雨に流されて… 4

2016年05月02日17:04  雨に流されて…/スキビ!《完結》

前回の感じを期待された方はすみません。
蓮様の妄想大爆発の回はとりあえず3で出し切っちゃったはず。
これなら通常公開大丈夫かな??とドキドキアップです。


*****


雨に流されて… 4


「なかなか、戻りませんね…」

キョーコは停電してしまった浴室を見回して心細そうに呟いた。

「………」

「あのおばあちゃん一人で大丈夫でしょうか?」

「………」

「…でも、敦賀さんが一緒にいてくれて、良かったです。」

暗闇の中で、キョーコは頬を染めて言った。

「こんな急に停電なんて…一人じゃきっとテンパってました。」

キョーコはえへへ。と冗談っぽく言いながらも、内心心臓が飛び出しそうなほどドキドキしていて、停電してもそれどころではなかった。

同じ湯船の中に蓮がいる。それだけで恥ずかしさで茹で上がってしまいそうだ。
何でもいいから何か話をしていないと緊張で心臓が飛び出してしまいそうで、キョーコは何か話題をと色々思考を巡らせていた。

「ううん。今だけじゃないです。今日1日でも、私ーーー。」

そう口にして、漸く今日1日のことを振り返ることができた。
蓮が助けに来てくれなかったら、あの心細い森の中を一人っきりで歩かなければいけなかったかもしれないのだ。
いくら自然が好きとはいえ、土砂降りの雨の中、一人だけだったら心が折れていたかもしれない。
滑り落ちる時に抱き締められた腕の力強さも、水中で絶対に離さないとばかりに抱き締められたことも、山道を歩く時に握られた手の温かさも全部覚えている。

それに…もしかして…だけど…

ーーーキス…された…?

心臓も呼吸も止まっていたというその時間、目覚めた時に何となく唇に残っていた感触がキョーコの心をざわめかせた。

ーーーた、多分、人命救助という名の人口呼吸で仕方なくだろうってことはわかってるけど…でも…。

キョーコはそっと唇に手をやり頬を染めた。
しかも、その蓮と破廉恥にも今お互い何も身につけず、同じ湯船に浸かっているのだ。
ドキドキしない方がおかしいだろう。

ーーーでも、本当に良かった…。一緒に川に落ちたのが敦賀さんで…。

蓮は特別だ。他の男の人とは全然違う。勿論一緒にいてドキドキもするが、一緒にいることで物凄く安心もするのだ。
相手が蓮以外の男性だったら、一緒にお風呂なんて提案しようとも思わなかっただろう。
蓮が相手だからこその恥ずかしさはあるが、蓮が相手だからこそ大丈夫という確信もあった。

「だって、私、敦賀さん相手だったら…何されてもいいもの…」

キョーコはポロリと零れた己の本音が耳から入ってきてハッとした。

ーーーい、今私、とんでもないことを!!どうしよう?!気持ちがばれちゃったんじゃ…!!呆れられた?!嫌われた?!

カァァッと真っ赤になって、慌てて後ろにいる蓮へ弁解を始めた。

「い、今のはっ!!あのっ違っ…あの、な、なんというか…あの…その…!」

焦れば焦るほど言葉は出てこなくて、キョーコはなんと弁明すれば良いのかわからず真っ赤になって途方にくれた。

結局良い言葉が何も浮かばず、言い訳できなくなって、もう一生顔向けできないっ!!と心の中で身悶え、私はこれからどんな仕打ちを?!と身構えて体を硬くしていたが、暫くしてもシーンと静かで何の反応もなくて、キョーコは内心動揺しながらも、恐る恐る目を開いて蓮を振り返り様子を窺った。

「敦賀さん…?」

呼びかけてみるが返事がない。

ーーーえ?何?だって今すぐ後ろにいるわよね?

