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恋の季節は…9《夜はまた一段と冷え込むでしょう》

恋の季節は 9
《夜はまた一段と冷え込むでしょう》


蓮の家のテーブルには、今まで並んだことがなかった出来立ての料理がキョーコの手によって並べられていた。
炊きたてのご飯と色鮮やかなサラダ、目玉焼きの乗ったハンバーグにスープ。

初めてまともな食事が用意された己の家のリビングに、蓮は感動さえ覚えた。

「凄いね…」

「ふふふ。いつもはお弁当ばかりだけど、炊きたてのご飯もいい物だよ。今日は土鍋で炊いてみたの。」

「土鍋で?美味しそう。じゃあ早速、頂きます。」

「はい。どうぞ召し上がれ。」

蓮が手を合わせて言うと、キョーコが嬉しそうに微笑んだ。

蓮が炊きたてのご飯を口にするのは、中学の給食以来で、とても感動していた。

「美味しい…」

「良かった。やっぱりほかほかご飯が一番だよね。」

蓮の言葉にキョーコが嬉しそうに微笑む。

二人で他愛のない会話を楽しみながら、和やかな食事の時間はあっという間に過ぎていった。

「ご馳走様でした。」

「はい。お粗末様でした。」

二人はほぼ同時に食べ終わり、微笑み合うと、並んで仲良く食器を片付け始めた。

何となく無言が続いても、二人でいると、気まずい雰囲気にもならなくて、キョーコも蓮も安心出来た。


「そろそろ送るよ。」

蓮に言われてキョーコが時計に目を移せば、既に21時を過ぎていた。

食後のココアをご馳走になってたキョーコは長居をし過ぎてたことに漸く気付いて、深々と頭を下げた。

「こ、こんな時間になるまで気付かないなんて…本当にごめん!!あの、図々しくも長居しちゃって…。」

いきなり勢いよく土下座を始めたキョーコに、蓮は慌てて身体を起こさせる。

「も、最上さん!!土下座なんてしなくていいから!!気にしてないよ。こっちは美味しい料理までご馳走になったんだから、本当はもっといてもらっても全然構わないんだけど、流石にお家の人が心配するだろう?」

蓮のお家の人が心配という言葉を聞いてキョーコが青褪めた。

「た、大変!!本当に、なんてこと!!」

キョーコは慌てて立ち上がると、急いで制服を確かめに、バスルームに向かった。

「ちゃんと乾いてる?」

キョーコの後を追ってバスルームに着いた蓮は、制服に手を伸ばして確かめると顔を顰めた。

バスルームを乾燥モードにして、制服を干していたのだが、まだかなり湿っていたのだ。
しかし、キョーコは全く気にせずにそれを着ようと服を脱ぎ始めた。

「え?!最上さん?!?!ちょっ!最上さん!!!!」

「へ?!あ、きゃあ!!」

テキパキと蓮の目も気にせず慌てて服を着替えようと脱ぎ始めたキョーコを見て、蓮が顔を真っ赤にしながら慌てて呼びかけると、キョーコはようやく気付いたのか、慌てて身を屈めた。

蓮は急いで顔をキョーコから背けて、脱衣所から出ようとするのだがその濡れたままの制服に着替えさせる気にはなれず、制服を取り上げると、ドライヤーを使って乾かし始めた。

「つ、敦賀君!!そこまでしなくていいから。」

「良くないよ!こんなの着てウロウロしてたら風邪引くだろ?!いくら暖かくなって来たとは言え、まだ夜は冷え込むんだから。」

蓮は急いでドライヤーをかけるのだが、やはり中々簡単に乾く物ではない。
あまり遅く送るのも気が引けた蓮は、生乾きではあったが、さっきよりかは幾分かマシだろうと渋々、急かすキョーコに制服を手渡した。

