My HOME-13-

2015年10月20日14:02  My HOME/スキビ!《完結》

MyHOME-13-


ーーーこ、ここここここ、ここ、こっこれは?!一体何事なのぉぉぉぉぉぉ?!

目覚めたキョーコは叫び出したい思いを隣で気持ち良さそうに眠る大先輩の為に必死で留めて、頭の中で盛大に混乱祭りを開催させていた。

ーーーというか、私はいつから敦賀さんのベッドに?!そしてどうして敦賀さんに抱き枕のごとく抱きしめられているのでしょうかぁぁぁぁ?!

今の現象に心臓が5つくらい欲しいと切望しながら、キョーコは身動きが取れない身体をどうにかしようと試みる。
しかし、離れようとしたところで足を絡められ、まだ抱きしめられ直されてしまった。

一気に顔に熱が集まり、硬直してしまう。

必死で何がどうしてこうなったのか思い出そうとしても、蓮の体温が、頭にかかる吐息が、蓮の薫りが容赦無くキョーコの正常な思考回路を奪う。

ぎゅっと抱きしめている腕に力が入ったかと思えば、「ん…がみ、さん…」と名前を呼ばれて心臓が5つ同時にドクリと大きく跳ねる。

心臓はいくつあっても同じだわっ!という結論に達して、キョーコの脳内に用意された予備の心臓はあっという間に消えてしまった。


ーーーととととととにかく!!考えるのよ!キョーコ!!えっと、確か朝敦賀さんが台風の中出かけて行って、そして掃除と洗濯を済ませて、敦賀さんが心配になって心細くて勝手に寝室に入って…雷の音でーーーそれから何故だか泣いちゃって…そしたら敦賀さんが現れて大丈夫だよって言われて…それから、私ったら安心して……きゃーーー!!!うそうそ!!なんて事なの?!夢じゃなかった?!!じゃあ私、敦賀さんに自分から抱きついて…?

真っ赤になったり真っ青になったり顔色を信号機のようにチカチカ変えていると、さらりと頭が撫ぜられてハッと意識が覚醒させられた。
そろりと見上げると優しい眼差しの蓮と目が合い心臓がドクンと一際大きな音を立てる。

「敦賀…さ…」

「ん。おはよう。」

「えっと、あの…すみませ…」

ちゅっ。

謝ろうとしたところで、額に柔らかな感触とリップ音が響いた。

ピキンとキョーコが固まると、蓮は優しく微笑んでそのままギュッと抱きしめて来た。

「あ、あの?!」

「ん?もう少しいいだろ?ゆっくりしよう。」

「え…あ、えっと…」

みるみる内に顔が真っ赤になるのがわかる。キスされて抱き締められて、ゆっくりしようって…!!!!

「嫌…?」

ーーーそんなわけあるわけない!!

ふるふると首を振って否定するとふわっと笑顔を向けられた。

「良かった。」

甘く溶けるようなその顔でまたもや額にキスされて、心まででろでろに溶けてしまいそうで、敦賀中毒になりそうだなんて思ってしまう。
優しい手に背中を撫でられ、髪を梳かれて、キョーコの心がキューンと甘く痺れた。

ーーー今だけ、甘えてもいい…かな?

抱き締められていることが嬉しくて、今の感覚を記憶に刻み込むかのように息を吸い込んでいた。



ーーキュムキュルルルルロロロロロロロロロギュルギュロロロ…

「ん?なんだ?!」

蓮がキョロキョロと音の原因を確かめようとしていると、腕の中のキョーコがグイッと服を引っ張ったのでそちらに目を向ける。
そこには真っ赤になったキョーコが申し訳なさそうに見上げていた。