背後には蓮の気配が確かにある。
そういえば先ほどから話しかけても一言も返されてない気がする。
暗闇だから大丈夫なはずと言い聞かせながら、蓮の様子が気になって、身体の向きを変え蓮に呼びかけた。

「敦賀さん…?どうかしたんですか?」

目は開いてるようだが、ただ無表情で湯船をボーッと見つめていて返事がないので、キョーコは心配になった。

ーーーもしかして、敦賀さん気分悪くなったんじゃ…っ!!

「敦賀さん?!敦賀さん!!」

繰り返し呼びかけて、蓮はやっとビクッと体を震わせて反応した。

「……ッえ?!な、なに?!」

蓮が返事を返してくれたことでホッと安堵する。

「気分でも悪いですか?もしかしてのぼせちゃいましたか?」

キョーコは蓮の様子を確かめるため、少し近づき蓮の顔を覗き込んで窺った。
二の腕が軽くぶつかって、アッと思ったと同時に蓮の身体が思いの外大きく跳ねてキョーコは少しばかり驚いた。

「いや、…あぁ、うん、そうかも…ちょっと浸かりすぎて逆上せたかもね。ハ、ハハハハ…。」

普段なかなか目にすることのない蓮のぎこちない様子にキョーコは首をかしげる。
そしてチラッと視線が合いそうになって慌てて逸らす蓮の様子を見て、漸くピンときた。

「…もしかして、あのことですか?」

「……?あ、あのこと…?」

「あのっ!私、無理に聞き出そうなんて思ってないですからっ!敦賀さんが話したいと思った時に話してくれれば…」

「え?な、何が?」

蓮は相変わらずドギマギと答えており、キョーコは内心で、首をかしげながら、言いにくそうに口にした。
暗闇の中でもだいぶ目は慣れてきたので、近くにいる蓮の姿はぼんやりとだが見えるようになっていた。

「あの…ですから、敦賀さんのその目の色のことです!」

「…あ……。」

蓮はキョーコに指摘されて、とても大事な話をしてなかったことに漸く気付いた。
川に落ちた拍子にコンタクトが片方取れ、今は残っていた方も外して、完全に本来の目の色に戻っているのだ。

ーーーそうだった…俺っ…!

みなまでは言わないが、キョーコがこの目の色を見て、コーンと敦賀蓮がイコールで繋がりつつあることも気づいている。

ーーー何てことだ…俺としたことが最上さんとの妄想に夢中になるあまり、こんな大事なことを忘れてたなんて…ッ!!

蓮は己のありえない失態に鈍器で頭を殴られてるようなショックを受けた。

チラリとキョーコを横目で窺いみれば、真剣な目がまっすぐ蓮を見つめていた。
温泉で温まっているからか、頰が赤く染まっていて、思わずドキリとしてすぐに視線をそらす。

ーーー話さないと…だよな。最上さんには…

正直、裸のキョーコが目の前にいてそれどころではないという思いもあることはあるが、変に隠してたり誤魔化したりして、下手に誤解されるより、他の誰でもないキョーコには、ここできちんと全てを話してしまったほうがいいだろう。

想い人であるキョーコとの混浴に気をとられ過ぎて、大事なことを指摘されるまで話し忘れていたことに蓮は罰が悪い思いを抱いた。

「そうか…いや、そうだよね。ゴメン。君にはきちんと話すべきだった。」

蓮に謝られて、キョーコはブンブンと首を振った。

「そ、そんなっ!!敦賀さんが謝られることは何も…!」

「聞いて欲しいんだ。最上さんに…いや、キョーコちゃんに…聞いてくれる?俺の長い長い…昔話…。」

蓮の真剣な目が、暗闇の中で宝石のように光ってキョーコの目をとらえた。
熱くて大きな手がキョーコの手をそっと握りしめる。

キョーコはその蓮の真剣な眼差しと握られた手の力強さにドキリと胸を高鳴らせながらも、コクンとしっかり頷いた。

「はい。是非、聞かせてください。敦賀さん、あなたのことを。」

キョーコの真剣な様子に蓮は頷き返し、暗闇に目を向けると、独り言を言うようにポツリポツリと己の素性と生い立ちについて洗いざらい語り始めた。
両親のこと、子役時代のこと、いじめの事、キョーコと初めて出会う前の話で、すでに感情豊かなキョーコは涙ぐんでいた。

