なくした記憶 45

2016年01月27日14:11  なくした記憶/スキビ!《完結》


なくした記憶 45


蓮が幸せな夢に浸っていると、急に耳元で大きな音が響き渡った。

きゅるきゅるきゅるきゅるきゅきゅきゅ~

不意に飛び込んできた、奇妙な音に、蓮が飛び起きる。

「な、なんだ?!」

音の根源を探そうと左右に目を向ければ、またもや近くで音が鳴り響いた。

きゅるきゅるきゅきゅきゅきゅきゅー!!

「え?」

「ひぃやぁぁぁー!!」

音の根源を辿り視線を下に落とすと、真っ赤な顔をしたキョーコが慌ててお腹をおさえていた。

目を丸くしてそんな光景を眺めた蓮は、どこかで見た光景だな。と心の中で独りごちて、ぷっと噴き出した。

「クスクス。おはよう。キョーコ」

「おはようございます。えっと…蓮、さん?」

「久遠でいいよ?」

蓮がそういうと、キョーコはホッとしたような嬉しそうな顔になった。

「久遠…。」

そう呼ぶキョーコの唇にそっと口付けると、キョーコも目を閉じて受け入れてくれた。

軽いキスで留めて名残惜し気に唇を離すと、蓮はキョーコの慣れなくて赤くなった顔をイタズラっぽく覗き込んだ。

「ごめんね?また、君の胸を枕に寝てた?」

「う…はい。」

かぁぁ~と更に真っ赤になるキョーコが可愛くて浮き足出す。

「でも、それなら起こしてくれたらよかったのに。何であんなにお腹の虫が鳴くまで我慢してたの?」

クスクスと笑っていうと、キョーコが少し怒りつつ抗議してきた。

「起こしました!でも、起こそうとしたら、前と同じでその度に頬ずりしながら擦り寄って来るし…がっちり抱き込まれてるから、抜け出せないし、揺り起こそうとしてもますます抱きついてくるし、全然起きてくれないんだも…あ、あれ?」

「ん?どうかした?」

怒っているキョーコも可愛いなぁと思いながら蓮はキョーコを見つめていたが、突然 何かに気付いたようにキョーコが固まったので、蓮は首を傾げた。

「“また”って…?」

「え?」

「久遠っ!!もしかして記憶が…」

キョーコの言葉に、蓮は首を傾げて考える素振りを見せた。

「そういえば…」

深く考え込む蓮の顔を、キョーコが覗き込む。

「何だか前に似たようなことがあった気がして…」

「それって…」

「でも、良くは覚えてないんだ。何となく…キョーコの胸枕気持ち良かったなって…」

「ふへ?!?!」

ボンッ!!キョーコは不意打ちで言われた言葉に頭を爆発させてしまった。

「そうか…もう一回やったら思い出せるかも…。」

「な、ななななな…」

ジリジリとにじり寄る蓮からキョーコが追い詰められる。

「ねぇ、キョーコ…協力してくれる?」

耳元で熱く甘く囁けば、キョーコは真っ赤な顔のまま、口を開きかけた。

…と、その時…。

きゅるきゅるきゅるきゅるきゅきゅきゅきゅきゅ~

今までで一番大きな音が存在を主張するように響き渡った。


「もうっ!!久遠の馬鹿っ!!」

いつまでも笑い転げている蓮に向かって、キョーコは枕を使ってバシバシと叩く。
蓮は参ったと言うように手を挙げた。

「キョーコ!落ち着いて。くくくっ。もう、ごめんってば。」

照れ隠しだということが丸わかりのキョーコの行動が可愛すぎて、蓮の顔が益々緩む。

「もうっ!!知らない!!」

臍を曲げてしまったキョーコが、枕を抱き締めて蓮に背中を向ける。
からかい過ぎたかと少し反省して、蓮はキョーコを後ろからそっと抱き締めた。

「ごめん。キョーコ。許して?」

「やだっ!許しません!!」

ぷいっと顔を背けるキョーコは、枕を抱き締めて顔を隠していた。その耳元に唇を寄せて甘い声で囁く。

「朝ご飯食べないの?」

「久遠がいつまでも準備させないくせに!!」

「キョーコが可愛すぎるのがいけないんだ。」

「それは理由になりません。」

「なるよ。食べちゃいたいくらい可愛いもん。」

「私は食べ物じゃありません!」

「え?違うの?こんなに美味しそうなのに…?」

真っ赤になった耳を眺めながら蓮が言う。

「おいしそうなわけ…きゃ!やんっ!!ちょっと、ぁ、久遠っ!」

おいしそうな耳に我慢出来ず食いついた狼に、キョーコは必死で抵抗するもなかなか抗えない。

「ん。やっぱり甘くて美味しい。…こっちはどうかな?」

そう言って、耳から首元に移動する蓮の唇。
何時の間にかキョーコはベッドに押し倒され、抱えていた枕は蓮によって取り除かれ、服のボタンを外されかけていた。

「キョーコがまだご飯食べないなら、俺が先に食べちゃおうかな。」

「きゃあ!!もうっ!!久遠っ?!やん!!やめっ!」

「んー。ダメ。やめられない。」

「や!!だって今日、デートするって言ったぁ!!」

キョーコの言葉に、キョーコの胸を触っていた蓮の手の動きがピタッと止まった。

恐る恐るというように、蓮が声をかける。

「……今日は…やめとく?」

「嫌っ!!デートがいい!!」

「だって…折角…」

「デート連れてってくれるっていいましたよね?!」

「でも…」

「それとも久遠は…私とデートするのが嫌なの?」

可愛いキョーコにそう言われては、蓮は引くしかない。

「そんなわけない…」

キョーコの可愛いお願いに叶うはずのない蓮は、少々がっかりしながらも、シャキッと起き上がって、キョーコを助け起こしたのだった。



キョーコが食事を作ってる間に、蓮は少し出かけてくるといって、駐車場に向かった。
昨日キョーコに内緒で買った服がいくつかあるため、車のトランクから服の入った紙袋を取り出す。
キョーコがどんな反応するかな?とドキドキしながら、家まで運び入れた。


「すみません。何も準備してなかったので、こんなものしかできませんでしたが…」

申し訳なさそうに、言うキョーコだが、蓮は目の前に並んだ朝食に目を見開いていた。

こんがり焼けたトーストに、目玉焼きと千切りキャベツ、スープとフルーツヨーグルトまで並んでいたのだ。
この短時間の間に何時の間に?と思うほどの手際の良さに、蓮は内心感心する。

「そんなことないよ。凄く美味しそうだ。」

蓮の言葉に、ホッとした表情を浮かべるキョーコに微笑みかけて食卓を囲む。

和やかな食事を終えて、キョーコが片付けようとすると、蓮はキョーコの手から食器を取り上げた。

「片付けは俺がするから、君は出かける支度して?」

「え?でも…」

「いいから、いいから。君がいつも使うゲストルームの前に置いてる服を使って?」

「え…?」

「今日はそれを着てデートしよう。」

軽くウィンクをして見せる蓮に、キョーコはわかりました。と渋々承諾して、洗い物を蓮に任せてリビングを後にしたのだった。


(続く)

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なかなかデートに出掛けない二人…
どうしてくれよう…(泣)
デートプラン考えなきゃ(笑)

※Amebaで2013/04/11に公開した話を若干訂正したものです。
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