自覚した想いの行方

2015年10月23日23:56  短編(原作寄り)/スキビ!

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※Amebaの風月のスキビだよりで掲載している過去の短編です。
読み返したところ、不自然な点が見つかってしまったので、移設に伴い訂正致しました。
そして若干手を加えて、スキビをあまり詳しく知らない人でも楽しめるんじゃないかな〜という仕様にしてます。(あくまでも若干ですのであしからず。)
本当はMy HOME完結してからと思ってましたが、忘れちゃってたら意味ないのでこのような中途半端な位置に投稿してしまいました。

しかし、自分の書いた話でも時間が経ってみると、なんじゃこりゃー!ってのが色々見つかります(笑)
全部を手直しは流石にできませんが、気になったものはこちらに移動させる時に訂正していくと思います。
My HOMEも何箇所か違和感あったのですが、その時訂正しなかったので結局そのままアップしちゃってます。
読みにくいところがあったら申し訳ありません。
そして誤字等は、こーーっそり教えて頂けたら有り難いです。こーーーっそり訂正します(笑)

そして今回のは過去に掲載したことのある作品なので、特にAmebaで告知はしておりません。


*****



自覚した想いの行方


ーーーまた、目で追ってしまったわ…。

最上キョーコはほんのり頬を朱に染めながら、恥ずかしそうに顔を伏せた。

無意識の行動に溜息が出る。

最近気付いたこと、それは芸能界で人気No.1の、今をときめくトップ俳優、大先輩の敦賀蓮のことを、異性として、おこがましくも好きになってしまったということ。

ーーー絶対にこの想いが叶うことなんてありえないのに…。

190センチの身長にサラサラの黒髪、切れ長の目に甘いマスク。俳優としてだけではなく、世界的なメンズブランド『アルマンディ』の専属モデルも務める蓮は、20歳という若さで抱かれたい男No.1と世間でも騒がれている。
告白するまでもない。断られることなんてわかり切っているのだ。


もう封じることなど出来ないくらい好きなのだと、恋を自覚せざるを得なくなったのは、皮肉にもカインとセツカとしての生活が終わってからだった。

今までほぼ毎日、謎の俳優Xであるカインの妹兼付き人のセツカとして、用意されたホテルで一緒に生活をしていたのに、急に現実に戻された様に、いつもの下宿先のだるま屋に戻り最上キョーコとして生活をしていた。

蓮の姿をテレビで見掛ける度に魅入られたようにテレビに釘付けになる。
聞こえる声に胸が締め付けられる。
先日までセツカとしてあんなに蓮の近くにいたはずのに、蓮をテレビでしか見れない日が続くとやはり遠い世界の人なんだと感じてしまう。
切なくて苦しくて、ただの先輩と後輩に戻ってからは、理由もなく会うことなんて許されなくて、忙しい蓮と偶然会えるようなことも、そうそうない。
蓮が空き時間に時々顔を出してくれていたキョーコの所属するラブミー部室へもキョーコ自身が、行く機会が少なくなってしまうくらい仕事が入るようになっていた。
仕事が増えたのはありがたいことなのだが、蓮に一目会いたいと願ってしまう。
ラブミー部に行けば会えるかもしれないと思いながらも時間が作れない日々にヤキモキしてしまう。

そんなある日のことだったのだ。


蓮のマネージャーである社から、蓮が倒れたとキョーコに電話で連絡が入ったのは…。


「え?!風邪で、栄養失調ですか?!」

『あぁ、そうなんだ。一応点滴は打ってもらったんだけどやっぱりそれだけじゃ心配というか、キョーコちゃんのスケジュールを椹さんに確認したら、明日はオフってことだったから、本当に無理じゃなかったらでいいんだけど、今日の夜と明日の夜だけでも蓮の為に食事を作りに行ってやってくれないかな?…あの、久しぶりのオフみたいだから本当無理にとは言わないんだけど…もしよかったらで…ラブミー部への依頼ってことで…ダメ、かな?』

