My HOME-22-

2015年10月20日14:06  My HOME/スキビ!《完結》

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My HOME-22-


「あれ?キョーコちゃんは?」

その場に根が生えたように固まっていた蓮は、社の言葉にハッとして顔を上げた。

「あ、あぁ…次の予定があると言って行っちゃいました。」

「そっかぁ。残念だな。ま、でも俺たちもそろそろ行かないといけないから行くか!」

「そう…ですね。」

蓮は同意をしつつ、キョーコと光が向かった先に、視線を投げ、グッと拳を握りしめ、目を瞑ると、気持ちを切り替えて俳優敦賀蓮のスイッチを入れた。

歩き始めて社が今の電話の内容でスケジュール変更があったことを蓮に知らせる。

「そうそう、今日の最後のスケジュール…あれ、今先方から連絡があって日程変更になったから。」

「え?そうなんですか?」

「あぁ。お前最近無理してるだろ?今日はちゃんと休めよな。順調に行けば18時には帰れるはずだし。」

「ええ。そうですね。」

寝不足なのも社はちゃんと気付いているのだろう。

しかし、蓮としては暇を持て余すとどうしても脳が勝手に妄想劇を繰り広げてしまう為、仕事をしてた方が気が紛れていいんだけどな。という思いが湧かないでもない。
でも担当俳優の体調を管理し、コントロールするのもマネージャーの勤めだ。
何が蓮にとって最善なのかをいつも考えてるマネージャーは、きっと“なら新しい仕事をねじ込んで下さいよ。”とお願いしても、頑として首を縦には振らないだろう。




仕事を終えて帰宅すると、こんなに早く帰宅できることは滅多にないため手持ち無沙汰になった。

「久しぶりに飲むか…。」

冷蔵庫を開け、アルコールを取り出す。
ミネラルウォーターと氷も一緒に用意してリビングに戻った。
アルコールを口にしながらチラリと時計に目を向ける。

まだキョーコが帰宅するには早い時間だ。

グラスを口に運びながら、昼間の出来事を思い出す。

己でさえも素のキョーコから名前で呼ばれたことがないのに、あっさりと呼ばれている男の姿を思い出してジリジリと胸が妬ける。

蓮はギリっと奥歯を噛み締めて、その炎を鎮めるためにグラスを一気に煽った。

軽快な音を立てる氷にまた新たなアルコールを注ぎ入れる。
ミネラルウォーターは出しただけでまだ蓋も開けていない。

ここ数日のキョーコの姿が頭の中をグルグルと駆け巡り、またもやふしだらな妄想が脳内で勝手に繰り広げられる。
その中に登場する男が自分だけであればどんなに楽しかったか…。

昼間の一件から、キョーコの“ーーさん”が誰のことを指すのかわからず疑心暗鬼になってしまった蓮はありとあらゆる可能性を想像してしまい、その度に耐えられなくて溺れるように酒を煽って行った。

“光さん”とはどんな関係なのだろうか?
今も一緒にいたりするのだろうか?
自分よりも帰りの遅いキョーコに余計な心配を募らせる。
明らかにキョーコ自身の為ではなく、誰かを想ってキョーコは自分の胸を育てようとしていた。
その相手が誰なのか蓮には皆目見当もつかない。

寝不足でやられた頭では正常な思考回路が働かないため、キスされたという事実や日々の中で向けられていた好意さえも頭の中で、今頭を占めている問題とは別のカテゴリーに保存されているようだ。
グイッと一気に飲み干して、ダンッとテーブルに戻せば、また新たなアルコールをトクトクトクッと注ぎ入れて嫌な想像をしてしまう自分を戒めるかのように喉を焼く。
抱かれたい男No.1の余裕などキョーコ相手ではどこにも存在しないのだった。