蓮が脱衣所の扉を閉めるのを待って着替えたキョーコだが、出てくるまでに1分とかからなかった。

大慌てで鞄を掴むキョーコに、とりあえず自分の持ってるジャケットの中で一番小さい物をキョーコに渡す。

恐縮しまくっていたキョーコの肩から無理矢理羽織らせると、蓮はキョーコを送る為に玄関を出た。

「本当にここまでしてもらわなくてもいいのに。でも、ありがとう。敦賀くん」

キョーコは今まで周りから扱われて来た時とは、全く違う優しい蓮の行動と言葉に、くすぐったさを覚えながらも、どうお礼を言ったらいいのかと考えあぐねていた。

今まで人から優しくされたことのないキョーコは、優しくされた時の対応に慣れていなかったのだ。

でも、蓮はキョーコのそんな気持ちも全て包み込むような笑顔で対応してくれる。

キョーコの胸には知らぬ間に蓮に対する温かい気持ちが芽生え始めていた。


二人で並んで帰る帰り道、いつもは怖い暗い道も、蓮と通るととても特別な道に感じていた。

「それでね、その時に…」

「おい!キョーコ!!!!」

蓮とキョーコが楽しく会話をしながら歩いていると、突然怒鳴るような声が割って入った。

声の方に顔を向けると、鬼のように顔を怒りに歪めた松太郎が立っていた。

「お前!キョーコのくせに何こんな時間までちんたらしてんだよ!!」

「ショ、ショーちゃん…。」

「お前のせいで俺がお袋から怒られちまっただろうが!!相変わらずトロさだけは人一倍だな!!…ん?誰だてめぇ??んな?!…敦賀蓮?!?!」

キョーコに向かって罵声を浴びせていた松太郎は、ふとキョーコの隣に立つ背の高い男に気付き、睨みつけた。するとそこには松太郎が学校の中で一番気に食わない男だとキョーコに言い続けていた蓮が立っていたのだ。

「…はじめまして…かな?不破君。」

蓮は、松太郎のキョーコに対する言葉に嫌悪感を抱きつつも、とりあえず微笑みかけた。

「…んな、何で…お前がこんな奴と一緒にいるんだよ…。」

松太郎は蓮の挨拶も無視してキョーコに噛み付いた。

「ショーちゃんあのね、今日はちょっと先生に頼まれた仕事が長引いちゃって、ずっと敦賀くんが手伝ってくれてたの!!」

松太郎の不機嫌さを感じ取ったキョーコは急いで松太郎に駆け寄ると嘘をついた。

ーーー敦賀くんに変な事を言われたくない!!

「はぁ?!相変わらずトロイなおまえは…」

松太郎は、心底呆れた顔でキョーコを見る。

キョーコは蓮を松太郎から遠ざけるように松太郎の機嫌を取ろうと慌てて笑顔を作って言った。

「ショーちゃん私のために迎えに来てくれたの?嬉しいな。女将さんにも後で私からショーちゃんは悪くないって言っとくから、ごめんね。私のせいで怒られちゃったんだね。」

「キョーコ!俺がいつもこいつの事嫌いって言ってんのお前は知ってんだろうが!!何、仲良く一緒に歩いてるんだよ!!」

「つ、敦賀くんは夜道を一人で歩いたら危ないからってわざわざついて来てくれただけなの!!」

「はぁ?!お前、自信過剰じゃねぇ?誰がお前みたいなやつを好き好んで襲うかよ!!」

「そ、それはそうだけど…。」

「不破君って言ったっけ?いくら幼馴染でも、言っていい事と悪いことがあるんじゃないかな?何でそんな風に彼女の事を否定するんだ。」

蓮は松太郎のあまりの暴言に怒りを抑えられず咎めるように言った。

キョーコの側に立ち、キョーコを松太郎から隠すように立ちはだかる。

そんな蓮をキョーコは不思議そうに、松太郎は忌々しそうに見つめた。

「つ、敦賀くん?」

キョーコが恐る恐る声をかけるが、蓮は松太郎を威嚇するように睨み付けていた。

「ハンッ!!敦賀…お前、顔はいい癖にキョーコみたいな奴がいいのかよ。」

松太郎は、そんな蓮の様子に小馬鹿にしたような笑みを浮かべて嘲笑った。

「所詮良いのは顔だけかよ。女の趣味、悪ぃんだなあんた。勿体ねぇ。」

松太郎は蓮に向かってフンっと勝ち誇ったような顔を向ける。

「ショーちゃん!!」

キョーコは蓮を心底馬鹿にした松太郎の態度に憤慨して怒るのだが、松太郎は素知らぬ顔だ。

「あぁ?何だよキョーコ。ほらっ!とっとと帰んぞ!寒ぃだろ!お前俺に探させた罰として、今からコンビニであれ買ってこいよ!」

「…うん。わかったよ。探しに来てくれてありがとうね。ショーちゃん…」

キョーコは松太郎の顔色を伺いながら、蓮に向かって申し訳なさそうに目尻を下げた。

松太郎の手前、蓮のフォローをすることが出来ないキョーコは、松太郎に腕を乱暴に引っ張られながらも、松太郎に気付かれないように気をつけながら、蓮に精一杯の謝罪を込めて頭を下げる。

残された蓮は、その場に立ち尽くしたまま、爪が手に食い込むほど、強く強く拳を握り締めていた。


(続く)

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*****


※このお話はAmebaで2012/02/16に投稿した話に加筆訂正したものです。
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