My HOME-10-

2015年10月20日14:00  My HOME/スキビ!《完結》

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My HOME-10-


蓮は小さくため息を吐いていた。
ギクシャクした原因を作ったのは自分だ。
勝手にいなくなったと焦って、扉という扉を片っ端から開いて、キョーコを探し、漸くみつけた先にいたのは何も身に纏っていないキョーコの姿だった。
だけどキョーコに対して謝罪するにしてもあの日のことを口に出すことは憚られた。

その日のことを持ち出せば今以上にキョーコに余計避けられそうな気がしていたからだ。

だけど結果としてキョーコは出て行ってしまった。

キョーコの湯で火照った身体を見てからというもの、目を見て会話することもできず、同じ空間にいると思うとそわそわしてしまうため、予定よりも家を早く出たりわざと遅く帰宅してキョーコに会わないようにしていた。仕事以外の時間では常にキョーコの姿を思い出して、悶々としていたため、社から話しかけられても上の空という状態が続いていたところに、キョーコから今後は奏江のところへ泊まるという連絡が社に入ったので、社からは何かしたのか?と妙な勘ぐりをされてしまっている。

そうして昨夜、誰もいない部屋に帰ってホッとしたと同時に寂しさが生まれた。
キョーコが来る前は一人で過ごすのが当たり前で何とも思っていなかったのに、部屋が妙に広く感じるのだ。
シンと静まり返った室内にぽっかりと穴が空いたような気分になる。

このまま会えなくなるのかと思うと、焦燥感が募る。

もし出来ることなら、また前のように話したい。
素直に謝ったら、今までみたいに話しが出来るようになれるだろうか?
ずっと接点がないままこんな確執が生まれた状態でこれからもお互いに避け続けることになるのだろうか?

蓮の中で考えても埒が明かないことばかりが浮かぶ。

ーーーなんにしても、ちゃんと会って話をしなくては…。

このままだなんて冗談じゃない。

蓮はどうにかしてキョーコに会わなければと、社からキョーコのスケジュールを仕入れるのだった。




ーーーふぅ。やっと終わったわ。

朝から学校に向かい、夕方から抜け出してCMのスチール撮影でスタジオに顔を出していたキョーコは20時過ぎに解放された。
今は事務所へ撮影が無事に終わったことを報告するため電話をし、携帯を閉じたところだ。

息を深く吐き出して、自身の体調を確かめると、僅かに熱っぽく頭はポーッとして、身体がダルさを訴えていた。
恐らく先日、布団に入らず寝ていたことが原因だろう。
見事に風邪の初期症状だ。

