顔など全く思い出せない。そもそもちゃんと見えてさえいなかったのだ。

蓮も何となく違和感を感じながらも、質問の続きを待つ。

「『共演者など誰も気付かなかったようですが、敦賀さんは、この間の事故で一時期記憶喪失になってたそうですね。5年間の記憶を全く覚えてないままその後も仕事を続けられたようですが、どうやっていたのですか?』…って、ええ?!記憶喪失?!」

「えぇ?!ほんまに?!」

ーーーな、なんでぇぇーーー?!

キョーコはかなり重要なトップシークレットなネタを誰が漏らしたのかと慌てた。

ーーーえ?!何?!なんなの?!何処の誰よ!!何が起きてるの?!はっ!もしかして敦賀さんを貶めようとしてる人の仕業?!私がよく確認もしなかったせいで…ど、どうしようー!!

青ざめるキョーコと反対に、蓮はにこやかな顔で冷静に答えた。

「ええ。本当です。今はもう記憶も戻りましたが、5年間の記憶が全くないまま今の自分自身を演じるのは大変なことだっただろうと思います。記憶が戻るまでは過去の自分のバラエティ番組の立ち居振る舞いや、ドラマを見て研究していたと聞いていますが…」

「え?聞いてますってどういうことなん?!」

「えらく人事やな。」

「実は、お恥ずかしながらその5年間の記憶が戻るのと引き換えに、記憶を失ってた間の記憶を失ってしまったようで…。時々チラッと思い出したりはしてるんですが…」

「はぁー。そりゃまた…。」

「難儀やなぁ〜…。」

「いやでも、周りに全くそんなそぶり見せてなかったんやろ?流石やなぁ。」

「まぁ、支えがあったおかげですかね。」

ニコッと付け足された言葉に、キョーコはハッとしたが、リハーサルと違う内容にテンパってるブリッジロックはそれを拾う余裕はなかったようで、3つ目のネタタマゴを手に取っていた。

「んじゃ、最後のいくで!」

光のその言葉に、キョーコホッと胸をなでおろした。

ーーーよ、よかった!私のことをなにか言われるのかと…

「えーっと…『風の便りで聞いたのですが…』」

ーーーま、またぁぁぁ?!今度は何よぉぉぉぉ!!

キョーコは心の中で、何が何だかわからず混乱中だが、ブリッジロックの三人はそのフレーズに慣れてきたようだ。
蓮だけが3回続いた同じ入りはこの番組のお約束なのだろうと思っていた。

「『敦賀さんには目に入れても痛くないくらい愛しい愛しい恋人がいるそうですね?』って、え?!ええええぇ?!」

「は?!なんやそれ!これ生放送やで?!ええん?!ええんか?!」

「ちょ、え?!こ、これまずいんやないん?!」

ーーーな、なんだすとぉぉぉぉぉぉ?!

まさかそんなことにまで突っ込まれると思わずにキョーコは驚き焦った。

ーーー嘘でしょ?!なんで?!なんでなの?!

客席もどよどよとどよめいているが、スタッフもブリッジロックも大慌てだ。
だけど、カンペには続けるように指示があったので、光はゴクンと唾を飲み込み続きを読んだ。

「こ…『この会場内にその自慢の彼女がいるので30秒以内に見つけ出してどんな彼女なのか一言で紹介してください。P.S.もし出来なければ…っ』」

そこで光はまた驚きで真っ赤な顔のまま固まった。

「な、この会場内にいるやて?!」

「出来なければなんなんや?!なんやけったいなことでも書いてあるんか?!」

二人も光の言葉の続きが待てずに両側から覗き込んだ。
そして固まってるリーダーの代わりに、二人は口を揃えて続きを読み上げた。

「「『もし出来なければ、同棲を解消させ、半年間の接触を禁ずる。』」」

読み終えた瞬間、何処からともなくスタートの合図を知らせる鐘がなった。

ーーカーン。

蓮はその合図の音にピンときて、目の色を変えて素早く立ち上がった。

目を光らせ、客席を素早く見渡す。
その間にもーチッチッチッーと無情にも時を刻む音が続いていた。

「あ、いつの間にかカウントダウンが始まっとる!!」

「ってか同棲?!ええ?!敦賀さんが?!」

「こんな展開聞いてへんよ!!」

ブリッジロックも客席もあまりの展開にどうしていいのかわからず、困惑しながらもただ蓮の動きを見守るしかない。
蓮は必死だった。
ザッと舞台上手側の客席に視線を巡らせても、キョーコらしき人物はいない。
さらに反対側の下手側の客席にも素早く視線を巡らすが、やはりそれらしい人物は見当たらなかった。

ーーー客席にはいない!何処だ?!何処だ?!考えろ!スタッフか?!

