拍手お礼〈6〉*

拍手お礼です。


【透明メガネ】
へなへなっち様
→この話にコメント付くとは思ってなかったので、びっくり&嬉しかったです(笑)
ありがとうございました!


*****


さてさて、前回続きは拍手総数777でアップしようかな〜と言っていたお話の続きです。
気づけばいつの間にか800も越えており900目前になってました。
皆さんありがとうございます!

例えば隠れ家のようなカフェとか、例えばひっそりと咲く一輪の花とか、例えば秘密基地とか…人知れずな何かって発見した時にくすぐられるものがありますよね?!

自分だけが知ってるんじゃないかっていうアレです。(どれだよ!!笑)

風月からのサプライズ的な?(笑)

気まぐれにたまーにお話が潜んでます。

こんなところにお話はっけーん!!っていうちょっとした楽しみになれば嬉しいかな?って思ってます。

でもまぁ、ここまでお話ししておいてなんですが…超超超短編ですので、しょーもない話です。期待はしないでください(笑)
それでも読んでくれた人がちょーーとでもクスッとしちゃうような、そんなお話が書けたらなーと目指してます☆

多分、今回の三話目までは読んだことあるお話かもしれませんが、お楽しみいただけたら幸いです☆



*****


敦賀さんの不思議体験*3*



ーーーここは、最上さんの部屋か…。

自力で動かせない自分の身体と姿見に映った姿から冷静に推測すると、どんな経緯や原因があるのかは不明だが、彼女のお手製の己の超リアル人形になってしまったようだ。

寛ぐ最上さんの姿はいつもよりリラックスしていて、なんだか可愛…いや、ここが彼女のテリトリーであることも分かった。

キョーコが自分を動かすことで見える部屋の様子を目に焼き付ける。
統一感のある家具や、整理整頓された清潔な部屋。
彼女の部屋らしいと笑みさえ漏れる。

そしてふと視界に映ったものに蓮は目を見開いた。

ーーーな?!あ、あれは?!


(続く)


*****


続きはここの拍手総数が1000越えたらアップする予定です〜♪(*^^*)
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なくした記憶 10

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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

なくした記憶 9

なくした記憶 9


キョーコが焦がしてしまった料理も、蓮はニコニコと美味しそうに完食してくれた。
それを見たキョーコは自分の幼なじみを思い浮かべてしまい、ふと呟いていた。

「コーンが、幼なじみだったら良かったのに…」

キョーコの突然の呟きに蓮は小首を傾げた。

「どうしたの?」

「いえ、ただそう思っただけ。気にしないで下さい。」

キョーコが慌てて答えたのを見て、蓮は思い当たったことを口に出す。

「幼なじみって、ショーちゃん?何かあったの?」

向かい合って座っていたはずの蓮は、何時の間にかキョーコの隣にきて顔を覗き込んでいた。

「あ、あの…」

「話して?」

キョーコは蓮が隣に来てドギマギと意識している自分に気付いたが、心底心配してくれてるのがわかる蓮の目を見て、話すことを決意した。

「その前に、あの…怒らないと約束して頂けますか?」

キョーコは蓮が大魔王化してしまうことを恐れて、その言葉を口に出した。

「?うん。わかった。努力するよ。」

蓮は何に怒るのかわからないままではあったが、しっかりと頷いた。

そしてキョーコは、全てを話した。

信じていたショウタロウに、ゴミ屑同然のように捨てられてしまったこと、自分をただの便利なお金を稼ぐ道具としてしか見られてなかったこと、ただの家政婦のように思われてたこと、地味で色気のない女だと陰で罵られていたこと、復讐を誓って芸能界に入ったこと等、キョーコは一言では語り尽くせない内容の話をしながら思い出し、悔しくて涙が出そうになるのを堪えながら努めて淡々と話して聞かせた。

一通り話し終えた所で、チラリと横を見ると、想像通り大魔王が降臨した蓮が座っていた。

ーーひぃーー!やっぱりー!

ピリピリと来る怒りの波動に、キョーコはビクビクと震えていると、蓮が口を開いた。

「許せないな…」

地の底を這うような低い声に、自分に対して蓮が怒ってると捉えたキョーコは、震え上がると、蓮の前に慌てて土下座をしようとした。

「も、申し訳…」

「ストップ!!…どうしてキョーコちゃんが謝るの?」

「え?…だって復讐なんてふざけた動機で芸能界に足を踏み込んでしまって…」

「うん。まぁ、それは確かにどうかと思うけど、…俺はそれ以上に、そのショウタロウって奴が許せないよ。」

「え?」

「キョーコちゃんに、そんな仕打ちをするなんて…」

蓮は言いながら、段々と目で人が殺せそうな顔になっていく。

ーーひぃー!BJーー!!

キョーコは内心震えながらも、蓮を宥める。

「お、落ち着いて!コーン!!」

「俺はそいつを一発ぶん殴らないと気が済まないよ!」

キョーコは蓮の口からぶん殴るという物騒な発言を聞いて血の気が引いた。

「ま、待って下さい!!貴方は敦賀蓮なんです!!暴力なんて、敦賀蓮のカラーじゃありません!!」

「そんなこと関係ない!!一発ぶん殴る!!」

「ダメ!!コーンやめて!」

「なんで庇うんだ?!キョーコちゃんはそいつに傷付けられたんだろ?!」

「違う!あいつなんて、どうでもいいんです!そんなことしたら、敦賀さんの名前に傷が!!貴方の名前に傷が付くのが嫌なんです!!」

キョーコは必死に訴えた。
これを話すことで自分が怒られることは想定していたが、まさかショウタロウに対してここまで怒りを露わにするとは想定外だ。

「私は、あんな奴の為に敦賀さんの名前が傷付くのは見たくありません!」

キョーコが涙ながらに訴えてくるのを聞いて、蓮は少しだけ頭が冷えて来た。

「ごめん。怒らないって約束したのに…」

蓮は申し訳なさそうに、キョーコに頭を下げた。

「いえ、そんな…。びっくりしましたけど、でも…、嬉しかったです。」

キョーコは頬を少しだけ染めて、てへへとはにかんだ。

「嬉しい?…なんで?」

「あの、上手く言えないんですけど、なんて言うか、自分の為に怒ってくれる人って今までほとんどいなかったから…。なんか、くすぐったいなって…」

もじもじと下を向いたまま言うキョーコを見て、蓮は大きな手をキョーコの頭に乗せて、よしよしと優しく撫でた。

「キョーコちゃんには、俺がいるからね?」

蓮の手の温もりと、言葉の優しさにキョーコは堪らずに涙を流していた。

何故急に涙が出たのかはわからないが、その涙は過去の全てを洗い流すように次々とこぼれて来たのだ。

蓮はそんなキョーコを黙って引き寄せると、横抱きにして膝の上に乗せて、キョーコの顔を自分の胸に納め、優しく包み込むように抱きしめ、背中をあやすようにポンポンと叩いた。

キョーコはそんな蓮の流れるように自然な行動に身を任せ、子供の頃に人前で泣けなかった分まで、思いっきり泣いた。

ーーキョーコちゃんには、俺がいるからね?