「このまま敦賀さんの家に行ったら迷惑よね…だけど、だからってモー子さんのところに戻るのも…風邪移したらいけないし…」

キョーコはフラフラと楽屋のイスに座り込んだ。

「どーしよう…」

呟いたキョーコが目を閉じかけた時、楽屋の扉がノックされたので、キョーコは慌てて立ち上がって返事をした。

「はい。どうぞ。」

旅館で培った自分の体調をお客に晒さないという姿勢を演技にも生かしているキョーコは、元気な声を出して扉の向こう側に了承を返した。

ガチャッと音を立てて開いた先にいた人物に、キョーコは目を見開く。

「よぉ。」

現れたのはキョーコの憎き幼馴染でトップアーティストの不破尚だったのだ。

「アンタ…何しに来たのよ?」

笑顔の仮面を簡単に脱ぎ捨てて、ジロリと尚を睨む。

「ご挨拶だな。たまたま通りかかったからわざわざ寄ってやったんじゃねぇか。」

「頼んでないわよそんなこと!私は今から帰るんだから、そこどいてくれない?」

既に支度は整っていたので、荷物がたくさん入ったボストンバッグと鞄を掴んで尚の脇をすり抜けようとした時に、尚に突然腕を掴まれた。

「待てよ!」

グイッと引かれてよろりとよろけた為に尚の胸に飛び込む形となった。

「きゃっ!」

「おっと…」

「ちょっと!!離しなさいよ!!」

助けられたことが癪に触って、離れるために抗議するも、ググッと握る手に力を込めて、離さない尚。

「わざわざ来てやったっつってんだろうが!無視すんじゃねぇよ!」

「だからっ、頼んでないってば!!」

「帰るんなら送ってやるっつってんだよ!有難く思えよな。」

「何で私がアンタなんかに送ってもらわなきゃならないのよ!冗談じゃないわ!!」

体調が悪い時に突っかかられてキョーコの気分が更に急降下する。
男と女の力の差がこうもあるのかと歯がゆくて仕方が無い。

「あーもー。本当に離して、とっとと帰りたいのよ。」

「…何処に…帰んだよ。」

「は?」

「お前の下宿先、今改装中だろうが!!」

「なっ?!何でアンタがそんなこと知ってんのよ?!」

キョーコが驚きで目を見張る。

「別にいいだろ、んなことは。」

尚はばつが悪そうに視線を逸らした。
虫の知らせという奴だろう、何故か無性に気になって、尚はキョーコの下宿先へ数日前に足を運んでいたのだ。

「放っといてよ。アンタには関係ないでしょ?!」

「あぁ?!俺様が折角心配してやってるってのになんだよその態度はよ?まぁいい、貸せっ!」

どこからも上目線の尚はキョーコからボストンバッグをひったくるとそのままキョーコの腕を引いて歩き始めた。

「ちょっ!!返しなさいよ!バカショー!!」

グイッと引っ張られてキョーコは力で敵わず楽屋から引っ張り出された。

「どうせやっすいカプセルホテルにでも泊まってんだろうが!今日は俺んとこにでも泊めてやるよ!」

「はっ?!誰が!!あんたのとこにお世話になるくらいなら野宿の方がまだマシよ!!」

言い合いをしながら楽屋から出た瞬間、尚が立ち止まったので、腕を引かれていたキョーコはそのままの勢いで尚の背中にぶつかった。

「ったぁー!!ちょっと!急に何立ち止まって…っ!!」

キョーコが尚に文句を言おうとした瞬間、楽屋のすぐ外にいた人物に気付いた。

扉のすぐ前に立っていたらしく、蓮は目を見開いて尚とキョーコを見つめていた。

「つっ!!敦賀さ…っ!!」

キョーコが蓮の顔を見た瞬間、ボフンと真っ赤になって、隠れるように一歩引いたのを目ざとく見つけた尚が、キョーコを隠すように蓮に立ちはだかった。

「何か用っすか?敦賀サン?キョーコはこれから俺と…」

「最上さんっ!!」

自分から身を隠すように引いたキョーコに気付いた蓮は尚の言葉も耳に入らず慌てて声をかけた。

「はっはひ!!」

「この間は…本当にゴメン!!本当に悪かった!!」

蓮が頭を下げるのでキョーコは慌てた。

「えええ?!い、いえっ!!敦賀さんはどこも悪くありませんっ!!私が迂闊だった為に、とんだお目汚しをしてしまって…こちらこそ、ごめんなさいっ!!」

「お目汚しなんてそんなとんでもない!!凄く……ゴホッ。あ、いや、何でもない。とにかく、本当にゴメン。ずっと謝りたいと思ってたんだけど、なんだか…その…面と向かって、話題に出しにくくて…」

「あ、あのっ。恥ずかしいので、その、あんまり改めて…謝らないでください…」

「全部俺が悪いんだ。俺が突然あんなことをしたから…」

「いえいえそんな!!敦賀さんにはご迷惑なだけだったと…」

「俺が…」

「私が…」

突然始まった謝罪の嵐に、蚊帳の外に追いやられて呆気に取られていた尚が自分を挟んでまどろっこしい会話を交わす二人にとうとう痺れを切らして叫んだ。

「俺を無視すんなぁぁぁ~!!」

尚が叫んだことで、二人の会話がピタリと止まり、同時に尚に視線を向けた。
すると二人とも途端に居心地が悪そうに互いに顔をそらした。
煮え切らないその二人の反応に怪訝な顔をしていると、蓮がまたもや尚の存在を無視して落ち着いた口調でキョーコに話しかけた。

「あの夜は…本当に悪かったと思う…だけど、あのままっていうのも嫌なんだ。ちゃんと、話がしたいと…思って…」

そこで言葉を切った蓮は、強い意志を持った目で、熱くキョーコを見つめた。

「俺はもう、君なしでは生きていけない体なんだ。」

蓮の言葉に、キョーコと尚が真っ赤になった。

「な?!」

「っ!!…またそんないかがわしい誤解を生む言い方をっ!!でも…」

現に食事だってキョーコの作るもの以外は食べる気がしないし、キョーコがいない空間は色を失うのだ。それを伝えるための蓮にとっては決死の告白のつもりだったのだが、やはりキョーコには伝わらなかったらしい。
キョーコの返事に内心少しがっかりしていると、キョーコはおずおずと恥ずかしげに頬を染めて蓮を見上げた。

