甘くて苦い恋の味*前編

2016年02月14日11:26  短編(パラレル)/スキビ!

ハッピーバレンタイン♡
今年は何の予定もなくて悲しいです!

なくした記憶が終わるまでは出来るだけ他の話を書かないようにしたいけど、イベントはやっぱり別っぽい!
逃しちゃったら来年まで温存しなきゃいけなくなっちゃうので浮かんだら書かなきゃだよね?!ってことで書いてみました。

とは言え、元々バレンタイン話を書く予定はなかったのですが、今朝方の真夜中に不意にネタの神様が降ってきて、睡魔さんの活動を全力で阻止されてしまったので、これは書かねばとなったのでございます!


あ、キョーコちゃんOL、蓮様サラリーマンの完全にパラレルです。
しかも年齢逆転してキョーコちゃんが先輩です。

苦手な方はお引き返し下さい。


どんな話でも歓迎!って方はどうぞお楽しみ下さいませませ!


*****


甘くて苦い恋の味*前編



10月下旬ーー

「ーーーぱい、最上先輩。」

「んー。もーちょっと…」

「おい、敦賀君ほっとけ。そうなった最上君は、周りの声なんて聞こえんから。敦賀君ももう気にせず帰ったら?」

「え?あ、あぁ。はい…」

「んじゃ、お先に〜また月曜な。」

「はい…お疲れ様です。」

ひらひらと手を振りながら退社していく椹部長を見送って、蓮はパソコンに必死の形相で噛り付いているキョーコをチラリと見ると、そのまま自分の席に腰を落とした。

*

「はぁぁぁー!やぁっと終わったぁぁぁ!!」

キョーコが仕事を終わらせて、その場で思いっきり伸びをする。

「あ、やだ!もうこんな時間…!またやっちゃった…」

もう誰もいないシンとしたオフィス。

キョーコのデスクの辺りだけ残ってる照明。
集中するあまり、終電まで逃してしまった。

「んー。でも今日は確か…」

物思いに耽ってると、誰もいないと思っていたオフィスに背の高い男が入ってきた。

「え…?敦賀君?」

「あれ?最上先輩仕事、終わったんですか?」

「えぇ。どうしたの?こんな時間まで…」

「それはこっちのセリフですよ。はい、これ…。」

「…え?」

蓮が二つ手に持っていた缶コーヒーの片方をキョーコに手渡した。

「お疲れ様です。」

ぽかんという顔をしていたキョーコだが、すぐにクスッと笑顔になって受け取った。

「ありがとう。敦賀君。」

「それより先輩、お腹空きませんか?これからどっかへ飲みに行きません?」

「え?飲みにって…こんな時間から?空いてる店なんて…」

「この時間でも空いてる店、俺結構知ってるんで、行きましょう。」

「え、あ、で、でも、私…今手持ち無くて、帰ーーー」

ーーグルルルルルルルル…キュイキュイキュイキュイ…

「…え?な、何だ?!」

蓮が何の音だ?と周りを見回すと、キョーコが真っ赤な顔で顔を俯せていた。

「ごめん。私の、お腹の音…」

真っ赤な顔でポツリと言われた言葉に、蓮は漸く先ほどの音の正体がわかって、プッと少しだけ笑ってしまった。

*

「最上先輩、酔ってます?」

「んーん、酔ってらい。酔ってらいよ。」

結局、蓮に丸め込まれてキョーコは後輩の蓮からご馳走してもらうことになった。

「呂律回ってませんし、完全に酔ってますよね?」

「らから、酔ってらいってばぁ。」

そう言いながらキョーコは机に突っ伏した。

「あぁ、先輩!服にタレが…」

そう言って腰を上げた蓮は、キョーコの気持ちよさそうな顔を見て、ドキンと大きく心臓を跳ねさせた。
思わず周りを見回し、そっとキョーコの顔がよく見える隣の席に移動する。

「先輩、大丈夫ですか?」

袖に着きそうだった焼き鳥の皿を遠ざけて、キョーコの肩を揺らす。
ボヤンと開いた目が蓮を捉えて、のそりと身を起こす。

「ん…?あれ?敦賀君?」

不思議そうにトロンと見つめられ、蓮の心臓はバクバクと激しく音を立てた。

「最上先輩、お酒弱いんですね?」

「ん…眠い…」

そう言って、コテンと頭を蓮の肩に預けてきて、蓮は驚いた。
アルコールの匂いに混じってキョーコの匂いと温もりが驚くほど近くにあり、蓮の手がキョーコに伸びそうになった時、対するキョーコの顔色がみるみる悪くなった。

