敦賀蓮の本性(限定)

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拍手お礼〈10〉

あっという間の年末ですね!!
なかなか上手く時間が使えず全然書けてない日が続いてます。
昨日は祖父母の家で餅つきをしてきました。
腰が痛くなるのは毎年のお約束ですね。



さてさて年末年始のお話を書けるかは疑問ですが、ぼちぼち続けていく予定ですので今後もよろしくお願いします。


それでは拍手お礼です(*^^*)

【ハッピープレゼント】
愛海様
読んでくれた人がプレゼントもらったみたいに幸せに感じてくれるお話を目指したので、ホワホワとした癒しになってよかったです。
まさかのキミちゃん。誰?!って感じですよね。
そのくらいキョーコちゃんも混乱しちゃってたということでしょう(笑)
蓮様実力行使しなかったら、きっと捕まえられなかったですよね。
これから捻じ曲がりまくった曲解思考は蓮様の重たーい愛の力で真っ直ぐ伸び始めると思います。
元々は真っ直ぐな子ですからね。きっとすぐ真っ直ぐになってくれることを祈ってます(笑)

コメントありがとうございました!!



…ということで、多分今年最後の拍手お礼…になるかな??

やっと今日が仕事納めなので最後まで頑張ってきます。

今年は大変お世話になりました。
良いお年をお迎え下さい。


ではでは!また来年もお会いしましょう!
風月でした。

ハッピープレゼント

2015.12.25!
キョーコちゃんお誕生日おめでとうございます〜♪♪♪

…ということで、今年は書く予定なかったんですが、頂いたコメントの中に、もうすぐクリスマスですねー。ふふふ。と言うキョコ誕を匂わせるメッセージを頂いてしまったので、あら?やっぱり書いた方がいい?なんて思って慌てて書いちゃいました(笑)

お楽しみ頂けたら幸いです。


*****


ハッピープレゼント


「ん…」

キョーコは深い眠りから引き上げられるように目が覚めた。
気持ちよくスッキリとした朝だ。

布団から腕を出して大きく伸びをしたことで、腕がとても肌寒いことに気付いた。

慌てて腕を布団の中に入れ、一度寝返りを打つ。
また心地よい眠りに誘われそうになってウトウトしかけたところで、キョーコはハタと目を見開いた。
目の前に広がる肌色の壁。

はて?これはなんだろうと手を伸ばしかけたところで、キョーコの身体は突然グイッと壁に押し付けられた。

「きゃ!」

小さな可愛い悲鳴が響くと、頭上から低く魅惑的な声が響いた。

「おはよう。キョーコ。」

言葉とともに響くように僅かに震える胸元。
声の発信源を恐る恐る見上げて、キョーコは目を見開いた。

そこには、この世の悪しき者が全て裸足で逃げ出してしまうような神々しい笑顔を浮かべた蓮がいたのだ。

固まってしまったキョーコに構わず、蓮はキョーコのおでこに一つキスを落とすと、再びしっかりとキョーコを抱きしめ直し、足を絡めた。

キョーコはフルフルと震える。

「き…」

「き?」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「?!」

突然のキョーコの絶叫に蓮は驚く。

キョーコは今のこの状況に混乱しているのかわたわたと蓮から離れようと暴れるも、蓮はそんなキョーコに驚きながらも離す気はないらしく、しっかりと抱きしめていた。

「は、裸同士?!敦賀さんと?!なんで?!なんでこんなことに?!」

一生懸命思い出そうとするも中々理由を思い出せない。

「…もしかして…覚えてないの?昨日のこと…」

蓮に問われ、キョーコは衝撃で吹っ飛んでしまった記憶の糸を必死で手繰り寄せた。

*
*
*

「敦賀さんが好きです。」

淡いピンク色のフェミニンなドレスを身に纏ったキョーコの言葉に、蓮が大きく目を見開いた。

「…え?」

「だからあの、この腕時計のプレゼントもとっても嬉しいです。宝物にします。これからも応援してますので、後輩として今後ともご指導のほどよろしくお願いします。」

ペコっと頭を下げたキョーコがあっさり去ってしまいそうなのを、慌てて蓮が手を取って引き止めた。

「待って!」

「は、はい?!なんでしょう?!」

「今、好きって言った?!君が俺を?!」

「言いましたけど、ただの後輩の戯言ですので、聞き逃していただいて…」

「いや、聞き逃すなんて出来るはずないだろう?」

「っ!!」

蓮の言葉に、キョーコの顔がショックで歪む。
グッと唇を噛み締め、震えだしたキョーコを、蓮は構わず引き寄せて胸に抱きしめた。

「きゃ!…え?!ちょっと敦賀さん?!」

蓮の行動に周囲から黄色い悲鳴が上がった。

今、蓮とキョーコは足長おじさん主催のグレイトフルパーティに参加中なのだ。
25日になった瞬間、蓮からお誕生日おめでとうの言葉とプレゼントが贈られるのが、ここ数年恒例になっていて、蓮がプレゼントを渡した後、キョーコが蓮に好きだと告白したのだ。

キョーコも沢山の女性の悲鳴に驚いて慌てて離れようとするが、それは蓮によって阻まれた。

「あ、あの、離し…」

「好きな子から好きって言われて、聞き流す馬鹿が何処にいる?」

「へ?」

蓮の言葉の意味がわからず、思わず暴れるのをやめキョーコは蓮を見上げた。

「だから、俺も君が好きだと言っている。」

「????」

蓮が自分のことを好きな可能性など微塵も思っていないキョーコには、蓮のストレートな愛の言葉が恐ろしいほど全く通じなかった。
頭に沢山の疑問符を浮かべてポカンと見上げてくるキョーコに蓮は焦れる。

「君も俺を好きなら、両想いってことだろ?」

「?…はぁ…。」

イマイチ的を得ないキョーコに、蓮の中で何かがブチンと切れた。

「わかった。君が頭で理解してくれないなら、身体に教えてあげるよ。」

「????」

「じゃあ行こうか。」

「へ?何処に?」

急に蓮が強い力でキョーコの腕を引いて歩き出したので、キョーコは慌てて駆け足でついていきながら、その背中に呼びかけた。
すると出口付近で蓮が立ち止まった。

「おい!蓮!!」

「敦賀さん!」

「社さん、琴南さん…退いてください!」

「蓮、お前たちの恋愛だ。俺があれこれ言う義理はない。だがこれだけは言わせてくれ。キョーコちゃんも今日から20歳で問題はないとはいえ、まだ成人したばかりだ。合意を取り付けてからにしろ!そして無理はさせるなよ。」

「敦賀さん。キョーコをよろしくお願いします。でも、泣かせたら許しませんから!あと、キョーコこれ。私からのプレゼント!」

「あ、ありがとう。モー子さん。」

「…わかりました。」

「頑張れ!蓮!!明日は2人ともオフだからな!明後日の報告期待してるぞ。」

「ありがとうございます!」

「キョーコ。幸せになりなさい。」

「え?モー子さん?」

2人に背中を押され、会場を後にした蓮はまだよくわかってないキョーコを自分の車の助手席に押し込んだ。

「えっと…敦賀さん?まだパーティは…」

「とりあえず俺のマンションに行くから。話はそれから…」

「はぁ…」

キョーコは蓮が運転している横顔をちらりと盗み見て、先ほど言われた言葉を振り返っていた。

ーーー敦賀さんが私を好き…?いやいやいや、ないない。そんな都合のいいことあるはずない。

キョーコはまず1番最初にその過ぎった考えを頭を振って否定した。

ーーー君って言ってた気がするけど…それは私のことじゃないわ。キミちゃん?キミちゃんって子のことが好きなのかしら?あれ?でもなら何でキミちゃんの代わりに私を連れてきちゃったのかしら?…それにしてもキミちゃんって…誰なのかしら?

キョーコが全く意味不明な思考の坩堝にはまっている中で、目的地に着いた車が止まった。

「着いたよ。」

蓮から声が掛かって、キョーコはハッと思考の中から現実世界に戻ると、慌ててシートベルトを外して車から降りた。

「あの…」

「部屋に着いてからね。」

蓮はその一言でキョーコの言葉を封じ込めて、スマートな仕草でキョーコの手を握ると部屋を目指して歩き出す。

漸く着いた玄関を潜り抜けたところで、蓮はキョーコを壁に押し付けると、キョーコが驚いている隙に唇を奪った。

閉じられた瞼に長い睫毛が乗っていて、間近にあるそれをキョーコは呆然と見つめていた。

唇同士が離れるときに、ちゅという音が響いて、漸くキスをされたのだと合点がいった。

「え…」

キョーコが驚いているところでもう一度、蓮から口付けられる。
先ほどよりもちょっと苦しくなるような食べられるようなキスにキョーコは翻弄された。

「ん…ふぁ…」

時折漏れる可愛い声に蓮の理性がグラグラと揺れる。
蓮はいつの間にか腰が立たなくなったキョーコを抱き上げてキスをしながら器用な動作で靴を脱がせると、自身の寝室に向かった。

キョーコをそっとベッドに降ろし、自身もその上にのしかかりながらも想像以上に甘く高揚するキスをやめられず続行する。
キョーコもベッドに降ろされたことが分かりながらも、舌を絡め取られているので、言葉を発することさえ出来なかった。

舌と唇が互いに触れ合っている感覚すらも麻痺するほど、続けられたキスは、余韻を楽しむようにゆっくりと離れていった。
そして互いに肩で息をしながら、蓮と向き合った。
愛おしげに見つめられ、キョーコの心臓がバクバクと音を立てる。

そっと頬を大きな手で包み込まれ、今度は優しいキスを落とし、微笑んで尋ねられた。

「わかってくれた?」

「え…?」

「俺も君が好きだってこと…」

相変わらず煩い心臓を胸で押さえながら、ボンッと顔が真っ赤になったが、それでも俄かには信じられず、キョーコの目が泳いだ。
蓮はキョーコのその反応からキョーコの思考を瞬時に読み取ると、無表情でキョーコを見下ろした。

「まだ…足りないみたいだね。」

「…っ!」

蓮の言葉にキョーコが返事をするよりも前に、蓮はまたキョーコの唇を奪う。
しかし、今度は唇だけではなかった。キョーコの肌の上に唇を滑らせて、顔中にキスを落とすと、今度は耳元に息を吹き込んだのだ。

「最上さんが好きだ…愛してる。」

魅惑の低音ボイスで耳に直接吹き込まれ、キョーコはブルリと身震いした。
そのままキョーコの耳を口に含み舌を差し込む蓮の行動に、キョーコは全身に電流が走るような衝撃を受けながら身悶えた。

