恋の季節は…5《午後より雲行きが怪しくなるでしょう》

2017年06月30日08:21  恋の季節は…/スキビ!

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恋の季節は…5
《午後より雲行きが怪しくなるでしょう》


教室に戻ると、キョーコはいつものように席に着く。
相変わらず自分の居場所を感じないこの場所だが、それでもキョーコの心は今まで感じたことがないくらい暖かくなっていた。

「あ!おい、蓮!どこいってたんだよ~!」

教室に社の声が響くと、女生徒たちも蓮に気付きワラワラと蓮の周りに集まりだした。

「敦賀君どうしたの?どこか具合悪かったとか?」

「もう大丈夫なの?」

「ん。ちょっとね。」

蓮は言葉を濁して、女生徒の間を縫うように進み、社の元へ向かった。

「相変わらず凄い人気だな。たった一時間いなかっただけであんだけ人が群がるんだから。」

蓮は社の言葉に困ったような苦笑を零した。

「最上さんも、いなかったのに皆が気にするのは蓮だけだもんな。」

社のポツリと呟いた言葉に、蓮は顔を上げ、キョーコを見る。

キョーコは気にすることもなく、机の上に次の授業の準備を整えていた。

蓮がそんなキョーコを見つめていると、キョーコがその視線に気付いたのか、振り返り大きな目が蓮を見つめかえした。

控え目にニコリと微笑み軽く頭を下げたキョーコに、蓮の心臓がドキンと大きく跳ねる。

キョーコがまた前を向き直ってからも、蓮の胸の動悸が収まるまで少し時間が必要だった。

「ん?どうしたんだ?蓮?…蓮?」

「え?…あ、ごめん。何?社?」

「お前やっぱりどこか具合わるいのか?ぼーっとしてるけど。」

「そんなことないよ。さっきまで日向ぼっこしてたから…まだ少しだけ眠いだけだよ。」

「日向ぼっこでサボりかよ!蓮にしては珍しいな。ま、たまにはいいんじゃない?」

社の言葉と同時にチャイムが鳴り、蓮は社と別れて席に着いた。



そして翌日のお昼休みーー

「あ。最上さん発見!!」

「わっ!敦賀君。どうしたの?」

「ここに来れば最上さんに会えるかな?って思って。」

「わぁ。本当に会えた!」

一応松太郎の為にお弁当を作っていたキョーコだが、松太郎の教室にこっそり持って行けば、松太郎は既に仲間たちとワイワイ騒ぎながら弁当を食べていた。

キョーコはその様子を見てそっとため息を吐いたものの、免疫が出来たのか、はたまた昨日の心強い蓮の存在に癒されたお陰か、昨日のような疎外感に打ちひしがれることはなかった。

