なくした記憶 48

2016年02月20日22:18  なくした記憶/スキビ!《完結》

なくした記憶 48


「はぁぁぁ?!敦賀さんと付き合うことになったぁぁぁ?!」

「ちょ、も、モー子さんっ!声大きいからっ!!」

ここはLME芸能プロダクションのラブミー部のラブミー部室。

ラブミー部員1号のキョーコと、2号の奏江は久しぶりに顔を合わせていた。

「もー!!ちょっと会わない間になんでそんなことになってんのよ?!馬鹿じゃないの?!ってかアンタ、敦賀さんにこの間襲われかけたこと忘れたの?!」

「アレは…私が悪かったのよ!」

「例えアンタが悪かったとしても、女相手にいきなりあんなことする奴、最低よ?!」

奏江が言っているのは、蓮が記憶をなくす直前の出来事のことだ。
このラブミー部室で、泣きながら嫌がるキョーコを強引に襲っている蓮の姿。それが奏江の蓮を見た1番新しい記憶の中の姿だった。
それから忙しくてなかなかキョーコにも会えてなかった奏江だったが、久しぶりに会って、幸せそうに報告された言葉に驚きよりも怒りの方が強くて思わず怒鳴りつけてしまったのだ。

「それは…そうなんだけど、あの件に関しては敦賀さんも凄く反省してくれてて…」

「はぁぁ…アンタねぇ…もう、本当…つくづく馬鹿なんだから…」

はぁぁぁぁと深いため息を吐き出した奏江にキョーコは居心地悪そうに座り直した。

「で?何があったのよ?どうして付き合うなんてことになったわけ?」

奏江の目が鋭くキョーコを捉える。

「えっとね…敦賀さんがあの後すぐ事故に遭って病院に運ばれたのは知ってるわよね?」

「えぇ。いい気味だと思ったわ。」

ツンとした冷たい声が奏江から発せられる。

「それを聞いていても立ってもいられなくて慌てて病院に行ったの。」

奏江は心底呆れた目をキョーコに向けた。

「あんた本当にバカね?!あんな事があった後に病院に駆け付けるなんてっ!」

「だって、心配で…。それに私、その時には敦賀さんのこと本当の本当は…好きだったのっ!!」

ラブミー部員のキョーコにとってかなりの勇気を振り絞ったであろう告白に、奏江は目を見開き、あっけに取られた顔をした。

「はぁ?」

「だから事故に遭ったなんて聞いて、敦賀さんの無事を確かめられるまでは安心なんて出来なくて病院の場所を無理やり聞き出して押し掛けたの…」

溜息を吐き出し、キョーコの言葉に奏江は静かに耳を傾けた。

「…ふぅん。それで?」

「敦賀さんは何時間も目を覚まさず意識不明だったんだけど、漸く目を開けたと思ったら…」

そこでキョーコは迷うように言葉を切った。
奏江の頭に疑問符が浮かぶ。

「…思ったら?」

奏江の顔を上目遣いで覗き込んだキョーコが言いにくそうに言葉を発した。

「これは、あの…絶対誰にも言わないって約束してくれる?」

「…わかったわ。言わないわよ。」

「ありがとう。…実はね、トップシークレットで、敦賀さんにモー子さんには話していいと了承もらったから話せるんだけど…」

「だからなんなのよ?」

「実は、敦賀さん目が覚めた時、16歳からの芸能界での活動の記憶を全て失ってたの。」

キョーコの言葉に奏江は目を丸くし、そして一拍置いてから、ガタンとパイプ椅子から立ち上がった。

「はぁ?!はぁぁぁぁぁぁ?!」

それからキョーコはその事故からの経緯を話した。
蓮の記憶を思い出すまで世話係をすることになったということ、実は蓮と過去に出会ったことがあったと明らかになったこと、自分にだけは心を開いてくれたこと、一週間で20歳の敦賀蓮を把握して違和感のないように作り上げたが本当は子供っぽい言動もキョーコの前では多かったこと、その記憶をなくしてる蓮から愛の告白をされたこと、蓮には好きな人がいると誤解をしていたから、その想いを受け止めることが出来なかったが蓮への思いを抑えられなくなったこと、そしてショータローから襲われそうになった時に、蓮が助けてくれ、そこでまた奪うようなキスをされ、蓮が気を失い、その後無事に記憶を取り戻したこと。
そして記憶をなくしてる間の出来事を覚えてなかったことも、蓮があの事故の直前の出来事で消えてしまいたいというくらい深く傷付いていたことも、その後蓮の好きな相手が自分だったと知って、両想いになれたことなどを包み隠さず全て話した。

全てを聞き終えた奏江は疲れたような顔で頭を抱えていた。

「はぁぁぁ…何だか、アンタ達って…」

チラリとキョーコに一瞬だけ視線をやった奏江は、すぐにプイッと顔を逸らした。

「いえ、なんでもないわ。」

「え?!なによぉぉ〜モー子さん!言いかけて辞めるなんて気になるじゃなぁぁい!」

「あーもー!鬱陶しい!とにかく、良かったじゃない!記憶も戻って敦賀さんの気持ちもちゃんとわかって、付き合うことになったんでしょう?!」

「うん…。」

ほんのりと頬を染めて、ほにゃりと顔を崩した笑みを見せる親友に何となく苦い思いを抱きながらも、取り敢えず見守ることに決めた。

「まぁ、何か困ることでもあったらいつでも相談に乗るわよ。惚気話だけは勘弁だけど。」

そんな奏江の言葉を聞いてキョーコの顔にパァァァーと花が咲いたような笑みが広がった。

「ありがとう!モー子さん!!大好きぃぃぃぃ!!」

「あーはいはい。わかったから離れなさい。」

「良かったー!良かったよぉ〜。モー子さんに認めてもらえてぇ〜。」

「ったく。で?付き合うことになったって社長には報告したの?」

「う、それは、まだ…」

「まぁ、知らせたらとんでも無いことになりそうよねぇ〜。」

「えぇ、そこなのよねぇ…。考えるだけで恐ろしいわ。」

「当分は黙ってた方がいいんじゃ無い?」

「そうね。絶対遊ばれるもの…。」

そうヒソヒソとしたやり取りをしていたところで、バーンと大きな音を立ててラブミー部室のドアが開いた。

目を丸くして驚いて2人がそちらを見る。

「話は聞かせてもらったぞ!」

「「しゃ、社長!!」」

黒いマントに身を包み、ドラキュラの格好をしているローリィがマントでにんまり顔を隠した。

「そうか!漸く蓮が最上くんを捕まえたか!そうかそうか!」

恐ろしいことになると顔を真っ青にして両手を頬に当てて固まったキョーコと、同じく言葉もなく突っ立ってる奏江の前で、ローリィは少しだけ拗ねた口調になった。

「それにしてもアイツ、報告もしてこんとは!恩知らずめ!」

ブツブツと文句を言っていたかと思ったら、その顔はパアッと輝いた。

「そぉぉぉだ!いーいこと思いついたぞ。」

何を思いついてしまったのか、ローリィは今までに見たことがないほどニンマリと顔を歪ませて気色悪く笑った。
その顔を見て、キョーコはヒィと小さく悲鳴をあげ、奏江は残念そうに首を振って、諦めなさいとでも言うように、キョーコの肩をポンと叩いたのだった。


(続く)

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*****

うーむ…ここからどうするつもりなのか。
ローリィ…ローリィ…ローリィ…
暴走するだけ暴走して去っていくぅ。

ここからどんな展開に転がるのか?
風月にもわかりません(遠い目)
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