My HOME-12-

2015年10月20日14:01  My HOME/スキビ!《完結》


My HOME-12-


蓮の看病のお陰か、それともキョーコが日頃栄養のバランスに気をつけてきちんとした食事をとっているお陰か、キョーコの風邪は翌日にはすっかり良くなっていた。

「本当にありがとうございました!」

「いや、元気になってくれて良かったよ。」

ぺこりと頭を下げるキョーコに、蓮は甘く微笑んだ。
そうして視線を窓の外へ向ける。

「最上さんの風邪は治ったけど、こっちの風はしばらく収まりそうにないね。」

「そうですね…。」

キョーコもそれに釣られるように外を見て、少しだけ顔を曇らせた。
窓に叩きつけるような雨が降り注ぐ。
近年稀に見る大型の台風が近付いているのだ。
ゆっくり移動するその台風は既に各地で被害をもたらしているらしい。
夕方頃から更に接近するというので、午後から雨脚も風も更に酷くなるらしく、外出は控えるようにとキャスターがニュース番組で呼びかけていた。

「やっぱり撮影…あるんですか?」

「うん。まぁ予定では室内だからね。台風関係ないし…。」

「でも、行くまでが危険です!」

「まぁ決められたことだし、しょうがないよ。最上さんは?連絡あった?」

「いえ…まだ…私の方も屋内のはずなんですが…あ!!ちょ、ちょっと失礼しますっ!!…はいっ、最上です。」

蓮と会話中にタイミング良く電話が鳴り、一言蓮に断ってから電話を取る。

撮影は延期になり、キョーコは急遽休みになった。
電話を終えて、そのことを蓮に伝えれば蓮はホッとした顔になる。

「良かった。風邪も病み上がりが肝心というしね。今日の雨に打たれたらまた風邪引いちゃうんじゃないかと心配だったんだ。」

「…そんなに柔じゃありません。」

「でも、風邪引いただろう?油断は禁物。今日はしっかり休んで。」

そう言う蓮をキョーコはじと目で見つめる。

「…何?」

「いえ、まさか敦賀さんに体調のことを指摘される日がくるなんて…。」

とても不服そうなキョーコの声と顔に蓮は苦笑しながら、宥めるようにぽんぽんと頭を叩いた。
下からムゥッと見つめてくる表情が可愛くてどうにかしたい衝動に駆られながらも、欲望など抱いていないように良い大人の先輩として振る舞う。

「じゃあ…行ってくるから。」

「はい。お気をつけて…。」

蓮が出掛け、予定のなくなったキョーコは一人家に取り残された。
折角なので掃除をしようと思い立ち、掃除道具を手にせっせと掃除を始めた。

しかし、時折ふと、その手を休めては窓の外に目をやっている自分に気付いた。
いけないいけないと頭をふっては掃除を再開させることをくりかえして、数時間後に掃除もあらかた終わらせるとまた窓の外に目をやってしまっていた。

「敦賀さん…大丈夫かなぁ…」

つい口からポロリと出た言葉は、きっと大丈夫よ!という気持ちと、何もなければいいけど…という気持ちを生み出す。

ガタガタと風で揺れる窓枠、音を立てて窓に容赦無くぶつかる雨、遠くで響く落雷の音、心細くて、何だかとっても怖いと感じた。

自然と足が蓮の気配が色濃く残る寝室へと向かっていた。

「敦賀さん…」

覗きこんで呼び掛けた室内はシンと静まり返っていて、返事などあるはずもない。
でもそれが無性に寂しく感じた。
キョーコはこっそりと忍び込むように寝室へ入り込むと、蓮のベッドに近付いた。

さらりと蓮が普段使っているベッドに手を滑らせる。

なんだかいけないことをしているようでドキドキと心臓が高鳴った。

その瞬間、ピカッと青白い稲妻が部屋の中を明るく照らした。
それとほぼ同時にドドォォォンと言う雷鳴が響いた。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

あまりの近さにキョーコは驚いてその場で蹲った。ベッドの脇に隠れるように身を潜めて、頭と耳を覆って座り込む。

窓を叩く雨音を聞きたくなくてキョーコはカタカタと震えながら強く目を閉じたのだった。


「ただいま!…最上さん?」

思っていたより早く終わらせることが出来て帰ってきた蓮は大きな声でキョーコに聞こえるように呼び掛けたが、返事がなくて首を傾げた。
今日の撮影は昼間での撮影で終わり、夕方からさらに強くなるという台風に備えて全員撤収することになったのだ。
台風のため、車を運転するのも困難でいつもより帰宅に時間がかかってしまった。
呼び掛けたがあと、よく見回してみても、シンとした室内には人の気配が全くない。

