雨に流されて… 6

2016年05月07日22:58  雨に流されて…/スキビ!《完結》

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雨に流されて… 6


山で採れたという山菜を使った料理が所狭しと小さな食卓に二人分並んでいた。

「わぁ!おいしそうですね!」

「張り切りすぎたかねぇ。久しぶりのお客さんで、嬉しくてねぇ。お代わりもあるから遠慮なく食べてねぇ。」

「ありがとうございます!あ、コーン!どうでしたか?」

キョーコが料理に感動していると、電話を借りていた蓮が戻ってきた。

「…うん。とりあえず社長に二人とも無事だと報告したよ。ただ、この雨だから迎えはやっぱり明日になるみたいだ。」

「そうですか…」

「あ、おばあさん電話貸していただき、ありがとうございました。それとすみません。当日で恐縮なのですが、今夜はやはり泊めていただいても…」

「えぇ、えぇ、構いませんよぉ。ここは民宿ですからねぇ。」

「助かります。」

「よろしくお願いします。」

「ただ…ちょっと…困ったことがあってねぇ…。」

「…困ったこと…ですか?」

「なんでしょう?私たちで何か力になれることがあれば手伝いますよ!」

「そうだねぇ…………。」

老婆は遠くを見るように、二人の姿をその澄んだ目に写し、暫し考え込むように沈黙した。

「おばあちゃん?」

「あの…何か…?」

じっと見つめられ、居心地が悪くなりながら二人は尋ねた。

「あぁ、いや……。うん…そうだねぇ。ご飯食べたら部屋に案内するから、話はその時でいいかねぇ。」

蓮とキョーコは顔を見合わせ、互いにアイコンタクトをとると、不思議に思いながらも蓮が答えた。

「…ええ、まぁ、おばあさんの話したいタイミングで構いませんが…。」

「ええ、えぇ、じゃあ、冷める前にご飯にしようかねぇ。」

「そうですね。お心遣いありがとうございます。じゃあキョーコちゃん、早速頂こうか?」

「はい!そうですね。おばあちゃん頂きます。」

「頂きます。」

「はいはい、召し上がれ。」

二人は老婆の言葉を少し気にかけながらも、手を合わせて食べ始めた。

「わぁ。このお味噌汁、美味しいです!」

「この筍も柔らかいよ。」

「本当だ!んー!美味しい〜!!」

老婆は二人が美味しそうに食べる姿をニコニコと嬉しそうに見つめると、まだ何か作るつもりなのかキッチンへと引っ込んで行った。

お腹も満腹になったところで、老婆はデザートを持ってきた。

「食後にどうかねぇ?」

「わぁ!シャーベットですか?」

「死んだ爺さんがよく食べてたんだよ。まだ冷凍庫に残ってたから久しぶりに作ってみたんだけど…お口に合うかねぇ。」

「美味しそう。いただきます!」

「あ、俺は…もうお腹いっぱいで…」

「そうかい。残念だねぇ。」

「ん〜!冷たくてさっぱりしてておいひいです。初めて食べる味〜!!」

キョーコが嬉しそうにシャリシャリ食べ進めるのを蓮はニコニコと笑顔で見守った。

「くす。美味しそうに食べるね。」

「ん…だって、おいひいんですもん。」

頬を赤らめて、ホクホク笑うキョーコが可愛くて抱き締めたくて堪らない。

ーーーあぁ、本当に…。美味しそうだよね…?別の意味で…。

チラリと思わず目がいってしまう胸元…。
思わず、ゴクリと蓮の喉がなった。

「ふぁ。ご馳走様でした!…美味しかったぁ。コーンも食べたら良かったのにぃ。」

「ん。でも流石にお腹いっぱいでね。」

「コーンは、見かけによらず少食だもんね〜」

ケラケラと機嫌よく笑うキョーコに、蓮は少し違和感を覚えた。

「…キョーコちゃん?」

「はーい?なんれすかぁ〜?」

キョーコの返答に蓮は嫌な予感がした。

「もしかして、それ…ちょっとゴメンね?」

蓮はそう断ると、キョーコの先ほど食べていたシャーベットのスプーンを口に運んだ。
キョーコはそれを見て、「あっ!」と驚いた顔をした後、カァッと顔を赤らめて顔を覆った。
恥ずかしがるキョーコの口から「間接キス…」と聞こえた気がしたが、焦っていてそれどころではなかった。