「あ、あの、そろそろお夕飯の支度を…」

「え?あ、あぁ…そうか…」

蓮はキョーコの言葉で漸く先程の音の正体がわかった。
キョーコのお腹の虫が鳴いていたのだろう。

蓮はキョーコを離し難くてずっと抱きしめ続けていたことに苦笑しながら、そっとキョーコを解放した。

「す、すぐ!支度しますので!!」

真っ赤になったキョーコが腕の中から転がるように飛び出してあっという間に部屋から出て行ってしまい、その姿に呆気に取られる。

先ほどまで隣にあった愛しい温もりがなくなったことに若干の寂しさを感じながらも、蓮も漸く起き上がった。

せっせとキッチンで料理を作るキョーコの後ろ姿を目で追いながら、蓮は先程の生活が日常になることを望んでしまう。

ーーー嫌がっては…なかったよな?

腕の中で恥ずかしそうにはしていたが、嫌がる素振りは全くなかったキョーコを思い出し、口元が少し緩む。
そんな口元を隠して、蓮はまた今夜どうやって寝室に誘おうかと思考を巡らせるのだった。



「…眠れない…わ。」

夕食を終えて、お風呂を頂いてからキョーコは自身の部屋として充てがわれたゲストルームにいた。

蓮にまた一緒に寝る?とからかわれたが、破廉恥ですっ!と言って、そんなからかいを真に受けそうになった自分自身を跳ね除けた。

多分蓮は台風に心細さを感じているキョーコに気付いて、気遣ってそんな風に言ってくれたのかもしれないが、流石に恋人同士でもないのにただの後輩がこれ以上甘えるわけにはいかない。

「もう、後輩思いもここまで来ると、親切を通り越して、やり過ぎだわっ!!」

心臓に悪い行為を繰り返されて、蓮なしでは生きられない身体になったらどう責任とってくれるつもりなのかしらっ!とちょっとした怒りまで湧いてくる。

「もう…どうしようもないくらい…膨らんでたはずなのに…」

昨日よりは今日、今日よりは明日…。
益々蓮にのめり込んでいる自分にため息を付く。

「相手は敦賀蓮なのよ。日本の俳優のトップに君臨すると言っても過言ではないくらい、凄い人なのに…」

こんなに近くにい過ぎると勘違いしてしまいそうになる。
もしかしたら私も少しは希望が持てるんじゃないかって…。

キョーコは布団の中で小さく丸まって自分自身を抱きしめた。

先程一緒に布団に潜っていた時の暖かさと安心感を思い出す。
もう溢れ出した想いは益々膨らんでーーー。

「好き…貴方が好き…愛してます。愛してるの…。」

キョーコは言葉にするたび、キューンと引き締まる胸の甘い痛みを感じながら、そっと目を閉じて、眠れない夜を過ごすのだった。



「はぁー。」

蓮はパイプ椅子に座ったまま天井を見つめてため息を吐いていた。

もう一度腕の中に抱きしめて眠りたくて食事の後一緒に寝ようと誘って見たが、見事にかわされてしまったのだ。
少しは脈ありかもと思ってた分、少しダメージを受けていたらしい。