「最上さん?」

もう一度呼びかけて見てもいつも出迎えてくれるキョーコの返事と笑顔がなくて、蓮は背中にヒヤリとした汗が伝うのを感じながら慌てて靴を脱いで部屋に入った。

手当たり次第の部屋を開けつつ、既視感を覚え、そういえばついこの間も似たようなことがあったと思い出した。
それはつい先日、キョーコが家出する原因となった日のことだ。
勝手にキョーコがいなくなったと慌てて家中を探し回って漸く蓮が見つけた時のはお風呂から出てきたばかりのキョーコの姿だったのだ。

今でも鮮明に思い出せるほど数日前の出来事。

そのことを思い出した蓮は胸をドキドキと高鳴らせながらまた脱衣所の取っ手に手をかけていた。

しかし、また前回のように逃げられては元も子もないため、今度はちゃんとノックを先にすることにする。

ーーコンコン

「…最上さん?いる?入るよ?」

返事をないのをいいことにガラリと思い切ってドアを開けたが、そこにも期待していたキョーコの姿はなくて、少しがっかりしたと同時にならば本当に何処に行ったんだと焦りが生まれてくる。

「最上さん?」

蓮はゲストルームにいつもキョーコが持ち運ぶバッグがあることも確認してまた再びキョーコを探し始めた。



「…見つけた…」

漸く見つけた場所は、蓮の寝室のベッドの脇。入口のドアからも視覚になる場所にキョーコは蹲っていたのだ。

「なんでこんなところに…」

体育座りで顔を埋めて丸まっている姿に蓮は安堵しつつも、疑問を抱いた。

「最上さん?最上さん?」

優しく揺すって呼び掛けると、キョーコがそろりと顔を上げた。

真っ赤な目に泣きはらした顔。

「つるが…さん?」

とろんと溶けたようなそんな目を向けられて蓮の心臓がドクンと大きく跳ねた。

「もっ、最上さん?!どうしたの?何かあっ……?!」

泣いていた理由を聞こうとした蓮の首にキョーコが突然飛びついて来たので蓮は驚いて声を失った。

後ろに転びそうになって、慌てて尻餅で留め、キョーコを抱きとめる。

「最上さん…?」

キョーコがカタカタカタカタと震えていることに気付いて蓮はそっとキョーコを抱きしめた。

「敦賀さん…!敦賀さん…!」

頭をぽんぽんと叩いて安心させる。

「どうしたの?何かあった?」

ふるふると首を振るキョーコが愛しくて堪らなくて蓮の声も甘く溶ける。

「怖かったの…雷…も、雨も…酷くて…敦賀さんに何かあったらって…」

「大丈夫だよ?ほら、ちゃんと帰ってきて今はここにいるから…」

「よか…った…」

そう言い残して、キョーコの言葉が途切れ、少し体が重くなったように感じた。

「え?最上さん…?」

慌てて顔を覗き込めば、すぅすぅと蓮の腕の中で安心したように眠りに落ちたキョーコがいて、思わず蓮が無表情で固まってしまう。

かわいい寝顔を無防備に晒して眠るキョーコが愛しくて憎たらしくて、蓮は何とも言えない悶々とした気持ちになる。
折角腕の中で安心して眠るキョーコを手放す気にもなれなくて、蓮は「今回は君が悪いんだよ。」と囁いて、そっとキョーコを自身のベッドに横たえると、上着を脱いでリラックス出来る恰好に着替えてから、キョーコの隣に潜り込み、キョーコを抱きかかえた。
自分の腕を枕にし、温もりを求めるかのように胸元に顔を寄せたキョーコを大切そうに抱き締めて、蓮は先程のキョーコの言葉を反芻していた。
自分のことが心配で泣いていたのだというキョーコ。恐らくキョーコ自身の心細さも手伝っての涙だったのであろうが、自分の心配をしてくれたということに嬉しさが込み上げる。
夢の世界を漂うキョーコの顔が幸せそうに緩むのを瞳に映して蓮はそっと甘い微笑を零してキョーコの髪を梳く。

「キョーコ、ちゃん…」

「ふ…ん…」

撫でられた髪が気持ちよかったのか、蓮の声が届いたのか定かではないが、キョーコは気持ち良さそうな寝顔を蓮の顔に向けていた。

今ならキスしても気付かれないだろうなと思いながらも、彼女好みのファーストキスはロマンチックなものだろうなと考えると今こっそり奪うのも忍びないと考え直し、蓮はおでこにキスを送るだけにとどめた。

「愛してるよ…キョーコ…」

蓮はそうキョーコに囁くと、幸せを噛み締めながら自身もキョーコのいる夢の世界へと飛び立つのだった。


(続く)



スキビ☆ランキング
↑↑↑
参加してます☆ポチッと応援よろしくお願いします♪

*****

さりげなく微糖??(笑)
関連記事
前の記事 次の記事