さよならは言わないで。

2016年03月26日14:56  短編(原作寄り)/スキビ!

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

超王道路線なので、どなたかと被ったらすみません。

別れの季節だからかなぁ?何となく浮かんじゃいました。


*****


さよならは言わないで。


「…ねぇ、いいの?」

「んー?何が?あ、モー子さんそこ貼り方違うわよ。」

「……まぁ、あんたがいいんなら良いんだけど…だけど、あんたには文句の一つくらい言える権利あるんじゃないの?」

「…別に。私はただの後輩だもの。」

キョーコはそれだけポツリと呟くとまた黙々と作業を始めた。
奏江はその姿を見ながらイライラと呟いた。

「少なくともアンタは、ただの後輩なんてものじゃないと思うわ!」

「モー子さん…早くしないと終わんないよ。」

「あーもー!!ちょっと!あんたね!良い加減にしなさいよ!!呑気にラブミー部の雑用してる暇ないでしょう?!さっさと敦賀さんのとこ行ってきなさいよ!!」

「モー子さん何怒ってるの?」

「何怒ってるの?じゃないわよ!!あんたね!いつまで逃げてるつもり?!」

「逃げてなんて…」

「逃げてるじゃない!!今も…こっそりため息なんてついてる癖に、気にしてないふりして!」

「モー子さん…」

「そうこうしてる間に、敦賀さん行っちゃうわよ!良いの?!」

「………」

グッとキョーコは下唇を噛み締め、拳を握った。
奏江もワナワナと拳を震わせていた。

「渡米するって、敦賀さんの口から直接聞いたのは、アンタだけなのよ?!しかもメディアで発表する一ヶ月も前!!その意味がわからないの?!」

「意味なんて…そんなの少し仲良くしてたからで…」

「そんなわけないでしょう?!」

ビクッとキョーコは肩を震わせた。

「それから半年間も逃げ続けて…!いいの?!何も言えないままで…敦賀さん今日の17時の便で渡米しちゃうのよ!!あと1時間もないわ!!」

「…今から向かったところで間に合わないわよ。」

「そんなの分かんないじゃない!行きなさいよ!さもないと絶交よ!」

「ええ?!そんなモー子さん!!」

「挨拶の一つでもしてきなさいよ!仮にもお世話になった大先輩でしょう?」

「…だ、だけど…」

「ほら!本当に間に合わなくなるわよ!この仕事はあとは私がやっとくから!ほら!!さよならぐらい言っとけばいいじゃない!じゃないとアンタ絶対後悔するわよ!!」

「さよならなんて…そんなの嫌なの…。」

「だったらまた帰ってきて!でも、また会いたい!でも何でも良いじゃない!」

「そんな敦賀さんの足かせになりそうなこと…」

「あーもー!面倒くさい!!本当に絶交するわよ!!このまま会えなくなっても良いの?!行きなさいよ!!」

「…わかった。ごめんね。モー子さん…行ってくる!」

「えぇ。早く行きなさい。」

飛び出していったキョーコにやれやれと首を振ると「全く世話が焼けるんだから。」と呟き、奏江は椅子に座り直して仕事を再開したのだった。


「ほら、蓮…そろそろ出発ロビー行かないと入れなくなるぞ。」

「えぇ…。わかってますよ。」

社が蓮から正体を明かされたのは三ヶ月前。
渡米は本来の姿で出国するため、今は金髪碧目の蓮を見送りに来ていた。

「結局、キョーコちゃんには何も話せないままか?」

「えぇ。渡米の話をした日から何も…」

「そっか…」

「社さんにも色々お世話になりました。本当にありがとうございました。」

深々と頭をさげるその姿は、外国人に見える今の蓮の姿には不釣り合いだった。
社は苦笑しながらも頭を上げさせる。

「俺こそ、お前と仕事ができて誇りに思うよ。今までありがとうな、蓮。向こうに行っても…あ…」

そうして、別れの挨拶を終えようとした社は、頭を下げる蓮の向こう側に、見覚えのある栗毛色の髪型を見つけて目を見開いた。

「?社さん?」

社が固まっていたので、不思議そうに見上げた蓮も、つられて視線を追う。

するとそこにはキョロキョロと誰かを探しているらしいラブミーユニフォームに身を包んだキョーコがいて、蓮も目を見開いた。


二人の視線に気付いたキョーコが、アッと大きく息を呑んで固まったが、その口をグッと閉じて、ズンズンと蓮の元まで進んで来た。
そして近くまで来てキョーコは蓮の姿に違和感を覚えた。
遠くから見たときは光が反射しているだけだと思っていたのに、近づいて見えたキラキラと輝く金髪と不思議な色彩の目…。
あの日、グアムで再開した妖精の姿だったのだ。