社が申し訳なさそうに話をする。

「ダメだなんてとんでもないです!!!!それは敦賀さんの一大事じゃないですか!!行きます!!この最上キョーコに是非行かせて下さい!!」

願っても無い社の申し出に、勢いのまま受け賜わり、蓮のマンションへと行くことを決めた。

芸能界一忙しい殺人的スケジュールの中、倒れてしまったという蓮。
一人暮らしの蓮の看病をたった一食の食事の世話だけで終わらすつもりは勿論なく、元々責任感の塊のようなキョーコは引き受けた依頼を完璧に遂行するべく、泊まり込みで蓮の看病をする気満々である。

蓮は自宅で眠ってるはずだから勝手に入ってと言っていた社の言葉を思い出し、押しかけたチャイムは鳴らさずに、社から預かったカードキーと教えてもらった暗証番号でドキドキと心臓を高鳴らせながら、蓮の部屋がある超高級マンションのエントランスへと足を踏み入れた。
息を大きく一つ吐いて、気持ちを切り替えると、迷いなく蓮の部屋のある最上階のボタンを押す。

たどり着いた最上階には蓮の部屋へ続く玄関のドアが一枚あるだけだ。
カードキーを使い、玄関をこっそりと開けて中の様子を伺い、小さく「お邪魔します。」と声をかけてみるが、シンと静まり返った廊下からは返事もない。

足音を立てないようにそろそろと広いリビングへたどり着くと、大きなソファの上に無造作に置かれたカバンと、その上にバサリと掛けられた上着があり、家主の在宅を確認出来た。

乱雑に置かれたであろう荷物はやはりいつもの蓮らしくない。

とりあえず蓮の様子を確認しようと蓮の寝室をノックして覗くと、熱の為に荒い呼吸で苦しそうにしている蓮がキングサイズのベッドの上にいた。

慌てて様子を見に近寄るが、乗せてあるタオルは既に温くなっており、熱を冷ます機能は果たせていない。

氷嚢と氷枕を準備する為、立ち上がり離れようとしたキョーコの耳に、小さく、でも確かに蓮が誰かを呼んでるような呻き声が聞こえた気がして、蓮の口元にキョーコは耳を近付けた。
すると蓮が小さく「キョーコ…ちゃん…」と苦しげに呼ぶ声が聞こえた。

キョーコは一瞬、自分の名前を呼ばれたと思って心臓を大きくドキンと跳ねさせたのだが、以前、社が風邪で倒れ、蓮の代理マネージャーを引き受けた時も、蓮が珍しく風邪を引いて、熱に浮かされて自分に向かって"キョーコちゃん"と微笑んだのを思い出してしまい、キョーコの心臓が苦しくなるほど切なくなった。

ーーー敦賀さんの想い人…私と同じ名前なんだわ…。

キョーコの瞳から涙が零れた。
あの当時は、蓮から嫌われていたし、蓮は自分のことをファーストネームではなく、最上さんと呼ぶから、蓮の口から出た名前が自分の名前のはずがないのだ。


涙をそのままに、慌ててキッチンに向かい、涙を止めようとするのだが、いつまでたっても止まらない。

「ど…して…??」

ハラハラと溢れ出る涙を止めることも出来ず、手で顔を覆う。

「知ってたのに…私…。…なのに…なんで…なんでこんなに…っーー」

ーーーこんなに、好きになっちゃったの…?


好きで好きで堪らない…。
蓮には既に自分と同じ名前の“キョーコちゃん”という好きな人がいることは前から知っていたはずなのに…。

キョーコはようやく、蓮のマネージャーの社が自分をキョーコちゃんと呼んでも、蓮がキョーコちゃんと呼んでくれない理由がわかった気がした。


ーーーそうだよね。好きな人と同じ名前なんて、呼べないわよね…。


キョーコの涙は止まらず、無理に止めようとしても溢れてくるので、とりあえず泣くだけ泣こうと決めて、キッチンにうずくまり冷蔵庫に背中をつけて声を殺して泣き始めた。

ーーー馬鹿だ…私…。敦賀さんが私のことなんて好きになるはずないのに…。最初から失恋確定で好きになってしまうだなんて…。

カインとセツカとしての近過ぎた距離が自分は蓮の特別だと錯覚させていたのかもしれない。

ーーー知ってたはずなのに、最初から…。直接敦賀さんから恋愛相談されてたじゃないの…。

キョーコは鶏の着ぐるみの仕事をしていた時、蓮に恋愛のアドバイスを己がしていたことを思い出した。
嘉月の役作りで行き詰っていた蓮の力になりたくて、最上キョーコとしてでは聞けないことを鶏の格好をしているのをいいことに、好きな人はいないのかと聞きだして、恋の兆候に気付きもしていなかった蓮に、それが恋だと教えた。
どんな相手なのかと問えば、蓮より4つ年下のキョーコと同じ年の女の子で、当時の役作りにピッタリな相手だったので、その恋に発破をかけたのは他でもない自分だったではないか。