蓮は素早く会場の隅に散っているスタッフを見回す。

ーーーイヤァァァァァ!!バレたくないぃぃぃ!!

一方キョーコは、蓮の恋人として公表される恐怖に心臓が縮まりそうになり、今すぐここから逃げ出したい衝動に駆られた。

その間にも蓮は必死で思考を働かせる。

ーーー違うっ!30秒以内ということはすぐに捕まる位置…つまり、このステージ上にいるはずだ!!だとしたら…

ーープキュゥゥゥゥゥゥ。

キョーコはこっそり抜き足差し足忍び足で逃げ出そうとしたのだが、足音が出る着ぐるみのせいで失敗に終わってしまった。
蓮はその音を聞いてハッとして振り返った。

バッチリと蓮と坊の目がかち合う。

ーーーいいいいいやぁぁぁぁぁ!!違う違う!僕は坊!僕は坊だよ!!

ブンブンと首を振って、思わず逃げるように後ずさってしまった。
それを見た蓮が驚いた顔をした後、ふっと心底安堵したような笑顔を浮かべる。

ーーーし、しまったぁぁぁ!私の馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

その坊の逃げ腰が、蓮の疑惑を決定付けてしまったことに気付いて、キョーコは坊の中で滂沱の涙を流した。

蓮が長いコンパスを利用してキラキラスマイルで近付いてくる。

ーーーひ、ひいいぃぃぃぃ!!ご勘弁をぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

キョーコは恐れ戦きながら慌てて逃げ出そうとした。

「キミ!待ってくれ!」

ゲストである蓮の呼び掛けをマスコットキャラクターが無視できるわけもなくピタッと立ち止まりギギギっと振り返る。

するとガシッと頭をつかまれ、そのままスポンと問答無用で頭を外され、素顔が晒された。

「見つけた。キョーコ。まさか君が彼だったなんてね…。」

鶏の体から顔を出した自分をモニターに見つけて、キョーコは漸く逃げ場がなくなってしまったことに気付いたのだった。


(続く)

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*****


ここで切っちゃったのでもう少し続きます〜☆

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なくした記憶 50

なかなか難産!!
ローリィが出しゃばって蓮さまの元からキョーコさんを誘拐しようとしたりしそうになり、慌てて軌道修正したりで時間かかりました。
誘拐しないで〜!!!!って感じなので、なんとか誘拐しない方向で書き上げることができました。
誘拐しちゃったら何もかも滅茶苦茶になるところでしたわ(笑)

とりあえず次か、その次あたり最終話になると良いなーという風月の希望的観測。
頑張ります!!!!

