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花火と金魚と恋心

ご無沙汰しております。
本当にこの暑さ、何日続くのでしょうね。
ここ何日かエアコンのスイッチを切ることが出来ず、電気代が心配になります!!
皆さんも対策をしっかりして熱中症には充分お気をつけくださいね。


さーて、この話を書くにあたって、実は最近少しだけスキビ読み返しましたが、何度読み直しても、なんでこんなに面白いのか!!ってくらい面白いですよね♡
↑読み返したのはヒール兄弟始動あたりからですけど♪
ヒール兄弟のところ、始まりから終わりまで、もうもうもう!神回過ぎでしょう〜(//∇//)
暑さも相まって、鼻血でちゃうよーー!!
なんて興奮がしばらく治りません!

特にどこ?って、聞かれても答えられません!
もう全部!!全部ですよ!!
この二人のやりとり全部好きだよ!!!!愛しすぎるよ!!
あー♡最高なんですよ〜♡♡♡

カイン兄さんの溺愛ぶり最高です。
闇に真っ逆さまに落ちそうな蓮さまを救えるのがキョーコちゃんだけって、ご馳走様です。
蓮さまもドキドキしてしまうセツカさん、素敵です。
クオンさん登場のところなんて悶絶ものです。

だめだやっぱり、一つになんて絞れなーい!!


とまあ、スキビ熱がアツアツの内に、久々に書いた次第なのですが…えーっと。
元々対してない文才がさらに、なくなってないかい?なーんてお声が聞こえてくるのではないかと…。

でもまぁ、夏だもの!夏らしいものをかきたいじゃない!!
ということで、書いてみました。

お楽しみいただけたら至極幸いでございます。



*****


花火と金魚と恋心


タレントの京子こと、最上キョーコが芸能事務所の尊敬する先輩俳優敦賀蓮の家を訪ねたのは、恋人同士などというスィートな関係ではなく、キョーコが所属するラブミー部へ蓮から夕食の支度の依頼をしたためだった。
いつものように腕を振るい、少食の蓮のためにバランスのとれた適量の料理を提供する。

うん。美味しいね。と言って食べてくれる蓮の笑顔と褒め言葉に頬を染めてしまうのは、恋心が育ち始めたからに他ならない。

ラブモンスターである京子所属の大手芸能事務所社長のローリィ宝田に恋心を白状してからというもの、歯止めが聞きづらくなってきていることも自覚している。
ひっそりとバレないように心の中で思い続けるのはいいわよね?と自分自身を納得させて、完璧な後輩の仮面を被ってせっせと蓮のために食事を用意しているあたり、自分も懲りないわよね。と思ってしまう。
過去に恋愛で痛い目を被ってからというもの、二度と恋などしないと断言して二年も経たないうちにこのザマだ。

「そういえば今度、花火大会のオファー入ってるらしいけど、聞いてる?」

考え事をしているときに、突然話しかけられてドキリと心臓が跳ねた。
今は食事中。人気俳優である蓮と過ごすことのできる貴重な時間を考え事に使ってしまうなんて勿体ない!と慌てて取り繕う。

「あ、はい!聞いてます!ほ、本当にいいのでしょうか?敦賀さんのお相手が私なんかで凄く恐縮なのですが…」

「なんかだなんて…それを言わせたら、最上さんの相手が俺なんかで良いのかなって思うけど?」

「そんなとんでもない!!敦賀さんと花火大会だなんてそんな贅沢なこと、嫌がったりなんかしたらバチが当たります!!」

「…そう。バチが当たるから嫌がらないだけ?」

「いえ、そういうことじゃなくてですね。あの…敦賀さん、お忙しくて花火大会なんて行ったことないんじゃないかな。って思ったら…その…」

キョーコはそう言いながら蓮の隣に恋人のように立ち、一緒に花火を見る姿を想像して急に顔が熱くなるのを感じていた。
人混みの中、手を繋いでカキ氷を食べさせあったりと、この仕事の話を聞いてから散々してしまった妄想が頭の中を駆け抜けて、申し訳ない気持ちでいっぱいになり、慌ててかき消した。
この仕事…というのは、人間観察だモニターしてみよう!という人気お笑い芸人がMCを務めるバラエティ番組で、蓮と京子が花火大会に潜入し、一般人に気付かれるか、気付かれないか?をモニターする企画のことだ。
一般人に名前を呼ばれたら、即終了。
話しかけられたとしても名前を呼ばれなければ、セーフだという。
元々蓮の起用が決まっていて、その蓮のマネージャーである社が蓮の新しい顔を引き出すタレントとして京子の起用を推してくれたのだと聞いていた。

「あぁ。言われてみれば、ゆっくり見に行くこと最近はないかもね。」

蓮の言葉に、流石に初めて行くってわけではないのね。とキョーコは少し残念な気持ちを抱いた。

「最近はってことは、行かれたことはあるんですね。」

「まぁね。売れる前は何度か…」

そう言いかけていた蓮が口を噤んだ。
妙な間が空いたことにキョーコの第六感がピクンと反応する。

「…親とも行ったことあるしね。」

「そ、うですよね。あります、よね。」

何かを誤魔化したような蓮の言い方に、心の中で、そーですか、そーですよね。花火大会ぐらい行ったことくらいありますよね。と独りごちる。
蓮の言葉の‘親とも’の、‘も’の中に誤魔化されたものを敏感に察知していた。
もしかしたら、初めての花火大会だったりしてなんて思っていたのだが、蓮はそれはそれは昔からモテるだろうし、美人な彼女と行ったことがあるに違いない。
美男美女の浴衣カップルを想像して、自分ではその辺に転がっている石ころに違いないとため息をつきたくなった。
悶々とキョーコの心の中に曇り空が広がっていく。