「う…」

「え?先輩?!」

「敦賀君、ギモヂ悪い…」

「わっ!あ、と、トイレ!トイレ行きましょう!!」

「うぷっ!」

必死で吐き気をこらえようとするキョーコを抱えて、蓮はトイレに駆け込んだ。

背中をさすり、キョーコの体調を気遣う。

「大丈夫ですか?先輩…」

「ん…ごめ…変なとこ見せちゃ…って…」

ズルッと壁に背を預けそうになったキョーコを慌てて支える。

「先輩っ!お水です、口すすげますか?」

「ん…ありがと…」

受け取った水で口をすすぎ、ヨタヨタと覚束ない足で、蓮に支えられながら席に戻る。

お金を支払おうとするキョーコを制して、蓮が全額払うと、自分で歩くというキョーコを強引に抱っこして抱き上げた。

「タクシーで帰りましょう。先輩家どの辺ですか?」

キョーコを先に乗せて、続いて蓮もタクシーに乗り込む。

キョーコのいう場所にタクシーを走らせて、ウトウトと船を漕ぎ始めたキョーコをおぶって、蓮はタクシーを降りた。

「ここ…か?随分と大きなマンションだな…実家なのかな?」

自分のマンションに比べたら見劣りするものの、一人暮らしとは思えない造りのマンションに蓮は驚いていた。

「えーっと部屋番号は…。」

悪いと思いながらもキョーコのカバンの中にあった手帳を開いて、部屋番号を確かめていると、ひらりと一枚の写真が落ちた。
蓮が慌てて拾うと、そこにはキョーコが知らない男の隣で幸せそうに微笑んでる写真だった。

「え…?」

ーーーまさか、恋、人?

蓮の中でザワッとしたモヤモヤした気持ちが生まれるが、それを見なかったふりをして慌てて、手帳に挟み直した。

念のため、家族がいるかもしれないので、チャイムを押した。
暫くしても返事がないので、キョーコのカバンから見つけていた鍵でロックを解除する。

エレベーターが上昇するたびに、少しだけ気分が高揚していた。
背中にある愛しい温もりが、蓮の首に回された細腕が、蓮の心を幸せで満たす。

蓮の教育係だったキョーコに憧れ、仕事に対する一生懸命な姿に恋をして早数ヶ月。
見た目で誤解されることは多いのだが、蓮にとってキョーコへの思いは初恋と言ってもいいくらいだ。
今までに付き合った女性は沢山いるが、キョーコに抱くような気持ちは今まで味わったことがない。
ドキドキしたり、笑顔を見れて心が浮き足だったり、目でいつの間にか姿を追ってみたり…。

4月に入社して半年。やっと周りからも認められるくらいの働き手にはなれてきたつもりだ。
まだまだもしかしたら自分なんて釣り合わないかもしれないけど、キョーコにとってはお荷物かもしれないけど、頼りになる同僚だと少しでも思われてたら嬉しい。

どんな部屋に住んでるのか、どんな家族がいるのか…それが垣間見えたらまた少し、キョーコとの距離も近くかもしれない。

そんなことを思いながら、キョーコの部屋のある階に着いた。

「えっと、最上先輩の部屋は…」

探しながら進んでいると、キョーコの部屋と思しき部屋の前でタバコを吸ってる男がいた。
その男が蓮の方を向いた時、先ほど見たキョーコの写真の男だと気付いて思わず目を見開いて立ち止まってしまった。

「あ?んだよ。」

蓮にじっと見つめられて、流石に不審に思ったのだろう。しゃがんでいた男が立ち上がって、威嚇するようにポケットに手を突っ込み、胸を張って問いかけた。
しかし、蓮の身長は190センチ。
顔立ちも自分より整っている気がして、男の眉間に皺が寄った。

そしてすぐにその蓮が背負ってるキョーコに気付いて、目の前の男が驚いた顔をした。

「それ…」

「え?」

「それ、ウチんだよ。あ、キョーコのカバン貸せ!」

「あっ。」

強引にカバンを取り上げられ、男がカバンを漁る。
それを見て蓮は慌てて声をかける。

「ちょっと…」

「くっそ。鍵は?ねぇのか?」

「いや、鍵はここに…」

蓮が手に握っていた鍵を見せる。

「んだよ。なんであんたが持ってんだよ。貸せっ!」

奪おうとされた鍵をヒョイっと守った。
その蓮の行動がお気に召さなかったようで、苛立った声が聞こえた。

「てめぇ、なんのつもりだよ?」

「そっちこそ、なんのつもりですか?これは先輩の家の鍵で…」

「てめぇには関係ねぇだろうが!いいんだよ。俺とこいつは一緒に住んでんだからよ!」

男の告白に、蓮は目を見開いた。

「え…?一緒に…住んでる?」

「そうだよ。だから、それは俺ん家の鍵。返せ!」

「いや、おかしいじゃないか…。君の家の鍵なら、なんで君が鍵持ってないんだ?」

「だーかーらー、忘れたんだよ!家出る時!キョーコがそのうち帰ってくんだろうと思って待ってたのになかなか帰ってきやがらねぇし…お陰で体冷えたじゃねぇか。風邪でもひいたらどうしてくれんだ。おい、キョーコ!」