蓮の言葉が、キョーコの壊れた心を優しく包み込んでくれたような、そんな気がした。

ひとしきり泣いた後、キョーコは、蓮の暖かさと香りに酔いしれて、そのまま眠りに落ちてしまった。

蓮は泣き止んだキョーコが、大人しく寝息を立て始めたのを見ると、優しく微笑んで起こさないようにゆっくりとゲストルームに運んだ。

ベッドに寝かせて寝顔を覗き込んだ蓮は、涙の後をそっと指で拭うと、その額にキスを一つ落とした。

「おやすみ。キョーコちゃん、いい夢を。」

そう言って、頭を一なでした蓮は、満足そうに微笑むと、リビングへと足を運んだ。


(続く)

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Amebaで2011/11/19に公開した話を若干訂正したものです。

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ジャンル : 小説・文学

透明メガネ

透明メガネ


かけるだけで透明になれるといういかにも怪しげなメガネを通りすがりの男から押し付けられた蓮。

試しにかけて見て、鏡を覗き込んだ蓮は心臓が止まりそうになってしまった。
そこには写っているはずの自分の姿が見えないからである。

もしこれが本当であれば変装なんてしなくても街中を歩けると思った蓮は、試しに楽屋で一人になった隙を見計らって、メガネをかけた。
戻ってきた社が目の前のソファに腰掛けている蓮を呼び部屋中を探し回る。

「あれ?蓮?どこ行ったんだ??」

そんな社の背後に回り、肩をちょんちょんと叩いてみれば、振り返った社は首を傾げる。

「なんだ?おっかしいな〜。なんか気配は感じる気がするのに…。」

不思議そうにキョロキョロと室内をウロウロする社を見て、蓮は苦笑しながらメガネを外すと、社に話しかけた。
驚いた社に問い詰められ、事情を説明する。
信じてもらえないなら実践してもらうしかないと社にメガネをかけさせる。

効果を実感し、メガネの凄さを二人で大絶賛していたところで、社は蓮が思いもしてなかったことを言った。

「お前…これ使って姿が見えなくなるからってキョーコちゃんによからぬことするなよ。」

「なんですか良からぬことって…。」

「キョーコちゃんの部屋に忍び込んで着替えを覗いたり、添い寝したりだな…」

「な?!し、しませんよ!そんなこと!」

そう答えたものの、蓮の中で社の言葉がずっと脳内でリピートを繰り返す。
そんなこと思いつきもしてなかった。
しかし、考えてみればそんなことも可能なのだ。

いや…だがしかし…!

蓮は己の欲望と葛藤していた。

蓮が悶々としつつ、台本を覚えるために人気の少ない場所に座っていると、プキュプキュッと間抜けな音が聞こえて来た。
彼だ!と思って顔を上げた蓮は、彼を驚かそうと考える。
すかさずメガネをかけ、通りかかった彼の後を追い、トントンと叩くが着ぐるみのため気付かないようだ。たどり着いた楽屋の中に一緒に滑り込んだ。

さてどうやって気付かせようかと思ったところで彼が楽屋に鍵をかけ着ぐるみの頭を取った。
中から現れた見覚えのある髪色に蓮は驚き、言葉もなく立ち尽くした。

「ふぁー!疲れた!」

いそいそと着ぐるみを脱ぎ始めた鶏の坊。そこから現れた女性らしい身体のラインだとはっきりわかる姿に驚きを隠せない。
汗で張り付いたTシャツからブラが透けて見えている。
立ち尽くした蓮の目の前で汗だくのTシャツも脱ぎ捨てた女の子があられもない下着姿で振り返って顔を見せた。

蓮はそんな少女の姿を見て息をすることすら忘れてしまった。
そこにいたのは紛れもなく蓮が想いを寄せるキョーコだったのだ。

「タオルタオル。あと水分補給もしなきゃ!」

キョーコが下着姿でペットボトルの水を飲み始めた時には、思わず周りから誰も見てないかキョロキョロと確認してしまった。
少しだけ空いたカーテンの隙間に気付いて慌てて締める。

「ぷはっ!今日も良い汗かいたわ!」

カーテンに背を向けていたキョーコは飲んだペットボトルの蓋を締めながら満足げに呟いた。
白くて滑らかそうな背中が眩しい。

「あとは、こっちも…よっこらせっ」

半分まで脱いでいた着ぐるみから完全に身体を出すと、グッショリ濡れたとわかるパンツが現れた。
足に張り付く様が艶かしい。
それを全て脱ぎ去って、桃色のブラとお揃いのショーツだけになったキョーコが更に下着を外そうと手をかけた所で流石に蓮も動揺してしまい、後ずさった所で、窓にぶつかってしまった。

ガツンと言う音に反応したキョーコが警戒心を持って周りを見回す。

「誰か…いるの?」

キョーコの問いかけに口元を手で塞いで蓮は身を潜める。

首を傾げたキョーコは音がした窓にそろそろと近づく。
身を潜めた蓮の目と鼻の先ギリギリの場所までキョーコが近付いた。
蓮は窓の下にしゃがんでいたので、カーテンの隙間から外を覗き込むキョーコの身体にはギリギリ当たることはなかったが、嗅がなくても匂いがわかるほど近くにキョーコの胸が接近していた。

ドッドッドッと激しくなる心臓をなんとか堪えて、息をひそめる。

蓮の喉がゴクリと鳴ったところで、外に異常を見つけられなかったキョーコが窓から離れていった。

蓮は詰めていた息をホッと吐き出す。
そんな蓮の眼の前で、キョーコが着替えのため最後の砦とも言える下着に手を掛けた。

そしてーーーー


「ダメだ!それ以上はっ!!最上さんっ!!!!」

蓮はガバリと手を伸ばして起き上がった。
ドッドッドッと相変わらず心臓が異常な程激しく動いている。

「…え?…あ、あれ…?」

蓮の眼前には、真っ暗な闇が支配していた。
カチコチと静かに時を刻む音がシンとした室内に響いている。

手に当たるのはふかふかの布団。

枕元の時計の針は午前3時過ぎを指していて、蓮は己の寝室にいることが確認できた。

ハァァァ〜と深いため息を一つ零し、ガックリと肩を落とす。

そして再び寝ようとスゴスゴとベッドに潜り込んだのだが、眠れるはずなどなくゴロゴロと寝返りばかりを打つ。

そんな蓮のベッドのサイドテーブルには見慣れないメガネがキラリと鎮座していたのだった。

それは、ただの夢か、予知夢か…それとも…実際に起こった出来事…だったりするのかもしれない。


おしまい。

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*****

すみません。続きません(爆)

去年の9月頃のメモに残ってた話を発掘しました。
ほぼ出来上がってて、ここからどうなる?!ってところでお話が終わってたので、当時の自分がどの方向に着地点を持って行きたかった話なのか全くわからなかったので、今までやったことなかった夢オチに無理やりチャレンジ(笑)

発掘する必要もなかったのでは…とも思いつつ、この間、世にも奇妙な物語をみたので、タイムリーに感じてそれっぽい?と思いつつ投稿。
タモさんうまくまとめてくれかないかな?(汗)

アホな話ですみません(笑)

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

なくした記憶 8

なくした記憶 8


「すぐにご飯の支度をしますから、敦賀さんはその間に、シャワーでも浴びて来て下さい。…あ、タオルの位置などわかりますか?」

蓮の家に帰り着いたキョーコは、リビングに荷物を下ろすと、早速食事を作ろうと、キビキビと動き出した。

「うん…。あのさ、キョーコちゃん。」

蓮が、居心地悪そうにキョーコに話しかける。

「はい?どうかしましたか?」

キョーコが動きを止めて立ち止まると、蓮を見つめた。

「キョーコちゃんには、コーンって呼んで欲しいな。」

「え?」

「敬語もいらないよ。なんか、よそよそしいし…もっと気軽に話しかけてよ。」

「そんな恐れ多い!!」

「なんで?」

「だって、敦賀さんは大先輩で…私の目標で…。そんな軽々しくタメ口で話せたりしません!!」

「でも!俺はまだ敦賀蓮の役作り出来てないし…。嫌なんだ…キョーコちゃんからよそよそしい態度を取られるのは…。敦賀さんって呼ぶのは、俺が敦賀蓮を演じれてる時だけにしてよ。」

仔犬が何かを訴えているようなクゥーンと今にも鳴きそうな目で見つめられたキョーコは、うっ!と声が出そうになる。
キョーコは蓮のこの顔に弱いのだ。逆らうことが躊躇われる。