「そうだ。それでさ、衣装なんだけど、せっかくだからお互い浴衣着て行かない?」

「ふぇ?」

蓮に提案されたことで、想像していた美女の顔が突然自分に切り替わり、キョーコは驚いた。

「…浴衣、ですか?」

「うん。そう。」

「でも敦賀さんが浴衣なんて着ていたら、注目の的ですよ。絶対すぐにバレると思います。」

「そこはほら、メイクさんに頑張ってもらって、変装していくから大丈夫だよ。」

「…わかりました。」

蓮が大丈夫というのであれば大丈夫なのだろう。と納得してしまう。
何故ならカインヒールという役柄もあんなに堂々と街中を歩いても正体は蓮だと気づかれなかったのだから。
キョーコが着る浴衣も自分が決めるという蓮に全て任せることになり、その日はそのまま蓮に下宿先まで車で送ってもらった。

そうして当日を迎えたキョーコは白を基調とした可愛らしいピンク色の金魚の浴衣に身を包んでいた。
帯は赤と黄色のシンプルなもので、髪は金髪を結い上げて、外国人の設定らしい。
鏡の前でクルクルと周り、己の姿を確かめる。

「うわぁ。素敵…。」

完全に別人になりきれていて、これなら蓮の隣に立っても大丈夫かもしれないと少しだけ自信が持てた。
しかも、蓮がチョイスしてくれた浴衣と言うのだから、胸の奥が熱くなる。

そして、スタンバイが済んだという蓮と顔を合わせ、キョーコは目を見開いた。

「え…。コ、コーン?」

蓮の変装は金髪碧目になっており、髪の長さこそ違うもののキョーコの知り合いである妖精のコーンに瓜二つになっていた。
当然本人なのだから、似ていて当たり前なのだが、そうとは知らないキョーコは思わず混乱してしまう。

「よろしくね。京子ちゃん。」

「あ、よ、よろしくお願いします!敦賀…さん?」

「うん。そうだよ。どう?」

「ど、どう…と言われましても…。」

キョーコはカァーッと真っ赤になった。
そもそもコーンが蓮に似ていることはコーンが蓮の容姿を借りたから当然なのだが、ここまで同じだと、グアムでコーンとキスをした時のことや、わがままをたくさん言ったことなどを思い出してしまい、まともに蓮の顔が見ることができない。
キスをした相手はコーンであって、断じて蓮ではないのだが、ここまで似ていると勘違いをしてしまいそうになる。
『俺がキョーコちゃんを愛してるから。』
過去に真顔でコーンに言われた言葉が思い出されて、バフンとキョーコの顔が真っ赤になった。
それにプラスして浴衣姿が恐ろしく似合うのだ。
しかもその浴衣は紺を基調とした白の金魚が描かれていて、キョーコと色違いだということは一目でわかった。
帯は白と黄色で、俳優だけでなくトップモデルもこなしているだけある着こなしに、気を抜いたら見惚れてしまいそうな自分に気付いて、慌てて気を引き締めた。

「と、とてもお似合いです。」

「では今回の、潜入にあたりお二人の設定を教えていただけますか?」

スタッフから質問が出たことで、キョーコはこれが収録中であることを思い出して、ハッとしてうろたえた。
その間に蓮がにこやかに質問に答える。

「観光で日本の花火大会を観に来た外国人カップルです。」

「わかりました。では今回の目的は?まずキョーコさんから。」

「あ、はい!カキ氷を食べながら花火が見たいです。」

「敦賀さんは?」

「射的をして景品ゲットしたいです。」

ここは予め決めていた通りに話が進んでホッと息を吐き出す。

「なるほど。名前はそのまま呼び合いますか?」

「どうしようか?」

「へ?そ、そう…ですね。どうしましょう。」

そこまで決めてなかったね。と頭を捻る。

「そう言えば、さっき俺を見て、コーンって言ってたよね?」

「は、はい。すみません。あまりに知り合いに似ていたので…つい…。」

「じゃあ、俺のことはコーンって呼んで。」

「ふぇ?!こ、コーン?!」

蓮に呼び方を指定され、キョーコは目を見開いた。たしかに今の容姿の蓮にはコーンと呼ぶ方がしっくりくるが、なんだかすごく緊張してしまう。

「京子ちゃんは、呼ばれたい名前ある?」

「え、あ…そ、そうですね。呼ばれたい名前…」

テレビのためか、いつも呼ばれてる最上さんではなく、京子ちゃんという響きに思わず心臓が跳ねた。
蓮に問われた内容で、うーんと思い浮かべたが、コーンの相手なら…と考えているうちに妖精が頭の中を支配し始めた。そしてうっかりメルヘンの住人と化したキョーコは先ほど鏡で見た己の容姿を思い浮かべながら夢見心地で答える。

「名前は、プリンセスシンディーとか、マーメイドプリンセスもしくは…」

「そのまま京子ちゃんで行きましょう!」

変な方向に話が転がる前にと、早々にスタッフの一人に決定され、キョーコの隣に立っていた蓮はくっくっと笑いを堪えるのに必死になった。

「笑うなんて酷いです。」

プクッと膨れたキョーコを見て、笑いを堪えながら蓮はごめんごめんと言い、キョーコの頭をポンポンと叩いた。
そんな無意識に甘い空気を作り出す二人を見て、もしや付き合っているのでは?というスタッフの疑問の声が上がったが、そこはマネージャーの社がしっかりと否定した。

混雑が予想されるため、カメラマンと逸れた時のために、カメラとマイクを浴衣に隠れる場所に各々セットされ、指示を受けるためのイヤホンも耳に付けてから、収録が始まった。

「じゃあ行こうか。カップルらしく逸れないように手を繋ごう。」

「は、はい。」

蓮に手を差し出されて、キョーコは緊張しながら蓮の手に己の手を重ねた。

「違うよ。カップルらしくだから、こうだろう?」

蓮にしっかりとカップル繋ぎにぴったりと握り直されて、キョーコは沸騰湯沸かし機のように真っ赤になった。

「じゃあ、行ってきます。」

「い、行ってきます。」

カメラに向かって、挨拶をして浮き足立った蓮とキョーコの二人は花火大会に足を踏み入れた。

「凄く…多いね。」

「そ、そうですね。」

満員電車のようなぎゅうぎゅうづめの中、しっかりと繋がれた蓮の大きな手を意識して顔がにやけそうになる。

「キョーコ、平気?」

「は、はい。なんとか。」

蓮に呼び捨てで名前を呼ばれてドキンと心臓が跳ねた。
実は、京子ちゃんで行こうと決定した後に、外国人カップルでちゃん付けで呼ぶのはおかしい。と言う話になり、キョーコと呼び捨てで呼ばれることを了承したのだ。
しかし、この蓮の声で名前を呼ばれる破壊力たるや、顔面崩壊の危機に違いない。
なんとか人混みに紛れ、顔を伏せることで、その表情を誤魔化すことができた。

