なくした記憶 31

2016年01月14日21:11  なくした記憶/スキビ!《完結》

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今朝は地面が凍ってて転び掛けた風月です♪(´ε` )

なくした記憶がここまで続くとは正直思ってませんでした☆
何気に楽しみにしてくださってる方がいて嬉しいです♪

お待たせしました!!なくした記憶続きUPです!!



*****



なくした記憶 31


胸に抱いた蓮の身体が、力を失いのし掛かると、キョーコもバランスを崩し掛けたが、それに気付いた社が慌てて蓮の身体を支えた。

「蓮!!おい!蓮、しっかりしろ!!…駄目か。キョーコちゃん、とりあえず蓮を寝室に運ぼう。」

「は、はい!」

蓮の様子を見て、社がテキパキとその場を仕切る。流石は敏腕マネージャーだ。

「不破君。悪いけど、力を貸してくれないかな?」

何が起こったのかわからないとばかりに、某然とその光景を見つめている尚に、社が声を掛けた。

「…は?!何で俺が?!」

「お願い!ショーちゃん、手を貸して…」

「ちっ。わかったよ。運びゃーいいんだろ。運べばよ。」

蓮の上半身を社が抱え、蓮の足を尚が持った。
キョーコが先頭に立ち、寝室の扉を迷いなく開ける。

後から寝室に入った尚はキングサイズのベッドを見て思わず固まった。

「んなん…っつーデカさだよ!!」

尚は苦々し気な顔をして、何の戸惑いもなく蓮を寝かせやすいようにテキパキと布団をめくりベッドを整える幼馴染の姿を眺める。

「不破君。早く。」

立ち止まってしまった尚に社が額に汗をかいたまま、苦しそうに顔を歪めて促す。

二人で蓮をベッドに横たえると、キョーコが布団を掛けて整えた。
そのまま心配そうに、蓮の手を握り顔を覗き込むキョーコを見て、社は黙って尚を寝室の外に連れ出した。

2人がリビングに戻ると、尚が散らかした料理を祥子を片付けていた。

社は社長に電話で報告をしてその後の指示を仰ぐと、電話を切り、二人に向き直った。

「蓮を運ぶのを手伝ってくれてありがとう不破君。安芸さんも、片付けありがとうございます。後は俺がやりますから、二人はお引き取り下さい。」

社の言葉に、尚が堪らずに口を開いた。

「なんでだよ!どうしたのかの説明もないのか?!」

「今回のことは他言無用でお願いします。」

「納得出来ねぇよ!!どういうことだよ!」

「ちょ、ちょっと尚!!」

そんな尚の様子に、社は溜息を吐くと、仕方ないというように口を開いた。

「…わかった。訳を話すけど、その代わり二人とも誰にもこのことは口外しないって約束してくれるかな?」

社の真剣な声と表情に、尚と祥子は顔を見合わせると、神妙な顔で二人同時に頷いた。




「はぁ?!記憶喪失?!」

「あぁ、そうなんだ。もう二ヶ月以上前かな。蓮が事故で入院したと一時期報道で騒がれてたあの時です。蓮は、敦賀蓮として芸能活動をしてた頃の記憶を全て失った。最初は俺のことも受け入れてくれなかったんだ。」

「で、でも、今もキチンと芸能活動されてますよね?そんな素振り今まで何処にも見せてなかったのに…そんな噂すら立ってませんよ?」

「最初の一週間で、徹底的に俳優敦賀蓮の行動パターンと立ち居振る舞いを研究させましたから。キョーコちゃんのサポートのお陰で、人にも心を開くようになったし。」

「心を開く?」

社の言葉に、二人が怪訝な顔をすると、苦笑いしながら社が説明をした。

「あぁ、蓮は最初心を閉ざしていて、まともに人と会話出来る状態じゃなかったんだ。…でも、キョーコちゃんは甲斐甲斐しく世話を焼いてくれてね。その時に、蓮とキョーコちゃんが昔出会ってたことが明らかになったから…」

「は?あいつと…キョーコが?!んな訳ねぇだろ?そんな話、キョーコから聞いたことねーぞ。」

「キョーコちゃんも、その時の思い出の男の子が蓮だとは思ってなかったんだろう。お互いに初めて認識し合った時、涙を流して抱き合って喜んでたよ。」

「思い出の男の子ってなんだよ?!」

「俺も詳しくは聞いてないんだ。でも、キョーコちゃんは今までその男の子との思い出を心のより所にしていたってことがわかった。泣く時にはその時蓮からもらった石をいつも握り締めていたんだってさ。」