そうして蓮は蓮で眠れない夜を過ごしたことから撮影は集中力を続かせるのに少々骨が折れた。

「カーット!!よーし!昼休憩挟んで再開!!13時までにはここに集合ー!!」

監督からそんな声が上がりそれぞれが思い思いにグループを作り始める。

皆が並ぶお弁当の列には加わらず、キョーコのお弁当がある二人はさっさと楽屋へと引き上げていた。

「……………。」

「?どうしたんだ?蓮。」

一度開けた弁当を勢い良くパコっと閉めた蓮に、社は首を傾げた。

「………いえ、あの…」

今度は社に弁当の中身が見えないようにそろりと開けられ、気になった社も思わず首のを伸ばして見てしまった。

「お前…それ…」

社が驚いて声を発すると、弾かれたように蓮が社を見る。

「…社さん…」

咎めるでもなく、怒るでもなく、答えを求めて縋るような子犬の瞳で見つめてくる蓮にウッカリ顔を赤らめてしまう。

「な、なんだ…?」

「これ…どう言う意味でしょうか?」

「どういうって…言葉のまま…じゃないのか?」

「…最上さんが…これを俺に?」

「付き合い…始めたのか?」

「いえ…。」

「え?違うの?」

「だから困惑したんじゃないですか!!社さん…これ、どういう意味なんでしょう?」

蓮の差し出してきた弁当には俵型のおにぎりが4つ並んでいて、そこには海苔で作られた『L』『O』『V』『E』という文字が順番に並んでいたのだ。

「言葉通りに読めば…LOVE…だよな?」

「俺に…?」

「…お前以外の誰にだって言うんだ?」

社の言葉に少し考えを巡らせた蓮が小さな声でポツリと言った。

「琴南さん…とか…」

「あーーーー…うん。…なくは、ない…な…」

キョーコは奏江が地方ロケから帰ってきてからはたまに奏江用にも弁当を詰めていることがある。
今日は奏江に詰める弁当を間違えて入れてしまったんじゃないかという蓮にその線もあるかもな…とうっかり思ってしまった。

「最上さんの…LOVE…」

暫し、呆然とそのお弁当を眺めた後、蓮はまたもや呟いた。

「俺が言わなければ、俺が食べたって…バレませんよね?」

「まぁ、そうだな。キョーコちゃんが琴南さんと食べてなければ…だけど…」

蓮はそれを聞いて、一つ頷くといそいそと場所を移動して、楽屋の隅の社から離れた場所を陣取り、厳かに手を合わせて「頂きます!」と言ってから、思う存分顔を崩して噛み締めるようにホクホクと食べ始めたのだった。

「…………。」

社はそんな蓮の姿を暫く箸を加えたまま呆然と見つめていた。

「…蓮…くん?」

弁当に夢中なのか全くこちらを見向きもしない蓮に、邪魔なら出て行こうか?とも声をかけられず、社は自身の弁当に視線を向けた。

綺麗に詰められてはいるが、蓮の弁当を見た後では恐ろしいくらいに普通に見える。
蓮が少し羨ましくなりながら、俺も好きな子からの弁当が欲しいかも…となんとなく、涙ながらに思ってしまうのだった。
これからはキョーコには自分の分のお弁当はいらないからと言っておこうか…。
何と無く蓮のお零れをもらっているようで落ち着かない社がいたのだった。


蓮たちがご飯を食べている頃、キョーコはお弁当の蓋を開けてハッとしていた。

出来心で作ったLOVEの文字…。
蓮の弁当に一度入れて一人でキャーキャー言いながら遊んでいたのだが、最後には自分のお弁当箱へ移したはずだった。
それなのに自分のお弁当箱には蓮のところに入れたとばかり思っていたおにぎりが収まっていて、キョーコは漸く、自分と蓮の弁当箱が色違いだったために間違えて自分の弁当箱を蓮に渡してしまっていたことに気付いた。

「うそ…じゃあ敦賀さん…今頃…!!」

カァァと顔が一瞬にして真っ赤になる。

渡すはずのなかった気持ちを込めまくったお弁当が蓮の元に行ってしまったことに恥ずかしさが募る。

「やだ…どうしようっ!!」

昨日の今日で抱き締められたことに浮かれていたのだが、いきなりあんな弁当渡されて引かれてたらどうしようと一気に背筋が寒くなった。

「ま、まだ、食べてないかもしれないし…!!そうよ!!まだ間に合うかもっ!!」

今から急いで蓮のいるスタジオに向かって交換してもらえば大丈夫かもしれない。
そう思って急いで立ち上がったのがまずかった。
風呂敷がひっかかり、弁当をひっくり返してしまったのだ。

「あぁぁ!!なんてこと!!!!」

キョーコは一気に真っ青になった。
これではお弁当の交換も出来ない。

「いぃぃぃーやぁぁぁ!!どぉぉうしたらいいのぉぉぉぉー?!」

キョーコの嘆きは学校中に響き渡ったのだった。


(続く)


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