「あ。屋台あったよ。とりあえず何か食べて腹ごしらえしようか。キョーコは何が食べたい?」

「あ、えっと…そうですね。あ。たこ焼き食べたいです。」

「箸巻きも美味しそうだよ。」

たこ焼き、箸巻きをそれぞれ一つずつ買って、少し人混みを離れた木陰に空いているスペースを見つけて腰を下ろす。

「これは歩くのも一苦労だね。」

「そうですね。」

二人並んでそれぞれ口に運ぶ。

「…美味しい?」

「はい。はふ。おいひいです。はふはふ。」

たこ焼きを美味しそうに頬張るキョーコを見て、蓮はくすりと笑った。

そしてキョーコにとって一つ目の試練をしれっと投下した。

「一つちょうだい。」

「あ、はい。もちろんで…」

言いかけたキョーコはギシリと固まった。
何と蓮が口を開けて待っているのだ。

「…え?あ、あの…?」

「…食べさせてくれないの?あーん。」

「な?!」

真っ赤になったキョーコがワタワタしていると、イヤホンから蓮を後押しする指示が飛んできた。
仕方なく、キョーコもドキドキしながら己の使っていた爪楊枝で蓮の口にたこ焼きを一つ運ぶ。
カプッと食べた蓮の唇が爪楊枝を掴むキョーコの指にあたり、キョーコの心臓が面白いほど跳ね上がった。

「…はふ。ん。美味し…」

キョーコはドッドッドッドッと速くなった心臓を悟られまいと、良かったです。と微笑んでみせた。この辺は少しだけ、旅館で培った仲居の笑みになってしまった気がするが、醜態を曝け出すよりはマシだろう。
思わず蓮の触れた指先にドクドクと熱が集まる。

「お礼に、はい。」

そして立て続けに試練を投下された。
キョーコの目の前に差し出されたのは蓮の食べかけの箸巻き。

「え、いえ…あの…」

しかし、カメラ的にはその絵も欲しいのか、イヤホンから聞こえてくる指示は一口かじってというものだったため、キョーコは指示に従うしかなかった。
ゴキュッと唾液を飲み込み、覚悟を決めて、おずおずと口を開ける。

「で、では、お言葉に甘えて…い、頂きます。」

カプッと控えめに齧ったキョーコに、もう一口どうぞと蓮に勧められ、キョーコはそれに従った。

「美味しい?」

「は、はい。とてもおいしいです。ご馳走様です。」

「どういたしまして。」

おいしいと答えたものの、キョーコにとっては味など分からないほど心臓に悪い時間だった。
なんとか食べ終えた二人はキョーコが持ってきていたウェットティッシュで口と手を拭いて、スタッフに預けていた水筒のお茶を飲み、少しだけ休憩した。

今の所、一般人の反応としては蓮の格好良さに見惚れて、ジロジロと見られることはあるものの、隣に女がいるのを見て悔しがる女性たちばかりのため、しっかり外国人カップルと思われてるのか、話しかけられる気配はない。
基本的に日本語で会話をしている二人だが、人混みの中や近くに人がいるときは、英語で会話したり、片言で日本語を話したりとすっかり外国人に成りすましていた。
二人の英語スキルに舌を巻くスタッフ達。
これは二人の好感度アップになること間違いなしだろう。

少し休んだ二人は花火が始まる前に蓮の目的を達成するため射的の出店を探した。
射的を見つける前に、金魚掬いを見つけた蓮とキョーコは、金魚掬いでどちらが多く掬えるか競い合った。
※『』内は英語です。

『あれ?もう穴が空いちゃったよ。』

『コーンってばいきなり、水の中に突っ込むから。見てて。こうするの。』

そう言って、キョーコがスッと一匹を鮮やかに掬い上げた。
更に二匹目を掬い上げて、蓮は目を丸くした。

『凄い!キョーコ、上手だね。』

キョーコと呼ばれたことでうっかり手元が狂い、三匹目を掬い上げてる途中で穴があいたが、何とか強引に掬い上げることに成功した。
それにも蓮は心底驚いた。

『穴が空いたのに掬い上げるなんて…もはやプロだね!』

一匹も救えなかったおまけとして蓮は一匹貰ったが、それもキョーコの金魚と一緒に入れてもらうことにした。
撮影も忘れてるかのように純粋にお祭りを楽しむ二人はそのまま気付かれることなく、出店を覗きながら、蓮の目的の射的を見つけた。

『何が欲しい?』

『え?あ、じゃあ…あの右上のストラップ。』

『わかった。』

蓮は一発目は外したが、二発目で当てると、その後次々と景品を落としていった。

『はい。これ。』

『あ、ありがとうございます。』

キョーコが欲しがっていたストラップを渡した蓮は、その色違いのストラップもちゃっかりゲットしていた。

『お揃いだね。』

『大事にしますね。』

少し子供っぽくはしゃぐ蓮は、しっかりと役作りをしているようだと考えたキョーコもそれに負けないため、カップルの女性らしく役作りをしていく。
今日だけは、蓮の恋人気分を味わってもいいのかもしれないと思い始めていた。
いつもは封じ込めている恋心を今日は少しだけ解放する。

あっという間に楽しい時間は過ぎ、時計を見たらあと10分で花火が始まる時間になっていた。
花火が始まる前にカキ氷を買いにいこうと、二人で手をつなぎ、急ぎ足で歩き始めた時、キョーコが突然、前につんのめった。
転びそうになったキョーコに気付いて、慌てて蓮が支えてくれた。