あ、冒頭部分は若干限定?って感じの話になってますので、苦手な方はご注意ください。
そしてシーズン終わったくせにクリスマスですみません。


では、お楽しみくださいませ。


*****


なくした記憶 50


熱く溶けるような吐息を交わしているところで、枕元にあった蓮の携帯が音を立てた。

ーーヴーヴーヴー

濃密な空気に響いた振動音。
キョーコはその音に驚いてビクッと大きく肩を揺らし、蓮はその携帯を手に取り、振動を消した。

「久遠…?」

電話じゃないのかと問いかける目に安心させるよう微笑んで答える。

「ん…アラーム。25日になったんだ。」

言いながら蓮の唇がキョーコの肌にチュッチュと甘い音を立てる。
敏感になった身体はその刺激にも身動ぎをした。

「ふぁ…ん…」

そして蓮はキョーコを抱き締めると、耳元に魅惑ボイスで囁いた。

「18歳、お誕生日おめでとう。キョーコ…」

キョーコはこんな体勢で言われたその言葉の響きに羞恥が駆け巡って全身を真っ赤に染めた。

「くっ…ぁ」

キョーコの中に身を沈めていた蓮もそのキョーコの反応に一気に締め上げられ、汗が噴き出る。

「キョーコ…はぁ…」

「ん…ふぁ…久遠…」

キョーコは蓮の首に縋り付きキスを求めた。
蓮はそれに応えながら、キョーコの目を見て言う。

「愛してる。誰よりも君を…。君の誕生日に、こうして君の一番近くで一番におめでとうと言うことができて嬉しいよ。…くっ」

近くも何も、これ以上ないくらい近く…いや、一つになった状態の蓮に言われて、恥ずかしさで益々キョーコの中がきつく締まった。

「も…久遠のバカ…ッ」

「ぅあ、キョーコ…もう…くぅ」

二人で同時に限界を迎え、パタリと力尽きたように重なり合った。



運命の朝はいつも通りの顔をしてやってきた。
キョーコの作る朝食に舌鼓を打ち、弁当を受け取り、行ってきますのキスを愛しい恋人のキョーコへ送って本日一番の現場へ出かける。

今夜はキョーコの為にホテルのディナーも予約しているので、19時から21時の生放送を終えたあとは、わざわざテレビ局の駐車場まで来てくれるというキョーコと落ち合い予約しているレストランへ向かう予定だ。
浮き足立つ気分で次々と仕事をこなし、蓮はその日最後の仕事が待ち構えているTBMへ意気揚々と向かった。

*

「え?!今日のゲスト…く…つ、敦賀さん…なんですか?!」

「あぁ、だから、例の如く絶対に問題を起こすな!粗相もないようになっ!」

キョーコの前で眉間にシワを寄せふんぞり返って言うのは、いかにも俺は偉いと言うような態度のプロデューサーだ。

キョーコは坊の頭を抱きしめながら直前まで明かされなかったゲストの正体を知って目を見開いた。

ーーーそんな…きまぐれに出るなんて一言も…。あ、そっか!シークレットゲストだったからだわっ!

この業界、番組が公開するまで親兄弟にすら話せない誓約書を書かされることもザラにある。
シークレットゲストは番組開始まで知らされないのだが、キョーコは坊としてのエスコートがある為、直前に知らされたのだろう。

ーーーそういえば私…久遠に私が坊の正体って言ってないかも…?

そう思った途端、何故か社長のニヤリ笑が脳裏をよぎり、嫌な予感を感じた。

ーーーまさか…ここで仕掛けてきたりとか…いえ。まさかね。だって生放送だし…。

慌てて己の思考を否定して首を振る。

「おい!聞いてるのか?!」

プロデューサーが何か言ってるが右耳から左耳へ抜けていく。

「坊!エスコート!スタンバイお願いします!!」

「っ!は、はい!!」

呼びに来たスタッフのスタンバイの一言にピッとスイッチを切り替えて、キョーコは坊の頭を被った。

実はゲストの楽屋から舞台裏までのエスコートの間カメラが回るのだ。
面白い時は時々オンエアで流れることもある。
私用の話は一切出来ない。
キョーコにとってはここからがもう本番。
気を引き締めていかなくてはいけない。

ーーーそーよ!何か起こるって決まったわけじゃないんだし、考えるだけ無駄無駄!とにかくこれは仕事なんだから、坊としてやりきるだけ!

坊の足音を響かせて、キョーコは蓮の楽屋の前に立った。

ーーーここにいるのは敦賀蓮。僕(坊)の親友!