その後、一通り泣いて復活したキョーコは、本来ここへ来た目的を思い出し、慌てて氷嚢と氷枕を準備すると、蓮の元へ運んだ。

起きた蓮が、キョーコを"最上さん"と呼ぶ度に、"君は対象外だよ。"と言われてる気がして、キョーコは泣きたくなっていたが、蓮に心配かけまいと無理に笑顔を作って乗り越えた。

キョーコは翌日も、仕事を終えて戻ってきた蓮に、食事を作り、大分回復したのを見届けると、また蓮に会えない日常生活へ戻っていったのだった。



蓮の看病から二週間程たった時だった。

TV局をキョーコが歩いていると、蓮を見つけた。
久しぶりの生の蓮に会って、胸が高鳴る。


ーーー敦賀さんだぁ!

キョーコは嬉しくて挨拶しようと駆け出そうとしたのだが、蓮は共演者と思える女の子とにこやかに会話を交わしてるところだった。

年は自分と同じくらいの女の子。

しかし、僅かに聞こえた蓮の声が発した呼び名にキョーコは凍り付いた。

「ーーーコちゃんは、ーー」

たまたま"コ"で終わる名前の女の子なのかもしれない。
しかし、その子は確実に下の名前で呼ばれているのだ。


ーー『相手はまだ、高校生だ…。』

かつて、キョーコが中に入ってるとは気づかぬまま鶏の着ぐるみの坊へ相談をしていた蓮の言葉が蘇る。

ーー『確か、16歳だ…。』


ーーーあの子が…敦賀さんの好きな"キョーコ…ちゃん"…?

キョーコは胸が苦しくなり溢れようとする涙を懸命に堪え、相手の女の子を潤んだ瞳で見つめる。

艶やかなストレートな黒髪、可愛い笑顔、素直そうで純情そうな女の子だ…。
見ただけで好感が持てる女の子。

キョーコは、切な過ぎて唇を噛み締める。

ーーー敦賀さんとあの子は両想いだわ…。

女の子の表情からは、蓮に好意を持ってることが簡単に読み取れた。

ーーー疑うことを知らなかったピュアだった頃の私みたいに素直に恋をして真っ直ぐに想ってる女の子…。

心臓が張り裂けそうなほど痛んだ。嫉妬と羨望の目を女の子に向ける。
幼馴染で人気アーティストの不破尚に利用されるだけ利用されて、鼻紙ティッシュのように捨てられる前の、昔の自分を見ているようだ。

どこかで、蓮にとって自分は特別なんじゃないかと自惚れてた。

カインとセツカのことだけではなく、部屋に上げてくれて、時々ご飯を作ることも許してくれていたから…。


ーーー私は、特別なんかじゃなかった。名前でさえも、今だに呼んでくれないのに…どうして特別だなんて思ったりしたの…?

幼馴染の尚と同じように自分は蓮にとっても家政婦同然なのだろうか?

ーー『何もしないよ。君には、泣かれたら…困るからね。』

蓮から言われた言葉がどんどん蘇る。
胸がギュッと苦しくなる。


ーーー敦賀さんにとって私は何ですか?…私はあなたにとっても、家政婦でしかないの?私は家政婦としての存在価値しかないの??


キョーコの瞳に溜めた涙が限界に達する。一粒の涙が頬を伝ったところで、キョーコの身体が震え出した。

ーーーダメだ!!ここで泣いたらいけない!!

