なくした記憶 39

2016年01月23日09:42  なくした記憶/スキビ!《完結》

なくした記憶 39



テレビ画面には社長から見るように言われた蓮が出演したDVD。

ソファの上で寛ぐ蓮の足の上にはすっかり定位置となってしまったようにキョーコが座っていた。

蓮の身体に身を預け、2人で記憶をなくしていた間の蓮の話をテレビの話と絡めながらし、時折キスを交わす。

2人にとって、幸せな甘い時間がひろがっていた。

「ふふふ。もう!久遠ちゃんとDVD見ないと!やぁ!もうふふくすぐったいったら。」

「んー。ちゃんと観てるよ?」

そんなやり取りをしていた時に、テレビの曲調が変わった。

どうやら今まで流れていたドラマが終わって、新しい番組に切り替わったようだ。

「ん。」

ちゅっ。と2人でキスを交わしていると、テレビのタイトルコールが響いた。

そのタイトルコールがキョーコの耳に入った瞬間、キョーコは固まった。

ーーーま、まさかっ!!

「ん?どうしたの?キョーコ?」

突然キスの途中にピタリと固まってしまったキョーコに蓮は訝しげな視線を向ける。

キョーコの全神経は背中を向けたテレビへと注がれていることに気付いた蓮は、その目をテレビに向けた。

「?テレビがどうかしたの?」

蓮の言葉にピクリと反応したキョーコは顔を青ざめさせて必死で首を振って否定した。

「ちちちちちちがいます!!違います!!も、もうDVDも飽きましたよね?ここら辺で止めておきませんか?!」

そんなキョーコの言動に不信を抱いた蓮は、キョーコの手がリモコンに伸びるのを阻止すると、キョーコをがっちりと腕の中に収めたまま、テレビ画面に目を向けた。

「く、くくくく久遠!これはきっと、社長が入れ間違えたんだわっ!!だって、久遠はこの番組には出てないもの!!」

キョーコは、おろおろしながら必死で蓮に訴えたのだが、蓮は真剣な目でテレビ画面を見つめていた。

「あ!ダメ!ダメだってば!!…んっ。んんっ!!」

キョーコが余りにも暴れるので、蓮はキョーコの唇を己の唇で塞ぎ、目だけでじっとテレビ画面を伺っていた。

『今日デートしてくれるのはなんと!タレントとしても女優としても華が咲き始めてる京子さんと、不敗伝説を今もまだ更新し続けている人気絶頂の歌手!!不破っ尚っさんっでっす!!』

蓮はそのテレビの言葉を聞き、自分がキョーコにキスしていたことも忘れて、呆然とテレビ画面を見つめていたのだった。



「く、久遠?」

画面を見たまま、固まってしまった蓮を見てキョーコが遠慮気味に声をかける。

画面の中ではキョーコと尚の息の合いすぎたやり取りが繰り広げられていた。

段々と蓮の顔が歪み、不機嫌になってるのがわかった。

大魔王降臨である。

キョーコは、自分さえも観たくもない番組をまさかまたもや蓮と2人で見るハメになり、社長であるローリィを恨んだ。

ーーー社長~~~!!なんってことしてくれるんですか貴方はぁぁぁぁぁ!!大魔王が降臨するような番組にしないでください~!!!!

キョーコが心の中で滂沱の涙を流してる時に、蓮の頭がポスンとキョーコの肩に落ちて来た。

突然頭を預けられたキョーコは、びっくりして蓮を見た。

「久遠…?」

キョーコが呼びかけると、蓮の手にグッと力が入りキョーコの腰を抱き込む。

それは言葉に出さずとも、『絶対に離さない。』と言ってる様にキョーコに感じさせた。

顔を上げて、キョーコを見つめた蓮は何かを口にしようと仕掛けたが、途中でその言葉を呑み込んでしまったのか、グッと言葉に詰まると、何も言わずにキョーコをギュッと力強く抱き締めた。