「敦賀さん…」

「コーンだよ?キョーコちゃん。」

「…コーン。」

「うん!よく出来ました!」

コーンと呼ぶことでようやく笑顔を見せた蓮をみて、キョーコも仕方ないですね。と言いながら笑い、従うことにした。

「わかりました!ここにいる間は、コーンとして接します!」

「…敬語も。」

「これは…癖のようなものなので…。徐々にでもいいですか?」

必然的に上目遣いになりおずおずと言うキョーコを見て、一瞬フリーズしてしまう蓮。

「う、うん。わかったよ!!じゃあ、改めてよろしくね。キョーコちゃん!!」

「はい!!こちらこそよろしく!コーン」

一瞬怯んだものの、なんとか持ち直して、キョーコに握手求めた蓮。
キョーコもその握手に笑顔で答えた。

ニコニコと笑うキョーコを見て、不意に握手したままのキョーコを引き寄せた蓮は、自然な動作でキョーコの頬にキスを贈った。

ちゅ。という密やかなリップ音を残して…。

「な、なななななな!!!」

キョーコは一瞬にして全身を真っ赤に染めて、後ずさる。しかし、握手した手は離れてないので、至近距離で蓮と見つめ合うことになってしまった。

ニコニコと嬉しそうな蓮を見て、キョーコはバクバクする心臓を空いた手で押さえる。

「な…」

「な…?」

「なんてことするんですかぁぁぁーーーーーーーー!!!!」

キョーコの大絶叫が部屋にこだまする。
それと同時に緩んだ握手を振りほどくと、キョーコはソファの陰に一瞬にして隠れてしまった。

驚いた蓮は、そんなキョーコの反応に目をパチクリさせた。

「え?何が?」

「な、なんでキ、キス!!」

「キス?あぁ、挨拶だよ?」

最初、本当にわからないという顔をしていた蓮だが、頬にキスしたことで真っ赤になってしまったことを知ると、吹き出したいのを堪えて、にこやかに答えた。

「もう!!コーンのばかぁ!!さっさとお風呂に入ってきてーー!!」

キョーコは、恥ずかしくて堪らず、バシバシと部屋にあったクッションを蓮に投げ付ける。

「わっ!!わわっ!!ごめん!ごめんね、キョーコちゃん!!」

蓮は苦笑しながら、慌ててキョーコに駆け寄ると、その頭をポンポンと撫でた。

キョーコがクッションを抱え込んで、恥ずかしさを隠す為、顔をクッションに埋めて大人しくなったのを見て、蓮はバスルームへと向かう為に立ち上がった。

リビングから出る時に振り返り、クッションに顔を埋めたままのキョーコをもう一度見ると、耳も赤くなってるのが見えた。
蓮は、この世の女性が全て蕩けてしまうのではないかと言う程、破壊力のある笑みを浮かべてバスルームへと足を運んだのだった。


蓮の心臓に悪い行動のせいで、いつまでもバクバクとうるさい心臓を気にしないようにキョーコは深呼吸を繰り返していた。

しかし、頬に残る唇の柔らかさが数日前の事件の日のキスを思い起こさせ一人悶絶する。

キョーコは真っ赤になってしまった頬を抑えて、悪態をついた!

「〜〜!!も、もー!!コーンったら!!あんなことするコーンには、敬語なんて使う義理なんてないわよ!!もう知らない!!」

そう言って気を取り直すと、立ち上がって、キョーコは食事の支度の為にキッチンに向かった。

病院でもほとんど食事を取っていなかったらしい蓮の為に、消化の良い食事を手早く調理すると、綺麗に盛り付ける。

付け合わせは完璧!後はメインディッシュという完成に近付いてきたところで、何となく、事故に遭った直後の蓮の様子から今まで起きたことを思い出す。

最初、冷たく突き放されていたが、自分があの夏の日のキョーコだとわかると態度が一変した。
これに驚いたのはキョーコもだが、それ以上にローリィの驚きは半端なものではなかった。

『あの頃のあいつが、こんな顔出来るなんて…君は、一体何者だ?!』

などと訳のわからないことを言われた気がする。

最初の蓮の印象は、誰も踏み込ませないと警戒心を剥き出しにしている感じがした。
しかし、キョーコだと知ってからの蓮は、あの夏の日のコーンの笑顔と変わらない笑顔をキョーコにだけは向けてくれていた。

「私には、心を開いてくれてるってこと?」

キョーコはそれが少しくすぐったいと感じながらも、胸の奥がぽぅっと温かくなる感じがした。

「ん?」

キョーコの思考がトリップしているうちに、プスプスと何やら焦げ臭い匂いがキョーコの鼻に届いた。

「…え?」

匂いのする方を見ると、メインディッシュにと思っていたお魚がしっかりと焦げ付いていた。

「……!いぃいやぁぁぁあーーー!!」

キョーコの大絶叫が再び部屋に木霊したのはいうまでもない。


(続く)
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*****

Amebaで2011/11/17に公開した話を若干訂正したものです。

なくした記憶 7

ここまで話を持ってくるのに、苦労しました!
なかなか思うように進んでくれなくて、ハラハラしてます(笑)
では、なくした記憶7お楽しみ下さい。

*****


なくした記憶 7


「あ…れ…?なんで??」

リンゴをかじった蓮はただ某然と涙を流していた。

一筋だけ流れた涙は、静かに蓮の頬を伝った。
そんな姿も絵になる人だと、キョーコは思った。それと同時に切なくもなった。

やはり、蓮は不安だったのだ。
敦賀蓮らしからぬ言葉の数々は、もしかしたら、その不安から頭が混乱してきていたものなのかもしれない。

そう考えたキョーコは、リンゴを黙々と食べる蓮を見て、心が締め付けられるのを感じ、そんな蓮の心を少しでも軽くしたくて、蓮がリンゴを食べ終わったのを見計らい声をかけた。

「敦賀さん、手を出して下さい!」

蓮は、無意識に言われた通り素直に手を出した。
キョーコは蓮の手のひらに鞄から取り出した宝物のコーンを置いた。

蓮はそのコーンの石を見て、驚きで目を見開いた。

「っ!!これ……君の…?」

「はい。昔、ある人にもらったんです。」

キョーコははにかみながら笑った。

蓮は、その返事を聞き、石を信じられないものを見る目で凝視した。なんでこれがここに?!これは、昔、自分が思い出の女の子にあげたものだ。あの女の子からこの子の手に渡ったのか?!それとも…。

蓮はギュッと石を握りしめると、キョーコを見た。
鼓動が早鐘を打っているのを感じつつ、どうにか平静を保ってキョーコに問いかけた。
喉はカラカラだ。

「君…さ、もしかして、昔京都に住んでた?」

「…え?」

キョーコは蓮の問いかけに、奇妙な既視感を覚えた。

初めて蓮がこの石を拾った時にも、全く同じことを蓮から聞かれていたからだ。
そういえば、あの時ははぐらかされて、どうして京都に住んでたことを知ってたのか聞くことが出来なかった。

「…違った?」

蓮は即答しないキョーコに業を煮やして問い掛けた。

「いえ…違いません…けど?」

キョーコはデジャヴ?!と思いながらもそれに答えた。
キョーコが、注意深く蓮を見ていると、蓮はその言葉に驚きで息を飲み、目を見開いた。

「君に、コレをあげたのはーーー」

蓮が何か言いかけたその時、丁度タイミング良く病室のノックが響いた。

ーーコンコン

「蓮?入るぞ。」

そういいながら、社長のローリィと蓮のマネージャーの社が入室してきた。

「よう!蓮、調子はどうだ?」

「あ!キョーコちゃん!!良かった!また来てくれたんだね!もう、来てくれないんじゃないかと心配してたんだよー。」

ローリィと社が入って来たことで、気を削がれたキョーコが振り返って、社達を見やり挨拶を返していると、社の呼びかけを聞いた蓮が目の前の少女を、驚愕の表情で見つめながら、呆然と呟いた。