「や…そんな…汚…」

耳を思う存分弄んだ蓮は、そのまま首筋に唇を這わせるとゆっくり味わうように動きそしてそっと吸い上げた。

「ふぅ…あ…」

「ヤバイな…止まれない…」

「あぁ!いった…」

「ごめん。痛かったよね?でも、ちゃんと付いたよ。俺のシルシ。」

「敦賀さんの…?」

「そう。最上さんが俺のものだっていうシルシ。」

「私が…敦賀さんの…?」

キョーコの目にじわりと涙が滲んだ。

「嘘…だってそんなはず…ない…」

「どうして…?」

「だって私は敦賀さんにとって対象外だもの…」

「何で?」

「だって…代マネした時も、頬にキス…の時も、ダークムーンのインタビューの前も敦賀さんは私が対象外だって…」

「本当に…?俺そんなこと言った?」

「…直接は言ってないですけど、そういうニュアンスでした!君には何もしないって…頬にキスぐらいで狼狽えちゃう私はお子様だって…」

蓮は深くため息を吐いた。過去の自分の行動がまさかここまでキョーコの恋愛曲解思考を拗らせていたとは思いもしてなかったのだ。

「何年も前の話だろう?あの頃は大切な人は作れないって自分で必死に枷を付けてたんだ。君のことを好きになったのもダークムーンの時だけど、俺は自分が幸せになることは許せなかった。それに頬にキスをした後の君は、演技が出来なくなるほど坩堝にはまってて凄く可愛かったけど、可哀想だったから、あんなことを言ったんだ。あれくらいでこんな反応するなんて…ってね。」

キョーコは蓮の言葉に信じられないというように目を見開いた。

「ダークムーンの…時、から…?」

「そうだよ。ある鶏のマスコットに言われてね。俺が君に抱く想い、それが恋だと。言われた時は鶏のくせに偉そうにと思ったけど、その夜君とダークムーンごっこをして自覚した。そして君への恋心がなければ、ダークムーンの嘉月は演じることが出来なかった。」

蓮の言葉は信じられないことばかりだった。
そんなことがあるのだろうか?
蓮が自分を…?
嘘だという自分と、信じたいという自分がせめぎ合っていた。

「好きだというなら…証拠を…証拠を見せてください。」

「証拠って、どんな?何でもするよ。」

キョーコは暫く迷ったのち、真っ赤な顔のまま蓮をキッと睨んで言った。

「抱いて下さい。」

今度は蓮が目を丸々と見開く番だった。
ゴクンと唾液を無理やり飲み込み確認する。

「……いいの?」

「好きだと言うなら、抱いて下さい。私を…女として見てくださってるなら…」

「本当にいいの?後戻りは出来ないよ?途中で辞めてって言われてもやめられないかも…。」

「覚悟の上です。」

キョーコはこれから切腹する武士のように腹を括った顔で蓮を見据えた。
蓮の顔が甘く溶ける。

「じゃあ、抱くよ?君を…。身も心も俺のものにしちゃっていいんだね?」

「敦賀さんなら…構いません。」

「ありがとう。キョーコ…。愛してる。君の全てが欲しい。だからもらうね?」

蓮は再び深く口付け、そしてキョーコを貪り尽くすかのように激しく抱いたのだった。

*
*
*

「ぁ…。」

全てを思い出したキョーコの顔が羞恥に赤く染まる。

「思い出した?」

「はひ…。」

「じゃあ聞くけど、俺が君を好きなのはちゃんと証明できたのかな?」

キョーコはコクコクと必死に頷いた。
蓮の愛を全身に叩き込まれたのだからここで拒否の言葉を発する勇気などなかった。

「良かった。じゃあ改めて、ハッピーバースデーキョーコ。」

蓮がキョーコの額にチュッとキスを落とした。

「…ありがとうございます。世界一のプレゼント…頂いちゃいましたね。」

えへへ。とハニカムキョーコの笑顔に沢山の花が飛ぶ。

「世界一のプレゼント?」

「はい。敦賀さんの心です。」

蓮はキョーコの答えを聞いて妖しく微笑むと、そっとキョーコの耳元に唇を近づけ甘い声で囁いた。

「心だけじゃなくて、カラダもね?」

そうして赤くなって固まったキョーコに再び唇を重ねる。

甘く蕩けるクリスマスの朝。
キョーコ20歳の誕生日。

窓の外で降り積もっている雪は、本当は雪ではなく、舐めたら甘い粉砂糖になっているかもしれない。


END

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*****


ということで、改めまして。
キョーコちゃんお誕生日おめでとう〜♪&皆様、メリークリスマス♪

皆さんにとってハッピープレゼントになってたらいいな〜と思いつつ、クリスマスの朝に投稿です。

素敵なクリスマスをお過ごし下さい☆

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

拍手お礼〈9〉*

沢山の拍手ありがとうございますー!!

【衝撃の珍事件発生?!】
みや様
→お返事遅くなりすみません!みやさんも小学校の修学旅行で行かれたんですね!私も中学校の修学旅行で奈良公園行きました〜♪
お話楽しんでもらえて良かったです。
書いてみようと思って調べたら冬は餌が殆どないので大変なことになっちゃうようです。
冬に奈良公園行くときはお気をつけくださいね☆
キョーコちゃんの黒歴史を消すために、そして蓮様の心の平安のために、社さんとローリィの影の暗躍がきっと色々あったのでしょうね(笑)
コメントいただけて勇気になりました!
ありがとうございます!



なくした記憶はAmebaからの移行作業なのでコメントつかないので、段々ペースダウンしちゃってますが、拍手もちょこちょこいただいてるので少し元気もらってます♪
やっと半分まで来れたかなーというところですが、これからもポチポチ地道にやってくので続きはもう少々お待ち下さい。


素敵なクリスマスイブをお楽しみ下さいませ〜♪



さて、今見たらとってもタイミング良く総拍手1500頂いてたので、続きアップです〜。

お楽しみ下さいませ☆



*****

敦賀さんの不思議体験*6*


キョーコが突然目を見開き、奇声を発した。

『はっ!!』

ーーーなっ?!何?!どうしたの?!何かあったのか?!

数秒前に完全に眠りに落ちたはずのキョーコがいきなり目を開けて声を発したので、蓮は心底驚いていた。

『やだ!このまま寝ちゃうとこだった。』

ーーーえ?寝るんじゃなかったの?

むくりと起き上がったキョーコが恨めしそうに自分を見る。

ーーーな、なに…かな?

困ったように顔を歪ませて、キョーコはベッドにペタリと座り込んだまま蓮を両手で持ち上げた。
首をコテンと傾げさせて見つめてくる姿は殺人的に可愛らしい。

『人形でも、敦賀セラピー?』

ーーーん?敦賀セラピー…?なんだそれは…?後で携帯で調べなければ…。



(続く)

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*****

次は総拍手2000で公開予定。
…そろそろ続き書かなきゃー!まだ9話までしか出来てないのです。

さて、どんな展開にしようかな〜( *´艸`)

遊ぼうと思えば色々遊べると思うんだけど、ネタ切れ気味です(笑)

なくした記憶 24


<このお話は、リクエスト・フリー作品にある、なくした記憶の番外編☆1、2を読んでから読むことをオススメします。>


*****


なくした記憶 24



「何であんたがここにいるのよ!」

「はぁ?仕事だからに決まってんだろ?!」

キョーコがゲスト出演する番組に向かうと、集合場所に幼馴染の姿があった。

「げ!!ってことは、もしかして、あんたが相手なの?!」

キョーコは心底嫌そうな顔をして尚を見た。

「はっ!有り難く思えよな!天下の不破尚とデート出来るんだからよ!!」

ニヤニヤとした顔の幼馴染に、ため息をこぼす。

「自分で天下のとかつけてるあたり本当にバカよね。」

キョーコはため息を漏らして尚に応えつつ、自分の尚に対する態度に疑問を持っていた。

ーーーあれ??私、ショータローが目の前にいるのに、いつもみたいな憎悪が湧いてこない?何でだろ??

「何だと?!キョーコのくせに馬鹿にすんなよな。」

ーーーまぁ、どーでもいいわ。こんな奴…。

「何でもいいけど、私に迷惑だけはかけないでよね。」

キョーコは尚に興味なさ気な視線を送ると、背を向けてスタッフに挨拶する為にスタスタと歩き出した。
それを慌てた尚が呼び止める。

「おい!待てよ!!」

「何よ?」

うんざりした顔で振り返れば、怪訝な顔をした尚に睨まれた。

「…それだけか?」

「…は??」

「それだけか?って言ってんだよ!!忘れたのかよ?バレンタインのこと…」

キョーコは疑問符を頭に浮かべて、しばらくバレンタインという単語で考えると、ようやく思い出した。

「あぁー…。」

キョーコが思い出してポツリと呟くと、尚はこの後にキョーコが怒り狂う姿を想像して、ニヤリと口角を上げる。

「あれね?すっかり忘れてたわ。あんたも何、くだらないこといつまでも覚えてんのよ?馬鹿じゃないの?」

「は??」

予想外のキョーコの反応に尚は戸惑った。

ーーーえ?何だ?こいつの反応…まるで興味ないみたいな、どうでもいいみたいな反応はよ!!

尚は面白くないという顔でキョーコを見るが、キョーコは、そんな尚にそっけなく背を向けて今度こそスタッフに向かって歩き出した。

番組で決められたデートコースは有名なテーマパーク。

誰もが一度は言ってみたい夢の国。

ーーー何で、こんな奴と来なきゃいけないのよ!!

ーーー何で俺様がこんなところに来なきゃいけないんだよ!!イメージが崩れるだろうが!!

キョーコと尚は互いに心の内で悪態を尽きながら、顔を引き攣らせつつ、何とか無事に撮影を終えた。



番組の収録から数日後、キョーコが夕食を作ってる間、たまたま早く仕事を上がれた蓮は、手持ち無沙汰でテレビを付けていた。

そして、その画面に釘付けになる。

「コーン!お待たせ。ご飯出来たからもう少し待って…て…?!?!」

キョーコは夕食を運びながら蓮に声をかけ、蓮に大魔王が降臨してるのに気付き、慌ててテレビ画面に目を向け絶句した。

そこには、あの日のキョーコと尚のデート番組が映っていたのだ。

リビングの中途半端な位置でテレビを見ながら固まったキョーコ。
画面を睨み付けるように歯を食いしばって見ている蓮。

『おい!キョーコ!もたもたしてんなよ!!早く行くぞ!!』

『ちょっと!!気安く呼ばないでよね!!そんな風に言うなら私もあんたの本名で呼ぶわよ?!不破松…ぷぐぁ!!』

本名を言おうとするキョーコの口を慌てて両手で塞ぐ尚。

本人達にとってみれば、幼馴染との只のけなしあいなのだが、画面を通して見るとどうみても仲良しカップルのじゃれ合いにしか見えない。

『呼ばれたくないなら、ちゃんと番組のルールを守んなさいよね!名前をちゃん付けで呼ぶってことになってんでしょうが!!しっかりしなさいよ!"ショーちゃん"!!』

画面の中のキョーコが噛み付くと、尚は面倒くさそうに呟く。

『だぁってよ!気持ち悪いだろうが!俺がお前を"京子ちゃん"なんざ呼ぶのはよ!』

途端にキョーコの背筋が寒くなる。

『あぁーー!!怖っ!!気持ち悪いわね!!金輪際私の名前を呼ばないで頂戴!!』

二人の息の合った掛け合いに、番組は大盛り上がりである。


「これは…どういうこと…?」

画面の中の和やかな雰囲気とは真逆のおどろおどろしい空気がリビングに広がっていた。

室温が氷点下になるのではないかと思わせる空気を作り出してるのは、蓮である。

「あ、あの…そういう番組…でして…。」

「あいつが相手だったなんて聞いてない…。」

「それは…あの、あいつの名前を出すと、コーンの機嫌が悪くなりそうだからで…。」

蓮の雰囲気に怯えながら、懸命に言葉を絞り出すキョーコ。

蓮がゆっくりと振り返ってのそりと立ち上がるとキョーコに近づく。
キョーコは、そんな蓮の雰囲気に本気で泣きそうになりながら、尚に悪態をつく。

ーーーそれもこれもあんたのせいよ!!ショータロー!!!!あんたは私にとって只の疫病神よー!!!!