ーーカランッ

蓮の手の中にあるグラスの氷が音を立てて崩れた。

酒瓶が2.3本カラになって転がっており、帰宅したキョーコはリビングのドアを開けた途端、部屋に立ち込めたアルコール臭に顔を顰め立ち止まった。

「なっ…何事…?!」

蓮はテーブルに突っ伏しており、寝ているようだった。

「敦賀さんっ!!」

慌ててキョーコが近寄り蓮の腕に手を置くと、蓮がゆっくりと顔を上げてぼんやりとした顔でキョーコを見つめた。

「敦賀さん、飲み過ぎですよ。」

「ん。…おかえり…。」

「た、ただいま帰りました!」

アルコールで上気した顔でふにゃっと微笑まれて、アルコールで焼けた喉からは掠れた声が出る。それがなんともいえず色っぽく感じてキョーコは真っ赤になって答える。
やはり「おかえり」と「ただいま」を言い合える関係は今でもくすぐったい。

そして蓮はただいまと答えたキョーコに嬉しそうにガバリと抱き付いた。

「きゃっ!!」

「んー…キョーコォ……」

「ふぇっ?!!!」

キョーコは蓮に急に耳元で熱っぽく呼び捨てにされたことでドキンッと心臓を高鳴らせた。

「キョーコちゃんは、えらいえらい。ちゃんと帰ってきまちたね~。」

そう言いながら、酔っ払った蓮はキョーコの頭を手と頬を使ってグリグリと撫で付ける。

「きゃあ!!つ、つるがさん!!」

キョーコが真っ赤になってうろたえても、蓮はお構い無しでのし掛かる。
支えきれなくなったキョーコはラグの上に押し倒された。

「んー。キョーコ…」

「も、もう…なんでこんなめちゃくちゃな飲み方…」

キョーコはドッドッドッと心臓を打ち鳴らしながら真っ赤な顔でぼやいていた。
蓮のこんなに酔っ払った姿を見るのは初めてだ。
旅館や居酒屋で働いていた経験から数々の酔っ払いを相手にしてきたが、こんな風に甘えて来られたのは初めてで、しかも相手が想いを密かに寄せている先輩俳優なのだから、たまったもんじゃない。
蓮の手がキョーコの頬を捉え、グイッと顔を強制的に蓮の方に向けられた。
蓮の閉じた瞼と突き出された唇から、キスされようとしているのを敏感に感じ取ったキョーコは慌てて蓮の顔を両手でぐぐぐっと押し返しながら蓮に言った。

「つ、敦賀さん!!と、とにかく、ベッドへ行きましょう?ね?」

「ん~。このまま…」

「だ、ダメですっ!!心臓が持ちませんっ!!」

ジタバタと暴れるキョーコが顔を逸らして蓮のキスを拒むので、蓮は代わりにキョーコの首筋にチュウ~っと吸い付いた。

ブワッとキョーコの体温が上がるが、蓮は何度も何度も同じ場所に痛いくらい吸い付いて独占欲の証を刻み込む。

「つつつつ敦賀さぁぁぁぁん!!や、やめっ!!やんっ!!」

抵抗するキョーコの耳を甘噛みすればキョーコから甘い声が漏れて蓮は気を良くした。

「ん~。やっぱりキョーコちゃんはすっごく可愛い…。」

神々スマイルで微笑んで蓮はキョーコを益々抱きしめる。
キョーコはいっぱいいっぱいで反応が出来ず、目を回していたが、ここで気を失ったら自然界の草食動物の如く喰われるっ!!と本能的に察していたのか、何とか気を保つことができた。

「つ、敦賀さん!!お気を確かにぃぃぃー!!」

今まで蓮からキョーコちゃんだなんて呼ばれたことがないキョーコは、目を回しつつも必死で蓮に正気に戻るよう訴えてていたのだが、ふとあることに気付いた。

ーーー“キョーコ…ちゃん?”

それは確か、蓮の代マネをした時に、倒れた蓮から熱に浮かされて出た女の子の名前だ。

ーーー私と同じ名前の…敦賀さんが好きな女の子…。

相変わらず首に吸い付いている蓮にだんだんと熱くなっていた体がすうっと冷えて行った。

ーーーそっか…同じ…名前だから?

だから、優しくするのだろうか?だから、いつも助けてくれるのだろうか?