「…キョーコ…ちゃん?」

その言葉に驚いたキョーコが慌てて蓮に向き直った。

「…え??」

「キョーコちゃん…なの?!」

蓮が、キョーコに凄い勢いで詰め寄った。

「ど、どうしたんですか?敦賀さん?」

「「蓮??」」

社と、ローリィも驚きを隠せない。

「あの時の…キョーコちゃんなの?!」

「…あの時?」

キョーコは、心底訳がわからないという顔をした。

「この石、京都の河原でもらったんじゃないの?」

「え?ど、どうして今の敦賀さんがそんなことまで知ってるんですか?」

「…わからない?…俺のことなんて、忘れちゃった?」

蓮は寂し気に真剣な目でキョーコを見つめた。

キョーコはそんな蓮をじっと見つめ返した。

何故か、想い出の中のお別れの日の淋しそうなコーン少年と面影が重なった気がして、無意識にその名前を呼んでいた。

「…コーン?」

その言葉を聞いた三人は、面白いくらい全く異なる表情になった。

ローリィは驚愕の表情を浮かべてその場で固まり、社は疑問符が頭の中を支配し、蓮は心の底から嬉しそうに微笑んだ。

「っ!!やっぱり!キョーコちゃんなんだね!!…覚えてくれてたんだ!!」

蓮はそれはそれは嬉しそうに破顔した。

対するキョーコは混乱の渦の中に巻き込まれていた。

「…え?!…え?うそ…そんなはずは…だって、コーンは妖精で、…髪だって…目だって…えぇえ??」

蓮は、キョーコの髪に手を伸ばすと、優しく撫でて懐かしむように微笑んだ。

「大きくなったね。キョーコちゃんも、髪の毛染めちゃったんだね?全然わからなかった。髪も短くなって…この長さじゃ、ツインテールには出来ないね?」

キョーコはその言葉を聞いて目を見開いた。

あの頃のキョーコはツインテールがお気に入りの髪型だったのだ。
そして、コーンと会う時も必ずツインテールで会っていた。

それは、蓮にも一度も話したことがない、コーンとキョーコだけしか知ることが出来ないはずのことだった。

「本当に…?本当に、コーンなの?」

「うん!嬉しいな。キョーコちゃん、君も俺のこと覚えてくれてたんだね。この石もずっと大事にしてくれてたんだね。ありがとう。」

「だって…そんなこと…敦賀さんは一言も…それに、コーンは妖精の…はずで…」

キョーコは混乱していた。
蓮にもコーンの話はしていたのだ。なのに蓮は何も言わず、話をただ聞いていただけなのだ…。

しかし、目の前の蓮はコーンだという…。

妖精という単語がキョーコから出たことで、蓮は目を見開いた。

「あ…え?!キョーコちゃんもしかして、ずっと俺が妖精だって信じてたの?……それは…あの、騙すつもりはなかったんだ。あの時は…本当は妖精じゃなくて、人間だよって教えてあげなくてごめんね?」

蓮の言葉は申し訳ない気持ちがいっぱいの声になっていた。

ーーーコーンは、妖精じゃなくて…人間??

キョーコは、軽井沢で蓮をコーンと見間違えたことを思い出した。

ーーーあれは…見間違えたと思ってたけど、見間違えじゃなかった??じゃあこの人は本物のコーン?

「ずっと、会いたかったよ…キョーコちゃん!!」

蓮の瞳に嘘は見えなかった。
本当のことなんだと確信すると、みるみる内にキョーコの瞳に涙が溜まっていった。

「コーン…。コーン!!私も!私もコーンに会いたかった!!ずっとずっと会いたかった!!」

キョーコは感激の涙を流して、蓮の胸に飛び込んだ。
蓮もそんなキョーコを微笑んで抱き止め、愛おしそうにその髪を撫でていた。

ついていけないのは社とローリィである。
業を煮やしたローリィが口を開いた。

「おい!一体どういうことだ?!いい加減、説明しやがれ!」

「きょ、キョーコちゃん?!どうしたの?!」

蓮に抱きついたキョーコに驚いた社も声をかけたが、キョーコは感激し過ぎて、泣きじゃくっているので、話せる状態ではない。
代わりに、蓮が嬉々として口を開いた。

「ボス!キョーコちゃんは俺の恩人なんだ!キョーコちゃんとこんなところで再会出来るなんて夢見たいだ!もう二度と会えないと思ってたのに!!」

「だから、どういうことだ?二人は事務所以外で、どうやって出会ったんだ!一体、いつだ?!」

「俺が10歳で、キョーコちゃんが確か6歳の時だよ!京都に家族旅行でいった時に河原で出会ったんだ!数日間だけだったけど、二人で色んな話をしたんだよ。俺はキョーコちゃんが、俺がいなくなっても悲しいことから守ってもらえるように、この石を別れる日にキョーコちゃんにあげたんだ。」

蓮は、キョーコの髪を撫でてる方とは反対の手で握っていた石をローリィ達に見せた。

「なんと!」

ローリィは驚きすぎて空いた口が塞がらない。

「嘘だろ?!」

社もそれは同様だった。

二人が過去に出会っていて、時を超えて再び違う土地で再会を果たすなんて…!
運命じゃないか!!そう思わずにはいられなかった。


(続く)

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Amebaで2011/11/16に公開した話を若干訂正したものです。

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なくした記憶 6


なくした記憶 6


蓮の退院の日。
キョーコの撮影は順調に進み、予定していた時間よりも早く終わった。
そして、その後予定されていた雑誌の取材も、先方の都合で延期となり、予定していたよりも3時間ほど、空いてしまったのだった。

この日のキョーコの予定は、撮影が終わってから蓮の家に直接向かい、帰宅を待つはずだっだのだが、いかんせん早く終わりすぎて、時間ができてしまったキョーコは、蓮に会いたいという気持ちも手伝って、蓮の病室を訪れていた。

入室早々、キョーコは不機嫌を隠そうともしない蓮に出迎えられた。

「君…今日も来たのか?」

敦賀さんは、私のことを“君”としか呼ばない。
そういえば、出会った時もしばらくは名前を呼ばれなかった。
名前を呼ばれ始めたのは、代マネをした後、スタンプを押してもらった時からだ。
敦賀さんは認めた人じゃないと、名前なんて呼んでくれないのかもしれない。

「撮影が早く終わったので来ちゃいました。」

不機嫌気味の蓮とは対象的にキョーコはなるべく明るく答えた。
蓮の不機嫌の原因は、昨日の社長とのやり取りの後からだ。

ーーやっぱり、私なんかが一緒に住むのが気に入らないのよね?

蓮は自分のプライベート空間に赤の他人を入れること事態が気に入らないのだが、キョーコにはそんなことがわかるはずもなく、若干ずれた答えを導き出していた。
しかし、社長命令とあればキョーコにも断れず、蓮には申し訳ないと思いつつ、少し楽しみにしている自分もいた。

ーーーだって、敦賀さんと一緒にいる時間が増えれば、少しずつ思い出してもらえるかもしれないし…。

今は、互いに共演中のドラマなど無く、トップ俳優である敦賀蓮と新人タレントの京子とでは会える機会もほとんどないのだ。
実質、この間ラブミー部室で会ったのも、二週間ぶりだった。
カインとセツカの生活も先月終わりを迎えたばかりだ。
会えぬ間、電話やメールもたまにしていたのだが、そのほとんどが蓮からのもの。蓮が今、自分を後輩として認めていないのは明らかで、そんな中、連絡をしてくるはずがない。
お世話様係を命じられたことで、かろうじて接点を持つことが出来たようなものなのだ。

ーーーこのまま、忘れられたままは嫌だもの。まずは今の敦賀さんに認めてもらえるようにしなきゃ!