「石?」

社の言葉に、尚は怪訝そうに眉をひそめた。
社はその反応を見て驚く。

「知らないのか?幼馴染なのに…。」

「…知らねーよ。石なんて…聞いたこともない。」

「…やっぱり君は、キョーコちゃんの側にいたようで、キョーコちゃんのことは何も知らないんだな。結局、キョーコちゃんのことなんて、見てなかったんじゃないのか?」

「あいつは…小さい頃からヘラヘラしてて、いっつも俺にくっついて来るしか脳がないやつだったんだよ!」

「…何も、何もわかってないよ、不破君は…。蓮は、キョーコちゃんと出会ったのは幼い頃のたった数日間だって言ってたけど、キョーコちゃんの性格はちゃんと見抜いてた。何事にも一生懸命で全力でぶつかって、負けず嫌いだから、嫌いなものや嫌なものほど闘志を燃やす。そのくせ涙脆くて優しくて人の心の痛みを誰よりも敏感に感じる子だったって教えてもらった。色々と昔の話をしてくれたよ。母親のことで泣いて…ショーちゃんですぐに笑顔になる女の子だとも。」

「そ…れが、何だってんだよ。」

「君は、キョーコちゃんの側にいるべきじゃない。そんな女の子を自分のもの扱いで、存在を否定して手酷く捨てて傷付けて。君には、今のあの子の側にいる資格なんてない!」

社は厳しい目で、尚を睨みつけた。
尚は罰が悪そうに顔を逸らし、反論出来ず、苦しそうに唇を噛んだ。

「…話が少しずれてしまったけど、とにかくキョーコちゃんが思い出の女の子だってことがわかってから蓮は、キョーコちゃんにだけは心を開いてくれるようになったんだ。キョーコちゃんと二人でここで生活を初めて、性格も穏やかになっていった。」

「はぁ?!二人で?!ここで生活?!」

「そ、そんなの、大丈夫なんですか?!」

尚と祥子が慌てて口を開くと、社は当然のことのように言ってのけた。

「まぁ、一緒に暮らすのは、うちの社長からの指令なんだ。蓮の部屋で一緒に生活して記憶をなくした蓮のサポートをするようにってね。」

「じゃあ、社長さんも承知の上ってことですか…?」

「そうですね。社長も承知の上というよりは、社長が仕掛けたと言えますね。」

尚と祥子はLMEの社長の噂を良く耳にはしていたが、こんなスキャンダルになりそうなことを許す人だとは思わなかったので絶句した。

「まぁ、今の蓮とキョーコちゃんの話はこのくらいです。お引き取り願いますか?」

「…えぇ。わかりました。尚…いいわよね?…社さん、トップシークレットを教えて下さりありがとうございます。」

「いえ。本来なら話すべきじゃないんでしょうが、話さないと不破君も納得出来ないみたいでしたからね。」

玄関に向かう二人の後ろに社が付いて行くと、寝室からキョーコの声が聞こえて来た。

「お願い。一人で苦しまないで…。ずっと私が側にいますから。お願い。戻って来て。」

尚はグッと唇を噛み締め目を瞑って立ち止まると、顔を上げて社を振り返った。

「社さんっつったっけ?…敦賀の野郎に伝えとけ。俺が言えた義理じゃねぇけど、キョーコ泣かせたらぶっ飛ばすってな。…今日わかっちまったよ。もう、あいつの中に…キョーコの中に、俺の居場所がないってことがな。…キョーコにも、元気でなって伝えててくれ。あんたとの約束通り、誰にもこのことは言わない。」

「不破君…。」

「尚…。」

「あー!クソ!やってらんねーぜ!!帰ろうぜ!祥子さん!腹減った。」

「もう。ふふ。貴方自分でキョーコちゃんの料理駄目にしといて良く言うわよ!…お騒がせしてすみませんでした。社さん。何か弁償しなければいけないものがあればこちらに連絡お願いします。」

祥子は、社に名刺を差し出した。

「ありがとうございます。二人とも気を付けておかえり下さい。」

社は二人をエレベーターまで見送ると、ほうっと溜息を吐いた。


ーーーとりあえずは一件落着??ま、後は蓮の記憶が戻りさえすれば完璧なんだろうけど。今のままでも、二人は充分幸せなのかなぁ?

社はそんなことを考えながら、寝室のドアを控えめにノックした。

返事がないので、不思議に思いながらひょっこり頭だけで中を覗くと、蓮の腕の中で不安そうに蓮に抱き着き眠っているキョーコが見えた。

社は二人の未来の新婚生活を覗き見てしまったようで居た堪れず、赤面して、眼鏡を掛け直すと、静かに扉を閉めてリビングのソファに腰を降ろした。
時計はまもなく23時を示そうとしていた。


(続く)

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何故だか今回尚はカッコつけて去っていきました(笑)

そして、蓮の意識はまだ戻りませんでしたね!!
これからどうなるのか、次回お楽しみにー( ´ ▽ ` )ノ


※Amebaで2012/02/03に公開した話を若干訂正したものです。

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