キョーコは、姿を見かけたのに大先輩である蓮に挨拶もしないなんて無礼者だと自分を責めながらも、涙を流す姿を見せたくなくて、一刻も早く蓮から離れなければと、後ずさる。


ーーカタン。

動揺しながら後ずさった為に、窓に肩がぶつかった。


その音に気づいた蓮が振り返り、驚いた顔で涙目のキョーコを見ていた。

「最上…さん?」


ーーーあぁ、やっぱり…私は最上さんでしかないんだ…。


キョーコは決壊したように涙がポロポロとこぼれ出した。

何か言って誤魔化さねばと思うのに、胸が苦しくて言葉がでない。

目の前の蓮が、突然泣き出したキョーコに狼狽えているが、キョーコの涙は全く止まらない。

キョーコは、何も言えなかったが、先輩に挨拶だけでもしなければと、蓮に90度の角度で勢いよくガバリと最上級の会釈をすると、猛ダッシュでその場を離れた。

走りながらもキョーコの目からは涙が容赦なく流れ続ける。

キョーコは人気のない非常階段に駆け込むと、ポケットを探って青いコーンの石を取り出した。
昔、数日間だけ河原で一緒に過ごした綺麗な金髪と碧い目をした妖精からもらった悲しみを吸い取ってくれる石。
泣き虫なキョーコの悲しみが減るようにとお別れの時にもらったキョーコの宝物だ。
妖精の名前をもらってコーンと名付けたその石を握りしめると、キョーコはしゃがみ込んでわんわんと声を上げて泣き出した。

もう、我慢なんて出来なかった。

好きな人との会話を邪魔してしまった。
きっと呆れられた…。
訳のわからない女だって思われたかもしれない。
…でも、もうどうしようもない。時間は巻き戻せないんだから…。

キョーコが一人で泣いていると、勢いよく非常階段のドアが開かれた。

キョーコは涙が邪魔して、相手を見ることは出来なかったが、直感的に蓮だと分かった。

大きな手が、キョーコの腕を取ると、グイッと引き上げ、頭を胸に押し付けるように抱き締められる。

ふわりと香る落ち着く香りに、胸が締め付けられる。

「離してください!!敦賀さんなんて大っ嫌い!!嫌い嫌い嫌い!!!!大っ嫌い!!」

キョーコは泣き喚き、蓮の胸にしがみ付きながらも暴れた。
この温もりから離れたくないのに、突き放したい。
この優しさが憎らしいのに、恋しくて堪らない。

キョーコの心はぐちゃぐちゃだった。

蓮はキョーコの言葉に傷付いたが、キョーコを無言で離すまいと抱き締め続けた。

「私なんかに、構わないで下さい!!無責任に甘やかさないで下さい!!私のことなんて何とも想ってないくせにっ!!」

「最上、さん…?」

「大体、敦賀さんは誰にでも優し過ぎるんです!!何で私を追ってきたんですか?!とっととキョーコちゃんのところに行ってください!!」

「え?!キョーコ…ちゃん??どうして、そんなこと…?」

蓮が狼狽えたので、キョーコが苦しくて切ない気持ちをぶつけるように蓮に一気に言った。

「知ってますよ!!敦賀さんの好きな人が"キョーコちゃん"だって事ぐらい!!この間も、その前も、熱を出したら敦賀さんはその子を呼ぶんです!!知ってるんだから!!」

キョーコはポロポロと涙を流して喚きたてる。

「八つ当たりだって、分かってます!!でも、敦賀さんがいけないんです!!好きな人がいるくせに、私の心をこんなに掻き乱すんだから!!」

わあわあと泣くキョーコを、蓮は信じられない気持ちで見つめながら、抱き締める腕に力を込めた。

緊張しながらも蓮が静かに口を開く。

「…"キョーコちゃん"は…俺の初恋の女の子なんだ…。」

キョーコが蓮の腕の中でピクリと震える。

「俺が、10歳の時に出会った。」

蓮が語りだしたので、キョーコは涙を流しながらも大人しく耳を傾けた。
しゃっくりだけはどうしても止まらず、鳴り響く。

「その子には、俺ではない大好きな男の子がいてね、いつもその子の王子様のノロケ話を聞かされてたんだ。」

キョーコは蓮の胸元の服をギュッとつかむ。

「王子様の名前は、ショーちゃん…キョーコちゃんはそう呼んでた。」

蓮はキョーコの頭を撫でながら言葉に出す。

大きな手に包まれて、キョーコは段々と落ち着きを取り戻して行った。
耳に心地の良い声が、心に直接響く。甘くて優しい気持ちが、じわりと胸に広がる。

「たった数日間だけの出会い。俺たちはお互いの下の名前しか知らなかった。」

「そう…なんですか…。今は…その子は…?」

「ちゃんと元気に生きてるよ。今は俺の腕の中にいる。」

「………?」

ーーー腕の中??胸の中じゃなくて??


