さよならは言わないで。–数年後–

2016年04月17日19:52  短編(原作寄り)/スキビ!

震災のニュースを目にする度に、何だか凄く気分が沈んでしまいます。
先ほどもスーパーのレジに並んでいたら地震警報が鳴り響き、周りもざわざわしてしまいましたが、今回揺れは殆ど感じなかったです。


被害の状況などを伝える情報は大事ですが、それに振り回されたり、そのことばかりに意識を向けていてもどうしようもできません。
こういったピンチが訪れた時に、どう捉え、どう行動するかが大事だと思います。
風月一人で出来ることなんてたかが知れてますが、話を書くことはできる。

そして風月の己に課してるミッションは多くの人を笑顔にし元気付けることです。
勿論、自己満足な部分も大いにありますが、読んでくれた人が笑顔にそしてほっこり幸せな気分になって貰えたらいいなって思いながらいつも書いてます。
拍手や、コメントくださる皆様の言葉に逆に風月の方が元気付けられてることも多いですけどね((*´∀`*))
いつもありがとうございます!


さて、今回のお話は、前回書いた『さよならは言わないで。』の続きの話になります。
※前回読んでない方は、そちらから先にお読みください。
読んでない方がそのまま読んでしまうと意味不明と感じると思います。

続き催促頂いてうっかり書いてしまいました!
すぐに浮かんだくせに、書き上がるまでかなりの時間を要してしまいました(笑)


※『』は英語、「」は日本語です。
※風月にしては珍しくオリキャラ出てきます。

お楽しみ頂けたら幸いです。


*****


さよならは言わないで。-数年後-


ーートントントントントントントントン
ーーそわそわそわそわそわそわそわそわ
ーーチラチラッチラッチラッチラチラッ
ーーウロウロウロウロウロウロウロウロ

時計をチラチラと気にしながら、腕を組んだまま人差し指で己の肘をトントンしつつ落ち着きなく部屋中をウロウロしているのは金髪の大男だった。

目に余るその常にない様子に、焦れた様子で目鼻立の良い茶髪の男が耐えかねたように声をかけた。

『クオンッ!』

ーービクッ

クオンと呼ばれた男、蓮は己の名を呼ばれハッとする。

『何だ?ジョン…』

『そわそわし過ぎ!落ち着きなさ過ぎっ!お前ってそんなキャラだっけ?』

『いや、だって…』

ーーチラッ

蓮は注意を受けてしどろもどろになりながらも、まだ時計を気にすることをやめない。

『だぁーから!鬱陶しい!!全く。たかだか恋人と久しぶりに会えるくらいで一体なんだよ。ここ最近ずっとそんな調子だし、何者だよ?京子って…』

ーーピクッ

蓮はキョーコの名前にすかさず反応を示した。

『ジョン…』

ジロリと久遠が怖い顔でジョンを睨みつける。

『な、何だよ?』

『“キョーコちゃん”だから。』

『は?!』

『“キョーコちゃん”だから。』

『あ、あぁ…』

ジョンは、蓮より3つ年上のアメリカでのマネージャーだ。
敦賀蓮としても、久遠ヒズリとしても変わらずサポートをしてくれている。
ジョンは、数年前までアクションスターを目指していたのだが、足の怪我が原因で日常生活に支障はないもののアクションが出来ない身体になってしまった。
そして3年前、蓮がハリウッドに進出してきた時に蓮と出会った。
蓮の並々ならぬ演技への情熱に胸を打たれて、己の夢を蓮に託し、蓮のマネージャーを志願したのだ。
多少大雑把なところがあるジョンだが、ジョンのサポートがなければこんなに早くここまで来ることは出来なかっただろう。

蓮は先日、ハリウッドで久遠ヒズリとして初の主演を演じた映画が公開され、アカデミー主演男優賞候補とまで言われるほどの知名度を手に入れたのだ。

マリアの父親にしてエージェントの皇貴とマネージャーのジョンは蓮にとっては感謝しても仕切れないほどの恩人だ。

蓮はとても緊張してるのか椅子に腰掛けても、尚頭を抱えて、ふぅー。と何度も息を吐き出して緊張を解こうとしていた。

『お、おい、大丈夫か?』

『あぁ…』

『まだ今飛行機が漸く着いた頃ってだけだろ?今からそんなんじゃ彼女がここに来るまで持たないぞ身体…。』

『やっぱり空港に…』

腰を浮かした蓮を止めるため、ジョンは腰にしがみ付いて全力で止めた。
このやりとりももうこのホテルへ来て3度目だ。

『だから、ダメだって!何のために皇貴が代わりに行ったと思うんだよ!お前じゃ目立ちすぎるの!キョーコ“ちゃん”にも迷惑かけることになるんだぞ。少しは自覚しろ!』

シュン…と明らかに肩を落としている蓮の様子に、ジョンはからかうような声をかけた。

『全く、言い寄ってくる女優たちを全く相手にしないからゲ◯なのかと噂までたってたのに、まさか日本に彼女がいたとはね。だけど、彼女がいたって遊んでる奴いっぱいいるだろ?つまみ食いくらいすればいいのに、真面目だよな久遠は…』