男の呼びかけで、背中のキョーコがピクンと反応した。

「ん〜。ショーちゃん?」

今まで聞いたことがないくらい嬉しそうな甘ったるい声が背中から聞こえた。

「お前トロいんだよ!昔っから!さっさと起きて鍵開けろ!!」

「ん…ごめんね〜ショーちゃん。」

ギュッと抱きしめられて、頬ずりをされて、蓮は今キョーコが自分と目の前の男を間違えていることがわかってしまい、足元から何かがガラガラと崩れていく音を聞いた気がした。

「ん…あれ?あれ?」

蓮が下ろそうとしないので、キョーコの足が宙を蹴る。
降りれないと不思議そうにするキョーコの声と動きに蓮は慌ててキョーコを下ろした。

「あ…」

フラッと倒れそうになったキョーコを慌てて、蓮が支えると、キョーコは漸く蓮の存在にも気付いたようだった。

「はれ?敦賀君?」

「誰だよ、こいつ。」

「あ!ショーちゃん!おかえりぃ〜今日は帰れないんじゃなかったの?」

「その予定だったんだけど、変更になったんだよ!って…お前、酔ってんの?」

「んーん。酔ってらいよ。」

「嘘つけ!酔ってんじゃんか。対して飲めねぇくせにアルコールくせぇよ!」

「あら?あら?」

「どーした?」

「ん…鍵がないの。」

「鍵ならそいつが持ってるよ。」

「え?」

二人のやりとりを呆然と眺めていた蓮だったが、キョーコに見つめられて、ハッと意識を取り戻し、手のひらの中の鍵を差し出した。

「あぁ、鍵、コレですよね?」

「へ?なんで敦賀君が?」

「酔っ払ったお前を連れてきてくれたんだろ。ほら、早く鍵よこせよ!」

「そうなの?ありがとう、敦賀君。はい!ショーちゃんどうぞ!」

蓮から鍵を受け取ったキョーコは、ショーちゃんと呼ぶ男に嬉しそうに鍵を渡した。

ショーと呼ばれた男はさっさと鍵を開けて、キョーコを気にもとめず1人でズカズカと中に入った。

「ごめんね。敦賀君、迷惑かけて…」

「いや…」

「お茶でも飲んでいく?」

「いえ、遠慮しておきます。」

「そう?じゃあ、気をつけて帰ってね?」

「はい…じゃあお休みなさい。」

「お休みなさぁい。」

お酒の残った赤い顔で上機嫌ににっこりと笑顔で挨拶を返されて、蓮の初恋は見事に散ってしまったのだった。

*
*
*

そして季節は巡りに巡り、2月。
先日、誕生日を迎えた蓮は25歳になっていた。

街はバレンタインに向けたチョコレートの宣伝で埋め尽くされている。

「ねぇ、蓮、どんなチョコがいい?」

「何でもいいよ。」

蓮の隣には、ロングヘアの似合う派手めの誰もが羨む美人の彼女の姿があった。

大学時代の友人が開いた飲み会で出会った彼女に猛アプローチをされたことがキッカケで今に至る。

バレンタイン前日の土曜日のこの日、蓮は彼女に連れられてショッピングに駆り出されていた。
百貨店の食品売り場で競うように並べられたチョコチョコチョコ。
その試食をしながら、彼女が蓮にべったりとくっついて人混みを縫うように歩いていた。

それでも蓮の頭の中はまだキョーコに占められていた。
時々、職場に手作りお菓子の差し入れを持ってくるキョーコ。作りすぎちゃって。皆さんのお口に合えばいいのですが。と控えめに笑いながらいう、そのお菓子は甘さも控えめで品が良く、そのどれもが美味しくて職場でも評判がいい。

きっとバレンタインも本命に手作りチョコを渡すんだろうと考えて、あの同居人の勝ち誇った顔が頭に浮かんで、胸にチクリと痛みが走った。

そんなことを考えていたからだろうか?
蓮は見たくもない人物を見つけてしまって、思わず立ち止まった。

「蓮?」

立ち止まった蓮を不審そうに見上げる彼女。
だが蓮の目はまっすぐに目の前の男に注がれていた。
女の肩を抱き、ベタベタと甘えているのはキョーコの同居人のはずの男だ。
しかし、その隣にいる女はキョーコとは似ても似つかない別人だった。

