なくした記憶 50

2016年03月19日11:42  なくした記憶/スキビ!《完結》

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なかなか難産!!
ローリィが出しゃばって蓮さまの元からキョーコさんを誘拐しようとしたりしそうになり、慌てて軌道修正したりで時間かかりました。
誘拐しないで〜!!!!って感じなので、なんとか誘拐しない方向で書き上げることができました。
誘拐しちゃったら何もかも滅茶苦茶になるところでしたわ(笑)

とりあえず次か、その次あたり最終話になると良いなーという風月の希望的観測。
頑張ります!!!!

あ、冒頭部分は若干限定?って感じの話になってますので、苦手な方はご注意ください。
そしてシーズン終わったくせにクリスマスですみません。


では、お楽しみくださいませ。


*****


なくした記憶 50


熱く溶けるような吐息を交わしているところで、枕元にあった蓮の携帯が音を立てた。

ーーヴーヴーヴー

濃密な空気に響いた振動音。
キョーコはその音に驚いてビクッと大きく肩を揺らし、蓮はその携帯を手に取り、振動を消した。

「久遠…?」

電話じゃないのかと問いかける目に安心させるよう微笑んで答える。

「ん…アラーム。25日になったんだ。」

言いながら蓮の唇がキョーコの肌にチュッチュと甘い音を立てる。
敏感になった身体はその刺激にも身動ぎをした。

「ふぁ…ん…」

そして蓮はキョーコを抱き締めると、耳元に魅惑ボイスで囁いた。

「18歳、お誕生日おめでとう。キョーコ…」

キョーコはこんな体勢で言われたその言葉の響きに羞恥が駆け巡って全身を真っ赤に染めた。

「くっ…ぁ」

キョーコの中に身を沈めていた蓮もそのキョーコの反応に一気に締め上げられ、汗が噴き出る。

「キョーコ…はぁ…」

「ん…ふぁ…久遠…」

キョーコは蓮の首に縋り付きキスを求めた。
蓮はそれに応えながら、キョーコの目を見て言う。

「愛してる。誰よりも君を…。君の誕生日に、こうして君の一番近くで一番におめでとうと言うことができて嬉しいよ。…くっ」

近くも何も、これ以上ないくらい近く…いや、一つになった状態の蓮に言われて、恥ずかしさで益々キョーコの中がきつく締まった。

「も…久遠のバカ…ッ」

「ぅあ、キョーコ…もう…くぅ」

二人で同時に限界を迎え、パタリと力尽きたように重なり合った。



運命の朝はいつも通りの顔をしてやってきた。
キョーコの作る朝食に舌鼓を打ち、弁当を受け取り、行ってきますのキスを愛しい恋人のキョーコへ送って本日一番の現場へ出かける。

今夜はキョーコの為にホテルのディナーも予約しているので、19時から21時の生放送を終えたあとは、わざわざテレビ局の駐車場まで来てくれるというキョーコと落ち合い予約しているレストランへ向かう予定だ。
浮き足立つ気分で次々と仕事をこなし、蓮はその日最後の仕事が待ち構えているTBMへ意気揚々と向かった。

*

「え?!今日のゲスト…く…つ、敦賀さん…なんですか?!」

「あぁ、だから、例の如く絶対に問題を起こすな!粗相もないようになっ!」

キョーコの前で眉間にシワを寄せふんぞり返って言うのは、いかにも俺は偉いと言うような態度のプロデューサーだ。

キョーコは坊の頭を抱きしめながら直前まで明かされなかったゲストの正体を知って目を見開いた。

ーーーそんな…きまぐれに出るなんて一言も…。あ、そっか!シークレットゲストだったからだわっ!

この業界、番組が公開するまで親兄弟にすら話せない誓約書を書かされることもザラにある。
シークレットゲストは番組開始まで知らされないのだが、キョーコは坊としてのエスコートがある為、直前に知らされたのだろう。

ーーーそういえば私…久遠に私が坊の正体って言ってないかも…?

そう思った途端、何故か社長のニヤリ笑が脳裏をよぎり、嫌な予感を感じた。

ーーーまさか…ここで仕掛けてきたりとか…いえ。まさかね。だって生放送だし…。

慌てて己の思考を否定して首を振る。

「おい!聞いてるのか?!」

プロデューサーが何か言ってるが右耳から左耳へ抜けていく。

「坊!エスコート!スタンバイお願いします!!」

「っ!は、はい!!」

呼びに来たスタッフのスタンバイの一言にピッとスイッチを切り替えて、キョーコは坊の頭を被った。

実はゲストの楽屋から舞台裏までのエスコートの間カメラが回るのだ。
面白い時は時々オンエアで流れることもある。
私用の話は一切出来ない。
キョーコにとってはここからがもう本番。
気を引き締めていかなくてはいけない。

ーーーそーよ!何か起こるって決まったわけじゃないんだし、考えるだけ無駄無駄!とにかくこれは仕事なんだから、坊としてやりきるだけ!

坊の足音を響かせて、キョーコは蓮の楽屋の前に立った。

ーーーここにいるのは敦賀蓮。僕(坊)の親友!