キョーコは決意を新たに、まずは与えられた自分の仕事を全うしようと決めていた。



蓮はどうしてこんなことになったのかと、イライラを募らせていた。

何故かわからないが、キョーコが側にいると落ち着かない。
心を許してはいけない。突き放さねばならないと心の何処かで思うのだが、どうしてそう考えるのかわからない。
しかも、そんな相手を自分のプライベート空間に入れなければならないのだ。

蓮は知らぬ間に、ため息を吐いていた。

そんな蓮の目の前に、ウサギの形にカットされたリンゴが差し出された。

「敦賀さん、お昼召し上がってないんでしょ?果物だけでも召し上がって下さい。」

蓮はそのニコリと微笑んでいるキョーコの表情に釘付けになり、固まってしまった。
固まって反応しない蓮に、キョーコは不思議に思いつつ呼びかけた。

「…敦賀さん?」

呼びかけられたことに、ハッとして意識を取り戻した蓮は、自分が固まったのが何故かわからず混乱して、慌ててしまった。

「なんでもない!食欲ないんだ。ほっといてくれ!」

蓮は荒々しく言い捨てると、キョーコに背を向けて寝転がった。

「敦賀さん…」

キョーコの沈んだ声が背中の方から聞こえる。
悪いと思いつつも、蓮は必死で遠ざける方法を考えていた。

蓮はそこで、ようやく気づいたことがあった。
蓮は怖いのだ。久遠の時に負った闇を人に暴かれるのが。
自分が心許した相手に拒絶されてしまうことが。
闇に飲み込まれる様を見られることが怖いのだ。
そして、自分が傷付けた人達の怯えた視線が脳裏に蘇り、自分を非難した悲痛の叫びが体を支配する。

ーーー誰も、俺を認めない。

自分は久遠だと、どんなに叫んでも、どんなに藻掻いても、皆親の影と自分をくっつける。
俺として見てくれない。
色んな女性と関係を持ったが、彼女達が夢中になるのは、整った容姿か、親のネームバリューのせいだと久遠は気付いていた。
どんな人が相手であっても、久遠の心は満たされず、常に孤独の影を背負っていた。

ーーーそう。俺自身に、なんの飾りもない俺として接してくれたのは、あの夏の日の小さな女の子だけだった。

親の副産物ではない、俺として接してくれた。その子の側にいる間だけは、自分が他の誰でもない一人の人間であるという気持ちになれた。

日本に来て一年、両親からの連絡は全くなかった。
親バカだと思っていた両親にとっても、ここまで荒れてしまった自分の存在は迷惑でしかなかったのだ。
だからこそ、がむしゃらに日本のことを勉強してきた。
久遠の闇から逃れて、敦賀蓮として新しい人間を生きる為に!
久遠とは違う敦賀蓮がつかめたら、デビューをさせてやるとボスに約束してもらったのだ。

俺は…どうなるんだ?

既にこの世界に俺ではない敦賀蓮が存在している。
記憶にない自分が敦賀蓮を掴んで、日本の芸能界という場所でしっかりと自分の居場所を作っている。
同じ敦賀蓮にしなければいけない。違和感のない敦賀蓮にならなければいけない。
蓮は不安と恐怖で押しつぶされそうになった。
自分が、今の敦賀蓮を掴めなかったら一体俺はどうなるんだ?!
俺の居場所はどこにあるんだ?!

「敦賀さん…」

またもや後ろから声がかかり、蓮はハッとした。
完全に人がいることを忘れて考えに耽っていたのだ。
急に思考から現実に引き戻された蓮に構わず、キョーコは静かな声とは一転して、一気に捲し立てた。

「そんなんじゃ、ダメですよ!食事は身体作りの基本です!!食欲ないから何も食べないなんて!!大体食欲中枢が麻痺してる敦賀さんが、お腹空くはずないんですから!!食べないなんて、お世話係を命じられた私が絶対に許しません!」

蓮は突然のお説教にびっくりして振り返った。
そこには凄い剣幕のキョーコが立っている。
先程のニコリと微笑んだ可愛らしい顔は一体何処に行ったのか、真剣そのものの顔で、グサリと爪楊枝に刺すとリンゴを差し出してきた。

「今は果物しかありませんが、家に帰ったらしっかりと食事はとってもらいます!!とりあえず、今はコレを食べて下さい!!」

ずい!と爪楊枝に刺したリンゴを突き出すキョーコ。
蓮は気迫に押されて思わず爪楊枝を受け取っていた。真剣に食べるのを待つキョーコを横目に恐々と気にしながら、遠慮気味にリンゴを一口かじった。

ーーシャリ。

甘い汁が一気に口の中に広がった。
ただのリンゴだと思うのに、優しい味が身体に広がる。

「…敦賀、、さん?」

キョーコが驚いた顔で蓮を見る。
蓮の頬には知らぬ間に、涙が一筋伝っていた。


(続く)
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Amebaで2011/11/15に投稿した話に訂正を加えたものです。

なくした記憶 5

なくした記憶 5


ーーコンコン

「失礼します。」

キョーコはノックの後、遠慮気味に蓮の病室の扉を開いた。

「あ、寝てる…」

キョーコは、ベッドに横になり寝息を立ててる蓮をみて僅かに安堵した。

昨日会った時に、蓮から全身で拒絶されてるのがなんとなくわかっていたキョーコは、今日は追い返されるのではないかと、内心ビクビクしながら来たのだ。

ーーコトン。

キョーコは買って来たお見舞いの花束を、同じく買ってきた花瓶に生けて、病室を飾った。

花束を綺麗に飾ったキョーコは、グッスリ眠っているらしい蓮の整った顔を覗き込んだ。

普段見ることのできない蓮のあどけない寝顔を見るのは何だかくすぐったさを感じた。

キョーコはドキドキしながらも、綺麗な寝顔を独占している今を、「贅沢だわ…」と呟きつつ、満喫していた。



フワリと蓮の嗅覚をくすぐる甘い匂いがあった。
花の香りと一緒に入って来たその優しい香りの正体はわからないが、その匂いに包まれている感覚は、蓮の眠りを更に深いものにして行った。
胸元近くにある暖かい温もりが、寝不足の蓮にはとても心地よく感じる。

「う…ん?」

蓮は久しぶりにゆっくり眠れたような感覚になりながら、段々と覚醒していき目を醒ました。

「久しぶりに…気持ちよく眠れたな…」

そう呟きながら、ふと窓の方を見ると、先ほどまではなかったはずの綺麗な花が窓辺に飾られているのに気付いた。

「あれ?何時の間に…」

寝てる間に誰か来たのか?
そう思いながら、窓とは反対側に顔を向けて、ギョッとした。

昨日の少女が蓮の胸を枕に、顔を蓮に向けて、スヤスヤと気持ち良さそうに寝息を立てていたのだ。
そして何時の間にか、自分の手は、その彼女の肩を抱くように置かれていた。

ーーー暖かい温もりの正体はこの子だったのか…。

蓮は仰天しながらも、何故か起こす気分にもならず、知らぬ間に少女の寝顔に見惚れていた。

肩に置いていた手を頭に移動させ、さらさらとした柔らかい感触の髪を優しく弄びながら撫でると、今までに味わった事のない幸福感が体を駆け巡った気がした。

何故そんな気分になるのか不思議に思いながらも、蓮はキョーコの寝顔から目を離すことが出来なかった。

ーーコンコン。

「蓮、入るぞ?」

突然そう言いながら病室に入って来たのは、蓮のボスこと社長のローリィだった。

キョーコの寝息だけが聞こえるこの部屋で知らぬ間にキョーコに見惚れていたところに、突然のノックの音と男の渋い声が響き、蓮は飛び上がるほど驚いた。

その蓮の驚きに反応して、蓮の胸の上に頭を預けていたキョーコも目を醒ました。

「ん…?」

目を開けたキョーコの目に、一番最初に飛び込んで来たのは、驚いた表情の蓮の顔だった。

しかも、かなりの至近距離である。

蓮は、ローリィに向けていた視線を慌てて、寝ていたキョーコの様子を見る為に戻す。

そんな至近距離の蓮とキョーコの視線がばちんと重なった。


キョーコは、ぱちんぱちんと数回瞬きを繰り返すと、自分が病院の病室にいることもすっかり忘れ、気付いた時には寝起きの耳には辛い大絶叫をお見舞いしていた。

「~っ!いぃやぁぁぁあぁああぁぁ~!!」

最も間近で、予想もしてない耳を劈くような悲鳴を聞いてしまった蓮は、多大なダメージを負うこととなってしまったのだった。


「この度は、本当にぃ!!申し訳ありませんでしたぁーーー!!」

ハハァーと床におでこを擦り付け這いつくばって、お馴染みの姿勢で土下座をしているのは、もちろん涙をいっぱい瞳に溜めたキョーコである。

「…で、ありまして…先輩の胸を枕に眠ってしまうなどと不届き千万な…」

延々と続きそうなキョーコの謝罪に終止符を打ったのは、言わずもがな蓮である。

「君…もう、いいから…」

蓮は先ほどの暖かい気持ちが悲鳴で一気に吹っ飛び、再び不機嫌モードとなっていたのだが、キョーコの潔い勢いありまくりの謝罪に毒気を抜かれ、逆に呆れ返っているようだった。