「そんな酷い人達が周りにいたなんて…コーン可哀想ぉぉ…」

エグエグと泣くキョーコに苦笑しながら、蓮はキョーコに断りを入れて温泉から上がり、タオルを腰に巻いて温泉の淵に腰掛けると足湯をしながら話を続けた。
キョーコも逆上せそうだったので、蓮を追うようにタオルを体に巻きなおして、蓮の隣に腰掛け話の続きを真剣に聞いた。

ここが、人に聞かれる心配のない暗闇の中だからか…はたまた心も体も温めてくれる温泉だからか…。
それとも話す相手が誰よりも愛しいキョーコだからか…。

蓮は自分でも驚くほど、穏やかな気持ちですんなりと過去の話を語ることが出来た。

「ーーーつまり俺はハリウッドで成功して認められるまで、自分の出生を明かす気はないんだ。だから、勝手に話してしまったのに申し訳ないけど、このこと他の人には…」

「はいっ!!不肖、最上キョーコ!コーンの極秘事項は誰にも絶対に話さないと誓います!!」

「ありがとう。俺も話したことで、少し気が楽になったように思うよ。でも、やっぱり俺のこと怖いと思っただろう?話を聞いて後悔してない?」

蓮の不安気な言葉に、キョーコはふわっと微笑んだ。

「セツカとして、カインを演じる敦賀さんの側にいた時、時々敦賀さんでもカインでもない知らない男の人が敦賀さんの中にいるって思ってたんです。それが少し怖かった…。敦賀さんは、きっと人に言えない深い深いところに闇を抱えてるって。誰かが手を伸ばしたくても決して届かない暗くて深い場所に何かを閉じ込めてるって…」

蓮はキョーコの言葉に目を見開いた。

「だけど、その知らないと思ってた男の人がまさかコーンだったなんて…!!驚きましたけど、でも私、ずっとコーンに恩返ししたかったから…だから、話してくださって…こんな私でも話を聞くことで少しでも力になることが出来たのかな?って思うと、凄く凄く嬉しいです。」

「最上さん…」

「私にとって、敦賀さんもコーンもかけがえのない大切な人です。過去にどんなことがあったとしても、コーンはコーンで、敦賀さんです!!コーンを敦賀さんの中の闇から救い上げるためだったら、私にできることなら何だって惜しみなく協力しますから、だからこれからは遠慮せず私に何でも仰ってください!私はどんなことがあっても、敦賀さんの…コーンの味方ですっ!!」

力強く誇らしげに言い切られて、全てを話したら嫌われたり怖れられたりされるかもしれないと危惧していた蓮は、邪な気持ちは一切なく、キョーコを感動のあまり力強く抱き締めていた。

「ありがとう。キョーコちゃん…。本当にありがとう!!」

「きゃ!ちょ、こ、コーンッ!」

裸の蓮に抱き締められてキョーコはアワアワと慌てながら真っ赤になった。
触れるつもりのなかった蓮の厚い胸板。耳に直接響く声に、キョーコの心臓が飛び出そうなくらい激しくなる。
そういえば今裸にタオルを巻いてるだけなんだったと今更ながらに思い出した。
キョーコの驚いた声にハッとして、蓮もうっかり今の互いの格好を失念して抱き締めてしまった自分の行動に恥じて赤くなりながら慌ててキョーコを解放した。