スタッフが坊の変わりに部屋をノックし、その扉が開かれたーー。


「あれ…?君は…」

『やぁ、敦賀君!久しぶり!』

手に持ったホワイトボードにサラサラと字を書いて会話をする。
すると、蓮はすぐに喋れない設定だと察してくれ、くすりと柔らかく笑った。

「あぁ、なるほど…。久しぶりだね。まさか君がこの番組のマスコットキャラクターだったとは…」

『あれ?もしかしてこの番組見たことなかった?』

「いや。あるよ。…っていっても予習がてら先ほどね。だから君を見つけて驚いたところだったんだ。」

『なるほどね。まぁ、何はともあれ、歓迎するよ!今日もキマってるね!』

「くす。ありがとう。君もキマってるよ。」

『当然だろう。敦賀君がゲストだと知ってビシッとキメてきたからな。』

「二人は知り合いなの?」

スタッフに尋ねられて、二人は顔を見合わせた。

『ちょっとね。』

「まぁ。彼には前に助けられたことがありまして…。」

「え?敦賀君が…?」

『その辺の面白エピソード使ってもいいかい?』

坊がニヤリと意地悪く問いかけた。
すると、蓮はピタッと立ち止まって、にこりと綺麗な笑顔を浮かべる。

「…いや、ご遠慮するよ。もし、そんなことしたら…わかってるよね?」

蓮の笑顔が最上級に輝いて、坊の中のキョーコは久しぶりの毒吐きスマイルに、ヒッと後ずさった。

『も、モチロン!!秘密は守るよ!俺たち親友だろ?!』

「親友…」

蓮は坊の言葉に、目を見開いた後、フッと柔らかく笑った。
先ほどの嘘毒吐きスマイルと一転して優しい笑顔にキョーコの胸がキュンと痺れた。

「敦賀さん、こちらへ。スタンバイお願いしまーす!」

「あ…はい。じゃ、行ってくるよ。」

会場に着いた途端呼ばれて、蓮はそっちへ向かった。

背中を向けてスタッフの方へ歩きかけた蓮が、小さく「あっ」と声を上げて、坊に振り返って戻ってきたかと思えば、小さな声で坊にだけ聞こえるように言った。

「そうだ。ありがとう。」

ーーーえ?

突然のお礼の意味がわからず、坊が首を傾げると、蓮ははにかみながら照れ臭そうに、それでいて幸せそうに笑った。

「ずっと君に会ったら言いたかったんだ。君、言ってくれただろ?」

ーーーん?何?何のこと?

「『おとせ!』って…」

ーーー?!?!?!

「今、その彼女と付き合ってる。」

ーーーあ、あの時のっ!!

キョーコは坊の中で蓮におとせと脅したあの日のやり取りを思い出してブワッと真っ赤になった。

ーーー自分のことだとは思わなかったのよぉぉぉ!!

「正直、最初言われた時は、鶏のくせにわかったようなことをと思ったけど…」

「ひどいな君も…」

思わずムッとしてうっかり声に出して慌てるが、もうカメラは近くになかった。
蓮はハハッと笑って続ける。

「だけど、彼女と会うたび見惚れてる自分に気付いて、君の言葉が深く刺さった。そして俺は自分の恋心を自覚して、役をやりきり、今は彼女と付き合ってる。一ヶ月前からね。」

「そ、そうか。おめでとう。良かったじゃないか。」

「だから、お礼が言いたかった。本当にありがとう。」

「い、いや、僕は何も…敦賀君の実力サ。」

「いいや、もし君がいなければ俺はもしかしたらあの役を下ろされてたかもしれない。だから本当に感謝してる。」

「おーい!敦賀くーん!」

「じゃあ、また。」

「う、うん。」

「坊もスタンバイしてー。」

スタッフに呼ばれ、蓮の後ろ姿を見送っていたキョーコも慌ててそっちへ向かう。
ドキドキと胸は激しく脈打っていた。

ーーー敦賀さんに坊として接するの…いつもと違う顔が見れてなんだか新鮮…。

蓮の心底嬉しそうなあの顔。
キョーコとの交際を心の底から喜んでることがわかって、くすぐったかった。

坊には恋人としての自分としてじゃない、他の色んな顔も見せてくれる。
今まではタイミングがなくて言えなかったが、もしかしたら、言わない方が良いかもしれない。
自分が坊だとバレたら嫌われちゃうかも。
そんな風に思ってキョーコはステージに板付でスタンバイした。

ーーーダメダメ!今は番組に集中するのよ!キョーコ!!私は…いいえ。僕は坊!!鶏よ!

監督が間もなくスタートの合図を出す。

軽やかなオープニングソングが流れ、カメラはブリッジロックをとらえた。

「やっぱ気まぐれロック!クリスマス特番!!今日のゲストは凄いで〜!」

「俺らの事務所の大先輩!俺らもさっき知ってビックリしたで!」

「芸能界抱かれたい男ランキング第一位!!」

会場から興奮したようなどよめきが起こった。

「「「敦・賀・蓮・さん・だぁぁぁぁ!!」」」

「「「「キャァァァ!!!!レ〜ン〜!!!!」」」」

黄色い歓声と共にスモークが噴き上がり長身のシルエットが浮かんだ。



(続く)

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