今にも泣き出しそうな蓮の表情に、キョーコは驚きながらも、そろそろと蓮の背中を撫でる。

「久遠?」

呼びかけると、辛そうな表情の蓮がキョーコの唇に口付けた。

噛み付くようなそのキスに、キョーコは驚きで目を見張る。

そのままソファに押し倒されたキョーコだが、蓮の気持ちはそれでは晴れなかったらしい。キョーコの胸に顔を埋めて、そのまま止まってしまった。

キョーコの心臓はドキドキとしていたのだが、画面の中では相変わらず尚との息の合いすぎたやり取りが続いている。

キョーコの胸に頭を乗せたまま、淋しそうな表情で画面を見つめる蓮。

キョーコはそんな蓮が何故か拗ねてしまった大きなワンコに思えてならず、胸がキュンとなった。

じっと何も言わずに画面を見つめ続ける蓮の髪を安心させる様に優しく梳く。

サラサラと髪を撫でることを繰り返していると、蓮が胸に顎を乗せた体制でキョーコをじいっと見つめた。

「ん?何ですか?」

穏やかなキョーコの表情に、蓮は面白くないのかプイッと視線をそらす。

ーーー本当に子供みたい。

キョーコはそんな蓮が可愛くて堪らずに、思わずクスクスと笑ってしまった。

キョーコが可笑しそうに笑うことで益々不機嫌になっていく蓮。

キョーコは堪らずに蓮の頭を抱き締めて、その頭にキスを落とした。

「もう。だから観るの辞めようって言ったのに…。」

クスクスと柔らかく笑うキョーコに蓮はバツが悪そうにいじけ続ける。

「…だって…こんなのが入ってるなんて普通思わないだろ?」

「まぁ、私も驚きましたけど…。」

「いつの間に撮ったの?何で不破が相手役なのに受けたの?」

「久遠が記憶をなくしてる間です。相手役は…私も知らされてなかったんです。」

キョーコは子供をあやすように、蓮の髪を撫でながら言った。

「それにしても…あいつとデートなんて…俺だってまだなのに…。」

蓮がブチブチと文句を言っている。

「もう。どうしたら機嫌戻してくれますか?」

キョーコの言葉に、蓮がジッとキョーコを見上げる。
何かを強請るようなその視線に、キョーコは母性本能を擽られる。

のそりと近付く蓮の首に抱き付いてちゅっ。っと唇にキスを送ると、蓮が照れたようにはにかんだ。

「俺もキョーコとデートがしたい…」

キョーコにキスを返して、蓮が答える。
言葉とは裏腹に、蓮の手がキョーコの身体を確かめるように動き始めた。

「…ん。久遠…。」

先程までの行為を思い出させるその手の動きに、キョーコは顔を赤らめながらも、甘い声で名前を呼ぶ。

蓮の手がキョーコの衣服を取り払い始め、蓮の唇がキョーコの首筋に埋まった…。

そんな これからという時に、不意に蓮の携帯が着信を知らせて震え始めた。

その音に驚いて衣服を掻き集めたキョーコと、ガックリと肩を落とした蓮のすぐ近くで携帯は遠慮なく震え続ける。蓮はその携帯に悪態をつきたい気分になっていた。

発信者の名前は社で、蓮は携帯の電源を切っとけば良かったと思ったが、かかって来たものはしょうがない。

蓮は一度キョーコの首筋に顔を埋めると、キョーコから離れて電話に出た。

「…はい。」

少し棘のある声で電話に出てしまい、社から呆れた声が返って来た。

「…なんだよ。まだ怒ってんのか?」

「…そういう訳では…。」

「その様子じゃまだちゃんと話し合いが出来てないみたいだな。お前はしっかりキョーコちゃんと話をするべきだ。」

「………はい。」

「とりあえず、明日調整出来そうな仕事を調整したら、明日は夜の生番組だけになったから、18時に迎えに行く。それまでにキョーコちゃんと、なんとか話し合いしろよ?」

社の言葉に、蓮の顔がぱぁっと輝いた。

「ほ、本当ですか?!」

「あぁ、明日は夕方までオフだ。しっかり片付けろよ!」

「ありがとうございます!社さん!!」

「あぁ、ま、そういうことだから。頑張れよ。」

「はい!ではまた明日。」

「あぁ。明日シケた顔して来たら承知しないからな。」

「はい。」

「明日はキョーコちゃんも撮影は夜だけみたいだからな。2人でしっかり話し合えよ。」

蓮は嬉しさの余り破顔して社に返事をすると、電話を切り、キョーコに尻尾を振り切らんばかりの表情で近付くと、ギュッと抱き締めた。

「きゃっ!く、久遠?!どうしたの?」

「キョーコ!!デートだ!デートに行こう!!」

ウキウキと楽しそうに言う蓮に、キョーコが目を見張る。

「え?!で、デートって今から??」

「うん!今から一日デートしよ。明日は18時までオフになったんだ!!」

「え?」

「今から出掛けたら、ちょうど一日デートできるだろ?」

時計を見ると、まだ夕方の17時を回ったばかりだ。

確かに計算上では今から出掛けたら一日デートになるだろう。

「決まり!ねぇ、どこに行きたい??」

ウキウキと言う蓮に呆気に取られてたキョーコだが、可笑しそうにまた笑うと、蓮の首に嬉しそうに抱き着いた。

「貴方とならどこへでも。」

蓮はキョーコの返事に破顔すると、キョーコを大切そうに抱き締めて、キスをした。
2人は仲良く手を繋いで、車のキーと簡単な変装道具だけを持って外に出たのだった。



(続く)
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なんか本当にすみません。

お待たせしてたのに、こんなお話しか出来なくて~!!

ちょっと最近、スランプ気味??(笑)

一応、皆さんから頂いた意見を元に最初に少しだけ大魔王登場させてワンコで書いてみました!

お楽しみ頂ける方がいるのか激しく疑問なのですが、これからも頑張りたいと思います!!(笑)

さーて。デート…どこにしましょうかねぇ??(笑)

お話読んでくださってありがとうございます!!

※Amebaで2012/04/21に公開した話を若干訂正したものです。
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