キョーコの持ってるトレーがカタカタと音をたてるので、蓮はそっと、キョーコのトレーを手に取りテーブルに乗せた。

「あ…ありがとう…」

「…他に…運ぶ物ある?」

蓮がキョーコから顔を反らして聞くと、キョーコは頷いて、キッチンに小走りで向かう。

蓮も後に続き、夕食を並べると、二人は頂きます。と手を合わせ、重い空気の中、黙々と食べ始めた。

いつもの楽しい夕食が嘘のように重い空気になり、キョーコは寂しくて泣きそうになっていた。


まるで通夜のような夕食を終えて、片付けを終えると、蓮が何も言わずに、手を拭いているキョーコを後ろから抱き締めた。

ギュッと抱きつかれた腕の中で、キョーコの胸は切なさで締め付けられそうだった。

ーーーあぁ、コーンが好き…。ショータローの頃とは比べ物にならないくらい、好きで好きで堪らない。

キョーコも、そっと抱きしめる蓮の腕に手を添える。

キョーコの心が愛しさと切なさで震え、キョーコはポロポロと涙を流した。

蓮はキョーコを抱き締めたまま、腕に力を込めると、絞り出すように言葉を出した。

「ごめん…俺…ヤキモチ妬いた…。」

「え…?」

キョーコは泣きながら蓮の言葉に耳を傾けた。

「キョーコちゃんに怒った訳じゃないよ。只の番組のやらせだってわかってる…だけど、あいつは昔、キョーコちゃんの大好きな王子様だったから…。」

蓮に苦しいくらいに抱きしめられ、キョーコは蓮の様子を気遣った。

「コーン…??」

「嫌だったんだ。キョーコちゃんをまたあいつに取られるんじゃないかって、怖くて…。あいつのキョーコちゃんを見る目が、気に入らない。キョーコって、何の戸惑いもなく呼べるあいつが憎くて堪らない。」

蓮はギリギリと歯ぎしりをした。
吐き出すように言う言葉に、キョーコは蓮の真意を伺う。

「あいつは、キョーコちゃんを今も自分のものだって思ってる。自分からキョーコちゃんを傷付けて捨てた癖にっ!!」

「コーン…私の為に…ショーちゃんに怒ってくれるんだ…。」

「…ショー…ちゃん?何で…?君は、今もその名で呼んでるのか?」

蓮は目を光らせてキョーコから離れて目を覗き込む為にキョーコの身体を自分の方に向けた。

「あいつに…キョーコって呼ばせて、ショーちゃんって呼んでるのか?!」

「え?!こ、コーン?」

「答えて!!あのデートしてから、君の中で憎くて堪らなかったあいつの存在が何か変わったの?!あいつがまた好きになったの?!」

「え?!こ、コーン!!落ち着いて!!そんな訳ない!!私は、あんな奴もう好きになんてならない!!だけど…」

「だけど…何?!」

「私…あいつを見ても、あの撮影の時何も感じなかったの…。憎しみも、恨みも、それどころか、なんの感情も持たなかった。…まるで、只の赤の他人みたいな…。興味が全くなかったの…」

「え…?興味が…?全く?」

蓮が某然と言うと、キョーコも頷いて、蓮をまだ涙の名残のある潤んだ瞳で見上げた。

「私、そんな自分に困惑しながら、どうしてなのかデートの間考えたわ。そして…わかったことがあったの…。私、コーンの前でショーちゃんの話をして思いっきり泣いたことあったでしょ?」

「…うん。俺が記憶をなくして、君とここで暮らすようになってからすぐぐらいだったよね?」

蓮の質問に、キョーコは嬉しそうに微笑んで、蓮に自分から抱き付いた。

「私、あの時の涙はコーンが傷を癒す薬に変えてくれたんだと思ったの。私、あの後から凄くすっきりした気分で過ごせるようになって、ずっと不思議に思ってた。そしてあの撮影の時やっとわかったんだ。きっとあの時、話を聞いて涙を受け止めてくれたコーンのお陰で、私、ショーちゃんへの過去の思いから開放されたんだって。」

ーーー胸に感じる暖かな感情はすべてが、コーンに向かってる。

キョーコが蓮の大きな胸板に顔を埋めて強く抱き締めた。

蓮は、腕の中にある温もりに込み上がる愛しさを抑えることが出来なかった。

蓮もギュッとキョーコを抱き締める。

ーーー愛しくて、愛しくて、堪らない。

二人は抱き締めあったまま、それぞれの胸の中で愛しさの炎を焦がす。

「俺も…キョーコって呼びたい…。」

蓮が緊張して声を震わせながら言葉にする。

キョーコは驚いた目をコーンに向けた。

「…ダメ?」

蓮の強請るような表情にキョーコは真っ赤になりながら、クビを振った。

「嬉しい。ずっと、キョーコって呼びたかったんだ!キョーコ!!キョーコ!!」

蓮が破顔して、何度も何度もキョーコを名前で呼んだ。

キョーコの胸に喜びが広がり、それと同時に恥ずかしくもなって、顔が一気に真っ赤になる。

「私も、コーンに名前を呼ばれるの…嬉しい。…でも、そんなに何度も呼ばれると、恥ずかしいよ。」

キョーコの言葉に蓮はますます破顔する。
愛しさが次から次へと溢れてくる。

「キョーコも、俺を久遠って呼んでくれる??」

「え?コーン…じゃ、なくて??」

「うん。キョーコに呼ばれたいんだ。」

キョーコはモジモジと顔を伏せて何度も言おうと口を開くが、恥ずかしさからか、なかなか呼ぶことが出来ない。

そんなキョーコを蓮が急かす。

「キョーコ。」

甘い甘い声で囁くと、顔を真っ赤にしたキョーコが上目遣いで蓮を見上げた。

可愛い唇がゆっくりと動き、ようやく待ち望んだ音を発した。

「く、久遠…。」

小さくて小さくて、消え入りそうな声だったが、蓮の耳にはしっかりと届いた。

ーーーあぁ、もう止まらない!!好きで堪らない。愛しくて堪らない…。もう、君なしでは生きて行くことさえ難しい…。

蓮の中でキョーコへの想いが爆発寸前まで膨れ上がっていた。


(続く)

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*****

※Amebaで2011/12/23に公開した話を若干訂正したものです。

ちょうど4年前の投稿を追いかけてるような感じになってきました(笑)

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

敦賀蓮の噂と本性《リクエスト》

こっそり募集したリクエスト!
少し間が空きましたが、漸く出来ました!
SAILEE様!こんなので如何でしょうか?!


*****


敦賀蓮の噂と本性


『俺から逃げられると思った?』

マントを翻し、女性をベッドに押し倒したマントの男は、そっと顔につけていた仮面を半分だけずらすと艶のある怪しい笑みをその顔に浮かべた。
男の手がそっと女性の頬を撫でる。

『今宵は俺がキミを蕩けさせる。』

男の唇がアップになり、女性のそれに重なりそうになったところで、テロップが流れた。

ーー新発売。大人の微糖チョコレートRen。ーー




交通量の多い交差点側に設置された大画面では、今話題の蓮がメインのCMが流れていた。

女子高生、OL、その場にいた女性たちは画面を食い入るように見ており、CMが別のものに変わった瞬間、今のCMの話題で盛り上がっていた。

そしてそのCMに釘付けになっていた女性たちの中には、最上キョーコもいた。

真っ赤な顔で口をパクパクさせている。

「な、何あれ…」

男の人のくせにあのダダ漏れの色気はズルいと常々思っているキョーコは朝っぱらから物凄い色気に当てられてしまい、心臓がバクバクと音を立てていた。

CMのカットはちゃんと女性が感情移入できるような構成になっており、自分達があたかも蓮に迫られてるようなそんな印象を受けるので、チョコレートの売れ行きも他に例を見ないほどの馬鹿売れだと巷で話題をさらっているとは聞いていたが、キョーコはまだ目にしたことがなかったのだ。

何とか落ち着いて歩き出そうとした時に、ふと、先ほどのCMを見ていたであろう女子高生たちの会話が聞こえてきた。

「やっぱり蓮カッコいいよねー!!」

「本当本当!あんな風に一度でいいから迫られたーい!」

実際に何度か蓮に迫られたことある経験者としてキョーコは心の中で、『やめといた方がいいわ。とてつもなく心臓に悪いから。』なんて思ってしまう。

「でもさー。蓮って女性関係とか全然騒がれないよね〜。」

その一言にキョーコの歩き出そうとしていた足が止まってしまった。

「確かに。でも蓮には彼女とか作って欲しくないな〜!」

歩きながら話し出した彼女たちに歩調を合わせてついうっかり聞き耳を立ててしまう。

「だけどさ、あんなにかっこいいんだよ?周りの女達だって放ってないでしょ?全く騒がれないのっておかしくない?」

「だよねー。あんな風に迫られたらイチコロだもんね。」

「あ、わかった!蓮ってさ実はあぁ見えて草食系だったりして!」

「狼の皮を被った羊…みたいな?!あり得るー!!!!」

ーーーいいえ、あり得ないわ!あんな色気だだ漏れな羊がいてたまるもんですか!

「蓮ってばああ見えて、超奥手とか?!」

「えぇ〜やっだー!それはそれで…なんか素敵かも…」

ーーーああああ!声を大にして叫びたい!!貴女達は知らないでしょうけどねー!敦賀さんの本性は、本当の本当は…!!