『…誤解させたくないんだよ。』

蓮の返答を聞いて、ふーんなんて言いながらも、何か聞きたげにジーーーっとジョンが見つめてくるので、蓮はチラリとジョンを見返し視線に答えた。

『…何だよ?』

『いや〜。お前がそこまで惚れ込むってさ…その彼女、相当良いのかな〜?って。』

『…は?』

『いや、だからアレだよ…アレ…夜のさ…』

蓮はジョンの言葉に、突然無表情になると、プイッと顔をそらした。

『え?な、何だよ?教えるくらい良いだろ?どんな感じなんだよ?』

『…だ…』

ボソッと蓮が顔をそらしたまま小さな声で何かを発したが、よく聞こえなかったジョンは首を傾げた。

『あ?何だって?』

蓮は口を閉じて再び言葉にするのを躊躇う様子を見せたが、それでもジョンが覗き込んでくるので、観念したように頬を乙女のように染めてボソリと口にした。

『…………まだなんだ…』

蓮の告白を聞き、ジョンは雷に打たれた顔で一拍固まったのち、信じられないとばかりに叫んだ。

『ハァァァァァァァァァ?!嘘だろ?!嘘だよな?!嘘だと言ってくれぇぇぇぇぇ!!!!』

ガクガクガクガクと驚愕の表情でジョンは蓮の肩を揺らした。

『ジョン、落ち着け…』

『これが落ち着いてられるか?!3年…お前がこっちに来て3年だぞ?!それから一度も日本には帰ってないよな?!』

『あぁ…そうだな。』

『何でだ?!何でだよ!!日本でいくらでも出来ただろ?!お前…何でだ?!』

『いや、だから…まず落ち着け…ジョン』

そして蓮はキョーコとの馴れ初めを話した。
長い間片思いをしていた事、漸く想いを伝え合い、互いの気持ちを知ることが出来たのがアメリカ行きの飛行機に乗る直前だったこと。
それからは電話やメールやエアメールのやり取りだけでお互いに忙しく一度も会えてないこと。

ジョンは驚愕に震えていた。

『信じられん…!!いや、だがな?!よく考えろ!!お前が貞操守ったって、彼女は隠れて浮気してるかもしれないじゃないか!何でそんな相手にそこまで入れ込めるんだ?!』

『失礼な…。そんなことする子じゃないよ。ジョンも会えばわかる!キョーコは…彼女は明るくまっすぐで、今時珍しいくらいの純情乙女なんだ。嘘も苦手で馬鹿正直で素直な子なんだよ。』

キョーコのことを語る蓮の顔を見てジョンは目を見開いた。
そして感心したように頷いた。

『お前…そんな顔もできるんだな…』

シミジミと言われた言葉に、蓮も驚く。

『…え?』

『そんな甘やかな優しい顔…男の俺でも見惚れてしまったじゃないか…や、ヤバイ…心臓が…』

『ジョン、冗談やめてくれ。』

そんなやり取りをしてるうちに、時間は経ち、とうとう待ちわびた来客を知らせるノック音が蓮のいるホテルの部屋に響いた。

すぐに弾かれたように立ち上がった蓮を制して、ジョンが迎えに出た。

蓮は緊張がピークに達するのを感じていた。
こんな緊張感、映画の舞台挨拶でも最近は感じないのにーーなんて思いながらも、どうしてもソワソワしてしまう。

ーーー今あの廊下の向こうには彼女が?!

