恋の季節は…2《晴れ。ところにより雷》

2017年06月20日15:03  恋の季節は…/スキビ!

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恋の季節は 2
《晴れ。ところにより雷》


新しい学校、新しい教室、新しいクラスメート。
どこに行っても皆同じだ。

女子に見つかれば、キャーキャーと騒がれ群がられる。
愛想笑いで返しはするが、正直またかという気分でうんざりとしてしまう。

女子に好かれてしまうせいで、同姓からは疎まれる。
唯一の救いは、中学からの付き合いのある社と同じクラスになれた事だろう。
社も親しみやすく美形という事もありそこそこ女子からも人気がある。


中学の時、家庭の事情もあり入学と同時に一人で生活を始めていた蓮は、新しい環境にとても緊張していた。
そんな蓮に最初に声を掛けてくれた同姓が社で、それからは何かと孤立しようとする蓮を気に掛け、いつしか二人でつるむようになっていたのだ。
二人で一緒に行動するようになると、何故か一層二人の人気が高まった。

しかし、以前ほどのうっとおしさは感じなくなっていた。
それは社のおかげでもある。
囲まれると何かと社が気を利かせ、女子の注意を別に向けてくれる。
そしてその社の働きのお陰で、女子の注意が別に向いている内に、二人でその輪の中からこっそり抜け出すというパターンが出来るようになったからだ。

それでもその社のガードをくぐり抜けてたまに蓮に告白をしてくる女子もいる。
蓮は別に断る理由もないからと、付き合ってる特定の彼女がいない間はその時に告白して来た女子と付き合うというパターンを繰り返していた。

付き合い始めたからと言って、特に彼女に執着するわけでもない蓮は、彼女が蓮に愛されてるのか試す為、押しては駄目なら引いてみろ!を実行した際に、振られたと勘違いしてアッサリと自分から身を引いていた。

その為、蓮は長く続いても半年、短くて10日というような付き合いしかしてこなかった。

高校入学という若さで、既に両手では数えきれないほどの彼女が今まで出来ていた蓮だが、その中に自分からアプローチした相手は1人としていない。
ほぼ全てが積極的な女子からのアプローチによるものばかりだった。

蓮は何故振られるのかわからないまま、また別にそれを気にする事もなく、次々と新しい彼女を作っては別れてを繰り返していた。

それを近くで見ていた社は飽きれてるのだが、それに慣れたせいで、いつからかそのことについては触れられなくなっていた。

付き合ってる彼女がいても、特に蓮の態度が変わる訳もなく、皆さんお友達という雰囲気を醸し出しているので、彼女は不安になるのだ。
その事を指摘されても、わざわざその彼女の為に他の人への態度を変える気は蓮には更々なかった。


付き合ってるからと言って、周りに気を遣われるのも、うっとおしくて、蓮は付き合っていることを特に匂わせようともしない。

蓮が彼女に振られて別れたという噂はあっという間に拡がるのだが、女子達は、皆何故蓮が振られるのか不思議で堪らず、「私は絶対に振らないから!」と告白するのだが、結局、皆同じ道を辿るのだった。



新しいクラスでも席に着いた途端周りを女子達に囲まれ、話しかけられる。
いつものことに、愛想笑いで受け答えをしつつ、適当に促していた。

担任が来て、ようやく解放された蓮は、クラス中から集まる熱い視線に居心地を悪くしながらも、気付かないふりをしていた。

そしてふと、自分の斜め前の席に姿勢良く座る女の子が目に付いた。

ーーー誰だろう?あの子、俺のとこには来てなかったよな?

自分のことを振り返りもせず、熱心に担任の話に耳を傾ける少女が妙に気になり、蓮は自分で気付かないうちに、じっとキョーコを見つめていた。

ピンと伸びた背中、肩にかかる長さの綺麗な艶のある黒髪、メイクもしてない透明感のある肌。
蓮の周りに群がる女子は、皆大抵キツイ香水の匂いをまとわせていたり、髪を染めたりメイクをしていたり、こっそりアクセサリーを身につけてたりと、派手めな子達が多い。

地味めの子は大体が遠巻きに見つめてくるだけで、稀に話すことがあると、顔を真っ赤にしながら一気に捲し立てるように要件を伝え、逃げるように去っていったりする。
何をそんなに顔を赤くすることがあるのかと、蓮には毎回不思議でならない。

誰もが蓮を容姿で判断する。別にそれが嫌と言うわけでもないが、自分ってなんなのだろうとたまに思う。
どこにいても注目を浴びてしまうことが嫌で仕方がなかった。

そんな中で、自分に対して全く興味を示さない様子のクラスの女子に、蓮はこっそりと興味を抱いていたのだった。

入学式の次の日のホームルームで、一人一人席を立ち自己紹介をする。
女子達は、こぞって蓮と社にアピールをする様に二人を見ながら自己紹介をしていく。蓮はそれに気付かないふりをしながら、内心溜息を吐いていた。
男子の視線が蓮を敵とみなして突き刺さる。

蓮の番が回って来た時には、女子からは熱い眼差しで見つめられ、男子からは冷たい目で見つめられた。
自己紹介を終えた時、拍手が起こるのは女子達からだけだ。男は皆適当な拍手で済ませている。

そして、蓮が気になっていた斜め前の席の女の子の自己紹介があった。

ーーー最上…キョーコ…か…。

蓮の中で、懐かしい記憶が蘇る。

『私はね、キョーコ!カタカナでキョーコなの。』

そう言って嬉しそうに微笑む幼い女の子の姿と声が蓮の中で響いた。

ーーーもしかして、あの時のキョーコちゃん?