「…え?!敦賀さ…でも、え?コーン?!」

「キョーコちゃん!蓮の見送りに来てくれたんだねぇぇ!!」

社はキョーコが現れたことに感激していて、驚いてる姿を見てもうんうん。この姿驚いちゃうよね!とコーンという聞きなれない単語はスルーしてしまった。

「最上さん…」

蓮はもう会えないと思っていたキョーコが現れたことに目を見開き固まっていた。

「…ど、して…?敦賀さんが…コーン?」

キョーコにそう問いかけられて蓮は今の自分の風貌を思い出しハッとした。

「キョーコちゃん、コーンって??蓮??」

社は蓮とキョーコの顔を交互に見比べていた。

「最上さん…いや、キョーコちゃん。ずっと黙っててごめんね?」

蓮が申し訳なさそうに困ったようにフワッと笑うと、キョーコの目からボロボロと涙が流れた。

「コオオオオオン!!」

キョーコが蓮にガバリと抱き付いたので、社は驚いた。蓮も一瞬驚きはしたが、すぐにキョーコを抱きしめ返した。

「ゴメン…。」

「ひっく…いや、コーン…また…置いていくの…?」

「ゴメン、ずっと黙ってて。ゴメンね。また置いていくことになっちゃって…でも今度はきっとまた会えるから…。」

「…ぐす…。また、会える…?」

「うん。会えるよ。君のお陰で俺は大きな翼を手に入れたから…。君にまた会いに来る。だから今度はさよならは言わない。」

「コーン…。」

「グアムでも騙しちゃう形になってゴメンね。」

「ずっとずっと私がコーンに会いたがってたの知ってたくせに。」

「うん。ごめん。君に話したいことは沢山あるんだ。いつになるかわからないけど、近いうちにまた君に会いに戻ってくるよ。その時は話聞いてくれる?」

「わかりました。待ってます。敦賀さん。待ってるからね、コーン…。」

「ん…。ありがとう…キョーコちゃん。じゃ、約束。」

「え…?」

そっと頬に手を添えられ、顎をぐいっと上向きにされて、キョーコが不思議そうに見上げたのと同時に、蓮の唇が降ってきて、キョーコのソレに重なった。

「っっっっ!!!!!れ?!」

「ッ?!?!?!」

社は驚いて真っ赤になり、キョーコも真っ赤な顔で固まった。

「んん……」

頭を固定され侵入してきた舌に絡め取られて、キョーコが蓮の袖を縋るように握り締め、目をギュッと強く閉じた。

ちゅと音を響かせて、蓮の唇が離れていく。
真っ赤になったキョーコを隠すように抱きしめて、蓮はキョーコにだけ聞こえるように呟いた。

「今はこれだけ言わせて。君を愛してる。ずっと…今までもこれからも…」

「敦賀さんっ…!」

「また絶対に会いに来る。もうキョーコちゃんを一人にはしない。俺が絶対守るから…」

ポロっとキョーコの目から涙が溢れた。
蓮はキョーコを離して、キョーコの頬をそっと包み込み、ふんわりと微笑んだ。

「帰ってきたら、いくらでも文句を聞くから。今はまださよならは言わないで。」

「わかりました。文句もさよならも今は言いません。だけど、これだけは言わせてください。」

「ん?」

「貴方が好き…」

蓮は大きく目を見開いた。

「…え?」

「今も、そしてこれからも…」

蓮は己の顔がみるみる内に赤くなっていくのを感じながら、嬉しくて感激してどう言葉にしたらいいかわからなかった。

ガバリと再びキョーコを抱きしめる。

「きゃ!」

「本当に…?」

「本当に本当です!」

「嘘じゃない?」

「こんな嘘ついてどうするんですか!」

「れ、蓮…取り込み中悪いが、もうそろそろ入らないと時間が…」

「…離したくない…」

「え?!」

「キョーコちゃんといる。」

ヤダヤダと駄々っ子のように首を振る蓮に、社とキョーコは一瞬ポカンとしてしまった。

「蓮…ふざけてる場合じゃ…」

「ふざけてなんていません!だってキョーコちゃんが俺を…」

なおもなにか言いかけた蓮の頰にキョーコの白く細い指がヒタッと伸びた。

「キョーコ…」

「敦賀さん…私も出来ることなら貴方とこのままここにいたい。」

蓮の顔がパァァァと明るくなった。

「だったらーー」

「でも、ダメです。これは貴方の夢だったんですよね?目標だったんですよね?だったら行かないと…」

「キョーコちゃん…」

「私は大丈夫ですから。寧ろ敦賀さんを追いかけてハリウッドに行っちゃうくらい頑張りますから…だから…」

「うん…」

「行って下さい!貴方の夢のために大きな翼を広げて自由に飛ぶために…」

「うん。ありがとう…。わかった。キョーコちゃん。俺、行ってくるね。」

「はい!いってらっしゃい!コーン!」

ふわっと笑う柔らかいキョーコの笑顔に、熱い想いが込み上げる。

「待ってるから。」

「?」

「ハリウッドで待ってる。」

「っ!!!!っはい!!」

「ほら!蓮!!!!早く!搭乗手続き終わるぞ!!!!」

「電話する!メールもするからっ!」

「はい!お気をつけて!」

社に追い立てられて、蓮はキョーコと離れ飛行機へ向かった。
搭乗手続きを終え、振り返ったところで、キョーコが手を振ってくれてるのが見えた。

胸に暖かい魔法を掛けられて、蓮はしっかりと前を向き、自分の夢を叶えるため大きな一歩をふみだし歩き出した。

キョーコも口付けられた唇に手を添え思う。
アメリカの地で再会を果たす日をーー。


蓮と二人、並んで立つ日を…。

それはきっと数年後のお話。


END

スキビ☆ランキング
関連記事
前の記事 次の記事