「きゃ!」

「おっと。大丈夫?」

「鼻緒が…。」

「え?あぁ。切れちゃったんだね。」

キョーコの下駄の鼻緒が綺麗に片方切れてしまっていた。

どうしようと悩むキョーコの視界が突然変わった。

「きゃあ!ちょ、ちょっと、コーン。」

突然のお姫様抱っこが恥ずかしくて慌てて降ろしてもらおうとキョーコが足掻くが、蓮はそれを制した。

「じっとして。花火を見るところまでこのまま運ぶから。」

「す、すみません。お手数おかけします。」

予めスタッフが場所取りをしているところまで蓮はキョーコを運んだ。
金魚は運ぶのに邪魔になるため、そのまま社が預かることになった。

そしてその場所にキョーコを残すと、蓮は直ぐに戻るよ。と言ってカキ氷を買いに行ってしまった。
あと数分で花火が始まる。

自分のせいで先輩である蓮をカキ氷を買いにパシリのように走らせてしまったとキョーコは申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。

そう一人で落ち込んでいると、キョーコの隣に前触れなくドカッと人が座った。

もう蓮が戻ったのかと思ったキョーコが顔を上げると、そこにはワカメ頭の男の人が座っていて、更に反対側にもう一人別の男が座って来た。

「へ?」

あれ?どこかで見た顔だわ。と、思わずキョトンとして左右の男たちを見つめていると、目の前にも男が二人立ち、あっという間に囲まれてしまったことがわかった。
スタッフ…にしては、随分チャラチャラとした印象だ。
頭の中を整理し、記憶を呼び覚まし、そしてキョーコはハッとして蒼ざめた。

ーーーう、嘘でしょ〜!!!!なんでまたこんな敦賀さんの地雷になりそうな人たちが!こんな時に!!

今目の前にいるのは、いつぞやのセツカをナンパしてカイン兄さんにコテンパンに叩きのめされた男たちだったのだ。

「やっほー。君さ、可愛いね。」

「俺たちと一緒に花火見て、その後楽しいところに遊びに行かない?」

「一人で花火見に来たの?寂しくない?」

「俺たち、可愛い子だーいすきなんだ。君凄くタイプ〜。可愛がってあげるよー!」

『ごめんなさい。私日本語わからないので、他当たってください。』

「ひゅー。本場の英語かっちょいい!」

「惚れちゃうな〜。俺、外国人の女性好きなんだよ〜。」

馴れ馴れしい態度は相変わらずのようで、勝手に肩を組まれてギョッとする。

思いもよらぬ展開に早く逃げなければと思うのに、鼻緒が切れていることを思い出す。
しかし、そんなことを言っている場合ではないとキョーコの危険察知センサーはブイブイと激しく音を立てていた。
カインの暴走リターンズの予告編が始まった気分だ。

『わ、私ちょっとトイレに…きゃ!!』

立ち上がりかけたところで、腕を引かれ、キョーコは簡単にその場に仰向けに転がされてしまった。

ーーーしまった!!やだ、動けないっ!!

『ちょっと、何するのよ?!』

ーーー何をやってるのよスタッフさーーーーん!!ぼーっと見てないで助けてよー!!

と心の中で盛大に助けを呼ぶ。
その間に以前、ケーくんと仲間に呼ばれていたワカメ頭の男がキョーコの両手を地面に押さえつけ、のっしとキョーコの上に覆いかぶさって来た。

「どこ行くの?花火始まったばっかじゃーん。一緒に見ようよ。」

『離しなさいよ!ちょっと…』

いつの間にか始まっていた花火が、キョーコの抵抗する声をかき消してしまう。
逃れようと暴れていると、帯に手がかけられた。

「やだ!!やめて!」

これはヤバイと思った時に、思わず日本語で悲鳴をあげ、男を突き飛ばそうと突き出した手が宙を切った。ワカメ頭の人が突然後ろに引っ張られるように離れていく。
何が起きているのか若干わからず、ふへ?と思ってる間に、ドサっと後ろに投げ捨てられたワカメ頭の人が地面に尻餅をついて呻いた。

「うっ。ってえ、何すんだよ!」

ワカメ頭の人とキョーコの間に割り込むように立ち、ワカメ頭の人を見下ろして立っていたのは紛れもなく蓮だった。

「君たちは、人の女にちょっかいかけることしかできないのか。」

「何だと〜?!」

「悪いけど、この子は君達のような低俗な男達が気安く触っていい子じゃない。他当たってくれるかな?」

「まぁまぁお兄さん。ここは大人しく俺たちに彼女を貸してくれた方がお兄さんの身のためだと思いまーす。」

「そーそー。俺たちの彼女の貸し出し率これまで100%なんだから。怪我しないうちに引き下がるべきだと思いまーす…っておい!」

男達の話す内容を無視して、蓮はキョーコの手を引いた。

「大丈夫?彼に何かされた?」

「いいえ。何もされてません。大丈夫です。」

蓮の問いかけに、キョーコは助け起こされながら、何もされてないことを強調した。
カインの時は妹を溺愛している設定だったためあんなことになったが、今回もあの時ほどと言わないまでも、お姫様抱っこでここへ運ぶほどの溺愛彼氏を演じているのだ。
もしかしたら、前回のようになるのではないかと心の中ではハラハラしていた。
蓮の手がそっとキョーコの頰を包み込み、そっと撫でた。

「震えてる。顔が青い。」

「こ、これは突然のことにビックリしたからで…。」

「ちょっとちょっと〜!お兄さーん聞いてるのかなー?」

「俺たちのことは無視ですかー?」

「はい!このおにーさん調子乗ってるから、ぶちのめし確定ー。」

「彼女さんの前で泣いても俺たち知りませーん。」

「ちょっとこれ持っててくれる?」

そう蓮に言われて、カキ氷を蓮から受け取ったキョーコだが、蓮の背後に仄暗いブラックオーラが立ち上っているのに気付いて、咄嗟に止めなければと思った。

「あの、つる…コーン!」

「わかってる。」

みなまで言わずとも、言いたいことは伝わったのか、蓮はキョーコに微笑んでみせ、頭をポンポンと優しく叩いて立ち上がり、男たちと向かい合った。
前回のような狂気に満ちた目ではないことに気づいたキョーコはホッとしつつも、心配そうに蓮の背中を見る。

