なくした記憶 36

2016年01月20日14:08  なくした記憶/スキビ!《完結》

ここで限定に行けないのが風月でございます(笑)
ようやく想いを伝えあった二人の行く末を一緒に見守ってあげてくださいませ☆



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なくした記憶 36


「んん…っ」

キョーコも蓮も時を忘れるほどキスを交わしていたのだが、キョーコが苦しそうな声を出したことで、ようやく二人の唇が名残惜しげに離れた。

キョーコのぷっくりと腫れた唇を蓮が嬉しそうに微笑んで指でなぞる。

再び近付こうとする蓮の唇に、キョーコは突然待ったを掛けた。

「その前に、ご飯です!!!!」

キョーコは、蓮の顔面に両手で防御を掛けると、顔を抑えられて固まった蓮の腕の中から滑るように出て、キッチンに向かった。

蓮は、そんなキョーコに不服そうな顔を向けながらも、キッチンに消える直前に見えたキョーコの真っ赤な耳に、破顔すると、幸福を噛み締めるように顔を緩めたまま目を閉じた。

ほぅっと蓮から甘い息が漏れる。

「甘くて…柔らかかったな…。」

しばらく目を閉じて幸せを噛み締めていた蓮だったが、キッチンから聞こえるカチャカチャという食器の音につられて、キョーコのいるキッチンへと向かった。

しばらくキョーコの食事の準備をする姿を後ろから見守っていたのだが、蓮は突然イタズラを思い付いた少年のような顔をすると、料理をしてるキョーコを後ろに近付き、そっと抱き締めた。

「きゃっ!!」

小さな悲鳴を上げるキョーコの耳をパクリと口に含むと、キョーコから可愛らしい声が漏れて、蓮は嬉しくなり更に調子に乗ってくる。

「ちょちょちょちょちょっと!!料理中に何して下さってるんですかぁ!!危ないじゃないですかぁぁぁぁぁ!!」

耐えきれなくなったキョーコが真っ赤な顔のまま怒ると、蓮はキョーコを抱き締めたまま動きを留めた。

「ん?俺何かした?」

しれっと言う蓮に、キョーコは口をパクパクさせながら必死で訴えた。

「ななななな何かって!!えぇ、しましたとも!!しましたともぉ!!みみみみみみみみみみみみみ耳を、舌でなぞったり、甘噛みしたりぃ!!!!おまけにこのお手々は何してるんですかぁ~!!」

「ぷっ」

顔を真っ赤にして訴えるキョーコを抱きしめた蓮の肩がプルプルと震え出す。

「…ぷ?」

キョーコがまさかと思いながら蓮をみると、蓮はキョーコを抱き締めたまま、大爆笑を始めた。

「あっはははは!!最上さん!!みみみみみみみみ耳って…耳を何回言ってるの?!」

あまりのキョーコの狼狽え振りを見てクスクスクスクス笑う蓮に、キョーコは真っ赤になりながら怒り出す。

「酷い!!!!からかったんですね!!敦賀さんの馬鹿ぁ!!」

涙目になり怒るキョーコを蓮は苦笑しながら宥める。

「からかうつもりなんかなかったのに、最上さんが可愛すぎるのがいけないんだよ…。ずっと君に触れていたい。」

そういいながら、蓮の手がキョーコの体のラインをなぞると、キョーコの身体がピクリと反応する。

「も、もう!離して下さい!!これじゃあ久遠の時よりタチが悪いじゃないですかぁ!!」

「え?!どう言うこと?」

「久遠も、料理してる私を後ろから抱き締めて邪魔ばっかりしてたんです!でも、今の敦賀さんのように破廉恥な行為はしませんでした!!」

そう言いながら、キョーコはぷぅと赤い顔を膨らませた。
キョーコの言葉と表情に、蓮は一瞬無表情になった。

「そう…なんだ。食事の準備中に後ろから抱き締めたり…か。…ねぇ、最上さん…。今日はお互いオフだし、俺の記憶がなかった間にどんなことをしてたか再現して欲しいんだけど。今日からしばらくの間、俺が記憶を思い出す前の、久遠として接してた時と同じように接してくれないか?」

蓮の言葉にキョーコは一気に顔を赤らめた。

「ええええぇ?!?!つ、敦賀さんにですか?!」

「何かな?その反応は…。同じ人間なんだから出来るだろう?」

「な、ななな何でそんなことする必要が?!」

キョーコは狼狽えながら言うのだが、蓮はキョーコの瞳を不安気に覗き込みながら言った。

「そうしたら何か思い出すかもしれないだろう?」

「お、思い出さなくていいこともあるかと思います!!」

キョーコが真っ赤な顔して言うので、蓮は目を見開いた。
そして、蓮はわざとらしくため息をついて、嘘くさい辛そうな表情でキョーコをじっと見つめる。

「俺は、君に関することは全て思い出したいんだ…。思い出せないことがあることがとても辛い…。俺は記憶をなくしてる間、君とどんなことをしてたんだ?こんな風に食事の支度をする時に抱き付いたり…他には?君とどんなことをして過ごしていたの?」

最初は辛そうな顔を作れたのに、後半は好奇心が滲み出てしまったのか、蓮の目にワクワクとした光が見えている。

キョーコは心の中で悲鳴を上げた。

ーーーこの顔は辛いなんて絶対嘘よ!!洗いざらい思い出して私が動揺してる訳を探る気よぉ!!!!いやぁ!!!!そういえば、私ったら尊敬する大先輩の敦賀さんにあんなことやこんなことをぉ~!!!!思い出さないでぇー!!!!