そう思うだけで、心臓がバクバクと音を立てた。

よく聞こえないが話し声が聞こえる。
蓮は今一度大きく深呼吸をして気持ちを落ち着けた。


+++


飛行機の中でも、ずっとソワソワして落ち着かなかった。
あの始まりの別れから3年の月日が早くも立っていて、久しぶりに会える喜びと、まだ変わらずに好きでいてくれているかの不安で押しつぶされそうだった。

ーーー会いたい。でも、会うのが怖い…。

久遠ヒズリとして活動を始めてからはその話題性も相まって、人気に拍車がかかっていて、数多くの女優やモデルが蓮へラブコールを送っているという噂を良く耳にしていた。

ーーー私には勿体無いくらい素敵な人だもの。あんなに綺麗な女優さんに囲まれてたら他に好きな人が出来たりしてるかも…。

3年という月日はあまりにも長い。
マメにメールや電話で愛を伝えてくれている蓮だが、自分の親にさえ愛されず、あんなに側にいた幼馴染からも捨てられた自分だ。
心変わりも受け入れる覚悟は持たなくてはいけないのかもしれない。

ーーーだけど…

やっぱり怖くて、でもやっぱり会いたくて。
顔を見て、直接話がしたくて…。

3年間焦がれに焦がれた会いたいという想いが実のろうとしてるのに、期待と不安で頭の中はぐるぐると渦巻く。

離れている間、海を越えた土地で頑張ってる蓮の評判を聞きながら、キョーコもガムシャラに頑張った。
社交辞令だとわかってはいるが綺麗になったと言われることも最近は増えた。
仕事のオファーも増え、ファンレターもそれなりの量貰えるようになったし、自信もある程度はついたつもりだ。
だけど、やっぱりいざ会えるとなると何故か湧き上がる恐怖。

少しは休まなきゃと思うのに寝付くことも出来なくて、蓮がどんな顔で迎えてくれるのかなんてそんなことばかり考えてしまっていた。

ーーーあぁぁ!ダメダメ!せっかくここまで来たんだから。何弱気になってるのよ!キョーコ!!覚悟決めなさい!

己を己で叱責して自分で何とか落ち着こうと試みる。

それでも…

「あぁぁぁぁ〜ん!やっぱりダメよ!モー子さぁぁぁん!!」

キョーコが情けない声を出せば、アイマスクをして隣に座りそっぽを向いていた奏江が声をあげた。

「あーもーうるさいわね!他の人の迷惑でしょ!!さっさと寝なさい!!」

「モー子さんのいけずぅ!!」

「キョーコちゃん、ほら落ち着いて…」

「社さぁぁぁん。」

蓮がいなくなって、無事にラブミー部を卒業したキョーコと奏江には社というマネージャーがついていた。

「蓮もキョーコちゃんに会えたらすごく喜ぶと思うよ。」

「そう…でしょうか…。」

「うん。だから安心して…ほら、ちゃんと寝ないと時差ぼけで撮影どころじゃなくなっちゃうよ。それに、他の人もお休み中だし…」

「うぅ…そうですよね。すみません。」

そう、キョーコと奏江は、とうとう本場のハリウッド映画からオファーを受けて出演することになったのだ。
しかも主演は久遠ヒズリ。

椹からオファーの話が来た時はびっくりしすぎてキョーコは暫く放心してしまったが、心を決めてここまで来たのだから、もう引き返すことは出来ない。


ここ数年で自分に自信がある程度はついたとしても、愛が絡むとやはり怖くて…。
元々愛に対して否定的な考えを持っていたのだ。雑誌やインターネットの情報で男女の問題や恋愛相談など目にすればその度に自分に当てはめてしまい、不安は更に膨れ上がっていた。

ーーー敦賀さんが一瞬でも私を好きでいてくれたなんて、それだけでも奇跡みたいなものだし…。

キスされて、別れ際に言われた愛の言葉と抱き締められた温もりは、3年経った今でも消えることはない。

ーーー恋人…に、なるのかな?

そう考えるだけで顔に熱が集まり、心拍数が自然と上がりドキドキしてしまう。

ーーーでももう、他の好きな人ができていたら…。

胸の奥が苦しくてキュウッと締め付けられる。

会えなかった分、募る不安、そしてそれと同じくらい育ってしまった想い。

ーーー会えたら…一度で良い。もう一度、もう一度だけでいいから、あの時みたいにギュッてされたい…。

心臓がドキドキして甘く痛んで苦しかった。


空港に迎えに来てくれていたマリアの父である皇貴と会い、車に乗せられ宿泊するホテルに向かった。

「久遠…いや失礼、敦賀も、京子さん、あなたが来るのを首を長くして待ってますよ。」

優しい笑顔で掛けられた言葉に、キョーコは頬を染め、そしてハニカミながら笑った。

車が進むたび、蓮への距離が縮まっていく。逸る心を抑えて、ドキドキと高鳴る心臓の前で、ギュッと拳を握りしめた。
会えなかった時間が長かった分、緊張感が増した気がする。
ふぅーっと長く息を吐き出して、心を落ち着けようとしたところで、車がホテルに入っていった。