「プレイボーイのいじめっ子な似非紳士で、花魁も裸足で逃げ出すような色気だだ漏れな夜の帝王で大魔王なのよぉぉぉ!!!!」

駆け込みでラブミー部室に入り扉を閉め鍵を掛けるや否や、キョーコは思いっきり叫んだ。

「はー。スッキリした。」

キョーコはここに来るまで堪えに堪えた分、物凄くスッキリとした表情になって、ルンルン気分でクルリと部室に体を向けると、スキップしそうな足取りで己のロッカーに向かった。

ガチャっとロッカーからラブミーツナギを取り出しながらブツブツと独り言を呟く。

「大体ねー!敦賀さんが草食系男子で狼の皮を被った羊だなんて、馬鹿にするにも程があるわ!敦賀さんは立派な狼よ!肉食系よ!!いいえ!敦賀さんに比べたら狼の方が可愛いかもしれない。一度迫られてご覧なさいな。逃げなきゃ!っていう思考すらあの人は壮絶な色気で封じ込めてしまうんだから。頬へのキスだけであの思考の破壊力!!どんな鉄壁のバリアでも粉々に砕け散るのよ!あれを唇にされた日には…なんてうっかり考えるだけで、もうっ!!とってもとっても破廉恥な気持ちにされちゃうんだから!敦賀さんはあの色気でどんな女性の心臓もハートも根こそぎ奪っていくのよ!私の頑丈にかけた鍵さえ破壊して凍りついた心を内側から溶かしちゃうんだから!まさしく夜の帝王!!帝王の前ではどんな女性も腰が砕けてその身を捧げてしまわずにはいられなくな…」

キョーコは独り言の途中でピシリと固まった。
何故ならラブミー部の部室には自分だけのはずなのに、キョーコの背後に人の気配が近付いたかと思えば、ロッカーに自分より大きな人物の影が落ちたからだ。

大きな手が背後から伸び、キョーコの顔の横を通り過ぎる。
その手の位置から考えると背後から壁ドンをされてるのがわかった。

それもかなり近い距離から。

ーーーこの手の大きさと指のバランス…まさか…

目の前にあるのは見覚えのありすぎる手の骨格と肌質だった。

キョーコの背中に冷や汗が伝う。

「ふーん?どんな女性も腰が砕けてその身を捧げてくれるんだ?」

頭のすぐ後ろから低く聞き覚えのありすぎる魅惑的な声がかった。

「その女性の中に、勿論、最上さんも入ってるって考えて良いんだよね?」

ギギギギギギギ…

キョーコは恐怖映画のヒロインのように恐る恐る振り返った。

「夜の帝王か…中々面白いネーミングだね。気に入ったよ。」

「ひぃっ」

「おや…帝王に向かって、悲鳴?君も中々面白い反応するよね?」

夜の帝王になりながらも似非紳士スマイルで蓮がにっこりと微笑む。

「つ、敦賀さ…い、いつから、こちらに…」

鍵は掛けたはずと思って真っ青な顔をしたキョーコが問えば、蓮は首をかしげてキョーコの目を覗き込むと妖しく微笑んで答えた。

「ん?君がラブミー部室に駆け込んでくる5分くらい前からかな?」

「…!!!!」

ーーーウソ…!!

キョーコはショックで声も出ない。
ビキリとガラスにヒビが入ってしまったように顔と身体が見事に固まる。
蓮はその肘を曲げ、キョーコにさらに顔を近付けた。

「面白いことを沢山言ってたよね?プレイボーイでいじめっ子な似非紳士っていうのも、花魁も裸足で逃げ出すような夜の帝王で大魔王っていうのも全部、俺のことだよね?」

キョーコは蓮の顔が迫ってもショックが大きすぎたのか、固まったまま何の反応も反論も出来ず、ただただ蓮を凝視していた。

「それに…」

蓮のもう片方の手の親指がツイッとキョーコの唇を優しく撫でた。

「キス…うっかりどんな感じなのか想像してくれてたんだ?」

ーーカァァ

キョーコの頬が瞬時に赤く染まった。
それに蓮は一瞬驚いたように目を見開いて、そしてすぐにその目を細めた。
キョーコの目はウロウロと彷徨うが、いつの間にか顎は蓮にしっかり固定されており、動かすことが出来ない。
蓮はフッと口元を緩めると壮絶な色気を放ちながら、キョーコに囁いた。

「して…あげようか…?」

「なぁ?!」

キョーコが真っ赤な顔のまま素っ頓狂な声を上げる。
蓮の顔がグッと寄せられ、キョーコは慌てた。

「け、けけけけけけけけけけけけっこうです!!」

「遠慮しないで…ね?最上さー」

「はい!そこまでな!!!!」

パシンという手を叩く音と同時に割り込んできた突然の第三者の介入に、キョーコはビクッと肩を揺らし再び固まった。
蓮はふうっと少しだけ残念そうに溜息をつくと、恨めしげに背後を振り返った。

「何で止めるんですか?社さん。」

「蓮、お前な…順番が違うだろ!いきなりそんなことするからいじめっ子呼ばわりされるんだよ。」

「やややや社さん?!な、なな何故ここに!!」

「あぁ、ごめんね。キョーコちゃん、俺も蓮と一緒にラブミー部室にいたからさ。全部聞こえちゃったよ。」

「ふぇぇ?!」

「とりあえず、蓮!キョーコちゃんと両想いなのがわかって嬉しかったからって暴走するな!まずちゃんとお前がキョーコちゃんが好きだって気持ちを伝えろよ!」

社の言葉に、キョーコは目を見開いて驚き叫んだ。

「ええぇ?!」

「ちょ!や、社さん!!何で俺より前に貴方が俺の気持ちを勝手にバラしてくれちゃってるんですか!!」

蓮は顔を赤くして慌てて社に抗議をした。

「お前がちゃんと言わないからだろう!キスより前に気持ちを伝えろ!ったく。恋愛初心者のヘタレめ!」

最後の言葉はボソッと呟いたので、幸か不幸かキョーコには届かなかったようだ。

「え?!え?!ええぇ?!敦賀さんが、私を?!そんな…まさか。何かの間違いじゃ…」

蓮はハァァァと深くため息をついた。
ついでにそのままキョーコの肩に頭を乗せる。

「ちょ?!え?!敦賀さん?!」

キョーコはそんな蓮の行動と先ほど言われた社の言葉が頭の中を引っ掻き回し、何が何だかわからず、一人テンパっていた。
そんなキョーコの肩に頭を埋めたまま、蓮は白状した。

「全部本当。」

「え?!ほ、本当って…?何がでしょう?」

「社さんが今言ったこと。全部、本当だから。」

「そ、それって…え?!ええええええ?!な、何言って…」

「さっきの君の告白…。」

「こ、こく?!あ、あれは…ちが…」

キョーコは先ほどの独り言は告白ではないと弁明しようとした。そもそも側にいることに気付いてなかったのだから、あれは告白というより事故に近い。
でもそんなキョーコの弁明より先に、蓮は蓮らしからぬことを言った。

「凄く、嬉しくて舞い上がった。」

「へ?!」

蓮は顔を上げ、少しだけ困ったような顔で、情けないよなという微笑みを浮かべた。

「嬉しくて嬉しくて、でもどうやってこの気持ちを君に伝えたらいいかわからなくて、気付いたらあんな風に迫ってた。」

「ふぇぇ?!」

ーーーえ?!なに?!なんなの?!どういうこと?!

「君が好きだ。自覚したのはダークムーンごっこをした時だけど、多分、それよりずっと前から。」

蓮は真剣な顔でキョーコを見つめながら気持ちを告げた。
キョーコが目を見開いて固まる。

「…う、そ…そんな訳な…」

「出会った頃から、君は俺の特別だった。君の行動は目が離せなくて、放っておけなくて、こんな過酷な世界で君みたいな子がやってけるはずないって…。だけど、君が演技で自分自身を作りたいって言った時に俺は君の本質をちゃんと見てなかったことに気付いた。君が誰よりも真っ直ぐで嫌いなことにすら負けず嫌いで挑んでいくことを俺は知ってたはずなのに…」

蓮はそっとキョーコの頬を手で包んで、過去のキョーコに想いを馳せ、目を瞑った。

「…?敦賀さん?」

そんな蓮を見上げながらキョーコは首を傾げる。
心臓はドキドキと激しく脈打っていた。

本当、なのだろうか…?信じてもいいんだろうか…。だとしたら、この今、胸の中に燻ってる蓮への秘めた気持ちは…

キョーコはそっと胸の前で拳を握った。

ーーー解放してもいいの?

もう一度ゆっくり蓮を見上げると、蓮もキョーコを見ていた。

ーードクン

キョーコの心臓がまた大きく跳ね、二人の視線が引き合うように強く絡む。

頬に添えられた蓮の手が物凄く熱く感じた。

「ぁ…」

「好きだ。最上さんが…ずっとずっと…君だけが俺にとっての大切な女の子だった。君の言動に一喜一憂して、振り回されて…でもそんな時間も君との時間は愛しくて…大切で…。」

「敦賀さん…」

キョーコは蓮の想いを聞いて胸がギューっと苦しくなった。
目がだんだんと潤んでくるのがわかった。

愛しくて愛しくてたまらない。
そんな想いの洪水がキョーコからも溢れ出す。

「わたし、も…」

「最上さん?」

「私も、敦賀さんが好き。貴方が好きです!」

蓮が丸々と目を見開いた。
そして一気に破顔すると、キョーコを力一杯抱きしめた。

「きゃ!」

「本当?」

「はい。本当です。」

「ウソじゃない?」

「はい。嘘じゃありません。敦賀さんこそ、嘘じゃないんですか?」

「俺も嘘じゃないよ。本当だ。本当の本当に愛してる。」

「あ、愛?!」

キョーコは蓮の腕の中で再び真っ赤になってしまった。

「うん。愛してる。もう逃がさないから。君が逃げたら俺は地の果てまで追っていくよ。」

「くすくす。なんか…怖いです。でも私も…しつこいですよ?もし敦賀さんが裏切ったら地獄の果てまで鬼を引き連れてだって追いかけますからね。」

「はは。それは怖いね。」

二人は抱き合ったまま互いの気持ちを噛みしめていた。
キョーコもいつも以上の極上の敦賀セラピーにうっとりと瞳を閉じた。


暫くして社が咳払いをすると、漸く名残惜しげに二人は離れた。

幸せそうに微笑みあう二人を引き離すのは気が重いが、次の仕事に向かわねばならないのだ。

「蓮、そろそろ時間だ。」

「はい。わかりました。じゃあ、俺は行くから…。」

「はい。あの、お気を付けて。」

「うん。」

蓮は優しい眼差しでキョーコを見つめたまま、そっと微笑んだ。

「行ってきます。」

蓮の言葉に、キョーコは一瞬驚いたように目を見開いたが、ほにゃりと顔を緩めて笑った。

「行ってらっしゃいませ。」

そのあまりの凶悪すぎる可愛さと破壊力に蓮はその場に無表情で固まると、ギュッと腕を組んで再び抱き締めそうになる腕を押さえつけた。

「…うん。」

急に硬い顔になった蓮に、キョーコはキョトンと首を傾げる。

「敦賀さん?」

「いや、あの…あぁ、そうだ。あの、これ、鍵。家の…それで、多分、今日は10時には上がれると思うから…だから…」

キョーコはカードキーを受け取ると、しっかりと握りしめて満面の笑みを作った。

「はい!わかりました!不肖最上キョーコ。敦賀さんのお食事作ってお待ちしてますね。」

あっさりと鍵を受け取り、パァァと花が咲くように輝いたキョーコの笑顔に、蓮は、次の仕事がなければ…!!と本気で思った。

「…うん。お願いします。」

なんとかその一言を絞り出して、後ろ髪を引かれながら社と共にラブミー部室を後にした。

「蓮?今日の仕事、てっぺん超えるって…」

「社さん、終わらせましょう。いえ、終わらせてみせます。何としても10時までにっ!」

「おま…いやいや、今日のは流石に…」

キョーコの知らぬところでそんな会話があったのだが、流石無遅刻キング。
約束した時間をきっかり守って帰宅していた。

「あ、敦賀さん!おかえりなさい!」

愛しい恋人が待つ家に。

「ただいま。最上さん。」

さぁ、恋人同士の楽しい夜の時間はここから。
まずは君を抱きしめさせて?