キョーコがぼうっと考え出した時に、蓮は嬉しそうに顔を上げてキョーコの首にくっきりとついた痕を指で辿った。

「ちゃんとついたよ。俺の印。これでキョーコちゃんも俺のものだ。」

満足そうに呟いた蓮に、キョーコはポツリとつぶやいた。

「違います。」

「え…?」

「私は“貴方のキョーコちゃん”じゃありません!」

キョーコの言葉に、蓮の上機嫌が一気に急降下した。

「…ふぅーん。じゃあ誰のキョーコちゃんなの?」

キョーコの肩をグッと床に押さえつける。

「誰のものでもありません!!」

キョーコは負けじと言い返した。

「…昼間のアイツ?“光さんのキョーコちゃん”だから?」

「へ?!ち、違います!!光さんは関係ありません。」

「じゃあ誰?誰のキョーコちゃんなの?教えて…。」

蓮は懇願しながら、キョーコの胸に頭を預けてグリグリと顔を擦り付けた。

「ひゃあ!!ちょ、ちょっと!!敦賀さん!!いい加減にしてください!!」

「いやだ…キョーコちゃんは誰にも渡さないもん。」

「だから私は敦賀さんのキョーコちゃんじゃーー」

「俺のキョーコちゃんだもん!!」

「違いますっ!!そうじゃなくて貴方のキョーコちゃんは別にいるじゃないですか!!」

「…え?」

「そのキョーコちゃんと一緒にしないで下さい。私は私なんです!」

プイッと拗ねたようにそっぽを向いたキョーコを不思議そうに見つめた蓮が問いかける。

「?最上さん以外のキョーコちゃん?」

「そうです。」

「…えっと、俺にキョーコちゃんって名前の知り合いは一人しかいないんだけど、誰のことを言ってるの?」

「え?!そんなわけないじゃないですか!!私と知り合う前から知ってるキョーコさんのことです!」

「ん~?俺が好きなのは今も昔も今俺の腕の中にいるキョーコちゃんだけだよ。」

「もうっ!!いい加減なこと言わないで下さいよぉー!!」

「いい加減じゃないもん。キョーコちゃんのことは全部大好きだもん。」

「なっ?!」

蓮の言葉に絶句したキョーコは一度固まる。

「だからね、知りたいんだ。誰のためだったの?」

「誰のため…とは?」

「ここ、誰のために大きくしようとしてたの?」

蓮の手が妖しく動き、キョーコの胸を服の上から包み込んだ。

「へ?!」

キョーコは真っ赤になって固まる。

「昨日さ、揉んでたよね?一人で…ここを…こうやって。」

蓮は服の上からキョーコの胸に手を添えてグイッと揉み込んだ。

「きゃ!!やんっ!!敦賀さんっ!!」

慌てたキョーコが蓮の手を制止しようと試みる。

「柔らかそうで…甘そうで…食べたいよ…」

「ちょっ!!もう、離してください~!!」

「ううん。やだ。だって俺が離したら他の男のとこ行っちゃうんでしょ?」

「行きません!!敦賀さん以外の人のとこになんて行かないって約束しますから離してくださいー!!」

「…じゃあ誰のために胸を大きくしようとしてたのか教えてくれたら離す。」

「敦賀さんです!!敦賀さんのためですっ!!」

「え?!本当?!」

蓮の目がうれしそうにキラキラと輝いた。

「本当ですっ!!本当ですから離してください~。」

「いや。だって俺のためなんだよね?じゃあもう俺のものだろう?」

「ちっ違いますっ!!」

「…キョーコちゃんの…嘘つき…。」

プンっと拗ねた顔をする蓮にうっかりときめきスイッチを押されてしまってキョーコは絶句する。

「なっ?!」

「俺はこんなにキョーコちゃんを愛してるのに、キョーコちゃんは俺に冷たい。」

「あ、愛っ?!」

蓮の言葉にキョーコは狼狽えた。
だけど、蓮の身体中から漂うアルコール臭に蓮が酔ってるからこんなことを言うのだと思い、冷静さを取り戻した。

「もう!飲み過ぎなんですよ!」

「そんなに飲んでないよ。」