スタッフが坊の変わりに部屋をノックし、その扉が開かれたーー。


「あれ…?君は…」

『やぁ、敦賀君!久しぶり!』

手に持ったホワイトボードにサラサラと字を書いて会話をする。
すると、蓮はすぐに喋れない設定だと察してくれ、くすりと柔らかく笑った。

「あぁ、なるほど…。久しぶりだね。まさか君がこの番組のマスコットキャラクターだったとは…」

『あれ?もしかしてこの番組見たことなかった?』

「いや。あるよ。…っていっても予習がてら先ほどね。だから君を見つけて驚いたところだったんだ。」

『なるほどね。まぁ、何はともあれ、歓迎するよ!今日もキマってるね!』

「くす。ありがとう。君もキマってるよ。」

『当然だろう。敦賀君がゲストだと知ってビシッとキメてきたからな。』

「二人は知り合いなの?」

スタッフに尋ねられて、二人は顔を見合わせた。

『ちょっとね。』

「まぁ。彼には前に助けられたことがありまして…。」

「え?敦賀君が…?」

『その辺の面白エピソード使ってもいいかい?』

坊がニヤリと意地悪く問いかけた。
すると、蓮はピタッと立ち止まって、にこりと綺麗な笑顔を浮かべる。

「…いや、ご遠慮するよ。もし、そんなことしたら…わかってるよね?」

蓮の笑顔が最上級に輝いて、坊の中のキョーコは久しぶりの毒吐きスマイルに、ヒッと後ずさった。

『も、モチロン!!秘密は守るよ!俺たち親友だろ?!』

「親友…」

蓮は坊の言葉に、目を見開いた後、フッと柔らかく笑った。
先ほどの嘘毒吐きスマイルと一転して優しい笑顔にキョーコの胸がキュンと痺れた。

「敦賀さん、こちらへ。スタンバイお願いしまーす!」

「あ…はい。じゃ、行ってくるよ。」

会場に着いた途端呼ばれて、蓮はそっちへ向かった。

背中を向けてスタッフの方へ歩きかけた蓮が、小さく「あっ」と声を上げて、坊に振り返って戻ってきたかと思えば、小さな声で坊にだけ聞こえるように言った。

「そうだ。ありがとう。」

ーーーえ?

突然のお礼の意味がわからず、坊が首を傾げると、蓮ははにかみながら照れ臭そうに、それでいて幸せそうに笑った。

「ずっと君に会ったら言いたかったんだ。君、言ってくれただろ?」

ーーーん?何?何のこと?

「『おとせ!』って…」

ーーー?!?!?!

「今、その彼女と付き合ってる。」

ーーーあ、あの時のっ!!

キョーコは坊の中で蓮におとせと脅したあの日のやり取りを思い出してブワッと真っ赤になった。

ーーー自分のことだとは思わなかったのよぉぉぉ!!

「正直、最初言われた時は、鶏のくせにわかったようなことをと思ったけど…」

「ひどいな君も…」

思わずムッとしてうっかり声に出して慌てるが、もうカメラは近くになかった。
蓮はハハッと笑って続ける。

「だけど、彼女と会うたび見惚れてる自分に気付いて、君の言葉が深く刺さった。そして俺は自分の恋心を自覚して、役をやりきり、今は彼女と付き合ってる。一ヶ月前からね。」

「そ、そうか。おめでとう。良かったじゃないか。」

「だから、お礼が言いたかった。本当にありがとう。」

「い、いや、僕は何も…敦賀君の実力サ。」

「いいや、もし君がいなければ俺はもしかしたらあの役を下ろされてたかもしれない。だから本当に感謝してる。」

「おーい!敦賀くーん!」

「じゃあ、また。」

「う、うん。」

「坊もスタンバイしてー。」

スタッフに呼ばれ、蓮の後ろ姿を見送っていたキョーコも慌ててそっちへ向かう。
ドキドキと胸は激しく脈打っていた。

ーーー敦賀さんに坊として接するの…いつもと違う顔が見れてなんだか新鮮…。

蓮の心底嬉しそうなあの顔。
キョーコとの交際を心の底から喜んでることがわかって、くすぐったかった。

坊には恋人としての自分としてじゃない、他の色んな顔も見せてくれる。
今まではタイミングがなくて言えなかったが、もしかしたら、言わない方が良いかもしれない。
自分が坊だとバレたら嫌われちゃうかも。
そんな風に思ってキョーコはステージに板付でスタンバイした。

ーーーダメダメ!今は番組に集中するのよ!キョーコ!!私は…いいえ。僕は坊!!鶏よ!

監督が間もなくスタートの合図を出す。

軽やかなオープニングソングが流れ、カメラはブリッジロックをとらえた。

「やっぱ気まぐれロック!クリスマス特番!!今日のゲストは凄いで〜!」

「俺らの事務所の大先輩!俺らもさっき知ってビックリしたで!」

「芸能界抱かれたい男ランキング第一位!!」

会場から興奮したようなどよめきが起こった。

「「「敦・賀・蓮・さん・だぁぁぁぁ!!」」」

「「「「キャァァァ!!!!レ〜ン〜!!!!」」」」

黄色い歓声と共にスモークが噴き上がり長身のシルエットが浮かんだ。



(続く)

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