「きゃ!つ、敦賀さん!もう。ご飯が冷えちゃいます!」

ーー多分、君が言う夜の帝王とやらになっちゃうだろうけど、いいんだよね?最上さん。

「はいはい。じゃあまずは、君の作ってくれたご飯を頂こうかな。」

蓮はクスリと微笑みながらキョーコを解放したのだった。
この後のキョーコとの楽しい時間を思い描きながらーー。


リビングでは珍しくテレビが付いていた。

「敦賀さんは、楽な格好に着替えてきてください。すぐ支度しますね。」

キョーコがキッチンへ消え、蓮も寝室へ着替えに行った。
誰もいなくなったリビングに、テレビから例のCMが流れる。

ーー『俺から逃げられると思った?』


ーー『今宵は俺がキミを蕩けさせる。』

女性に迫るカットでチョコレートの商品名が流れていた。

誰のことをイメージしながら演じたのか、蓮の気持ちに気付いていた社や社長には一目瞭然だっただろう。この気持ちが少しでもキョーコに届けばいいと願いながら望んだCM撮影はある意味成功だったと言えるのかもしれない。

今宵、蓮は蕩けさせることが出来るのか…。

そこは狼であり、夜の帝王でもある蓮の腕の見せ所なのだろう。



END

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*****


SAILEE様、如何でしたでしょうか?

一応ちょこっと最初のリクエストにあった仮面要素も入れてみました(笑)

☆SAILEEさんからのリクエスト☆
《草食男子 敦賀蓮の話題が出てるのを影で聞いてしまった京子さんがブツブツ言っているところに超肉食系(夜の帝王)で迫る蓮さんがみたいです。》
でした!!

肉食系で迫る部分が思ってたより短くなってしまいましたが、きっとこの後に蓮様は再び肉食系になってると思います!(笑)
お楽しみ頂けたら幸いです。

素敵なリクエストをありがとうございました!!

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

なくした記憶《リクエスト番外編☆2》

更新しなかったり、今回みたいに3話をそれほど時間開けずにUPしてたりしてすみません。
本当にびっくりするくらい気まぐれ更新です(笑)


ブログ一ヶ月記念 リクエスト第五弾。(続き)
☆朱烙さんよりリクエスト☆
『なくした記憶設定で、蓮が久遠の姿でキョーコは昔の黒髪にツインテールは無理そうなので、2つくくり?の姿でオフ日にデート』

※なくした記憶シリーズでは、23話の前後くらいに当て嵌まるお話にしております。

それではレッツチャレンジ!!
後半です。お楽しみ下さいませ。


*****


なくした記憶《番外編☆2》


「ふわー!!やっぱり映画館って凄いね!!大きなスクリーンって映画の中に入り込んだような気分になって、ドキドキしっぱなしだった!!」

映画館を出たらちょうどお昼時と重なり、二人はランチでイタリアンのお店に入っていた。
頬を染めつつニコニコと楽しそうに話すキョーコを見て、蓮の顔も自然と綻ぶ。

キョーコは、蓮にドキドキし過ぎて映画に全く集中出来なかったことを隠すため、一生懸命映画の内容を思い出しながら話しをしていた。

蓮もキョーコを意識し過ぎて、映画の内容など全然覚えていかなったのだが、そんな風に映画の内容と感想を懸命に語るキョーコを蕩けるような笑みで、満足そうに相槌を打ちながら応えていた。

そんな二人の様子に、他の女性客と一部の男性客は、それぞれ目の前に自分の相手がいるにも関わらず、蓮とキョーコの醸し出す雰囲気と姿に、赤面しながら見惚れていた。
二人に目を奪われるあまり、中にはグラスの中身を零す者、知らない内にフォークを取り落としている者、口に食事を運ぶ直前で止まってる者もいたのだった。

そんな周囲の様子に気付くはずもない二人は、お互いにパスタを口に運びあったりとラブラブっぷりを周囲に撒き散らしていた。

ランチのパスタの味も申し分なく大満足でニコニコと笑顔を交わしながらイタリアンのお店を出る時には、店の客という客が2人の甘々な姿に砂を吐いていたのだった。


次に蓮がキョーコを連れてきたのは水族館だ。
これまた生まれて初めての水族館にトキメキいっぱいのキョーコに微笑みながら、蓮はキョーコの手をとって歩きだした。

中に入ったキョーコは興奮のあまりすぐに駆け出そうとするので、蓮は苦笑しながら、キョーコと手を繋いだまま後を追った。


ようやく落ち着いてきたキョーコにホッと安堵の息を吐いた蓮が、パンフレットに視線を落としたところ、イルカショーが20分後にあることを知った。
早速キョーコにそれを告げると、キョーコは飛び上がらんばかりに興奮して喜び、急に蓮の腕を抱き締めると、そのままグイグイと急かす様に引っ張って、イルカショーの会場へと向かっていった。

蓮はイルカショーに心から感謝しつつ、キョーコからの腕への抱擁に破顔していたのだった。


蓮の助言を聞き入れ、一番前で観たかったのを我慢して、真ん中くらいの位置からイルカショーをみると、蓮が最前列は危険だと言った意味が良く理解出来た。

最前列に座った親子と学生たちが水浸しになっていたのだ。

キョーコは蓮に腰を抱かれて密着した状態で座らされていた為に、またもやイルカショーに集中出来ないのではないかと思っていたのだが、イルカショーが始まると一気にそんな恥ずかしさは何処かへ飛んで行き、目を輝かせてショーを食い入るように見つめた。

「コーン!!みてみて!!凄いよ!!ほら!!」

「うん。本当だね。」

蓮もキョーコと一緒にイルカショーを幸せいっぱいの目で見つめた。

「わっ!ジャンプ!!」

キョーコは子供のようにきゃっきゃっとはしゃいでいる。

蓮はそんなキョーコを見つめ、可愛さのあまり我慢出来ずにキョーコの頬に口付けた。

「キョーコちゃん、本当にもう、可愛すぎだー!!」

蓮はキョーコを抱き締めると、キョーコの頭にグリグリと自分の頬を摺り寄せた。

「きゃ!!こ、コーン!!や、やめてってば!!恥ずかしい!!!!!」

全身真っ赤に染め上げて赤面しつつ抗議するも、蓮の大きな身体に敵うはずもなく、キョーコは蓮に抱き締められたままイルカショーを見る羽目になってしまったのだった。

あっという間にイルカショーは終わり、キョーコはぷりぷりと蓮に怒っていた。

「もー!!コーンのせいで、イルカショーが最後までちゃんと見れなかったじゃない!!」

キョーコが頬を染めて、怒りを込めた目で蓮を見上げるのだが、その瞳は若干潤んでおり、蓮は反省するどころではなく、キョーコを離すことが出来ない。

「キョーコちゃんが、可愛すぎるから悪いんだよ?」

ごめんね。と謝るつもりだったのだが、蓮の口から出た言葉は全く違う言葉だった。

キョーコは、蓮の腕の中でまたもやアタフタと顔を真っ赤にして暴れた。

「コーン!!もー!!はーなーしーてー!!」

「んー。もうちょっと。」

蓮はキョーコの髪にまたもやスリスリと頬擦りすると、頭のてっぺんに数回キスして漸く離れる。

キョーコは、顔を真っ赤に染め、口をパクパクしながら、言葉なく蓮を指差していた。

蓮はそんなキョーコの姿がおかしくて思いっきり噴き出すと、お腹を抱えて笑いだした。

顔が真っ赤のままポカポカと殴ってくるキョーコの手を、蓮は笑いを必死に収めながら取って歩きだす。

蓮はさっきのお詫びに…と言いながら、ショップでイルカのブレスレットと、イルカの指輪と、イルカのぬいぐるみを購入するとキョーコにプレゼントした。

「え?!そんな…いいです!!」

手渡そうとしたら遠慮するキョーコの手をとり、蓮は心の中で、いつか堂々と指輪を贈れる関係になりたいという思いを込めながら、キョーコの指にそっとイルカの指輪を嵌めた。
おもちゃの様に可愛い指輪を右手の薬指にされて、キョーコは目を見開いて、照れながら微笑んだ。

可愛い笑顔を向けられた蓮は一瞬無表情になるのだが、すぐにキョーコの左手をとると、薬指に口付ける。

ーーーいつかこの指に…必ず。

そう心に誓いながら唇を離すと、キョーコが真っ赤な顔のまま固まっていた。

その現場を目撃した店員や客も見事に赤面したまま砂化していた。

蓮はやり過ぎたかな??と苦笑しつつ、キョーコの手にブレスレットとイルカのぬいぐるみを持たせると、空いた手をとり、未だ真っ赤な顔のまま、呆然としているキョーコを連れて歩きだした。

水族館の中も満足するほど見て回れた2人が水族館を出ると、時刻は17時を少し過ぎたところだった。

次に蓮がキョーコを連れて向かったのは展望台だった。
蓮のマンションから見える景色よりも、高い場所から見える景色にキョーコは凄いと言ってはしゃぎながら、景色を満喫していた。

「ほら、キョーコちゃん夕陽が綺麗だよ。」

「うわぁ!!本当だ!!凄い!!素敵ね、コーン!!」

キョーコが目をキラキラさせながら外の景色を見るので、蓮は嬉しそうな顔でキョーコを見つめ、そっと後ろからキョーコを抱き締めた。

キョーコが驚いて固まるのだが、蓮はキョーコの頬に自分の頬をくっ付けて同じ高さで景色を眺めた。

「こうやって見ると、おんなじ目線になるね?」

嬉しそうに言う蓮に、キョーコはドキドキと心臓を早めながら、平気なふりして景色を見る。

ーーーずっとコーンとこんな風に一緒にいたい…。

キョーコの中で蓮への思いが深まる。
キョーコはそっと、蓮が腰に回している手に自分の手を重ねた。

蓮はそれに気付くと、さらにキョーコを抱き締める腕に力を込める。


ーーーこんな風に一緒にいられるのはいつまでなのか…。

2人はそれぞれ、同じ想いを胸に夕陽を眺めた。



「本当に高いですね!!街がミニチュアみたいです。」

「うん。そうだね。…もっと高いところから見たい?」

蓮がキョーコから頬を外しながら、イタズラっぽく微笑むのに気付かず、キョーコは驚いた顔で蓮を振り返った。

「え?!見たい!!見れるの?!…きゃ!!」

キョーコの目が輝いたのを見た蓮は、キョーコをそのまま抱き上げると、自分の腕に座らせるようにキョーコを抱き上げた。
慌てて蓮に抱きつくキョーコだが、ちょうど胸の位置に蓮の顔があり、わたわたしながら顔から離れた。

暴れるキョーコを宥めて、蓮は外の景色をキョーコに見せた。

「ほら、さっきよりも高いだろう?」

嬉しそうにいう蓮に、キョーコは微笑んで答えた。

「うん!ほんとだ!凄く高いねコーン!!凄く、綺麗!!」

夕陽は落ちて、空には沢山の星が出ており、街にも光が溢れていた。

キョーコは蓮の腕に抱えられてることも忘れて、景色を眺めた。

そんなキョーコを満足そうに見上げている蓮の笑顔は相変わらず物凄い破壊力を持っており、2人に見惚れて固まる人が続出したのは言うまでもないだろう。

一通り景色を堪能した2人は、蓮が予約していた高級レストランへと入っていった。
あまりにも場違いに感じたキョーコが気後れするが、ここはハンバーグが有名なんだ。という蓮の言葉を聞き、キョーコは入る決心をした。

しかし、自分が入るには場違いと感じるくらい高級な雰囲気にキョーコは怖気付き、蓮に隠れるようにピッタリくっ付いて、こそこそと奥へと進む。

個室に通されたことで、ようやくキョーコが安堵のため息を吐くと、目の前の蓮が楽しそうにクスクス笑ながらキョーコを優しい目で見つめていた。

今日何度目かわからないくらい跳ねてる心臓がまたもや跳ね、キョーコは心の中で嘆いた。

ーーーもーー!!コーンってば本当に、どこにいても、心臓に悪いわよ!!