皇貴がホテルの部屋をノックすると、少しして一人の男が出迎えてくれた。
皇貴と親しげに挨拶を交わして、チラリとこちらを見た男は、ジョンと名乗り、緊張しているキョーコと奏江を見比べて、奏江に向かって『君がキョーコちゃん?』と声をかけた。
奏江が首を振り、『いいえ。私は奏江。この子がキョーコよ。』と答えると、ジョンは意外そうな顔をして、ヘェ〜っとニヤニヤ笑いを浮かべると、『よろしく、キョーコちゃん。久遠が待ちわびてるから行こうか。』と、キョーコの肩を抱いてさり気なくエスコートを始めた。

『へ?!え、あ…』

緊張から部屋に入るのを躊躇していたキョーコは、ジョンのエスコートでうっかり入ってしまい慌てる。
その姿を見た社も、久しぶりの再会が闇の国の蓮さんになってしまうと慌てた。

「あ、おい!ちょっと…」

社は二人を追いかけ、その社に続くように奏江と皇貴も部屋へ足を踏み入れた。


『久遠!連れてきたぞ〜』

ジョンの声に慌てて顔を上げれば、そこにはジョンに肩を抱かれた少女の姿があった。
3年前の面影を残しつつも、美しく花開き始めた彼女の姿に一瞬見惚れ、息を飲む。
キョーコも久しぶりに見る蓮の姿に、胸を震わせていた。

「つ、敦賀さんっ…!!」

キョーコの声にハッとして、蓮が漸くジョンの手の位置に気付いた。
しかし、その瞬間、キョーコは勢いよくも美しくお辞儀をし、ジョンの肩に掛けていた手は外されてしまい、ジョンは唐突なキョーコの行動にギョッとしていた。

「ご、ご無沙汰しております〜!!!!」

その堅苦しい言葉に、蓮は一瞬キョトンとした後、照れたように笑った。

「キョーコ…久しぶり。凄く会いたかった。」

「きょ、恐縮ですっ。」

「堅苦しいのはいいから。こっちに来たら?」

「は、はいっ!!も、最上キョーコ!!謹んでそちらに行かせていただきます。」

ギクシャクギクシャクと音になって聞こえてきそうなほど不自然な動きを見せるキョーコに、ジョンは少し不安になってきた。
後から入ってきた皇貴にこっそり問いかける。

『彼女大丈夫なの?演技なんて出来るの?』

『えぇ、今は久しぶりに久遠に会えて緊張してるだけでしょう。』

「あんなキョーコちゃん久しぶりに見たな。」

「見事なまでのギクシャクぶりですね。」

しかし、ぎこちないのはキョーコだけではなかった。

「えっと…その、久しぶり。」

「は、はい!ご無沙汰してます!!」

先ほどと同じ挨拶をしている蓮とそれに答えたキョーコに、社も奏江も目を見開く。

「凄く…その、綺麗になったね。」

「えっ、あ、ありがとうございます!敦賀さんも、凄く…カッコいいです。」

「そう?あ、ありがとう。」

二人のドギマギした様子が見ただけで伝わってくる。
いつものスマートさはどこへやら、滅多に見れない蓮のぎこちない仕草に、ジョンは暫く驚いて見ていたが、居心地が悪くなり、ふと隣を見ると、社と目があった。
出会ったばかりのジョンと社だが、思うところがあったようで、アイコンタクトで意思の疎通を図ると、奏江と皇貴に出るよう促し、ジョンが代表して久遠に声を掛けた。

『久遠!俺たち隣の部屋にいるから。ごゆっくり。』

話しかけられた蓮はビクッと肩を揺らして答えた。

『あ、あぁ…』

『キョーコちゃんもまた後でね。』

ナチュラルにウィンクをしてくれたジョンに、キョーコは慌てて綺麗なお辞儀をした。

『はいっ!ありがとうございます!後ほどっ!』

そしてバタンと閉まるドアの音を聞いて、漸く二人っきりになったことにキョーコは気づいた。

「二人っきりだね…」

「ふぇぁぁぁ!!そそそそそ、そうですねっ!!」

まさに今気づいたばかりのことを口にされて、キョーコは心臓が跳ね上がるほど驚いた。
バクバクとなる心臓が耳に響く。

「あ、あのっ!えっと…」

何か話さなきゃと思えば思うほど、何を話せばいいのかわからなくてテンパって目を回してしまう。
するとそんな姿を懐かしく思いながら見ていた蓮は胸が暖かい何かで包まれるような感覚になった。
緊張感が徐々に解けるように薄れていく。