「俺は今もキョーコちゃんが好きだよ。何事にも一生懸命取り組む姿とか、無邪気で明るい笑顔とか、細やかな気遣いとか…大好きで大好きで、愛しくて堪らない。だから、嫌いだなんて言われたら…堪えるよね?」

蓮は苦笑した。

キョーコは不思議そうに蓮を見つめる。
蓮は一体何の話をしてるのだろう??

ーーー腕の中にいるのは、私なのに…?


蓮はキョーコの目を優しい目で見つめ返した。

「キョーコちゃんと、初めて出会った時のことは今でも覚えてるよ…。涙をいっぱい瞳に溜めた目で、酷く驚いた顔をして、俺を見て言ったんだ。『あなた…妖精さん…?』ってね。」

蓮が悪戯っぽくくすくすと笑う。

キョーコの涙目が大きく見開かれた。

「そうそう、その目だよ。君は、そんな目で俺を見てたんだ。」

「まさか…?!コーン…?!」

「うん。俺の大好きなキョーコちゃんは、10年前から君だけだよ。」

蓮の言葉にキョーコは茫然と立ち尽くした。

「うそ…」

「敦賀蓮は芸名。俺の本名は久遠。小さなキョーコちゃんには聞き取れなくて、コーンって勘違いされたんだ。俺は、自分にコンプレックスを持ってたから、敢えて訂正もしなかった。」

「敦賀さんが、コーンだったの?」

「そうだよ。俺はずっと君の事が好きだったんだ。今でもこれからも、君だけが俺の特別なキョーコちゃんだよ。」

蓮が神々しい笑顔でキョーコを見つめる。

それでもキョーコは信じられなくて、嘘よとつぶやく。

「だって…髪の色も…目の色だってっ…!」

「日本人の敦賀蓮になるために髪は染めてカラコンで黒目にしてるんだ。」

「なんで…今まで黙って…」

「ゴメンね。俺はずっと久遠から逃げてたんだ。自分のせいで大切な人を沢山傷付けてしまった。だから久遠の思い出も何もかも封印して敦賀蓮として生きてきた。…だけど、偶然にも君と再会して、そしてカインヒールを演じることになって…君のおかげでやっと過去の自分を受け入れることができたんだ。カインの闇は俺の闇だった。何度もその闇に飲み込まれそうになったけど、その度に君は俺に光を与えて助け出してくれた。」