「懲りない奴らだな。またこんなところでまで会うとはね。運がないね。」

ボソッと呟いた蓮の言葉は男達には聞こえなかったらしい。

「あーあー。彼女の前でカッコつけちゃって。」

「何分持つかな〜?」

「はは。俺たち相手に勝てると思ってんの?めでたいよね。」

「やっちゃおうぜ〜。」

男達は一斉に襲いかかろうとしたが、蓮はそれを全てかわして、キョーコから男達を引き離すため、絶妙な距離感を取りつつ離れた。
男達も蓮の手のひらで転がされていることに気づかないまま追いかける。
余裕の表情で軽い身のこなしで寸前のところで躱していく。

その蓮が男たちを引き寄せている間に近寄って来たスタッフは女性で、キョーコを介抱しながら一緒に蓮の様子をハラハラ見守っていた。

「な?コイツ…」

「まさかあの時の…?」

「いや、んなわけねぇじゃん。第一髪の色違うだろ?」

男達も華麗に躱されて、動揺を見せていた。
躱し方が、以前完膚無きまでに叩きのめされた苦い過去を呼び起こし、焦りとデジャヴ感を感じているようだ。

ブンブンと振り回す武器も当たらなければ意味を成さない。
やがて、疲れて手元が狂い始めた男の武器が仲間の顔に命中した。

「うっ。てめ…」

「あ、悪い。」

仲間同士で、武器を当ててしまったことで怯んだ隙をついて、蓮は先程武器を仲間に当てた男の膝裏を蹴った。
男は、膝カックンされたようにその場に膝をつき、プルプルと怒りを膨らませた。
コケにされたと、益々怒り狂って攻めてくる男達を躱して躱して、向かってくる男たちの勢いを利用して、向けられた武器を掴み、仲間同士をぶつからせる。
蓮がほとんど手を加えないまま、地面に尻をついた男達を蓮はギロリと冷たいカインの時の目で見下ろした。
カインの恐怖を一度直に味わっていた男達は、蓮の殺気立った目を見て、既視感を覚えた。
一気に全身の毛穴がブワッと開くのを感じて、ヒィ〜と声をあげ、逃げ腰になった。

「おおおおおお前は!!あの時の…」

「ち、近寄るなぁー!!」

あの時の恐怖がフラッシュバックしてしまったツイてない男達は、その場から足を縺れさせ逃げるように去って言った。

キョーコはそれを唖然と見送る。

蓮が蹴散らしたのを見て、安堵したのか側についていてくれた女性スタッフは、キョーコに助けにはいれなくてゴメンねと泣きながら謝ってくれた。
蓮について行っていたスタッフも、ヒョロッとしたいかにもひ弱な男と、中年の膨よかな男だけで、蓮が男たちに尻餅を突かせてから追いついてゼーゼー息を切らしていたため、助けに入るどころではなかったようだ。

「もう大丈夫ですから。」

泣きじゃくるスタッフをヨシヨシと宥めて、キョーコは蓮がマジ怒りを解放しなくて良かったと安堵の息を吐いていた。

心配そうに聞いてくるスタッフに大丈夫だと答えたが、撮影はここで打ち切りだと知らされた。
ゆっくり花火を見る時間が作れなかったことは残念だけど、仕方がない。
こんな騒ぎになってしまっては撮影どころではないのであろう。
帰る支度をしようと腰を浮かしかけたところで、撮影はここで終わりにするが、折角だから花火を見て帰ろうという話になり、スタッフ一同賛成した。
そして気を利かせた社の計らいで、キョーコは蓮と二人きりで残りの花火をこのまま見られることになったらしい。

マイクとカメラとイヤホンを回収され、蓮に目をやると、蓮も撮影中止について指示を受けているところのようだった。
だけど、二人きりで花火を見るなんてうっかりキョーコは喜んでしまったが、蓮はそうではないかもしれない。
なんで俺が、君と二人きりで花火を見ないといけないんだ?一人で見ればいいだろう。なんて言われてしまったら…とキョーコが一人ハラハラしていると、スタッフに挨拶をしながら、蓮がこちらにやって来た。
少し疲れた顔をしているのが、キョーコの不安を煽る。
何も言わず、キョーコの隣に腰を下ろして花火を見上げる蓮にキョーコはおずおずと口を開いた。

「怪我は、してないですか?」

話しかけると、蓮は漸く安心させるように笑った。

「大丈夫だよ。最上さんは?」

「大丈夫です。」

「良かった。本当に無事で、良かった。」

心の底から安堵したような笑顔を見て、キョーコの胸がトクンと跳ねる。
そして、蓮の身体から力が抜けていくようにそのまま倒れ始めた。

「膝、借りてもいい?」

「ど、どうぞ。」

蓮に断りを入れられて、キョーコは己の太ももを蓮に差し出した。
カメラのある前で一般人に危害を加えないようにとかなり気を遣って立ち回ったに違いない。
疲れさせてしまったと思いながらも、蓮に労いを込めて感謝の言葉を口にする。

「あの、すみませんでした。そして、ありがとうございました。」

「ん?いや、俺も君を一人にしてごめんね。」

「そんな!敦賀さんは悪くないです。私が、迷惑ばかりかけてしまって…。」

「迷惑なんて思ってないよ。」

「でも…」

キョーコが言いかけたところで、蓮は膝の上からキョーコを見上げて、フッと笑った。

「だいぶ溶けちゃったね。」

「え?」

「カキ氷…。」

「あ、はい。そうですね。でも、まだ冷たくて…美味しいです。」

ほとんど氷水になってしまったカキ氷を残念そうに見た蓮だが、キョーコは指摘されて漸くカキ氷の存在を思い出し、慌てて口に含んだ。
冷たい氷が口の中に広がって心地いい。