真っ赤な顔のまま下を向いてしまったキョーコの顔を静かに見つめ続ける蓮。

ーーー本当にキョーコちゃんは可愛いな。ずっと人目につかない所に閉じ込めて置いておきたいくらいだ。

キョーコが蓮をチラリと見る。
いつも以上に落ち着かない気持ちにさせられるのは、蓮の容姿がいつもと違うからかもしれない。

これが本来の蓮の姿なのだと思うと、キョーコの心臓はドキドキと高鳴り出す。

あの澄んだ碧目から見つめられると、心の中まで見透かされるようで、このまま今日が終わらなければいいと思ってしまう心が読まれるのではないかとドキドキしていた。


運ばれて来たハンバーグの味は想像以上で、キョーコはホクホクと顔を綻ばせて食べている。
蓮は昔、キョーコと一緒にハンバーグ王国を作ったことを思い出し、必死で笑いを噛み締めていた。

そしてやっぱり蓮も思うのだった。

今日この日のこの時間が終わらないで欲しいと。


いつまでも、君と一緒に…。
こんな和やかな時を共に過ごしたい…。


キョーコも蓮もそんな風に思いながら、帰路についた。
2人は手を握り合ったまま、無言で歩く。

蓮は一度髪型を元に戻さなければいけない為、キョーコをマンションまで送り届けると、社長と待ち合わせた所にいかなければいけなかった。

マンションの自分の部屋の最上階まで手を繋いだまま向かい見送りを済ませた蓮は、後ろ髪を引かれる思いで、その場を離れようとした。
しかし、キョーコが蓮の服の裾をクイっと掴み、蓮を引き止めた。

キョーコは真っ赤な顔のまま、デートの礼を述べる。

「あ、あの!きょ、今日は本当に一日中とっても楽しかったです!!あの、本当はずっとこのまま時間が止まって欲しいなって思うくらい楽しい時間がいっぱいありました!!コーン、今日は誘ってくれて、本当にありがとう!!」

そう言ってにっこり笑ったキョーコが蓮には本物の天使に見えて、眩しげに目を細めて微笑み返した。

「俺も、凄く楽しかったよ。」

「それで、あの、今日は沢山、コーンには色々な所に連れていってもらったり、買ってもらったりしたので、あの…お礼をしたいんです!!」

「いいよ。俺がしたくてしたことだし、買ったのもキョーコちゃんに喜んでもらえるの見て、俺が嬉しいからなんだ。」

蓮はお礼なんかいいよ。と優しく微笑むが、キョーコはそんな訳にはいきません!!と、ブンブンと首を振る。

それをみた蓮が、キョーコは仕事としてデートに付き合ってくれたのだろうか…と少しだけさみしそうに微笑み、困ったように言った。

「でも、お礼っていったって…いつもご飯作ってくれたりしてるし…」

それで充分だよ?と言おうとした蓮の服の裾をキョーコがまた、今度は強めに引くと、若干蓮の身体が傾いた。

すると蓮の頬に柔らかい何かが当たった。

ちゅっと言う、可愛らしい小さな音を立てて離れた柔らかい何かが、キョーコの唇だと気付いたのは、数十秒フリーズした後だった。

「………え?」

たっぷりと間を空けて蓮の口から漏れた間抜けな音は、キョーコの慌てた言葉にちょうど掻き消された。

「あ、あああの!思いついたお礼がこんなことしか浮かばずにすみません!!迷惑だよね!!ご、ごめんね!!」

「え?!いや…全然!!あの、ごめん。あの、一瞬何が起こったのかわからなくて、その、こんなお礼がもらえるとは思いもしなくて、凄く、凄く嬉しいよ!!嬉し過ぎて思考がとまっちゃったんだ!本当にごめん。」

涙目で謝罪しようとするキョーコに慌てて蓮も答える。
互いに慌てつつ、謝罪しあう。

しばらくアタフタした2人がようやく落ち着くと、お互いの慌てぶりに可笑しそうに笑いあった。

「ふふふ、ありがとうコーン!また行きたいね!」

「うん!こちらこそありがとうキョーコちゃん!また、色々な所に一緒に行こうね!」

最後は2人で微笑み合い、抱き合うと、互いの頬にキスをして、2人はわかれた。

「明日も仕事だろうから、先に寝てて良いからね。お休みキョーコちゃん。」

「うん。お休みコーン。気を付けて帰って来てね。」


こうして2人の初デートは互いの心に秘めた想いを隠したまま、幕が閉じたのだった。


END

※なくした記憶の本編はまだまだ続きます。朱烙さんのリクエストの番外編はこれにて終了です。

スキビ☆ランキング

*****


と、言う訳で、いかがでしたでしょうか?!朱烙様!!

始めて2人のデートを書いたこともあり、楽しみ過ぎてダラダラと書いてしまいましたよー!!
いやぁ!参りました!!
2人のデートコースに悩みまくりましたもん!

本当は某有名なテーマパークとかにしようかとも思ったのですが、いきなりのデートで…と思うところもあり、キョーコちゃんは友達がいなかったこととか、唯一の肉親の母親と小さな頃から不仲だったことを考えると、誰かと遊びに行く普通のことをしたことないんじゃないかなぁ?と思ったので、映画館とか、水族館とか展望台に連れていってみました!
ふふふ、暴走しまくりの話ですみません。(←とか言いつつ反省の色はございません。)

お楽しみ頂けた方がいたら幸いです。


※Amebaで2011/12/20に公開した話を若干訂正したものです。

わ!丁度4年きっかり前ですね!!
なんてこったー!!(汗)

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

なくした記憶《リクエスト番外編☆1》

ブログ一ヶ月記念 リクエスト第五弾。

☆朱烙さんよりリクエスト☆
『なくした記憶設定で、蓮が久遠の姿でキョーコは昔の黒髪にツインテールは無理そうなので、2つくくり?の姿でオフ日にデート』

※なくした記憶シリーズでは、23話の前後くらいに当て嵌まるお話にしております。そのつもりでお読み下さいませ。
それではレッツチャレンジ!!
お楽しみ下さいませ。


*****


なくした記憶《番外編☆1》


「ど、どどどうしよう!!緊張し過ぎて、言われた時間よりも早く着いてしまったわ!!」

春の日差しが暖かい平日の朝、キョーコは蓮から指定された待ち合わせの駅に来ていた。

ぽかぽかと暖かい陽射しを浴びて、いつもなら心も体もリラックスしそうなところだが、キョーコの心臓は落ち着きなく動いている。

ーーーこ、こんな人通りの多いところで待ち合わせなんて!!コーンは、なに考えてるの?!朝起きたら既にいないし、携帯も通じないからここで待つしかないじゃない!!

何日か前にデートしよう!と蓮に誘われ、そんなの無理!と逃げ回っていると、社から『このままだと、敦賀蓮の仮面が外れかねないからデートしてくれ』と頼み込まれてしまったのだ。

どうやら記憶をなくしたままの蓮は、温厚紳士な大人の雰囲気の敦賀蓮を演じるのに、相当なストレスが溜まっているらしい。それにプラスして、キョーコにシークレットゲストとのデート企画の番組依頼がきているのを知って、蓮の機嫌はここ数日すこぶる悪かった。

何処かで思いっきり発散させないと蓮の仮面が崩れると思った社は、泣く泣くスケジュール調整をして、キョーコに協力を仰いだのだ。

キョーコは、敦賀蓮の仮面の危機を聞いて、そういうことなら…と引き受けたのだが、記憶をなくしている蓮とのデートはかなり不安がある。

家の中ではカップルも真っ青なスキンシップを行ってくるのだ。
それを敦賀蓮の姿で公衆の面前でやられた日には…!!

キョーコは恐ろしさのあまり顔を青ざめさせ、身震いした。

ーーー恐ろし過ぎるっ!!

しかし、蓮とのデート。楽しみじゃない訳ではない。

蓮にとってはそういう意味ではなくても、大好きな人の一日中そばにいることが出来て、独り占めすることが出来るのだ。

キョーコは不安な気持ちと、楽しみな気持ちの狭間で考え込んでいて、後ろから近付く気配に全く気付かなかった。

一人百面相をしていたキョーコの視界が突如として真っ暗になりキョーコは小さな悲鳴を上げた。

何が起こったのかキョーコにはわからず混乱する。

「え?!な、なに?!」

キョーコは突然視界が遮られたことで恐怖を感じ暴れたが、次に後ろから聞こえて来た甘い声に今度は真っ赤になって固まってしまった。

「だぁ~れだ?」

ーーーなに?!え?!これってもしかして…。

「え?!こ、コーン?!」

後ろにいる人にだけ聞こえるように小さく答える。

「正解!!」

突然視界がクリアになると、後ろから嬉しそうな蓮の声と共に視界を遮っていた手をずらされ首元をギュッと抱き締められた。

「きゃあ!ちょ、ちょっと!」

周りの女性から黄色い悲鳴がいくつも上がった。

敦賀蓮から抱き締められるのをスクープされては大変だと、慌てて暴れるキョーコの目に、金髪の髪が見えキョーコの動きはぴたりと止まった。

「え?!コーン?!」

ニコニコと嬉しそうな蓮の姿は、あの夏の日に京都の河原で出会った妖精の男の子の姿に変わっていたのだ。

蓮はそっとキョーコを離すと向かい合わせに立った。
金髪に碧目。その姿が嬉しそうにキョーコを見つめていた。

「うん。ごめんね。キョーコちゃん、待った?」

「え?!いや…そんなには…。って、どーしたの?その格好!」

「テンさんにやってもらったんだ!変かな?」

「いや、あの!その、凄く…カッコイイ…よ?」

恥ずかしそうにモジモジと言うキョーコが可愛くて、蓮は破顔した。

「良かった!キョーコちゃんも凄く可愛いよ!そのワンピースも凄く似合ってる!あと、このイヤリングも。普段してないから新鮮だね。」

蓮が軽くイヤリングに触れながら言うので、キョーコのドキドキと鳴る心臓がうるさいくらいに動き出す。
しばらく耐えていると、蓮がジッと見つめていることに気付いた。

不思議に思ってキョーコが蓮を見上げると、蓮が何かを考えているようだった。

「んー。そうだ!いいこと思い付いた!!ちょっと待ってて!」

そう言うが早いか、蓮は携帯を取り出すと何処かに電話を掛け始めた。

「あ!俺です!どうせどっか側で見てるんですよね?折角なので、キョーコちゃんの髪型を少しいじって欲しいんですけど…実はーーー……。はい。……はい、それでお願いします。」

