なくした記憶 51

2016年03月21日17:51  なくした記憶/スキビ!《完結》

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久しぶりになくした記憶を心から楽しんで書けましたー!!
まだ終われなかったです。

もう少々お付き合いくださいませ。

ふふ♪ではでは、どうぞ!!
※関西弁…想像で書いてるので、間違ってたらごめんなさい。間違ってる時はニュアンスで読んで頂けたら嬉しいです。


*****

なくした記憶 51


撮影は順調に進んだ。
蓮の所作一つ一つに観客からは甘い溜息が漏れ、時々黄色い声援が飛びかう。
それに笑顔で応えながら穏やかに番組は進行した。

クリスマスということもあって、会場とお茶の間への蓮の私物プレゼントがあったりと番組も大いに盛り上がっている。

キョーコは薄暗い舞台裏で次の進行に必要なネタタマゴを探した。

「あれ?ない…?」

いつも置いてる場所になくてキョロキョロ探していると、肩を叩かれた。
目の前にスッと差し出されたネタタマゴを受け取りお礼を言うとリーダーの光の元へ急いで向かった。

「さぁ、ではいよいよ、敦賀さんへの質問コーナー!会場やお茶の間からの厳選された質問がこの坊の持ってきてくれたネタタマゴの中に入ってるんやで〜!」

相変わらず客席からは蓮の名前が黄色い声援に混じって何度も呼ばれている。

「では、最初のネタタマゴ行ってみましょう〜!……って…あれ?」

番組のチェックが入っていればちゃんとその印がネタタマゴに入れられた用紙の隅に入ってるはずだが、その印が見当たらず、光はそれに困惑して助け舟を求めるように、カンペを持ってるADに視線を送った。

「なんや、リーダーどうしたん?」

「なんか変な質問やったんかいな?」

二人も横から覗き込み、印が入っていない紙に目を丸くした。
以前全く印の入ってない質問が紛れ込んでいて番組進行が危うくなった事件があったのだ。
すると、何か指示でもあったのかカンペには『そのまま読んでいいから続けて』と書かれていたので困惑したまま光はその紙を読み上げた。

「よ、よっし。じゃあ行くで。まず最初の質問や。『風の便りで聞いたのですが…』」

ーーーえ…?

キョーコは坊の中で何処かで聞いたことのあるフレーズに自分の耳を疑った。

「『敦賀さんの本名は、敦賀蓮じゃないそうですね。本当の名前が知りたいので、教えてください。』やて。」

ーーーえ…えええええぇ?!

キョーコはバレてはいけないはずの質問が飛び出したことに度肝を抜かれて坊の中で悲鳴を必死で噛み殺した。

「本名…ですか。どこから漏れたんでしょうね。確かに、敦賀蓮は芸名です。でも俺は、ある理由があってそれをまだ明かすつもりはありません。もっと役者として高みを目指し、いつか自分の敦賀蓮としてのこの足でハリウッドに立ち、成功したその暁には名前も公表し、自分の本名で活動したいと思ってます。」

「「きゃー!!」」

「痺れるわぁ〜!蓮〜!!」

「かっこいい!私絶対応援スルゥー!!」

客席からも拍手喝采が起こり、蓮は内心ヒヤリとした心を撫で下ろし、ありがとうございます。と客席に応えながらにっこりと微笑んだ。

「敦賀さん、ハリウッド目指してはるんやなぁ〜。いやぁ敦賀さんなら絶対行けると思うで!」

「楽しみやなぁ〜。俺も同じ事務所の後輩として心から応援してます!」

「もちろん俺も応援してます。やっぱり敦賀さんが言うとキマるなぁ〜。よっしゃ!次の質問いくで!!…あ…」

「ん…なんや…?あ…」

「どうしたん?…あ…」

次の内容を目にした三人の間に微妙な空気が広がり、蓮は首を傾げた。

「どうかしましたか?」

「あぁ、いや…」

相変わらず、スタッフからはゴーサインが出ているため、読まないわけにはいかない。

「じゃ、じゃあ、読むで!『風の便りで聞いたのですが…』」

ーーーえええぇ?!ウソォォォ?!?!?!