「やっぱり…!おばあさん、これ…もしかしてお酒じゃ…」

「ええ、ええ。よぉくわかったねぇ。日本酒のシャーベットに桃のジュースを掛けたものでなぁ。死んだ爺様も疲れた時よく飲んでたよ。ぐっすり安眠間違いなしだねぇ。」

山旅で疲れているからよく眠れるようにという老婆の心遣いだったのかもしれないが、蓮は思わず遠い目をしてしまった。

「ふわふわする。うふふ。えへへ。いい気持ちぃ〜。」

キョーコは立ち上がってフラフラし始めたので、蓮は慌ててキョーコの腕を掴んで捕まえた。

「あぁ、危ないからキョーコちゃん。」

細い腕を掴むとものすごくひんやりと冷たくなっていて驚いた。

「わぁ〜コーンあったかーい!」

シャーベットで冷えてしまった身体は温もりを求めていたのか、キョーコが突然蓮にギューっと抱きついてきた。
老婆はそれを見ながら、「若いっていいねぇ。」なんてのほほんと呑気に笑っているが、蓮は一人理性総動員に大忙しだった。

「わっ!ちょ…キョーコちゃ…」

真っ赤になる蓮に構わず、キョーコは蓮の広い胸板に頬を摺り寄せていた。

「んー。敦賀しぇらぴー。」

「おやおや。仲良しさんだねぇ。良かった良かった。それなら問題なさそうだねぇ。さぁさ、じゃあ部屋に案内しようかねぇ。着いておいで。」

「あ、ちょ!!部屋に行くって。大丈夫?キョーコちゃん。歩ける?」

「んー。はぁい。」

元気よく挨拶して体から離れてくれたと思ったが、キョーコはそのまま蓮の腕に絡みついて離れなくなった。
その胸が先ほどから腕に押し付けられて、蓮はもう流石に理性の限界を感じていた。

「くッ…耐えろ…俺…後少し…後少しだから…」

思わず口に出してしまった自分に言い聞かせるための呟きも、今のキョーコには聞こえていても聞こえていないも同然だろう。
不思議そうに見上げてきたかと思ったら、目が合うと無邪気な笑顔でへにゃりと笑われ、蓮の顔から完全に表情が消えた。

「さぁさ、着きましたよ。二人でこのお部屋を使っとくれ。」

「え…あの…二人でって、まさか…」

「ボロ屋でねぇ、他の部屋は雨漏りがひどくて…。困ったことにねぇ、使えそうなのがこの部屋だけなんだ…」

「…ほ、他にないんですか?」

蓮は縋るような目で老婆を見たが、老婆はゴメンねぇと謝った。

「それと、わたしゃ腰がこの通り悪いから、布団は自分たちで敷いておくれ。あの押入れに入ってるの適当に使っていいからねぇ。」

「……わかりました。」

蓮は諦めたように返事をした。

「じゃあ、何かあったら、呼んでくれていいからねぇ。でもま、私もそろそろ…ふぁ…眠ろうかねぇ。」

「すみません。何から何まで、ありがとうございます。」

「ありがとうございましゅー!」

老婆はにこにこと嬉しそうに笑って、腰をトントン叩きながら、のんびりと歩き去った。

「…………」

蓮はその後ろ姿を暫し呆然と眺めていたが、直ぐにクイッと袖を引っ張られて現実に戻ってきた。

恐る恐るチラッと目線をやると、眠そうに目をこする凶悪的に可愛いキョーコがいた。

「こぉん…寝ないのぉ?」

「ーーあぁ…寝ようか…。一緒に…。」

蓮の理性はもうギリギリのところまで来ていた。
アリの子が一匹、チョンと体を突いただけで一気に崩れ去ってしまうのではないかというほど、ギリギリの限界だった。

狭い部屋に二人きり。嵐の夜。愛しい少女はアルコールで可愛さ百倍。冷えた身体。色違いの夫婦浴衣(…しかも中身は下着なし。)
先ほどは一緒に裸でお風呂にも浸かった仲なのだ。

身体の関係があったところで、何の問題があるというのだろう?
寧ろ、ここまで条件が揃っていて、身体の関係がないことの方が問題ではないのか?

ーーー…ここで手を出したとして、誰が俺を責められるというのだろう?


「こぉんと一緒ぉ。」

きゃっきゃっとはしゃぐキョーコを蓮は後ろから抱き締めていた。

「キョーコちゃん。」

耳元で名前を呼べば、振り返る無邪気な顔。
その唇に、蓮はとうとう口付けたのだった。


(続く)


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