蓮が何やら話をして電話を切ると、近くに止まっていたワゴン車からローリィとミスジェリーウッズが現れた。
キョーコが呆気に取られてる間にワゴン車に連れ込まれ、あっという間に髪型をいじられると、ワゴン車の外に放り出されて、蓮に受け止められた。

「ありがとうございます」

蓮は二人に笑顔で礼を述べると、キョーコをジッと見つめて破顔した。

キョーコの髪はあの夏の日のように黒髪のウイッグを付けられ、ツインテールにされていたのだ。

「折角俺がこの姿にしたんだから、キョーコちゃんもその姿でデートしよ?」

蓮はイタズラっぽくウインクすると、キョーコの手を握った。

キョーコはその蓮の嬉しそうな無邪気な笑顔をみて、くすくすと笑うと、蓮の手をギュっと握り返した。

「うん。そうだねコーン!行きましょう。」

キョーコが蓮に微笑み返すと、蓮はキョーコの笑顔に思わず見惚れ、かたまってしまった。

「コーン??」

顔を覗き込まれ、ハッと覚醒すると、キョーコと目が合ってドキリとする。

ーートクン トクン トクン。

いつもより蓮の鼓動が早くなる。

「あ…えっと…その、その髪型…凄くいいよ。凄く、可愛い。」

改めて言われ、キョーコはまた真っ赤になる。

「も、もう!わかったから!ありがとう…早く行こう!」

キョーコが赤い顔を背けて、蓮の手をグイッと引いて歩き出した。

蓮は、蕩けるような笑顔でキョーコのその後ろ姿を見つめながら手を引かれるまま追いかけた。


「ねぇ、今日は何処にいくか決めてるの?」

キョーコが聞くと、蓮は楽しそうに微笑んだ。

「勿論。あ、キョーコちゃんは何処か行きたいところがあった?」

「え?!ううん。そういうわけじゃないよ。どこに行くのかな?って思って。今日は車じゃないんだね?」

「あぁ、うん。一応近くに停めてはいるけど、車じゃ…ね?」

蓮はそっとキョーコの手をとると、指を交互にして握り締めた。
所謂カップル繋ぎである。

「こうやってキョーコちゃんと手が繋げないでしょ??」

ニコニコと本当に嬉しそうに微笑む蓮。

キョーコは急に繋がれた手にドギマギしつつも、平気な振りを装う。


ーーー暖かくて…大きな手…。

「も、もー!コーンったら!!…でも……嬉しい。」

キョーコは言いながら頬を染め、蓮の腕に擦り寄るように、身体を近付けた。

蓮の心臓がまたドクンと跳ねる。

ドキドキと高鳴る心臓を互いに隠して歩き出す二人は互いに顔も赤くなっていて、誰がどう見ても初々しいカップルだった。

「じゃあ、まずは…映画なんてどうかな?」

蓮は咳払いを一つして、提案を切り出した。

「映画館?!映画館にいくの?!」

途端にキョーコの目が輝き出す。
蓮が首を傾げていると、キョーコが嬉しそうに照れながら言った。

「わぁー!私、映画館なんて初めてよ!!大っきい画面で観れるんでしょ?!」

きゃっきゃっとはしゃぐキョーコを見て、蓮は複雑な思いで、ニッコリと微笑む。

ーーーキョーコちゃんは、映画館にも行ったことないんだ…。もしかしたら、レジャー施設には今までほとんど行ったことがないのかも…。

蓮はキョーコが不破の家に預けられていたことも、尚のせいで友達すら出来なかったことも知っている。

小さい頃から働きづめのキョーコは、どこかに誰かと遊びに行った経験がないのだろう。
普通は親に連れられたり、友達に誘われたりという経験が少なからずあるはずなのに、それすら皆無なことに、不破とキョーコの周りにいた大人達に対する遣る瀬無い怒りが湧き上がる。

蓮は唇を噛み締め、キョーコの手を握る手に力を込めた。
キョーコが不思議そうに蓮を見上げるが、蓮は悪戯を思い付いた少年のような無邪気な笑顔を浮かべた。

「じゃあ、今日は色んな所に連れて行ってあげる。一緒にいっぱい楽しもうね。」

「うん!!」

蓮の言葉にキョーコは満面の笑みを浮かべて、嬉しそうに頷いたのだった。


映画館について始まるまで時間があるのでぶらぶらと二人でロビーをうろつく。

「あ!」

キョーコが小さな声を上げたので、蓮はキョーコの視線を追った。
キョーコの目が示していたのはポップコーンだ。

「キョーコちゃん、ポップコーン食べたいの?」

「うん!一度映画館で食べてみたかったの!買ってくるね!!」

キョーコが笑顔で駆け出そうとするので、蓮は慌ててキョーコの腕を掴んだ。

「俺も食べたいから、俺が買ってくるよ。何味がいい?」

「え?!で、でも…」

「いいから、今日は男の俺に花を持たせてよ。」

蓮が有無を言わせない笑顔で言うので、キョーコは頷くしかなかった。

「わ、わかった!」

「うん。ありがとう。じゃあどの味がいい?」

「そうね…じゃあ、キャラメル!」

「オッケー。ドリンクは??」

「オレンジジュースでおねがいします。」

「わかった!」

二人は話しながら楽しそうにレジへと向かう。


レジに着いて蓮が注文をした。

「ポップコーンのキャラメルをMサイズで。あと、オレンジジュースと…」

蓮の注文してる中、キョーコは辺りをキョロキョロと映画館の中を見回している。

「ホットコーヒーで。」

蓮の最後の注文を聞き、キョーコがパッと蓮を見た。

「ん?何??」

「コーヒー?…飲めるの?」

キョーコのからかうような言葉に蓮がむすっとした顔を作る。

「馬鹿にしないでよ。あれから飲めるように努力したんだよ。」

そんな蓮を見て、キョーコがくすくすと笑う。
役者の敦賀蓮からはとても想像出来ない今の蓮の姿が、キョーコには可愛くて堪らなかったのだ。



キョーコが観たいと言った映画が、蓮こと、久遠の父親、クー・ヒズリの映画だったので蓮は複雑だったが、キョーコが嬉しそうにしているので、まぁ良しとした。

一番後ろの席に着きながら、大きなスクリーンに感動しているキョーコに、蓮が問いかけた。

「キョーコちゃん、クー・ヒズリのファンだったんだね?」

すると、キョーコは驚いた顔を蓮に向けて、「あ。そっか…。」と小さく呟くと、蓮に以前クー・ヒズリ来日の際に社長の指令でお世話係をしたことがあることを告げた。

蓮は心底驚いた顔をしていたので、キョーコは不思議に思ったが、それ以上に、キョーコには気になることが浮かんだ。

「そう言えば、先生とコーンってどこか似てるよね?」

その言葉に一気に蓮の顔が強張った。

「え?!あ、ごめん!!変な意味はないのよ?」

キョーコは蓮の顔を見て、何か気に障ることを言ってしまったのかと、慌てて訂正するが、蓮は大きなため息をついて、白状した。

「まぁ、親子…だからね…。」

「えぇえ?!」

今度はキョーコが驚愕の表情で固まる番だった。

「う…そ…。じゃあ、コーンは…久遠さん…??敦賀さんは、コーンで、久遠さん??」

キョーコは物凄い形相で視線を蓮から外し、下を向いてブツブツと思考を巡らす。

「キョ、キョーコちゃん?!」

蓮はそんなキョーコの姿にギョッとする。

ーーーこんな表情もするんだ…。

そんな風に新鮮に思いながらキョーコをこっちの世界に連れ戻すために頭を撫でると、いきなり涙目で睨みつけら怒鳴りつけれた。

「どーして教えて下さらなかったんですか!!」

「え?!」

「よりにもよって、本人の前で演じてたなんて、酷すぎます~!!」

「へ?!な、何が?!」

蓮が問いかけてもキョーコは自分の世界でアタフタと奇声を発している。

「ご、ごめんね??」

一体全体何に怒られて何に謝ってるのか…。
しかし、映画館でこれ以上騒ぐのはまずい。

周りの視線が突き刺さっている。
ここは穏便に沈めないと…。

「キョ、キョーコちゃん、ほら。映画始まるから、皆に見られてるよ。映画館では静かに…ね?」

蓮が声のボリュームを下げて言うと、キョーコはハッとして周りを見回した。

すると、注目を集めてしまったのがよほど恥ずかしかったのか、ボンっと音を立てたように真っ赤になると、キョーコは俯いてしまった。

蓮はキョーコの顔を他から隠すように肩を抱き寄せ、胸元に顔を埋めさせた。

「う、す、すみません。」

「いいから、落ち着いて…ね?」

キョーコは蓮の香りを胸いっぱいに吸い込むと、安心して落ち着いて来た。

「ありがとうございます。だいぶ落ち着きました。」

キョーコが顔を上げると、思いの外蓮の顔が近くにあり、心臓が大きく跳ねる。

予告が始まり、薄暗くなった館内…。人々の目はスクリーンに向いている。


しかし、二人は互いから目を反らせないでいた…。


蓮の手がキョーコの頬を捉える。

徐々に近づく顔にキョーコの思考力を奪われる。

あと少しでーーーー。


ーードーン!!

物凄い爆発音に、キョーコが飛び上がり、蓮から慌てて離れた。

スクリーンの中では大爆発が起きており、ビルが崩れるシーンの予告が流れている。

キョーコはドキドキとうるさい心臓を宥めながら、俯いて目を瞑った。

蓮は画面に目を向けつつ、キョーコを落ち着かせる為、柔らかなツインテールの黒髪をサラサラと撫でた。


その後本編が始まったのだが、キョーコは暗闇で感じる蓮の暖かさと、髪を弄ばれる感覚で映画に全く集中出来なかった。

ーーーデートで映画館に行くってこんな感じなんだわ…。


キョーコは今、正にデートしているのだが、デートという自覚がないのかそんなことを熱くなる胸を抑えて考えていた。

ーーーそれにしても、おかしいわ。家ではいつも膝に座ったりして密着するのには慣れてるはずなのに、何でこんなにドキドキするのかしら?!家以上にドキドキするのは何で?!!

キョーコは家にいる時にも、抱き締められたり膝に座ったりするのにはドキドキしているのだが、いつもと違うシチュエーションの為か、同じドキドキでも、また違うドキドキに感じていた。


(続く)


*****

始めて書くデートコースがなかなか決まらず、朱烙さん大変お待たせしました!!