「そんな…私はなにも…」

「最上さん、君の存在とぬくもりが、俺の破裂しそうだった心を救ってくれたんだ。本当に君には感謝してもしきれない。」

蓮のこれでもかというほどの神々笑顔にキョーコは恥ずかしくなって、パフっと蓮の胸に顔を埋める。

「そんな…じゃあ、私…自分で自分に嫉妬してたの??」

蓮がくすくす笑う。

「俺は、凄く嬉しかったよ。」

「コーンの…意地悪…。」

「仕方ないだろ。好きな子には意地悪したくなるんだから…。」

「私なんかで…いいんですか?」

キョーコが自信なさそうに言う。

「地味で、色気も何もない女なのに…。」

蓮はキョーコの背中を抱き締めて答える。

「君こそ、俺なんかでいいのか?…俺は今も、君の昔の王子様に嫉妬をしてるよ。」

「え?!何でですか?!」

「君が、あんな奴の言葉に今だに縛られてるから。」

「そんな!私縛られてなんて…。」

「縛られてるよ。地味で色気のない女だなんて、あいつに言われた言葉だろう?」

「それは…そうですけど…。」

「俺は君を地味だとは思わないし、色気がないなんてありえない。誰よりも素敵な女の子だ。」

「敦賀さん…恥ずかしいから辞めて下さい。」

キョーコは蓮の言葉に真っ赤になってしまった。

「本当のことだよ?君は、もっと自信を持っていい。少なくとも、俺の中では君に叶う女の子は存在しない。」

「えぇえ?!そんな馬鹿な!」

「根性があるし、コロコロ変わる表情は見てて飽きない。料理の腕も世界一だし、思いやりも責任感もある。ずっと君に側にいて欲しい。」

「敦賀さん…。私も許されるなら、敦賀さんの側にいたいです。」

蓮はギュッとキョーコを抱き締めた。

「本当に…?嬉しい!!夢見たいだ。君が俺を選んでくれるだなんて!!」

「大袈裟ですよ。敦賀さん!!それはこっちのセリフです!!」

キョーコが蓮の腕の中で息苦しそうに真っ赤な顔で言う。

「大袈裟なもんか!俺は一度"ショーちゃん"に負けてるんだから。」

「それは…仕方ないじゃないですか!あの頃は、あの馬鹿が一緒にいる時間が一番長かったんですから…。」

キョーコが困ったように蓮を見上げると、蓮は優しく慈しむような笑みを浮かべた。

「そうだね。過去はどうあれ、今は君が俺の腕の中にいる。俺は君を手離すつもりはないよ?一生ね。」

キョーコは、嬉し過ぎて泣きそうな顔を蓮に向けた。

「約束ですよ。手離したら恨みますからね。呪いますからね!」

「うん。そんな愚かなことはしないよ。」

蓮は嬉しそうにキョーコの頭を撫でた。

「この手が…好きです。」

キョーコはうっとりと瞳を閉じた。

「この香りも…好き…。」

蓮は、そんなことを言いながら目を閉じて頬を預けてきたキョーコに、無表情を向け固まると、頭を撫でていた手を頬に滑らせ、キョーコの顔を上に向けて、そっと唇を重ねた。

重ねられた瞬間、キョーコは驚きで一瞬目を見開くが、キスをされていることに気付いて、頬を染めながら、瞳を閉じて蓮の優しい唇の感触を感じた。




お互いの体温を確かめ合う様に、ただ静かに抱き締め合う。


「今度は、キョーコって呼んでも良いのかな?」

「え?!」

「初めて君の名前を呼んだ時に、キョーコって呼んで良いのは王子様のショーちゃんだけだって、怒られたんだ。」

「~~~!!そんなことまで覚えてたんですか?!」

キョーコは真っ赤になってしまった。
蓮にそんな失礼なことを言った過去の自分を叱ってやりたい気分だ。

「最上さん…?」

「呼んで下さい。キョーコって…。あなたに、呼ばれたいんです。」

蓮は破顔した。
間近で見た破壊力満点の破顔にキョーコは赤面する。

「つ、敦賀さん?!」

「俺のことは、蓮か、久遠って呼んでよキョーコ。俺もキョーコに呼ばれたいんだ。」

「へ?!」

キョーコがピキンと固まる。
それをみた蓮は、笑顔で凄む。

「なに?俺には呼ばれたい名前で呼ばれるのに、俺の呼ばれたい名前では呼んでくれないの?」

キラキラキラと輝く蓮の凄みのある笑顔。

「ええ?!そんな…でも…」

キョーコはしどろもどろだ。

「お願い…キョーコ。」

今度は、蓮の背後に仔犬の泣く姿が見えた。

「う…あの…恥ずかしいので、耳を…」

その姿に弱いキョーコは根負けして、もじもじと顔を真っ赤にしながら、恥ずかしそうに蓮に言う。
蓮は言われた通りキョーコに耳を近付けた。

「ーーー」

キョーコが蓮の耳に蓮にだけ聞こえるように、小さな小さな声で囁くと、蓮は破顔してキョーコを抱き締めた。

「愛してるよ!キョーコ!!」

嬉しそうな蓮の声が非常階段に響いていた。

好きな人に名前を呼ばれる幸せをキョーコは蓮の腕の中で、しっかりと噛み締めたのだった。



END


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*****

☆ブログ一ヶ月記念リクエスト☆

★gongoro様からのリクエスト★
《今本誌ではキョーコが蓮にほにゃらほにゃら(笑)しかけているところですが
もう蓮に恋をしてることを自覚するキョーコなんてどうでしょうか?
蓮に好きな人がいることを思い出して
苦しむキョーコ、ちょっと切ないけど最後はハッピーエンドなんてどうでしょうか?》
↑こちらのリクエストにお答えしたお話です。
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