「俺も一口もらっていい?」

「はい。どうぞ。」

起き上がって食べるのかと思いきや、横になったまま、アーンと口を大きく開け、甘えてくる蓮にキョーコは赤面してしまう。

「え?え?あの…」

キョーコが戸惑っていると、蓮が早くと促した。
意を決して、ほぼ水に近いカキ氷を掬って零さないように慎重に口に運んだ。

申し訳程度しかないそれは、案の定物足りなかったようで蓮が微妙な顔をしたので、キョーコはクスクスと笑って、スプーンをカキ氷に突き刺して、ストローの先を蓮の口元に持って行った。
キョーコの太ももから少し頭を浮かせて、そのストローでチューっと啜った蓮は、一口飲んで喉を潤すと満足そうにまたキョーコの太ももに頭を乗せた。

「美味しかったですか?」

「うん。冷たくて美味しかった。」

「良かった。」

そう言って、食べるのを再開しようとしたキョーコだが、蓮と間接キッスになることに気付いてピタッと動きが止まった。
蓮がそんなキョーコを面白そうにじっと見つめる。

「食べないの?」

「え…えっと…あの…た、食べます!」

ドキドキしながら、蓮の使ったストローのスプーンで掬って食べる。

「美味しい?」

「は、はひ。」

「良かった。」

優しい笑顔に再びトクンと心臓が跳ねる。
もう少し、撮影は終わってしまったけれど、花火が終わるまでは恋人気分でいてもいいかな。なんて願望が頭を擡げる。
なんだかんだと色々あったが、こうして蓮と花火を見ることが出来て、キョーコは胸の奥が擽られる感じがした。

「綺麗ですね。」

「ん?何か言った?」

「いえ。」

クライマックスなのか次々と上がる花火の音にかき消され、お互いの声が聞き取り辛くなっていた。

もう直ぐ終わる。そう思うと、キョーコの中で寂しさがこみ上げた。
儚くも美しい夢の時間。
蓮に恋心を解放したこの時間が間もなく終わろうとしている。

「敦賀さんが好きです。」

「え…?」

そう考えた時、自分でも信じられない言葉が思わず口をついた。
勿論、はっきりと口にしたわけではない。だけど確かに口にしていた。

驚いたように聞き返され、赤面したキョーコは慌てて取り繕う。

「いえ。は、花火です!綺麗ですよね!」

「今、何か言ったよね?なんて言ったの?」

キョーコはなんとか誤魔化そうと試みたが、蓮は身を起こして、キョーコに問いかけた。

「綺麗ですね!って言いました。」

「その前。いや、後か?」

「え?」

「綺麗ですね!って二回言ったよね?その間に言った言葉。なんて言ったの?」

「な?!し、知りません。」

ーーー嘘!!聞こえてたの?!そうよ…聞こえてないはずないわよ!だって敦賀さんったら恐ろしいくらいの地獄耳の持ち主なんだもの!

「教えて。」

ーーーいーやーー!!聞こえてたくせに、いじめっ子ー!!

「教えません!!」

「なんで?」

「な、なんでって…お、思わず言ってしまっただけで、深い意味はないというか…。」

「うん。だから何て言ったの?」

「で、ですから、深い意味はないんです。ただ…」

「うん。」

その時、最後の大玉がヒューッと音を立てて空高く上がった。

「好きです…って…」

ドーンという大きな音が響く直前の、一瞬の静寂にキョーコの本心が溢れた。
それを聞いた蓮の反応が怖くて、慌てて弁解する。

「あ、で、でもそれはですね、花火が…」

そして、パアッと一瞬にして明るく彩る一際大きい花火が夜空を覆った時、蓮の影とキョーコの影が一つになっていた。
キラキラとした花火が、二人の影を祝福するように光り輝く。
その最後の大玉の花火がパラパラと光を失っていく中、ゆっくりと離れていく蓮の唇。
しっかりと重なったその唇の感触がキョーコの時を止める。
ドーンと遅れて鳴る花火の音がビリビリと身体ごとキョーコの心をかき乱すように揺らした。

キョーコはそれでも突然の出来事に思考が追いつかず、目をまん丸に見開いて固まっていた。

固まったキョーコは蓮に手を取られ、その手は蓮の心臓に導かれた。
キョーコの耳元に蓮が英語で囁く。

『君を愛してる。』

蓮の少し速い心臓の音がキョーコの手にドクドクと直に響いてくる。

「え?」

「最上さんを愛してる。」

そう日本語で言い直されてキョーコの手を心臓に押し当てたそのまま、もう一度蓮の顔が近付いて来た。
逃げることも出来なくて、ただただ激しく響く心臓の音を耳元に感じながらキョーコは己の唇に再び蓮の唇が重なるのを呆然と固まったまま受け止めた。

花火の音はとっくに止んだはずなのに、蓮の心臓の音や己の心臓の音が打ち上げ花火のように激しくキョーコの脳内を刺激した。

反応できずにいるキョーコに構わず、何度も重ねられるキスは、色や形を変えて次々と上がる花火のようだとキョーコは少し離れかけた意識の中で思う。
やがて、そのキスに酔いしれるように本能が求めるまま蓮のキスに答え始める。
そして気付けばキョーコは蓮のあぐらの上で、横抱きにされていた。