屋上に行けば、また蓮に会えるかもしれない。そんな僅かな期待を抱いたキョーコは、お弁当を持って、軽い足取りで屋上に向かったのだ。


最初、蓮の姿が屋上にないことにちょぴりがっかりしてしまったキョーコだったのだが、弁当を広げていたら蓮が現れたので、キョーコは嬉しくて顔が緩んだ。

「ん?本当に会えたって?」

「ふふ。ここに来たら敦賀君に会えたりしてって思いながら今日も来たんだ。」

「そうなんだ。」

キョーコの笑顔に、蓮も嬉しそうに顔を崩す。それを見たキョーコもふふふ。と笑った。

「いつもそうやって笑えば良いのに。」

キョーコの言葉に蓮が首を傾げる。

「そうやってって?」

「教室では敦賀君、凄く嘘くさい笑顔浮かべてるんだもの。」

「嘘くさいって…酷いな。」

蓮はキョーコの遠慮のない言葉に可笑しそうに声を上げて笑う。

「そういえば、敦賀君今日のお昼は?」

「ん?食べてないよ。」

当然のことのように言う蓮に、キョーコは呆れたようにため息を着いた。

「もう!敦賀君ってば、食べないことが普通なんて可笑しいわよ。あの、良かったら…食べる?今日はサンドイッチにしてみたんだけど…」

「え?!本当に?!あるの?うわぁ!!美味しそう!!もらっていいの?」

「うん。どうぞ。」

キョーコがニコニコとお弁当箱を差し出すと、蓮が嬉しそうに両手を合わせた。

「頂きます。」

「はい。召し上がれ。」

そんな改まった言い方をし合うのは新婚みたいだとお互いに勝手にこっそり思いながら、顔を見合わせ恥ずかしそうに笑いあった。




「敦賀君!ちょっと今いい?」

同じクラスのリーダー格の松内瑠璃子から蓮は人気のないところへ呼び出された。

「どうしたの?」

蓮はこの後の言葉を何となく予想しながら、取り敢えず聞いてみた。

「あの、敦賀君って、今彼女いないんだよね。」

「まぁね。一週間前に別れたし。」

「あの、じゃあさ、今好きな人とかは??」

「好きな人?今はいないけど…」

「えっと、じゃあ私と付き合ってみない?私、敦賀君のこと本気で好きみたいなの。」

やっぱりな…と思いつつ、蓮は苦笑を漏らす。

「…そうなんだ。まぁ、別にいいよ。」

「え?!本当に?!そんなにあっさり?!」

「え?何か変?」

「いや…全然いいんだけど、ちょっと拍子抜けって言うか。」

「そう?」

「でも良かった!よろしくね!敦賀君!!私のことは瑠璃子って呼んでね!あっ!敦賀くんのことも蓮って呼んでも良い?」

「うん。何でもいいよ。じゃあ、そろそろ教室に戻ろうか。」

蓮はそういいつつも興味なさそうに踵を返してスタスタと歩き去ろうとする。
それを見た瑠璃子はぷぅと口を膨らませて、蓮の腕に腕を絡めて抱き込むようにして歩き出した。

しかし蓮はそれをさり気なくほどきながら、瑠璃子に言った。

「悪いんだけど、こういうベタベタした感じはあんまり好きじゃないんだ。今までと同じように接してくれる?」

蓮の本気で困ったような言葉に瑠璃子はちょっとだけつまらなそうな顔を向けるのだが、取り敢えず言われたとおり腕を放すと、少しだけ離れて隣を歩き出した。

しかし、蓮と付き合えることになった嬉しさからか、瑠璃子の頬は緩んだままだった。

蓮にとって彼女は特に特別ではない。まぁ、好きになる努力はしてるが、そもそも愛とか恋とか蓮自身が良くわかってないのだ。嫌いではないから好きなんだろう。という程度だった。
しかし、蓮に彼女がいるとわかると、周りの態度は一変する。

あからさまに色目を使う人は彼女に気を使うからなのか激減するし、何よりあまりキャーキャー言いながら人が集まらなくなって行動が取りやすくなるのだ。

リーダー格の瑠璃子が相手なら、尚更寄ってくる人も減るだろう。


教室に二人で戻ると、女子の集団からざわめきが起こった。

皆告白のことを知らされていたのか、仲間達は興味津々という顔で瑠璃子に集まる。

「で?!どうなったの?」

瑠璃子がニッコリと笑って、嬉しそうに皆に向かってピースした。

「ふふふ。蓮の彼女になりましたー!」

「えー?!いいなぁ!!羨ましい!!」

「流石瑠璃子だね!狙った獲物は逃がさない!!」

「ふふん。もっちろんよー。蓮に手を出したらあんた達だって許さないんだからね。」

瑠璃子の言葉に、皆が残念そうな顔を見せるが、まぁ瑠璃子ならしょうがない。という顔を作っていた。



「あ!ねぇ最上さん、この問題解き方わかる?」

キョーコが屋上で泣いてるのを蓮が目撃して数日が過ぎた。

毎日、松太郎の為に一応弁当を作って来る健気なキョーコだが、やはり松太郎は別の女の子から弁当を受け取っており、キョーコはこっそり身を引くのだった。

若干の淋しさを抱えつつ屋上に足を運べば、いつもそこに蓮がいた。

そして二人で他愛ない話をしながらお弁当を食べることがここ最近の日課になりつつあった。

屋上で密かに縮まっていたキョーコと蓮の距離。
蓮は、いつものようにキョーコに話しかけたのだが、いつもと唯一違ったのは、ここが教室だと言うことだった。

教室の空気が一瞬にして変わるのだが、蓮もキョーコもそれに気付いていなかった。キョーコの机に椅子を近付け、二人で仲睦まじく問題を解く姿を、瑠璃子を中心とした数人の女子が睨むように見つめていた。


《続く》

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※Amebaで2012/01/19に投稿したものに加筆訂正をしたものです。
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