「敦賀さんが、お嫌でなければ、また側に置いていただけないでしょうか?」

キョーコの言葉に蓮は目を見開いてキョーコを見た。

「え…でも、琴南さんは?」

言われている言葉の真意を図りかねて問い返せば、キョーコは少しバツが悪そうに答えた。

「追い出されちゃって…。あんたの帰りたい家に帰りなさいって…言われたんです。」

「それって…」

蓮が目で問いかけると、キョーコが頬を染めてコックリと頷いた。

「あの…ご迷惑でなければ…」

「迷惑だなんてとんでもない!いつでもいつまでもいて欲しいぐらいーー」

「だーーー!!!!ってっめぇらぁぁー!!いつまで人を無視すれば気がすむんだー!!ふざけんじゃねぇ~!!」

蓮の緊張していた空気が緩んで、いい雰囲気になりかけたのだが、そんな空気をぶち壊すように尚の声が響いた。

「不破君。おどろいたな。いつからここに?」

「はぁ?!最初からいただろうがっ!!てめぇの目は節穴か?!」

「ちょっと!アンタ敦賀さんに向かってなんて口の聞き方をするのよ!!」

「うるせー!!色ボケ女っ!!」

「なんですってぇぇ?!バカショーのクセにっ…」

キョーコと尚が言い争いをしていると、蓮が何かに気付いた。

「最上さん。」

ふぬっ?!と尚がまたもや無視するのかと睨みつけたところで、蓮はキョーコの額にピタリと手を添えた。

「え…?あの…敦賀さ、ん?」

「敦賀っ!!てめぇ何して…」

「やっぱり…」

蓮は深くため息を吐き出して、眉間に皺を寄せると、困惑気味のキョーコを見た。

「いつから?」

「え…あ…。」

今の今まで体調の悪さを隠してきたつもりだったキョーコは蓮の心配そうな僅かに怒ったような瞳に問いかけられて、見破られたことを悟った。
白状するより他になく、小さくポツリと呟く。

「あの、今朝…からです。」

「そう。気付かなくてゴメンね。」

「いえ、あの、なので…今日はーー」

ホテルにでも泊まるつもりですというはずのキョーコの言葉は蓮の言葉に遮られた。

「じゃあ尚更早く帰った方がいい。今日はもう仕事上がりだろう?」

「え…は、はい。」

「良かった。俺も終わったんだ。一緒に帰ろう?」

「えぇ?!で、でも、移っちゃいますよ?!ご迷惑じゃ…」

「言っただろう?いつでもいつまでも一緒にいて欲しいって…。」

キョーコがその言葉に頬を染めて嬉しそうに微笑んだ。

「敦賀さん…ありがとう、ございま…す…」

そう言って、フッと体の力が抜けて崩れ落ちそうになったキョーコを蓮がすかさず支えて抱き上げた。

「なっ?!キョーコ?!」

突然意識を失ったキョーコに驚いて尚が声をかけると、キョーコは蓮の腕の中で荒く息を吐いていた。

「そういうことだから、不破君。彼女と俺はこれで失礼するよ。」

「ちょっと待てぇ!!何がそういうことだからっだ!!ちゃんと説明しやがれっ!!敦賀っ!!キョーコに何しやがった!!」

「人聞きの悪い…。元はと言えば君が具合の悪い彼女に気付かなかったからだろう。立ってるだけでも辛かっただろうに、ずっと元気なフリをしてたんだから…」

「は?!」

「腕を掴んでて気づかなかったのか?彼女相当熱が上がってる」

「な?!」

そう言われてみればちょっと熱かったような気も…と尚は思ったが認めるのもシャクなのでうぐっと口を閉ざした。

「それは彼女の荷物だろう。そのまま持って来てくれるか?」

「はぁ?!なんで俺がんなことしなきゃいけねぇんだよ。」

蓮はやれやれと短く息を吐いて首を振ると、キョーコを片手で抱えて、空いた方の手で尚の手から荷物を奪った。

「あっ!おいっ!!」

「彼女のものは返してもらう。」

「待てっ!!どこに連れて行く気だっ!!」

「どこって…聞いてなかったのか?」

蓮はキョーコを抱きしめたまま、尚に視線を向けるため振り返ると、意味あり気に微笑んだ。

「俺たちの家にだよ。」

「はぁ?!」

当然のことのように落とされた爆弾に残された尚はあんぐりと口を開いて暫く固まっていたのだった。


(続く)


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