「いや、しかし、君がここにまた来ていたとは驚いたな。」

ローリィは何故かご機嫌だ。

「これは、ラブミー部の卒業も近いかな?!」

「ラブミー部??」

蓮は聞き覚えのない単語を聞き、疑問に思いながらローリィに問い掛けた。

「あぁ、愛を失った、愛の欠落者に、愛の大切さを学ばせる為に、俺が特別に作ったセクションだ。切り捨てるには惜しい彼女のような人材を立派な愛ある大人に育てる為に作った。」

「はぁ、愛の欠落者?彼女が?」

キョーコは正座をしたまま項垂れていた。

「そうだ。最上君は我が社のラブミー部員第一号だ!最早この部門は最上君の為に作ったと言っても過言ではないだろう。」

ローリィは、自信満々に答えたが、蓮は納得できないと言う顔でローリィをみつめていた。

「まぁ、最上君もこのセクションに入って1年は経ったからな。それなりに沢山の愛に触れて来たはずだ。」

「はぁ、…まぁ…」

キョーコは自信なさ気に答えた。

「ふむ…。そうだな…。」

ローリィは、正座をしたままのキョーコと、蓮の顔を交互に見つめた。
キョーコも蓮もそんなローリィの行動に不安と嫌な予感を感じつつも、次の言葉を待った。

「よし!最上君!君に新しい課題を与えよう!!君には、蓮の世話係をしてもらう!」

「「はぁ?!」」

「なぁーに。簡単なことだ。期限は…そうだな。蓮が記憶を取り戻すまでとしておこうか。最上くん、君はこれまでも度々、社君の依頼で蓮の家に食事を作りに行っていたそうだね?」

「はい。」

「え?!彼女が?!どうして?」

「食事に疎いお前を案じて、社がラブミー部員である最上君に依頼していたんだ。」

「だからって!俺が赤の他人を簡単に家に上げるはずがないでしょう?!それはボスもわかってるはずです。あり得ません!」

「…え?」

今まで、キョーコは何の抵抗も受けず蓮には家に招き入れられていた。
食事や演技指導の為に、今まで何度も自宅に伺っているのだ。

たまにピリピリとした居心地の悪い空気を感じた時もあったが、家に入るのを拒絶をされたことは記憶になかった。
だが、それをあり得ないと否定する目の前の蓮。

「だから、最上君はお前にとって特別なんだろうが!」

「…は?」

ローリィの言葉に、蓮の思考は完全に固まってしまった。

ーーー特別??私が?なんで?

キョーコもただ呆然とその言葉を聞いていた。

「…と、言うことで、最上くん。蓮の記憶が戻るまで、蓮の世話係を引き受けてもらう。なに、事務所からの仕事は優先して構わんから、出来る限りでやってくれたらいい。セツカの時のようにな。」

「はぁ…。」

キョーコが事態を飲み込めないまま答えると、ローリィは続けた。

「なんだ?不満か?…あぁ、そういえば最上くん、君は椹君に最近、下宿先の事を相談していたそうだね。」

「え??」

「俺の所にも報告がきた。何でも君のファンが君の下宿先に迷惑をかけてしまってるようで、一人暮らしをした方がいいのかと迷ってるそうじゃないか?」

「あ!はい。そうなんです。」

「そこで、提案だが、ここにいる蓮の家にしばらく一緒に住んだらどうだ?どうせ世話係をするなら、一緒に住んだ方が手間が省けていいだろう?」

「えぇえ?!」

「ちょっと!ボス!!何を…」

社長の爆弾発言に二人は途方にくれた。

「これは、決定事項だ!蓮は明日退院だからな、最上君は明日から早速世話係を始めてくれ。引越しも明日にでもしたらいい。荷物は私の部下に運ばせよう。なぁに、部屋はゲストルームを一つ使えばいいんだからな。しっかり頼んだぞ。最上くん!」

「はぁ…。」

「ボス!!どういうことですか?!どうしてこんな…」

「蓮、最上君は敦賀蓮をよく知っている。一緒にいれば、色々と見えてくるものがあるだろう。記憶を戻す足がかりにもなるはずだ。」

「あ、なるほど。」

これにはキョーコが納得した。

「今回はホテルの時のように同じ部屋で過ごす訳ではないし、カインとセツカの生活に戻ったと思えば、対したことはないだろう?」

これはキョーコに向けて言った言葉だ。蓮には何のことかわからずにクエスチョンマークを頭に沢山浮かべた。

「はい!最上キョーコ!!精一杯敦賀さんの御世話係を引き受けさせて頂きます!!」

「うむ。そうしてくれ、その間に君が探してる希望のマンションも俺と椹が探しておこう。」

「助かります。ありがとうございます!!」

「ちょっ!勝手に決めないで下さい!」

蓮は自分のマンションに住み込みで働くことにキョーコが納得しつつあることに焦りを感じた。

「敦賀さん!安心して下さい!不肖最上キョーコ!!敦賀さんの記憶が戻るまで、精一杯御世話させて頂きます!!」

キョーコは爛々と輝く瞳と、自信満々の笑顔で言い放った。
それを聞いたローリィの面白いことになりそうだ。というニンマリ顔をみて、蓮は、もうローリィの決定事項を覆すことは諦めるしかないと悟り、はぁーと長く深いため息を吐くことしかできなかった。


(続く)
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Amebaで2011/11/14日に公開した話に訂正を加えたお話です。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

なくした記憶 4

なくした記憶 4


目の前には暗い顔で下を向いたままの敦賀さんが立っている。

『もう二度と、俺は君の前には現れない。』

そう言って、私に背中を向けて歩き出した。

『待って!!行かないで!!見捨てないで!側にいて下さい!!敦賀さん!!』

必死で遠ざかる背中を追いかける。
追いかけて追いかけて、ぐいっと腕を引くと、振り返ったのは、カインの役がついた目をした敦賀さんだった。

『誰だ。お前は…?』

冷たい声と冷たい目線で突き刺すように睨まれる。

「敦賀さんっ!!」

キョーコは嫌な汗をぐっしょりかいて、叫びながらガバッと布団から起き上がった。

「はっ!夢……?」

キョーコはハァハァと荒い息遣いをしていた。

「…違う。夢だけど、これは夢じゃない…。」

キョーコはまだ薄暗い部屋の中で起き上がると、膝に頭を乗せてポロポロと泣き出した。

「嫌だよぉ。敦賀さん!!忘れるなんて酷い!!私…私は、敦賀さんが好きなのにっ!!嫌だ!忘れられたままなんて嫌!!敦賀さん!!敦賀さん…」

キョーコは鞄からコーンを取り出すと、コーンを握り締め朝方まで泣き続けたのだった。

「うぅ、コーン!助けて!!コーン!!」




蓮は誰もいなくなった病室で、ベッドに横になったまま眠れずにため息を吐いていた。

何故か、目をつぶると浮かんでくるのは、昼間病室に来ていた女の子のことばかり。

自分が記憶を失っているらしいこともショックではあるのだが、あの女の子を傷付けて泣かせたことで、心が苦しくてたまらなくなっていた。

さっきは自分から突き放したくせに…勝手だな。俺もーー。

「大切な人は作らないって決めて出てきたはずじゃないか…」

ーーいや、作らないんじゃない。作れないんだ。作る資格なんて俺にはない。
あの子に近付くのは危険だ…俺の中の何かが、そう警告している。
冷たく突き放してでも、自分から遠ざけなくてはならないと…。

蓮は自分の手をぼーっと見つめながら、先ほどのことを思い出していた。

自分のことを忘れたのかと問う彼女は絶望して、椅子に崩れ落ちた。
あの時、ボスが現れなければ俺はどうしてた…?
無意識に彼女へと伸ばしたこの手は何をしようとしていた?
俺はどうしたんだ?あの子に近付くのは駄目だ。それなのに、側にいて欲しいと望んでしまう。

今まで、特定の女性がここまで気になったことはない。

ーーー…一体、俺はどうしたんだ?