蓮は、僅かに湧き上がる期待に心を踊らせた。

ーーーそうだったら嬉しいな。俺のこと覚えてるかな?

そのキョーコこそが、過去唯一容姿など関係なく、自分を自分として接してくれた女の子だったのだ。



それからあっという間に10日程経った。
新しい環境に何となく慣れて来て、クラスの様子も少しずつだがわかるようになって来た。

キョーコは比較的大人しく、蓮から見てキョーコはいつも一人ぼっちだった。
他の女子達も、キョーコを空気とでも思ってるのか、それとも存在自体に気付いていないのではないかというくらい気にも留めない。
そしてキョーコ自身も、そんなクラスの様子を気にすることもなく、授業に集中してしっかりとノートをとっていた。

そして蓮は、授業が終わって机の上を整理していたキョーコが消しゴムを落としたのに気が付いた。
コロコロと自分の元へと転がってくる消しゴムを蓮は拾い上げ、落としたことに気付いていない様子のキョーコに勇気を持って初めて声を掛けた。

「最上さん、消しゴム 落としたよ?」

途端に教室からザワッとした気配が上がる。
蓮が不思議に思って周りを見回すと、ヒソヒソと囁く女子の姿があった。

「え?!あ、す、すみません!!ありがとうございます!!」

キョーコは慌てて消しゴムを蓮の手から受け取り、頭を下げた後は、それ以上の接触を望まないかのように、すぐに前に向き直りテキパキと片付けを再開し始めた。

自分が話しかけても、顔を赤くしない女子に今まで会ったことがなかった蓮は暫し驚いて思わず凝視してしまった。


そんな日の中休み、廊下が騒がしいと思えば、ガラリと教室の扉が乱暴に開かれた。

「おい!キョーコ!!お前、昨日渡した宿題出せよ!!次の授業で提出なんだよ!」

「わわっ!ショーちゃんごめんね!朝渡すの忘れてた!!はい!コレ!!」

キョーコは慌てて鞄を漁ると、大切そうにノートを取り出し、松太郎に満面の笑みを浮かべて差し出した。

「ちゃんと字は真似て書いてるんだろうな?」

松太郎がボソリとキョーコにだけ聞こえるように確認する。

「うん。勿論だよ。」

少し誇らしげに嬉しそうに笑うキョーコに、松太郎は満足そうな顔をすると、声をワザと大にして言った。

「じゃあキョーコ!ノートは返してもらうぜ!お前、俺にばっかり頼らずにちゃんと自分でも宿題しろよな!!」

「もー!ショーちゃんの意地悪!」

松太郎にそんな言いがかりをつけられても、キョーコは松太郎が宿題のためとはいえ、自分からわざわざ教室にきてくれたことが嬉しくて堪らないようで、特に気にした様子もない。

「じゃあな!」

去って行く松太郎をキョーコが、嬉しそうに見送ると、蓮の周りに群がっていた女の子達がコソコソと囁き始めた。

自然と周りの会話が聞こえた蓮は、その内容に驚いた。

「やっぱりあの噂本当だったんだぁー。」

「うわぁーデレデレしちゃってなんなの?気持ち悪いわね!」

「成績優秀なのはやっぱりカンニングとかしちゃってんじゃないの?」

「本当よね。宿題をよりにもよって不破君にやらせるだなんて、何様のつもり?!」

「本当にありえないわよ。図々しいったら。」

「不破君、優しいよねー!!カッコいいし、面倒見いいってポイント高くない?」

「本当に、何であんな地味な子の面倒見てるわけ?」

「それはあれでしょ?一緒に住んでるって聞いたけど。」

「は?!高校生になりたての癖に同棲?信じらんない!!」

「違う違う、不破君の家のお荷物なのよ!」

「え?どういうこと?」

「居候っていうのかな?」

「あの子の馬鹿さ加減に耐えられなかった親から見捨てられたらしいわよ。今では、不破君の家が経営してる旅館で働かせてもらってるんだって。」

「あ、それ私も聞いた事ある!あの子が花嫁修行だって勘違いしてるってやつでしょ?」

「えーー!ズルくない?それでお嫁さんになれるなら私も不破くんの家に居候したい〜!」


蓮は今までキョーコが授業を真剣に受けているところをずっと見て来た。
明らかに先程のは、不破がキョーコに宿題をさせた様子が伺えたのに、何時の間にか不破がキョーコにノートを見せたことになっている。
その上、あからさまに悪意のある誹謗中傷。

キョーコに消しゴムを渡しただけでざわついた教室といい、さっきの会話の内容といい、皆の態度が蓮は気に入らなかった。

「敦賀君も、あんな子の落とした物なんて拾わなくていいのよ。敦賀君の手が穢れちゃうわ!」

「そうそう、あんな卑しい子には構わない方が良いんだって。」

「ご忠告どうもありがとう。でも、俺は自分のことは自分で決めるよ。君たちに指図される謂れはないからね。」

女子達の会話に、蓮はイライラとしながらも、キュラキュラした笑顔を貼り付けて会話を打ち切ったのだった。


(続く)


*****


くぅ!!何もかも松太郎のせいだぁぁぁぁぁ!!

ぁぁぁぁ早く蓮を活躍させたい!!

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※Amebaで2012/01/17に投稿したものを加筆訂正した話です。
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