キョーコは、蓮の頭を胸に抱いて寝たことや、蓮に縋り付いて泣いた事、裸の蓮に抱き締められたことを思い出して真っ赤になっていた。

しかし…

「ねぇ、最上さん?まさか出来ないなんて言わないよね?」

最後はキュラリと光る有無を言わさぬ似非紳士スマイルを向けられ、腕と言う檻の中にキョーコを囲う。子ウサギと化してしまったキョーコは思わずコクコクと頷いてしまっていたのだった。


「じゃあ、俺がこうやって抱き付いた時はどうしてたの?」

蓮がわざと色っぽい声でキョーコの耳元で囁くと、キョーコの耳が真っ赤に染まる。

「や、やっぱり恥ずかしいです!!本当にやらないとだめですか??」

キョーコはもじもじと、顔を伏せるので、蓮はこっそりとそんなキョーコが愛しくて堪らないと言う目で見つめる。

「最上さんに関わることはどんな些細なことでも全部知りたいと思うんだ。」

蓮の言葉に、キョーコは目を見開いた。

その言葉を聞いて思い出したことがあったのだ。
あれは、蓮と一緒に眠るようになって、3日目の夜だったと思う。蓮とキョーコはこんな会話をしていたのだ。

『好きな子のことはどんな些細なことでも知りたいと思うはずって言うのは、本当だったんだな。』

腕の中のキョーコを愛おしそうに見つめながら、蓮が口を開いた。

『え?』

不思議そうに蓮を見上げるキョーコの額に、蓮がそっとキスを落として微笑みかけた。

『昔、付き合ってた彼女にね、言われたことがあるんだ。好きな人のことを何でも知りたいと思うのは当然でしょ?!って…』

蓮は、苦笑を浮かべて、キョーコの髪を手で梳きながら、柔らかい口調で言った。

『俺は、その気持ちが全くわからなかった。別にその子に言われたからって、その子のことを知りたいとも思わないし、自分のことを知って欲しいとも思わない。その後も、何人かの女性に言われたことはあったけど、そんな気持ちを理解出来たことはなかったんだ。』

『そう…なんですか?』

キョーコはその時、さみしそうに目を伏せた。
もしかしたら、知りたいと思ってるのは自分だけなのかと、淋しくなってしまったのだ。
蓮の寝巻きをギュッと掴むと、蓮は破顔しながら、キョーコの髪にキスを落とした。

『でも、今やっとわかったよ。好きな子のことは何でも知りたいって気持ち。キョーコのことは、何でも知りたいって思うんだ。きっと今までのは、好きだと錯覚してただけなんだよ。キョーコを好きになってやっとわかったよ。キョーコのことが好きだから、誰よりも知りたいって思う。それと同時に、俺のことも知って欲しいって思う。』

蓮の手がキョーコの頬を包むと、キョーコも嬉しそうに笑った。

『私も、久遠のこと好きだから…何でも知りたいって思うの。久遠も同じ気持ちになってくれてたなんて嬉しい。』

キョーコは、蓮の頬にそっとキスを贈った。
破顔を浮かべる蓮と、照れたように笑うキョーコが手を握り合って二人で夢の世界に旅立つ。
二人の温もりが互いの心を温めあった。

「久遠…」

キョーコは、記憶をなくしていた間の蓮とのやり取りを思い出して、目を閉じて蓮の本当の名前を呼んだ。
後ろに立っていた蓮がピクリと反応する。

そしてキョーコは目を閉じたまま、背後に立って抱き締める蓮の身体に身を委ね、愛おしそうに蓮の腕に手を添えた。

そんなキョーコの突然の行動に、蓮がドキマギしていると、キョーコがポツリと呟いた。

「やっぱり、貴方は貴方なんですね。例え久遠でも、敦賀さんでも、貴方の想いは同じなんですね。」

そしてキョーコは、振り返ると蓮に向き直ってまっすぐ蓮を見つめた。

「私も、貴方のことは何でも知りたいです。もし、私が記憶をなくしたとしても、ちゃんとこの気持ちを思い出させてくださいね?」

キョーコは蓮に微笑みかけた。その艶を含んだような、愛らしいような初めて見る表情に、蓮は釘付けになった。

「も…が、みさん?」

「貴方は、私のことはキョーコって呼んでました。」

「…キョー……コ?」

「はい。そして私は、貴方のことをずっと久遠って呼んでたんです。最初は、コーンとキョーコちゃんだったんですけど、久遠が私のことを好きになってくれてから、キョーコって呼びたいと言われたんです。」

「…おれ…も、呼んで…いいの?」

「勿論よ。久遠。」

キョーコが呆然と呟く蓮に、ふわりと微笑んで見せると、蓮は静かに名前を呼んだ。

「キョーコ…」

「はい。」

「キョーコ…!」

「はい。」

「キョーコ!キョーコ!!」

蓮のキョーコを呼ぶ声は、段々と大きくなり、最後は嬉しくて堪らないと言うように、弾むような声で呼びながら、キョーコを抱き締めた。

「きゃっ!!く、久遠!!苦し…」

「君をキョーコって呼べる日が来るなんて!!嬉しいよ。本当に嬉しい!!名前を呼ぶことでこんなに満たされることがあるんだって初めて知ったよ。」

「久遠…」

蓮がキョーコをギュウギュウと抱き締めるので、その蓮の喜びはキョーコにも伝わった。

そんな蓮の言葉が嬉しくて、キョーコの目に涙が溜まる。

そして、蓮も涙が出そうなくらい感極まっていたのだった。


(続く)

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※Amebaで2012/02/09に公開した話を若干訂正したものです。
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