キョーコは内心大慌てだ。自分が過去に幼馴染への復讐のため同じ始まりで弱味をネタタマゴに忍ばせたことがあるのだ。
嫌な予感しかしなくてキョーコは背中に冷や汗を掻くのを感じた。
そして思わずプロデューサーを見ると眉間に皺を寄せた物凄い怒り顔でキョーコを睨み付けていた。キョーコは慌てて首を振り自分の無実を訴えた。

ーーー違います!違います!!私じゃありませんー!!きっと誰かが…はっ!そうよ!あの人!!!!暗くてよく顔もわからないままネタタマゴを受け取っちゃったけど、さっきの人に中身がすり替えられたんだわっ!!

キョーコは先ほどいつもの場所にネタタマゴがなかったことを思い出し、差し出された時のことを思い出そうとしたが、舞台袖は暗すぎて顔など全く思い出せない。そもそもちゃんと見えてさえいなかったのだ。

蓮も何となく違和感を感じながらも、質問の続きを待つ。

「『共演者など誰も気付かなかったようですが、敦賀さんは、この間の事故で一時期記憶喪失になってたそうですね。5年間の記憶を全く覚えてないままその後も仕事を続けられたようですが、どうやっていたのですか?』…って、ええ?!記憶喪失?!」

「えぇ?!ほんまに?!」

ーーーな、なんでぇぇーーー?!

キョーコはかなり重要なトップシークレットなネタを誰が漏らしたのかと慌てた。

ーーーえ?!何?!なんなの?!何処の誰よ!!何が起きてるの?!はっ!もしかして敦賀さんを貶めようとしてる人の仕業?!私がよく確認もしなかったせいで…ど、どうしようー!!

青ざめるキョーコと反対に、蓮はにこやかな顔で冷静に答えた。

「ええ。本当です。今はもう記憶も戻りましたが、5年間の記憶が全くないまま今の自分自身を演じるのは大変なことだっただろうと思います。記憶が戻るまでは過去の自分のバラエティ番組の立ち居振る舞いや、ドラマを見て研究していたと聞いていますが…」

「え?聞いてますってどういうことなん?!」

「えらく人事やな。」

「実は、お恥ずかしながらその5年間の記憶が戻るのと引き換えに、記憶を失ってた間の記憶を失ってしまったようで…。時々チラッと思い出したりはしてるんですが…」

「はぁー。そりゃまた…。」

「難儀やなぁ〜…。」

「いやでも、周りに全くそんなそぶり見せてなかったんやろ?流石やなぁ。」

「まぁ、支えがあったおかげですかね。」

ニコッと付け足された言葉に、キョーコはハッとしたが、リハーサルと違う内容にテンパってるブリッジロックはそれを拾う余裕はなかったようで、3つ目のネタタマゴを手に取っていた。

「んじゃ、最後のいくで!」

光のその言葉に、キョーコホッと胸をなでおろした。

ーーーよ、よかった!私のことをなにか言われるのかと…

「えーっと…『風の便りで聞いたのですが…』」

ーーーま、またぁぁぁ?!今度は何よぉぉぉぉ!!

キョーコは心の中で、何が何だかわからず混乱中だが、ブリッジロックの三人はそのフレーズに慣れてきたようだ。
蓮だけが3回続いた同じ入りはこの番組のお約束なのだろうと思っていた。

「『敦賀さんには目に入れても痛くないくらい愛しい愛しい恋人がいるそうですね?』って、え?!ええええぇ?!」

「は?!なんやそれ!これ生放送やで?!ええん?!ええんか?!」

「ちょ、え?!こ、これまずいんやないん?!」

ーーーな、なんだすとぉぉぉぉぉぉ?!