「蓮?あの人たちがどうかしたの?」

「え…あ、いや…何でもないよ?…行こうか…」

にっこりと万人向けの笑顔を作り、先を促す。

その笑顔に大抵の女性は騙されるのだが、過去に唯一騙されなかったのがキョーコだった。

『敦賀君の笑顔ってさ、嘘くさいよね?』

『え…?そうですか?』

『うん。なんか、心から笑ってないっていうか、作ってるなぁって感じ。』

そう指摘されたのがキッカケでキョーコのことが気になり始めたのが、たしか研修が始まって三週間が過ぎた頃だったと思う。

キョーコとの出会いから失恋した日のことまでが蓮の頭の中を巡り、そして、先ほどのショーちゃんと、その隣で明らかに彼女という雰囲気を出していた女のことをずっと考えていた。

「ーーーって!ねぇ、蓮!聞いてる?!」

「え…?あぁ、ごめん。」

「もー。何なのよ!さっきから心ここに在らずって顔しちゃってさぁ。」

意識を取り戻し、キョーコに嘘くさいと見破られた笑顔を彼女に向ける。
今は彼女とランチをしているところだった。

「ごめん。なんだっけ?」

また話し始めた彼女を見ながらぼんやりとキョーコと姿を比べてしまった。
彼女は美人だと思う。背も高く、すらっとした細身の身体。爪も綺麗にしてるし、ヘアスタイルも洋服もソツがない。だけどベタベタと塗りたくった化粧、髪を染めすぎて傷んだ髪、少々濃い香水の匂い。パッチリと作られたまつ毛。媚びた表情。

その一つ一つが、蓮の心に違うという信号を送る。

「ちょっと蓮?!聞いてないでしょ?!」

「あ、あぁ、ごめん。」

「もういい!帰る。」

「え?もう?まだ半分残ってるよ?」

「帰るったら帰る!もう私たち終わりね!別れましょう!」

そう言うと、プンッと彼女は怒りを隠しもせずに席を立つと一人でさっさと店を出てしまった。

蓮はその後ろ姿を見送って、その場で深いため息を吐くと、またぼんやりとキョーコとあの男のことを考えていた。

*

「信っじらんない!なんで追いかけてこないのよ!」

「あれ?帰ったんじゃ…」

蓮の椅子の横には、ふるふると拳を震わせて彼女が立っていた。
時計を見れば彼女が出て行ってから一時間近くが経っている。
そんなに長く考え込んでたのか…と驚いていたのだが、そんな場合ではないようだ。

流石に周りからの視線が痛いので、蓮は彼女を連れて店を出ると公園へ場所を移した。

「彼女が別れましょうって言いながら怒って出て行ったら普通追いかけるでしょう?!馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!」

「ごめん。ごめんって…。」

内心で面倒くさいと思いつつも苦笑しながら謝罪の言葉を述べる。

「もう知らない!絶対に許さないんだから。もう本当に別れてやる!」

プンッと顔を背ける彼女を見て、蓮は深くため息をついた。

「じゃあいいよ。許してくれなくて。そんなに怒ったなら君の言う通り別れよう。」

「え…?!」

「怒らせてばかりでごめんね?今までありがとう。じゃあね。元気で。」

蓮はそう言うと、何の未練もなくくるりと彼女だった女に背を向けて歩き出した。

「ちょっと!ヤダ!蓮っ?!嘘でしょう?!」

追いかけてくる声に振り向きもせず、蓮の足は自然とキョーコのマンションに向いていた。

*

蓮の携帯には帯びただしい数の着信と留守電が元彼女から入っていた。

「自分から別れようって言い出したくせに、何なんだ?一体…」

何通も送られているメールにもクドクドと謝罪の言葉が綴られていて、読む気にならない。
きっと留守電も同じ内容だろう。
蓮は留守電を聞きもせずにそのまま内ポケットに仕舞った。

キョーコの部屋番号を押して、呼び出すかどうしようかで迷って手を止める。

会ってどうするつもりなのか、彼のことを話したら傷付けるだけじゃないのかなどと色々考えて、やはり呼び出しボタンを押さずに、その場を離れたのだった。


(続く)

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*****


今朝方夜中にパッと目が覚めて浮かんだ話…!
とりあえず考え出したら眠れなくなっちゃって必要事項メモとって、ようやく再び就寝。
バレンタイン話だったので、慌てて形にしてみましたが、思った以上に彼女がでしゃばってしまったため、長くなりそうなのでとりあえず書けたところまで!

続きは書け次第アップします!
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