「充分飲んでます!こんなこと言い始めたのが何より酔ってる証拠です!!ほら、起きてください。」

「んー。キョーコちゃんから離れたくない。」

「こんなところで眠ったら風邪引いちゃいますから寝室に行きますよ!」

キョーコの言葉に蓮がピクッと反応した。

「寝室…?いいよ。行こう。」

「行くならさっさと起きてくださいー!!」

「んー。」

もぞもぞと蓮が動くが中々起き上がらない。

「ちょっと敦賀さん!ベッドに行く気あるんですか?!」

「んー。ある。あるよ。もうちょっと。」

もたついて漸く起き上がった蓮から離れてキョーコは宣言する。

「じゃ、すぐ寝室に行ってください。」

「ん。キョーコは?」

「い、いきません!」

「えー?だってキョーコから誘ったじゃないか…」

いつの間にかキョーコと呼び捨てにされているがこれも酔っ払いの戯言だ。

「私はまだやらなきゃいけない家事が残ってるんです!!」

キョーコがそう言うと、蓮は思いっきりしゅーんとした顔になってのっそりと立ち上がった。
フラフラと歩く足元が覚束なくて危なっかしい。
数歩も歩かない内に蓮の膝がガクッと崩れた。

「危ないっ!!」

キョーコは慌てて近寄って蓮の身体を支える。

「もう。ベッドに入るとこまでは見届けさせて頂きますから。」

「ん。ありがとう…キョーコ。」

蓮は嬉しそうにニコニコと笑うが相変わらず足元がフラフラだ。

ため息を一つ落としたキョーコは蓮の腕を自分の首に回して、蓮を寝室へと連れて行ったのだった。



「ちゃんと寝てください!」

布団を捲って蓮を横たわらせ、布団を被せようとした時だった。

グイッと腕を引かれ、物凄い力で抱き締められてしまったのだ。

蓮の香りが色濃く残るこの場所は蓮がそばにいなくてもキョーコの恋心をピークにまで高鳴らせるというのに、キョーコは何故か蓮にベッドの中に引き摺り込まれて抱き締められてしまった。

「つ、敦賀さ…」

「ん。おやすみ。キョーコちゃ…」

キョーコが逃げないようにキョーコの身体にのし掛かって巻きついたまま、蓮は夢の世界に飛び立っていた。

気持ち良さそうにすぅすぅと寝息を立て熟睡する蓮の顔が可愛くて、キョーコは身悶えるしかない。

ーーーもうっ!!反則なんだってばっ!!

胸に頭を預けている蓮の頭をそっと抱きしめ、髪をサラサラと梳く。

胸がドキドキと騒いで熱くなる。

「もう、明日には忘れてるくせに…。」

大好きだの愛してるだのとんでもないことを宣っていた蓮。

「私じゃなかったら本気にしちゃうんですからね!」

言いながら切なくなる。
そう、どう考えても意味不明な酔っ払いの戯言なのだ。

「それにしても…見られてたなんて…」

昨夜のことを指摘された時には真っ赤になるより他はなくて、そしてそのことを思い出しながらその時の自分の格好を思い出して今更ながらに真っ青になった。

ーーーちょっと待って?!私…あの時服…着てなかったんじゃ…!!!!

パキンとキョーコの体が固まる。

ーーーうそっ!!なんてこと!!嘘でしょー!!!!

心の中で何度思い返してもそんなことをしたのはお風呂上がりのあの時間だけのはずだ。
それを蓮に見られていたなんて想像もしていなくて真っ赤になったり真っ青になったり忙しい。
まるで忙しない信号機のようにチカチカ変わるキョーコの意識を引き戻したのも、やっぱり蓮だった。

「キョーコちゃんは…俺のだもん…。」

蓮の寝言にピシリと固まって、キョーコはそのままふわっと気を失ってしまうのだった。


(続く)


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やっぱり大好き。酔っ払い蓮様♪
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