「キョーコ。」

「は、はひ!」

「まずは、確かめさせて。」

「へ?!な、何をでしょう?」

「君がここにいるってことを…」

「ええ?!い、いますけど?」

ワタワタと答えるキョーコにクスリと笑って蓮はそっと手を伸ばしてキョーコの頬に触れた。
その瞬間、蓮の手のひらが触れたことでキョーコがビクンッと身を硬くし、その頬がカァッと真っ赤に染まった。

優しくキョーコの滑らかな頬を撫でる。

「うぅ…な、何だか恥ずかしいですぅ〜…」

居た堪れなくなって、思わずキョーコが真っ赤な顔で縮こまりながら言うと、蓮は「ごめんごめん」と言いながら軽く頭を撫でた。
だけどその瞬間、蓮は何故か気が付けばキョーコを抱き締めていた。

「きゃっ!!つ、敦賀さん?!」

腕の中に収めたキョーコから驚いたようなくぐもった声が聞こえて、ハッとなる。

「あ、ご、ごめん。何だか、キョーコだって思ったら思わず…」

そう言いながらも手放すことができなくて、ぎゅうぎゅうと抱き締め、キョーコの頭に顔を埋めた。

「会いたかったんだ。本当に…凄く…。」

蓮の押し殺したような声で告げられた告白に、キョーコの目にじんわりと暖かい涙が浮かんだ。
心がキュウッと締め付けられ、歓喜に震えた。
そっと、蓮の気持ちに答えるようにその背中に手を伸ばす。

「わ…私だって…会いたかったですよ?」

「うん。…うん。会いに行けなくてゴメン…。」

「そんなっ。頑張ってるのわかってましたから…」

「うん。キョーコも…」

「え?」

「頑張ったね。ハリウッド進出おめでとう。」

キョーコがフワッと笑顔を浮かべた。

「ありがとう…ございます…。」

「画面の向こうの君が、綺麗になればなるほど、不安でたまらなかった。俺のことなんて忘れてるんじゃないかって…」

「そんなこと!敦賀さんを忘れるなんてあるわけないじゃないですか!私には貴方だけですっ!」

「…うん…ごめん。」

「私だって、不安だったんです。綺麗な女優さんいっぱいいるから、他に好きな人出来るんじゃないかって…」

「そんなこと、あるわけないだろう?俺には君だけなんだ。」

「ふふ。何だか同じこと言ってますよ?」

「そうだね。…でもだからこそありがとう。俺のところに来てくれて…」

「約束…したじゃないですか。」

「うん。」

「敦賀さんがハリウッドで待っててくれてるって思ってたから、頑張れたんです。」

キョーコの言葉に、蓮は嬉しくてまた抱き着く腕に力を込めた。

「く、苦しいですっ敦賀さん!」

「あ、ごめん。」

慌てて腕を緩めると、見上げてくるキョーコと目があった。

そっとその頬に再び手を伸ばす。
キョーコの潤んだ瞳が蓮の心を鷲掴んだ。

「キョーコ…」

「…はい…」

「愛してる…」

そう蓮が口にした瞬間、キョーコがまた更に真っ赤になった。

「ぅ…あ…」

真剣な蓮の眼差しに熱く灼かれる気持ちになりながらも目が離せない。
愛してるなんて言葉、簡単に口にする勇気が無くてキョーコが言い淀んだが、蓮はそんなキョーコにそっと目を細めて、その顎をグイッと持ち上げた。

そして優しく重なった唇と唇。
重なっては離れを繰り返しながら、徐々に深まるキスに、キョーコの心が甘く蕩けながらも、もっともっとと求める気持ちが止まらない。
蓮にしがみ付く指先も、重なったくちびるも心も、全てが貪欲なまでに蓮を求めた。

「愛してる…愛してる…キョーコ」

合間合間に囁かれる愛の言葉。
その気持ちを言葉にできない代わりに口付けで答えた。
押し倒されたベッドの上、求め合う心は止まらぬままに、三年の隙間を埋めるように、ただただ互いの温もりを求めて、夢中でキスを交わしていた。


END

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*****


ニュースを見て心痛めてる方も、苦労をされてる方も、少しでも明るい気持ちになれる方がいれば幸いです。

今を生きている。
そのことに感謝して。

最後までお付き合い頂きありがとうございます。

風月
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