矛盾だらけの思いが交錯して頭が混乱する。

驚いた顔。涙をいっぱいに溜めた目。絶望に打ちひしがれた瞳。

彼女の顔が頭から離れない。

ーーあそこまで傷付けたんだ。もう、来ることもないだろう。

そう考えると、何故か胸の奥が締め付けられるような気分になった。

全く眠る気分になれず、蓮は寝るのを諦めて、病室のDVDデッキを起動した。昼間、ボスであるローリィにもらった過去の自分の出演ドラマを見ることにしたのだ。
蓮はボスから課題を与えられていた。

この一週間、様子見で休みをもらい、その間に、敦賀蓮の記憶を取り戻すこと。
もし、それが無理だった場合は、過去の作品やインタビューから、敦賀蓮の性格や行動パターンを研究すること。

つまり、記憶をなくしたことがばれずに敦賀蓮として仕事を続けるのに、違和感がないようにしておくことだった。

まさか、自分で自分の研究をすることになるとは…。

蓮は軽くため息を吐くと、DVDの映像を真剣な眼差しで見つめたのだった。



翌日、ラブミー部の部室で書類の整理をしていたキョーコの元に、奏江がやってきた。

「ちょっとあんた!どうしたのよ?その顔は!!」

「あ、おはよぉ…。モー子さぁん!」

「あんた…その顔怖いわよ?寝不足の上に泣き腫らした顔…そんなものに一点の曇りもない営業スマイルを貼り付けようとしないで!」

「うぅっ!…やっぱり腫れてる?」

「えぇ、まぁ少しはメイクで隠せてるみたいだけど?そんな顔じゃバレバレよ。一体どうしたのよ。」

「…たいしたことじゃないのよ?」

「…じゃあ何であんたはそんな顔してるのよ?」

キョーコは困ってしまった。
いくら相手が大親友のモー子さんだからって、事務所の看板俳優であり、大先輩の敦賀蓮が記憶喪失になったなんてことを軽々しく言っていいはずがない。

キョーコは少し考えて、奏江に質問することにした。

「あのね…モー子さん…。もしも、…もしもよ?私がモー子さんのこと、忘れちゃったらどうする?」

「…は??」

急すぎるキョーコの質問に怪訝な顔をする奏江。

「だからね。ある日、突然、記憶がなくなっちゃって、モー子さんのことがわからなくなったって私が言ったら、モー子さんはどうする?」

「なんなのよ?どういうこと?」

「………」

奏江はキョーコが何故そういうことを言うのか確かめようとしたが、キョーコはそれ以上話すつもりはないのか、下を向いたまま奏江の返事を待っている。

「そーねぇ、あんたが私のことを忘れたら…ねぇ…?」

奏江は少し考えこみ、怒りを露わに答えた。

「そんなの、冗談じゃないわ!!あんたが私を忘れる?!そしたら、何度だって思い出させてあげるわよ!例えあんたが思い出せないとしても、新しいあんたと新しい関係を築くわよ。無関係になんてさせないわ!たとえ、あんたが忘れても、私にとっては大切な親友なんだからね!見捨てたりなんてしない。どんなにあんたが嫌がったって側に付きまとうわよ!これで満足?!」

奏江は、勢いに任せて最後まで言い切ると、赤い顔を背けてしまった。
キョーコは奏江の言葉に驚き、目を見開くと、目の奥がジンと暖かくなるのを感じた。

「モー子さん!!」

キョーコは嬉しそうにはにかんだ。

そっか、そうなのだ。記憶がなくなると言うことは、本人にとってもきっと心細いに違いない。

そんな時に、自分のことを忘れずに側にいてくれる人がいるのはとても心強いことなのではないか?キョーコはそう思えた。

そんな時にこそ、人は誰かに側にいて支えて欲しいものかもしれない。

敦賀さんは私にとってもかけがえのない先輩だ。私にとって、大切な唯一の目標でもある。その彼が苦しんでるのだ。

側にいたい!何かできることがあるなら力になりたい!

ーーー決めた!敦賀さんから忘れられたままにならないためにも、お節介だと言われても、側にいよう!

「ありがとう!!モー子さん!」

「何だかわからないけど、元気出たようなら良かったわ。」

キョーコの目に再びいつもの光が灯ったのをみて、奏江は微笑んだ。

「うん!早速行って来るね!」

キョーコは残ってたラブミー部の仕事を超高速で終わらせると、猛スピードで部室を飛び出した。

例え敦賀さんに思い出してもらえなくても、今の敦賀さんと新たに信頼関係を築いていけばいい。


(続く)

*****
ふぅ。ようやく動いてくれそうです(^-^)/
前回あまり、書けなかった蓮の心情もいれてみました。

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Amebaで2011/11/13日に公開していたお話を若干訂正した話です。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

なくした記憶 3

中々考えてたように動いてくれませんね。連載は難しい!
今回はダークな内容になってしまいましたが、幸せのためには乗り越えなければならないことがあるのです。暗いの苦手な方はごめんなさい。
それでもよろしければお読み下さい。

*****


なくした記憶 3


『ーーーちゃん、明日も仕事があるんだろう?今日はもう帰った方がいいよ?』

『そうですけど、でも…』

『側についててくれるのは有難いけどーーー』

ーーーなん、だ?日本語??近くにいるのは日本人…か?

蓮は暗い闇の中から、意識が浮上してくるのを感じた。

「じゃあ、タクシー呼んでくるから…」

「はい。すみません。ありがとうございます。社さん。」

「うん。じゃ、ちょっと待っててね。」

男の気配が遠ざかり扉が閉まる音が聞こえた。
蓮は体を動かそうとしたが、全身が打ち付けたように痛い。

「うっ…!」

顔を歪めて軽く動くと、澄んだ声が聞こえた。

「敦賀さん?!」

ーーーツルガ…?誰だっけ?

蓮はゆっくりと瞳を開けると、声のした方を見た。

「良かったぁ!!目が覚めましたか?!」

澄んだ大きな目が、蓮の視線を捉えると、安心したのか大きな涙を流した。
それを見て息を呑んだ。

ーーーな、んだ?

一瞬見惚れていた自分に気付いて驚いた。
ごまかす様に慌てて周りを見回すと、何の飾りもない白い部屋にいるのが分かった。

「ここ…は?」

ようやく出せた声は、酷く掠れてしまったが、とりあえず日本語で聞いてみた。

「病院ですよ?敦賀さん、事故に遭われたんです。覚えてませんか?」

ーーあぁ、そうだ。今俺は日本人の敦賀蓮を演じてるんだっけ?