「敦賀さん…あの…」

そっとキョーコの目を覗き込む目や、頰を包み込む蓮の手のひらからキョーコをいかに愛しく思っているかが伝わってきて、キョーコの胸の奥がギューっと甘く締め付けられた。

「ん?何?」

優しい声色、優しい瞳に吸い込まれそうになりながら、不安な心を明かす。

「私なんかが敦賀さんを好きでいて、良いんでしょうか?」

「なんかって?そんなこと言ったら、最上さんみたいに純粋で穢れのない子を俺なんかが好きになっても良いのか。って思うけど?」

「な?!敦賀さんはなんかなんかじゃありません!」

「君も、なんかじゃないよ。」

蓮の目がキョーコ心を甘く絡め取る。

「俺は最上さんが好きだし、愛してるよ。実は結構前から。」

「嘘です!そんなはず…だって敦賀さんが好きなのは、4歳年下の高校生で、事務所の後輩のはずで…」

「それどこ情報?間違ってはいないけど、君も4歳年下の高校生で、しかも、事務所の後輩だよね?」

それを聞いて、キョーコはハッとした。言われてみれば確かに!!とハッキリと顔に書いてある。

「その顔は、全く自分は対象外だと思ってたって顔だね。」

「だ、だって敦賀さんが、私なんかを好きになるはず…」

「ほら。また私なんかって言う。俺が好きなのは最上さん。他の誰でもないよ。」

「で、でもあの…じゃあ、仁子ちゃんは…?」

「え?誰?」

「森住仁子さんです!」

「…?森住…?あぁ、森住プロデューサーの…その子がどうかしたの?もしかして、何か変なことでもされた?」

「ば、バレンタインのお返しに、敦賀さんからピンキーリング貰ったって、聞いて…。」

「…ピンキーリング?」

記憶にそんなに残っていないのか、心の底を探るような怪訝な顔をする蓮に、キョーコは思っていた反応と違うと少し戸惑う。

「…覚えて、ないんですか?」

少し間をあけて、蓮は漸く思い出したように、スッキリした顔をした。

「…あぁ。あれか…。うん。あげたな。」

ピンキーリングなんてものをあげておいて、なぜそんなに思い出すのに時間かかるのかを疑問に思いつつも、思い切って聞きたくないことを言葉にした。

「それは、敦賀さんにとって、彼女が特別だということですよね?」

言いながら、胸の奥がぎゅっと苦しくなった。
だが、蓮は慌ててそれを否定した。

「違うよ。確かにあげたけど、あれには理由があったんだ。バレンタインで結構高価なビンテージ物のお酒をもらった時に、お返しは指輪がいいです。って彼女からおねだりされて…。プロデューサーの目もある中、下手なものを渡せなくて、当たり障りのないピンキーリングにしたんだ。」

「え…じゃあ…好きな人って彼女じゃなかったんですか?」

キョーコのは思ってもなかった話に目を見開いた。
自分から指輪が欲しいと強請るなんて図々しいにも程がある。
いかにも蓮が自分に気があるから指輪を用意したと言わんばかりの自慢ぶりだった仁子を思い出して、何だそういうカラクリなの?と拍子抜けする。

「寧ろなんで君に彼女が好きだと思われてたの?そんな発言したことあったっけ?」

「いえ、彼女からピンキーリングのことを聞いて、敦賀さんの好きな方が4歳年下の子だってことを思い出したので…彼女なんだろうと…」

「俺が好きになったのは、後にも先にも最上さんだけだよ。ダークムーンで演技に行き詰まった時も、君を美月に重ねることで演技の幅が広がった。」

それを聞いて、キョーコの時が一瞬止まった。
某番組のマスコットキャラクター坊になっている時にスランプに陥っていた蓮から聞き出した恋愛事情。
頬を染めて語った恋の相手が、よもや自分だったなんて、想像だにしていなかった。

「え…嘘…!アレって…私のことだったんですかぁぁぁ!!」

恋を自覚してなかった蓮をふっかけて、おとしたまえよ!なんて偉そうに言ってしまった相手が自分だったなんてぇー!!と真っ赤になる。

「アレって?」

「い、いえ!こっちの話です。」

さすがに、事情がわかった上で蓮に今更バラすのは気が引けて、慌てて誤魔化した。

「それで、わかってくれた?俺が好きなのは誰なのか。」

コクコクコクコクと首を縦に振り答える。

「は、はい。えっと…でも私、これからどうしたら。」

「どうもしなくて良いよ。先輩後輩から恋人にはなるけど、表向きは先輩後輩のままで大丈夫だから。」

「こ、恋?!私がつつつつ敦賀さんの恋人だなんて…そんな…滅相も無い!!」

「なんで?…嫌なの?」

「い、嫌とかそう言うわけでは…」

「最上さんも俺のこと、好きって言ったよね?」

「は、はい!ですが…」

「じゃあ、黙って。」

そう言って、蓮は再びキョーコに唇を重ねた。
キョーコが真っ赤になって、プルプルと蓮の腕の中で震えるのが愛しくてたまらない。
蓮は愛おしそうに微笑んで、キョーコの手の甲に口付けた。

「もう少しこのまま一緒にいたいけど、続きは家で…ね?」

クスッと夜の帝王気味に微笑まれて、キョーコはギョッとする。

「え?え?」

ーーーまさか!まさか!!ここここここれは、あーんなことやこーんなことをしようとかいうお誘いなのでは!!??

「早く挨拶して着替えて帰ろう。」

「あぁあ!あの!私、私…その…こ、心の準備が…あの…。」

頭の中でぐるぐると縺れ合う姿を想像してしまい、キョーコはへっぴり腰になった。
それを見た蓮が、プッと吹き出したので、キョーコは少し子供扱いされてるとムッとした。

「うん。今以上のことはしないって誓うよ。でももう少し一緒にいたい。ダメかな…?」

仔犬のような目で見つめられ、キョーコの胸がキューンと熱くなった。
その目には逆らえないと心の中で白旗をあげる。

「ダメ…では、ありません。その、わ、私も…もう少し敦賀さんと一緒にいたいです。」

そんなキョーコの言葉に、蓮が嬉しそうに破顔して、手を差し出してきた。
鼻緒が切れているキョーコを再びお姫様抱っこした蓮は、人が疎らになった花火会場を宝物を運ぶように大切に運んだ。
ロケバスが見えるところまで近付くと、社が駆け寄ってきた。

