雨に流されて… 1

2016年04月27日23:30  雨に流されて…/スキビ!《完結》

雨に流されて… 1


突然降り出した雨の中、山の上で撮影をしていた団体はどんどん強くなる雨足に撮影を中止にし下山を決め移動していた。

「もう少し降りたところに、宿舎があったはずだからそこで避難しよう。」

「最上さん、大丈夫?」

「はい。敦賀さんこそ、大丈夫ですか?」

「危ないから俺から離れないで…」

「そんな、子供じゃないんですから…」

山道のため傘はさせず、用意されていたレインコートを着て監督の先導している団体に続いて進んでいると、キョーコの目の前を歩いていた女性スタッフが転んでしまった。

「だ、大丈夫ですか?!」

「大丈夫…あ、メイクセットが…!!」

バラバラと転がった道具の一つが坂を勢いよく下っていく。メイク道具の一つのようだ。

まだ立ち上がり切っていないスタッフの代わりにキョーコが素早く動いていた。

「私、取ってきます!」

「え?!あ…京子ちゃんっ!!」

「最上さんッ!!」

他のスタッフや蓮の呼び止める声に背を向けて小道具を追ってキョーコは走り出した。
止まることなく転がり続けていたメイク道具が暫く追いかけたところで漸く止まった。
だいぶ離れてしまった気がする。
結構な傾斜があるところだったが、木の根元に引っかかっており、手を伸ばせば届く距離に見えた。
手を伸ばせば届きそうとはいえ、急な斜面は川へと続いている。
念のため近くにある木を片手で掴み、もう片方の手をメイク道具へ伸ばした。

「あと…ちょっと…きゃっ!」

あと少しに思えたところで突風が吹き、足が滑った。
掴んでいた木も雨で濡れていたのでつるんと手から離れ、キョーコはそのまま斜面を滑るような形になった。

「キャァァァァァ!」

「最上さんっ!!…っく!」

追って来ていた蓮がキョーコの手を間一髪で掴んだが、蓮も一緒に斜面を滑り落ちる。

慌ててキョーコを腕に抱き寄せて、キョーコを守るように抱きしめた。

「敦賀さん?!なんで…」

「マズい…川がっ!」

「え…」

「俺に捕まって!!」

ーーザッパーン

二人揃って川にそのまま飲み込まれた。

「れーーーーん!!!!キョーコちゃーーーーーん!」

傾斜の上から叫ぶ社の声は雨音と、増水した川の音にかき消されてしまった。



ーーザバンッ

「プハッ…ハァハァハァハァ…く…最上さんっ?!最上さんしっかり!!」

どれだけ流されただろう。
キョーコが蓮の腕の中でぐったりしているので蓮は焦った。

「クソッ…」

腕一本で何とか捕まった木を頼りに、蓮はまずキョーコを川から引き上げると、己も続いて川から上がった。

木が生い茂るその場所には人が通れるような舗装された道はないようだ。

「最上さんっ!最上さん!!聞こえるか?!しっかりしてくれ!!」

呼びかけても肩を叩いても反応のないキョーコを抱えて、とりあえず川から離れ多少は雨風をしのげそうな大きな木の下へ移動した。
気道を確保し、キョーコの脈拍と呼吸を確認して蓮は青ざめる。

「最上さん!最上さんッ!目を開けてくれ!!!!」

蓮は慌てて心臓マッサージをし、そして少し躊躇しながらもそんな躊躇してる場合はないとばかりに人工呼吸をして蘇生を試みる。

「最上さんっ!最上さん!!キョーコ…キョーコちゃん、しっかり!!」

蓮は必死に呼びかけながら人工呼吸と心臓マッサージを繰り返した。
すると、ゴボッと水を吐き出しキョーコが息を吹き返した。

「キョーコちゃん!!」

「ん…あ…コーン…?」

何度か咳を繰り返した後にぼんやりと己を瞳に映したキョーコを見て、蓮がポロリと涙を流した。

「コーン…泣いて…」

蓮の涙を心配して伸ばしたキョーコの手をそのまま引き寄せて、蓮は強く強くキョーコの身体を抱き締めた。

「良かった…良かった…!!キョーコちゃんが生きてて…!!」

「コーン…」

「はっ!具合は大丈夫?気分悪くない?どこか怪我してない?」

バッと慌ててキョーコを己から離して、キョーコの不調がないか確認するため、蓮はキョーコの両肩に手をかけて目を覗き込み心配そうに確認した。

「え…うん。だ、大丈夫。…あれ?コーン…目、片目だけ黒い…?それに、髪が……」

不思議そうに覗き込むキョーコの言葉に、蓮はハッとした。

ーーーもしかして、さっき川に落ちた時にコンタクトが片方流されて…?!

「コーン…?」

ーーーどうしたら…俺はまだ、戻るわけにはいかない。だれにも話せない。だけど最上さん…キョーコちゃんにだけなら…

蓮が思考を巡らせていると、キョーコが小さくクシャミをした。

ーークシュッ

それを見て、蓮はすぐに真顔になり立ち上がった。

「話は後にしよう。とにかく宿を探さなきゃ。携帯は持ってる?」

「確か、ポケットに…あれ?ない。」

「流されちゃったか…。俺も、社さんに預けたままだ。」

「………え?」

「仕方ない。行こう。歩ける?」

「え…あ、う……え?は、はい…あの…?」

「もう夕方過ぎてるはずだ。早く宿探さないとこんな格好のままじゃ君も俺も風邪をひく。」

「あのっ…つ、敦賀さん…なんですか?」

「…うん。一緒に川に落ちたんだ。覚えてない?」

「…覚えてますけど…でもその目…それにさっき私の名前…。」

「話せば長くなる。とにかく誰か人を探さないと…夜になる。せめて宿を見つけて、それからだ。」

「わ、わかりました。」

そして蓮はキョーコの手を引き、立ち上がらせた。
幸い二人とも目立った怪我がなかったようだ。
二人は夜を越せそうな場所と人を探して雨の中を歩きだした。

「あ、あの…敦賀さん…手…」

しっかりと当然のように握られた手が何だか恥ずかしくてキョーコは手を引かれなくても歩けると言おうとしたのだが、蓮は首を振った。

「却下。こんな所ではぐれたら大変だろう?それに手を繋いでた方が暖かいし安心できる。」

キョーコが混乱しつつも繋がれた手と蓮の背中にそっと頬を染めているのに気づかないまま、蓮はキョーコを守るために周囲の様子にも注意を張り巡らせるのだった。


(続く)

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*****

蓮様なんとかキョーコちゃんを救出!
それにしても、コンタクトなくしちゃったことで、蓮様怒るタイミングまでなくしちゃいましたね。
今日は雨だったので、雨から連想。

そんなに長くは…ならない、はず?
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