まさかそんなことにまで突っ込まれると思わずにキョーコは驚き焦った。

ーーー嘘でしょ?!なんで?!なんでなの?!

客席もどよどよとどよめいているが、スタッフもブリッジロックも大慌てだ。
だけど、カンペには続けるように指示があったので、光はゴクンと唾を飲み込み続きを読んだ。

「こ…『この会場内にその自慢の彼女がいるので30秒以内に見つけ出してどんな彼女なのか一言で紹介してください。P.S.もし出来なければ…っ』」

そこで光はまた驚きで真っ赤な顔のまま固まった。

「な、この会場内にいるやて?!」

「出来なければなんなんや?!なんやけったいなことでも書いてあるんか?!」

二人も光の言葉の続きが待てずに両側から覗き込んだ。
そして固まってるリーダーの代わりに、二人は口を揃えて続きを読み上げた。

「「『もし出来なければ、同棲を解消させ、半年間の接触を禁ずる。』」」

読み終えた瞬間、何処からともなくスタートの合図を知らせる鐘がなった。

ーーカーン。

蓮はその合図の音にピンときて、目の色を変えて素早く立ち上がった。

目を光らせ、客席を素早く見渡す。
その間にもーチッチッチッーと無情にも時を刻む音が続いていた。

「あ、いつの間にかカウントダウンが始まっとる!!」

「ってか同棲?!ええ?!敦賀さんが?!」

「こんな展開聞いてへんよ!!」

ブリッジロックも客席もあまりの展開にどうしていいのかわからず、困惑しながらもただ蓮の動きを見守るしかない。
蓮は必死だった。
ザッと舞台上手側の客席に視線を巡らせても、キョーコらしき人物はいない。
さらに反対側の下手側の客席にも素早く視線を巡らすが、やはりそれらしい人物は見当たらなかった。

ーーー客席にはいない!何処だ?!何処だ?!考えろ!スタッフか?!

蓮は素早く会場の隅に散っているスタッフを見回す。

ーーーイヤァァァァァ!!バレたくないぃぃぃ!!

一方キョーコは、蓮の恋人として公表される恐怖に心臓が縮まりそうになり、今すぐここから逃げ出したい衝動に駆られた。

その間にも蓮は必死で思考を働かせる。

ーーー違うっ!30秒以内ということはすぐに捕まる位置…つまり、このステージ上にいるはずだ!!だとしたら…

ーープキュゥゥゥゥゥゥ。

キョーコはこっそり抜き足差し足忍び足で逃げ出そうとしたのだが、足音が出る着ぐるみのせいで失敗に終わってしまった。
蓮はその音を聞いてハッとして振り返った。

バッチリと蓮と坊の目がかち合う。

ーーーいいいいいやぁぁぁぁぁ!!違う違う!僕は坊!僕は坊だよ!!

ブンブンと首を振って、思わず逃げるように後ずさってしまった。
それを見た蓮が驚いた顔をした後、ふっと心底安堵したような笑顔を浮かべる。

ーーーし、しまったぁぁぁ!私の馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

その坊の逃げ腰が、蓮の疑惑を決定付けてしまったことに気付いて、キョーコは坊の中で滂沱の涙を流した。

蓮が長いコンパスを利用してキラキラスマイルで近付いてくる。

ーーーひ、ひいいぃぃぃぃ!!ご勘弁をぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

キョーコは恐れ戦きながら慌てて逃げ出そうとした。

「キミ!待ってくれ!」

ゲストである蓮の呼び掛けをマスコットキャラクターが無視できるわけもなくピタッと立ち止まりギギギっと振り返る。

するとガシッと頭をつかまれ、そのままスポンと問答無用で頭を外され、素顔が晒された。

「見つけた。キョーコ。まさか君が彼だったなんてね…。」

鶏の体から顔を出した自分をモニターに見つけて、キョーコは漸く逃げ場がなくなってしまったことに気付いたのだった。


(続く)

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ここで切っちゃったのでもう少し続きます〜☆
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