「蓮、キョーコちゃん。良かった!あんまり遅いから迎えに…ん?」

蓮の引き締められなくなっただらしのない顔を見て、一瞬にして敏腕マネージャーのアンテナが蓮の幸せオーラを察知したようだ。

「蓮、顔。」

「え、あ…。」

何とか顔を引き締めようと己の頰を蓮が叩いてる間に、社はキョーコに靴を差し出した。

「キョーコちゃんは、取り敢えずこれ履いて。」

「あ、ありがとうございます。」

可愛らしく花のように照れて笑うキョーコを見て、社も嬉しくなったようだ。
こっそりと社に囁きかけられる。

「良かったね。」

「え?」

「蓮と、何かあったんでしょ?」

「へ?え、あの…えっと…」

カァーっと一瞬にして真っ赤になったキョーコを見て、社も若干赤面が移った。

「ま、まぁ。何はともあれ、これからもアイツのことよろしくね。」

「はい。」

「二人で何を仲よさそうに話してるんですか?」

ーーーえええええ!な、なんで?!なんでここで似非紳士スマイルー?!

ゴゴゴゴゴと笑顔で凄まれて、キョーコは思わず後ずさった。
しかし、原因のわかってる社は、やれやれと首を振る。

「お前な、俺にまで嫉妬するなよ。ただお前とのこと聞いてただけだろ。」

ーーーえ?嫉妬?!あの原因不明の怒りの原因は嫉妬だったの?!

驚愕の事実に開いた口が塞がらない。
だが、嫉妬されるほど蓮から想われていることを知って、キョーコの中にどうしようもないほどの喜びもジワジワと湧きあがり、恋する乙女全開の顔に自分でも気づかないうちになっていた。

「あと、預かってた金魚と景品は後で着替え終わったら渡すから。」

「ありがとうございます。」

「あ、ねぇキョーコちゃーーー。」

「……………」

蓮と普通に会話していた社が、キョーコを振り返って固まった。
そして、顔面崩壊を立て直さないでいるキョーコに蓮は無言で近づき、ギュムッと顔を隠すように力一杯抱きしめた。

ーーーぐえ!く、苦しいです!敦賀さーん!!

ギブギブとそんなやり取りをして、ロケバスで着替えをしたテレビ局に戻る。
元どおり着替えようとしたところで、キョーコはカツラを外して浴衣はそのまま来て帰っていいと言われ、困惑した。
そして浴衣のまま社の運転する車で蓮の家へ向かう中、この浴衣が蓮に買い取られていたことを知った。

「もう少しお祭り気分でいよう。」

後部座席で、しっかりと蓮に手を繋がれ、肩を寄せ合って言われて仕舞えば、抗いようがない。

「髪、黒く戻したんですね。」

「金髪の方が良かった?」

すこし寂しそうに言うと、蓮にそう問いかけられ、うーんとすこし考える。

「甲乙つけ難いですね。どっちも素敵であることに変わりはありません。でも金髪だとコーンが近くにいてくれてるみたいで、なんだか…凄く、緊張だけじゃなくて安心感があるというか…あ、でもコーンと敦賀さんの二人に見つめられてるようでダブルで緊張もしてしまうのですが…」

「俺の姿だと緊張するの?」

「だってあの、ド、ドキドキがですね。止まらないというか…。」

「そう…。」

短い一言だけ発した蓮は、何故か無表情で手を離して腕組みをした。
離された手が少し寂しく感じてしまい、いけないことを言ってしまっただろうかと心配になる。
そのやり取りをバックミラーでしっかり見ていたらしい社が蓮に釘をさしていた。

「ハメ外しすぎるなよ。わかってるとは思うけど、キョーコちゃんは、高校生なんだからな。そのへんは慎重にしろよ。」

「…言われなくても、わかってますよ。」

そうして蓮のマンションの駐車場に降ろされて、キョーコは深々と頭を下げた。キョーコの手には今日のお祭りで掬った金魚が袋に入ってぶら下がっている。
そして蓮は大きな金魚鉢が入った箱を抱えていた。

「社さん、送ってくださってありがとうございます。よろずやさんにも寄って下さってありがとうございました。おやすみなさい。」

「いいや。いいんだよ。それよりキョーコちゃん、こいつが暴走し出したら怒っていいからね。何か変なことを無理強いしてきて困ったらいつでも助けに呼んでね。」

「は、はい!わかりました!」

「社さん。大丈夫ですよ。変なことなんてしませんから。」

蓮の若干拗ねた様子を見て、社はハハハと嬉しそうに笑った。

「あぁ。信じてるよ。じゃあ、また明日。」

そう言って、社は帰って言った。
それを見送り、蓮が金魚鉢を抱えていない方の手をキョーコにさし出す。

「行こうか。」

「はい!」

擽ったい気持ちで蓮の手を取り、カップル繋ぎをして並んで歩く。

そして、エレベーターの扉が閉まった瞬間に、唇を蓮に奪われ、赤面するキョーコを金魚たちだけは見ていたようだ。

その日にしたキスの数は、もしかしたら打ちあがっていた花火に匹敵するかもしれない。なんて密かにキョーコは思い出して、赤面してしまう日がその後数ヶ月も続くことをこの時のキョーコはまだ知らなかった。


END

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*****


モデルとなったのは、リアルで放送されている某番組で御座います。
あの番組、結構好きで観ちゃうんですよねー!

なんだかまとまりのないお話になった気がします。
書きたいことも60%ぐらいしか表現できなかった気が…。
お見苦しい文で失礼しましたー!

ちなみに、読み返したのはワカメ頭の人たちって何人組だっけ?ってところを確認するためでした。
※正解:4人組

確認したいだけだったのに、読み出したら止まらなくなっちゃう不思議。
スキビマジックですね!
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Re: 素敵です!

とも◯ち様

楽しんでいただけて嬉しいです( *´艸`)
家だったら奇声をあげてましたか!そんなに喜んでいただけるとは♪

スキビは、間を開けて読み返すとまた新たな発見もあったりして楽しいですよね!
是非是非読み返し楽しみましょ〜♪
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初めての方は、まずはブログ内の、「はじめまして。」からご覧ください(*^^*)

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