「…事故?」

「はい!駐車場で…」

身を起こそうとすると、手が何か掴んでいて、動かせないのがわかり、そちらを見ると、目の前の少女が両手でしっかりと手を握り込んでるのが見えた。

「あ!無理しないで、横になっててください。ひどい怪我はないようですが、それでも、色々なところを打ってるみたいなので…」

じっと掴んでいる手を見つめていたら、その視線に気付いたのか、少女がぱっと手を離した。

「あ!すみません!!あの、手がとても冷えていたので…」

モゴモゴと言いながら、顔を染めて行くのが見えた。
その顔をじっと見つめ、蓮は警戒しながら、冷たい声を発した。

「君……誰?」

自分の中の何かが、この子は危険だと訴えていた。



『君……誰?』

言われた言葉の意味が理解出来なかったキョーコは、固まってしまった。

「………え?」

その時、タイミング良く扉が開いた。

「今、タクシー呼んだから、後10分ぐらいで…っ!!蓮!!」

眼鏡を掛けた20代の男性が声をかけて近寄ってきた。

さっきの声の主だ。確か、呼ばれてた名前は…

「社…さん?」

「良かったぁ!!蓮!!目が覚めたんだな!!具合はどうだ?!あぁ、すぐに社長に知らせないと!!ちょっと待ってろよ!蓮!!」

そう言うと、社は嵐のように去って行った。

目の前の少女に目を向けると、真っ青な顔をして、震えているのが分かった。

「敦賀、さん…またからかってるんですか?」

キョーコは目の前が真っ暗になり断崖絶壁に追い込まれた気がした。

「私のこと…覚えて、ないんですか?」

そう言葉に出すと、涙がポロポロと溢れてきた。

「…あぁ。」

蓮が、ポツリと呟いたのを聞き、キョーコは足元がガラガラと崩れ落ちる感覚に襲われた。よろよろとよろめくと、後ろにあった椅子に足を取られて、倒れこむ様に椅子に崩れ落ちた。

「あ!…大丈夫?」

キョーコは今の現実が受け止められず、真っ青な顔で震えていた。

蓮が思わず、手を伸ばそうとしたところで、社長が勢い良く扉を開けた。

「蓮!!目が覚めたか!!気分はどうだ?!」

「…ボス?!」

蓮が社長を見て驚いた顔をした。そして、その呼びかけを聞いて、社長のローリィはピクリと眉を動かした。

「…なん、だと?お前…まさか…」

「蓮?」

ローリィの後に続いて入ってきた社も、ローリィをボスと呼んだことに疑問を抱いて不思議そうに呼びかけた。
ローリィはすぐに、椅子に座って愕然とした表情で、泣きながら震えているキョーコにも気付いてハッとした。

「最上君!大丈夫か?!」

「え?!キョーコちゃん!どうしたの?!」

ローリーの呼びかけで、尋常じゃないキョーコの様子に驚いた社も声をかけたが、キョーコは答えることが出来なかった。

そこに、医者とナースが入ってきた。
診察の邪魔にならないように、キョーコに社を付き添わせて、病室から出すと、ローリィは大きくため息を吐いた。

「お前、今いくつだ?年齢は?」

急に問いかけたことで、蓮も医者も何が何だかわからずに訝しんだが、蓮の答えで、大体の様子を察した。

「16だけど…何…?」

それを聞いたローリィは、その場にいたナースにも外に出て行ってもらい、医者とローリィと蓮の三人だけが病室に残ることになった。

幸いこの医者はLMEの息の掛かった病院の中で、ローリィが一番信頼をおいている医者だ。
蓮の主治医を任せる以上、秘密にすることは不可能と判断し、これからの会話は口外無用と言うことで、話を聞くことにした。


キョーコは自分だけ忘れられていたと思って、絶望的な気持ちとなっていた。

蓮に忘れられることがこんなにも精神的にダメージがあるとは思わなかった。

最もあんなことがあった後だ。
目が覚めた蓮とどんな会話になるのか少し怖い気もしていた。

でも、目が覚めた時は心底安心したのだ。
それなのに、自分のことを忘れられていたなんて…。あのキスを忘れられたなんて…。

安心と絶望感。
頭の中がぐちゃぐちゃで胸が苦しくて、キョーコはただただ泣きじゃくるしかなかった。

キュッとコーンを握りしめても、慰められることがなかった。

コーンが効かないのは初めてのことだった。

キョーコがポロポロと涙を流す横で、社はオロオロするしかなく、優しく背中をさすっていた。
しばらくすると医者が病室から出て行き、ローリィに病室へ入るよう促された。

少しだけ落ち着いたキョーコは社の後ろに隠れるように続いて病室に入った。

「さてと、今の蓮の状態だが、ここ5年ほどの記憶を失っている。だから、敦賀蓮としてデビューする前の記憶しか今持っていないんだ。」

「「え?!」」

キョーコと社は同時に声を上げた。

「じゃあ、蓮は俺のこと覚えてないのか?!さっき社さんって呼んだだろ?!」

「あれは、目が覚める直前の会話で、社さんと呼ばれてた声だと気付いただけ…。」

蓮は淡々と答えた。

キョーコは自分だけが忘れられた訳ではなかったことに安堵しつつも、やっぱり寂しさを感じていた。
ちらりと、蓮を見ると面白くなさそうな、ふて腐れた顔をしていた。そして、何もかもどうでもいいというような冷たく素っ気ない感じがした。

そんな表情にも寂しさを感じ、キョーコがずっと見つめていると、蓮も視線を向けてきた。

しばらく見つめあっていたが、蓮が先に視線を外し、社長に問いかけた。

「…で?ボス、この人たちは誰?俺の何?」

普段の敦賀蓮からは想像つかないくらい声が冷たい。まるでカインだ。

「あぁ、この眼鏡の男が社君だ。敦賀蓮…お前の敏腕マネージャーだ。」

「社だよ。あぁー…その、変な感じだけど、よろしく。蓮。」

社は蓮に手を差し出すと、にこやかに握手を求めた。

「そう、…よろしくお願いします。」

蓮はニコリともせずに、握手は返さずに答えた。

「そしてこっちが、最上君だ。芸名は京子。うちのタレントで、お前の後輩だ。」

「最上です!よろしくお願いします。」

キョーコはローリィの紹介を受けて進み出ると、綺麗なお辞儀をして見せた。

「…なんでただの後輩がこんなところにいるわけ?」

キョーコの挨拶にも答えずに不機嫌そうに冷たい声で言い放つ蓮。

キョーコはショックで、震える身体を抱きしめるしかなかった。
辛うじて泣くことを抑えていたが、唇が切れたのか、鉄の味がしていた。それを見兼ねて恐る恐る社が声をかける。

「おいおい、どうしちゃったんだよ、蓮。まだ混乱してんのか?お前らしくない。」

「………。」

「ふむ。まぁ、そうだな。社、こいつは今、敦賀蓮であって、敦賀蓮ではない。まだ俳優敦賀蓮の人物像を掴む前と言うところか。」

蓮はそのローリィの言葉を聞いて、ギロリと睨む。
それはやはり、敦賀蓮のものとは違う。
全てを敵と思い、警戒してるようにも見える。

「え?それはどういうことですか?」

ローリィの言葉をうけて、社も聞く。

「詳しいことはまだ話せないが、こいつは元々海外の出身で、ある理由で15歳から日本に来た。17歳までの間にこっちでの暮らしに必要な知識を身につけ、敦賀蓮という一人の人格を練り上げたんだ。今の蓮の状態は…敦賀蓮の役作り途中か、その前というところか…。」

キョーコの思考回路は、すでにショート寸前で、受け入れたくない現実からどうにかして目を逸らそうとしていたので、社長の話しもろくに耳に入らなくなった。

目の前の敦賀さんは別人のようで、尊敬する敦賀さんが消えてしまった気がして、キョーコはこの場にいるのが、耐えられなくなった。

「ーーがみくん、最上くん!」

気付けば、社長から心配そうに覗きこまれていた。

「大丈夫かね?今日はもう遅いから帰りなさい。蓮も一応目覚めたわけだしな。私の秘書に送らせよう。社、正面玄関までおくってやれ。」

「…わかりました。行こうか?歩ける?」

「はい。すみません。」

蓮の記憶喪失に社もショックを受けていたが、キョーコの尋常じゃない様子をみて、自分がしっかりしなければと社は気合を入れ直した。

キョーコは働かない頭で、ローリィに頭を下げると、逃げるように病室を後にしたのだった。


(続く)

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Amebaで2011/11/12にアップした内容に訂正を加えた話です。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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