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※Amebaで2011/12/19に公開した話を若干訂正したものです。

なくした記憶 23

なくした記憶 23


蓮がキョーコへの想いに自覚して数日。

蓮は事故で記憶を失ってるにも関わらず、完璧な敦賀蓮を演じれるようになっており、違和感なく皆から受け入れられていた。

蓮自身も、敦賀蓮を演じることに慣れて来たようだ。

その為、敦賀蓮としての活動の間だけは、"ある少女の出現"を除けば、よっぽどの事がない限り、敦賀蓮の仮面が外れることはなくなってきていた。

テレビ局内を楽屋へ向かう廊下で、蓮は共演中の女の子達に囲まれた。

社はちらりと蓮の様子を伺った。笑顔も爽やかで穏やかな口調は、暖かな春の陽射しと呼ぶにふさわしい敦賀蓮として合格点の顔だろう。

女の子達も蓮のそんな声音と微笑みに頬を染めながら楽しそうに話をしている。

しかし、社は蓮が時折ただ一人にだけ見せる本物の笑顔を知っている為、この笑顔が恐ろしくも作り物の笑顔であるということを知ってしまっていた。
蓮はこの会話を心から楽しんでいるわけではないのだ…。
上辺だけの、偽の仮面。


ーーその仮面が崩れるのは…。


社が蓮を見ていると、蓮の動きがピタリと止まって、一点に蓮の意識が向かったことに気づいた。

0コンマ何秒というその僅かな時間でそれに気付くことが出来た"奇跡の敏腕マネージャー社"は、その視線の先を素早く追った。

目に飛び込んだのは、紛れもない蓮の想い人であるキョーコの姿だ。

ーー敦賀蓮の仮面が崩れ、破顔を浮かべる五秒前…。

社は考えるよりも早く身体が動いた。

「あ、キョ……もが…「キョーコちゃん!!」」

蓮が言い終わるよりも早く、社がキョーコの手を握った。

「ふぇ?!社さん?!お、お疲れ様です!!」

「いやーー!!会いたかったよ、キョーコちゃん!!じゃあ、早速行こうか!」

「へ?!あの?社さん…??」

社は出来るだけ早くその場を抜け出すべくキョーコを強引に連れ出した。

呆気に取られてる女の子達の向こう側に見える蓮の目が、鋭く光った。

「社さん?」

キュラキュラと光る笑顔を浮かべ威嚇する蓮を、背中に感じながら社はひたすら歩く。

キョーコも社に引かれるまま歩くが、蓮の突然の怒りに驚き、顔を青ざめさせオロオロしている。

蓮は女の子達の輪を素早く抜け出すと、足早に、しかし優雅に二人を追いかけてきた。

まもなく闇の国の蓮さんが登場しようとしてる時に、社は楽屋の扉を開けてキョーコを中に促した。

二人きりにさせてたまるかと、慌てて追いかけ扉を開け滑り込む蓮。

蓮は既に笑顔の仮面を被る余裕など無く、鋭い怒りの波動を乗せて自身のマネージャーに睨みを利かせていた。

「どういうつもりです?社さん?」

キョーコは蓮と社をオロオロと見上げ、一人困惑していた。

「あ、あの…?」

しかし、マネージャーはやれやれと首を振ると、少し怒りを含んだ顔で蓮を見た。

「お前な、その顔を鏡で見たことあるか?!」

「は?!何のことです?誤魔化さないで下さい!」

社は一つ溜息をつくと、鞄から徐に大きな鏡を取り出し広げた。
それは美容室で使うような立派な鏡だった。

「お前のその顔は、敦賀蓮の顔じゃない。わかるか?」

社に言われ、蓮は鏡に映る自分を見た。

確かに、鏡に映る顔は世間に求められてる敦賀蓮とはかけ離れた怒りで歪んだ顔をしていた。

「これは…社さんがキョーコちゃんの手を握って連れて行くから…」

「言い訳はいらん!!いいか、蓮!お前は敦賀蓮だ。俺はその敦賀蓮を守るマネージャーなんだ。その顔のお前は人目がある所へは出せない。わかるか?戻せ!!」

社は蓮に厳しく注意した。

蓮は、不貞腐れながらも、顔を戻していつもの敦賀蓮にした。

「それとな…」

社は言いかけて、今まで背中に隠していたキョーコを蓮の目の前に突き出した。

慌てて支える蓮は、自分の胸に飛び込んで来た少女を、心底愛おしくて堪らないというような蕩ける笑みを浮かべて抱き締めた。

所謂破顔である。緩みきっているのだ。

社は再び鏡を開いて蓮に見せた。

「この顔も、敦賀蓮の顔じゃない!!!!キョーコちゃんの事を好きなのがもろバレだろ?!」

「…え?」

「ふぇ?!」

社に指摘され、鏡に映る自分を見て蓮はハッとした。

「戻せ!!」

社の言葉で、蓮はぺちぺちと頬を叩いて元に戻した。

「お前が、キョーコちゃんを見る度にそうコロコロ表情を変えてたら、お前をキョーコちゃんに会わせる事が出来ないぞ!!それが嫌なら、敦賀蓮のままキョーコちゃんと接するように心掛けろ!!」

社が真剣に言い募るので、蓮はキョーコを抱き締めたまま、心底申し訳なさそうに謝った。

結局休憩が終わるまで、キョーコを腕の中から解放することなく抱き締め続けた蓮は、これからもどこにいても堂々とキョーコといられるように、ちゃんと顔を引き締めるよう練習しようと緩んだ顔のまま誓うのだった。

一方、蓮の腕の中で最初は大人の対応を心掛けて真っ赤な顔で大人しくしていたキョーコだったが、楽屋という場所で、しかも、人がいつ入ってくるかもわからない状態の中、いつまでも抱き締め続ける蓮にとうとう痺れを切らして暴れだした。

「いつまで抱き締めてるんですかーーー!!」

恥ずかしさのあまり叫んだのだが、蓮は休憩時間きっかりしっかりとキョーコを抱き締めたままだった。

ーーーキョーコちゃんは、誰にも渡さない!!

蓮は、先ほどの社に手を引かれるキョーコを思い浮かべながら、心の中で決意を固めるのだった。


(続く)

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※Amebaで2011/12/16に公開した話を若干訂正したものです。


このお話をアップした頃に、アメンバー様100人を超えたようです。
あれから約四年。
時が経つのは早いですね〜!!

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

なくした記憶 22

さてさて、ここからどうなるやら??
ではでは、お楽しみくださいませ。

*****


なくした記憶 22


大好きな香り、大好きな温もりに包まれて、安心している自分がいる。
そろそろ起きなければって思うのに、気持ちが良過ぎて起きられない。

ーーーずっとずっとこの暖かい腕の中に包まれていたい…

ーーー…ん??腕…??

キョーコはパチリと目を見開いた。
瞬きをしばらく繰り返すキョーコの目の前は真っ暗だ。

もぞもぞと動くとぎゅっと抱き締められる。その拍子に布団がずれ、光が漏れて喉仏がキョーコの目に映った。

ーーー?????

それが何か分からずに凝視して固まっていると、ゆっくりと目の前の喉仏が動き、頭上から美声が漏れた。

「…ん…ぅ…」

それと同時にまたもや強く抱き締められ、足までも絡み取られる。

キョーコはようやくこの状況を把握する事が出来て、一気に心臓が働き出した。
全身茹でダコのように真っ赤になっているのが、嫌でもわかった。

ーーーお、お、お、おおお、落ち着くのよ!落ち着くのよキョーコ!!決めたじゃないの!!子供に見られないようにするんだもん。こんなの平気じゃなきゃいけないのよ!!


ーーー…でもでも!!無理よ!!どうしたらいいの?!どんな顔して起こせば…!!

分からないー!!!頭の中で小さなキョーコがオロオロと走り回りグルグルと目を回していた。

すると、蓮が目覚めた気配がしたので、ハッとして見上げたキョーコは真っ赤な顔で蓮を見つめた。

蓮もキョーコを見つめて、一瞬なんでキョーコが腕の中にいるのか分からずに狼狽えた。
キョーコにつられたのか、蓮まで真っ赤になってしまった。

芸能界一いい男。抱かれたい男No.1。

世間からそう評されている蓮が真っ赤になって狼狽えているのだ。

それを見たキョーコは面食らってしまった。


目覚めて一番に顔を真っ赤にして見上げるキョーコの殺人的な可愛さを目にしてしまい、蓮が半ばパニックになって赤面し口をパクパクさせていると、突然腕の中のキョーコが顔を伏せて震え出した。

「…え?!キョ、キョーコちゃん?!ど、どうしたの?!」

「…も、ダメ…っ。」

キョーコは苦しそうにそう言うと、一気に吹き出して笑い転げた。

「あはははははははは!!っつ!敦賀さん…っが!!く、くくく、いや、……今は、…コーン…なんだけどっ!!ぷっくっ、あははは!!」

涙まで流し出したキョーコに、蓮がブスッと不貞腐れる。

ますます笑いに拍車がかかるキョーコに、蓮は痺れを切らし、キョーコを抱き締めたまま、キョーコの上にのしかかった。

「いつまで笑ってるのかな?…ん??」

夜の帝王で微笑まれ、凄まれたことで、今度はキョーコが真っ赤になる。

蓮の手がキョーコの頬を包み込み、指が唇をゆっくりとなぞる。

「笑うのは…この口…かな??塞がなきゃ…ね??」

壮絶な色気を醸し出す蓮に、キョーコは氷のように固まる。

ゆっくりと近付く蓮の顔に、キョーコの心臓は激しくなる一方だ。堪らずに、キョーコは大絶叫を上げていた。

「いいぃやぁーーーー!!!」

キョーコの大絶叫を聞き、蓮が弾かれた様にキョーコから離れる。

「…あ…ごめん…。俺…??」


蓮は自分の行動に困惑していた。

「ごめん。頭、冷やしてくる」

蓮はキョーコに背を向けると、頭を冷やす為にシャワーに向かった。



シャワーに向かう蓮を見つめ、キョーコは後悔していた。蓮は背中を向ける直前に物凄く傷付いた顔をしていたのだ。

ーーー子供に見られないように気を付けてたのに、キスされそうになって叫ぶなんて思いっきり子供じゃない!!

キョーコはベッドに再び沈み込む。
まだ蓮の香りと暖かさが残っていた。
それを感じるだけで切なさと愛しさがこみ上げて渦をまく。

ーーー好き…。貴方が好きなのに…。近付く事が怖い…。記憶が戻ったら…どうなっちゃうんだろう?


キョーコはギュッと蓮の枕を抱き締めていた。




シャワーを浴び終えて、リビングに蓮が戻ると、朝食が着々と用意されていた。

「あ!コーン。ちょうどよかった!今ちょうどご飯の支度が出来たよ。」

ニッコリといつも通りに微笑むキョーコに、蓮は複雑な思いを抱いた。

キョーコちゃんは、御世話係として側にいてくれるだけなんだ…。
俺に対して特別な感情を持ってる訳じゃない…。

あんな事をしたのに、いつも通りのキョーコを見て、蓮は内心ガックリと項垂れた。

ーーーシャワー浴びながら嫌われたかも…ってことは想像したけど、こうまで意識されてないのは…それはそれで、どうなんだろう??

蓮は複雑な思いを抱えながら、キョーコの作った朝食に舌鼓を打った。


ーーー毎日、キョーコちゃんの料理が食べられるのは、いつまでなんだろう…?記憶が戻ったら、もうキョーコちゃんは側にいてくれないんだろうか…?


蓮の胸が切なく締め付けられた。


(続く)

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