「あぁゴメン…つい…」

「いえ、あの…スミマセン。」

「何でキョーコちゃんが謝るの?」

「だって、何だか…そんなつもり敦賀さんにはないってわかってるのに…ごにょごにょ…」

「ん?」

「いえ!!何でもありません!!だいぶ温まりましたし、そろそろ上がりましょう!!」

「そうだね。でも、暫く足湯してたからもう一回くらいちゃんと浸かった方がいいんじゃない?」

「そ、そうですね。ではそうさせて頂きますっ!!」

そういって、キョーコは蓮に背を向けて恥ずかしさを紛らわすようにその身をザバリと勢い良く肩まで温泉に沈めた。その後ろに蓮もゆっくり浸かる気配がしたかと思えば、キョーコは蓮に後ろからそっと肩を抱き寄せられていた。

「きゃ!!つ、敦賀さん?!」

ぎゅっと抱き着かれて、タオルに隠れていない肌と肌が密着する。
蓮の腕の温もりと胸板の熱を直に感じてキョーコは真っ赤になった。
そんなキョーコの耳元に蓮は低い声で囁いた。

「二人っきりの時は、コーンでいい…。コーンって呼んで?口調も敦賀蓮に対するものじゃなくてコーンに対する時のままでいい。」

「わ、わかった。わかったから離して…コーンっ!!」

「ん…もう少しだけ。このままで…お願い…」

蓮に抱き締められたまま懇願されてしまっては、逆らえなくてキョーコは動悸が激しくなりながらも目を瞑って耐えるようにして大人しくなった。

キョーコの少し早い鼓動が蓮の肌に直接響いてくる。
肌に直接感じるキョーコの温もりで、分厚い氷のように張られていた蓮の心のバリアがゆっくりと溶けていく。

「…ねぇ、キョーコちゃん、この先もずっと、俺の味方でいてくれる?」

「勿論!!この先ずっとずぅぅっと、コーンの味方よっ!!」

「それは頼もしいな。」

くすぐったそうに蓮はクスクスと笑った。

「じゃあ、これからもよろしくね。キョーコちゃん。」

言いながら、ちゅっとキョーコのつむじにキスを一つ落として、蓮はキョーコを解放して立ち上がった。

「え…今…」

キョーコは目を見開く。

「じゃ、俺は先に上がってるから、もう少し温まってから出ておいで。暗いから気をつけて。脱衣所出たとこで待ってるから。」

「は…は、い…」

キョーコはキスを落とされたつむじを片手で抑えて、頬を染めぼんやりと蓮を見送った。

ドッドッドッドと心臓がまたもや速く動き出す。

ーーーキ、キス…されたよね?何で?!何で…!!

動揺を隠せず、キャーキャーと心の中は大暴れしてしまう。

とにかく落ち着こうと、顔を半分まで湯に沈め、ぶくぶくと息を吐き出しているとあることを思い出してハッとした。

ーーーえ…?ちょっと待って…私、グアムでコーンに会った時………?!!!!!

自分からコーンにキスをしたことと、去り際にコーンからキスされたことを思い出して、真っ赤になった。

ーーーアレってつまり、私気付かない内に敦賀さんと、キスしてたってことーーーーッ?!?!?!

衝撃の事実に、一瞬意識が飛びそうになって、慌てて温泉の淵にしがみ付いた。

ーーー嘘?!何で?!何であの時敦賀さんはあんなこと…っ!!

ーーパッ

「ふぇ?!あ、電気が…良かった…」

復旧した電気にほぉっと胸を撫で下ろして、先程の暗闇の中での出来事をボンッと思い出し、破廉恥な行いにまた羞恥心が湧き上がった。

ーーー私、私…一体貴方に、どんな顔して会えば良いんですか?!敦賀さぁぁぁん!!


(続く)

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まじーん様の始められた缶蹴りゲーム!
申し訳ないですが、ここでは何とか死守して切り抜けました!!

でも、まだ終われないので、もう少し続きます♡

実はこの先の先ぐらいが書きたかった本命なのです☆
蓮様にはもっと試練を用意させて頂きますことよ?(笑)←どうやら楽しくなってきた模様。

このままもっと突き進んで続けて良いよ!って方は応援拍手をポチッとして頂けたら嬉しいです☆
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