My HOME-28-

2015年10月27日11:09  My HOME/スキビ!《完結》

My HOME-28-


「これで晴れて恋人同士ってことで良いのかな?」

キョーコがキッチンで忙しなく朝食の支度をしていると、蓮が嬉しそうに顔を緩ませて問いかけてきた。

「こっ恋っ人?!」

キョーコが顔を真っ赤にして食器を落としそうなほど狼狽えるので、蓮はそんなキョーコが可愛くて笑みを深める。

「ん?だって最上さんも俺と同じ気持ちってことだろう?」

「お、同じ?!同じだなんてそんなっ…!」

キョーコは狼狽えた。蓮も本気…なのだと思う。
蓮から今まで散々アプローチをされてきた。それは事実だ。
だけど、キョーコの中では今までの経験上、愛した人から同じ想いをもらったことがないのだ。
母親からも、大好きだった幼馴染からも。
その経験から、蓮がどんなにアプローチをしてきても、反応が面白くてからかってるんじゃないかとか、いまだけなんじゃないかとか、そのうち飽きるのではないかとか、そんな思いがどうしても湧き出てきてしまう。
不安なのだ。怖いのだ。愛を認めて、その愛が裏切られてしまう日が来ることが…。

ずっと一緒にいたいとは蓮に伝えたが、好きだという気持ちはまだ言葉にする勇気が出来ない。

自分と蓮は本当に同じ気持ちなのかと不安気に心は揺れる。

キョーコのそんな不安を感じ取ったのか、蓮はそっとキョーコの顔を覗き込み、にっこりと優しく微笑んだ。

「ねぇ最上さん、デートしようか?」

蓮の提案に、キョーコは目を大きく見開いて驚いた顔をした。




蓮のデートの提案から五日後、二人揃って夕方からのオフをもぎ取ることが出来た。
社の協力もあり、椹には、ラブミー部のキョーコに重要な任務を依頼したいと言って何とか合わせることが出来たオフだ。

キョーコは自室になっているゲストルームの鏡の前で何度も服を確かめながら、おかしなところはないかと入念にチェックをしていた。

そうしてピンポーンとインターフォンが鳴った。
無遅刻キングの名にふさわしく時間ぴったり。蓮が来たのだ。

「はーい!い、今行きますっ!!」

キョーコは慌てて鏡の前から身を剥がすと、玄関に走り、ドアを開けた。

扉の前に立っていた蓮が頬を緩ませて微笑みかけたのは一瞬。

「わあっ」

蓮の顔よりも差し出されたバラの花束に目を奪われていたキョーコの姿を見て目を見開いた蓮は、一瞬の間を空けて、盛大に吹き出していた。

「プッ…クク…ハハハっ!」

渡されるはずだった花束を手に持ったまま急にお腹を抱えて笑い始めた蓮を見てキョーコは真っ赤になった。

「な?!やっぱり、お、おかしかったですか?!」

キョーコは真っ赤になって被っていたスカーフを両手で握った。
蓮とデートだなんてバレたら大変だとスカーフを頭に巻いて頭巾のようにして、目も隠れるように大きなサングラスにマスクをしていたのだ。
変装は完璧なはずである。
これでは誰か知っている人が近くで見てもキョーコだとよくわからない。

「ごめっ…。クク…でもそれ…逆に怪しまれると思うよ?」

完全に変装してることがバレバレだと思えるキョーコの装いに、蓮は笑いを何とか収めて、そっとキョーコの顔を半分隠しているスカーフとマスクを外した。

「あっ…!」

「これじゃあ君の可愛い顔が見れないし…。」

「な?!」

蓮の言葉にキョーコが真っ赤になる。

「君も俺のことが見えないだろう?」

そして、最後にそっとキョーコの顔を半分ほど隠している大きな茶色のサングラスも外して、優しく微笑みかけた。

「普通にしてれば、案外バレないもんだよ?」

「でも…っ……っ?!」

フワリと微笑んだ蓮の姿を見てサングラスを外されたキョーコは目が釘付けになった。
信じられないというようにこれでもかと目を見開いたまま、口をポカンと開けて固まってしまった。

「やっぱりちゃんとキョーコちゃんの可愛い顔を見てデートしたいな?」

神々しく微笑んだ蓮は、蓮であって蓮ではなかった。
ふわりと風に舞った金髪、不思議な色彩の綺麗な瞳。
数ヶ月前グアムで偶然再会したキョーコにとって大切な大切な…

「こぉん…?」

固まっていた口が僅かに震え、恐る恐るというように声が発せられた。

キョーコの言葉に更に笑みを深めた蓮は、改めて持っていた花束をキョーコに差し出した。
赤とピンクのバラがバランスよく配色された豪華な花束だ。

「キョーコちゃん、お待たせ。迎えに来たよ。今日は俺とデートしてくれる?」

まるでおとぎ話に出てくる王子様のような蓮が、茶目っ気たっぷりに言う。
差し出された花束を受け取りつつも、混乱したキョーコの頭は今この場でおきてることの処理にいっぱいいっぱいで付いていけない。
今日は蓮とデートする予定だった。
でも目の前にいるのは蓮の姿を借りたコーンなのだ。
いや、コーンなのだろうか?
蓮の声で、蓮の体で髪の色と目の色だけがコーンで、何が何だかわからない。

「な…んで…敦賀、さん?コーン?」

「最上さんと、ちゃんとしたデートがしたくて、ミス・ウッズに我儘言って本来の姿に戻してもらったんだ。」

「…ミス・ウッズ?…本来の、姿…?」

「そうだよ。ビックリさせてごめんね?」

頭がグルグルしてしまっているキョーコに気付いて蓮は苦笑する。

「突然こんなこと言われても、理解できないかもしれないけど、敦賀蓮は芸名で、本当の名前は久遠なんだ。久遠・ヒズリ。」

「久遠…さん…?ん?ヒズリって…え?!えええぇええええぇぇえぇぇ?!」

キョーコが驚愕に目を見開いた。

「せっ!先生のっ、むむむむむむ息子さん?!」

「うん。」

「久遠さん…くおんさん…くぉん…こぉん?コーン?」

キョーコは何度も何度も反芻してショートしそうな頭の中でいろいろなピースを必死に繋ぎあわせた。

そうして全てが繋がったキョーコがハッとして、恐る恐る顔を上げ、蓮を見上げた。

「も、もしかして…つ、敦賀さんが久遠さんで、先生の息子さんで、コーンなの?!?!」

キョーコの問いかけに、蓮はゆっくりと頷いた。

「うん、そうだよ。キョーコちゃん、ごめんね。ずっと黙ってて。」

「うそ…」

キョーコの目からポロリと涙が零れた。
その涙を指でそっと受け止めながら、蓮は申し訳なさそうに微笑む。

「なんで…っ!!今まで黙って…!なんでっ今っ!」

ブワッと決壊したようにキョーコの涙が流れ出す。

その一粒一粒を指で拭いながら、蓮は優しく…でも強い言葉で言った。

「それは、最上さんのことが…キョーコちゃんのことが好きだからだよ。心から愛してるんだ。」

まっすぐな蓮の言葉がキョーコの心に突き刺さる。

ーーーずるい…

キョーコは涙を流しながら思ってしまう。
蓮はズルい。
蓮の言葉がいとも簡単にキョーコの心の壁にヒビを入れてしまう。
誰からも愛されることはないと思っていた。愛される必要もないと、そう強がってきた。
それは自分を守るための、これ以上人から傷つけられないための鉄壁の壁となって無意識にキョーコの心を守っていたはずなのに…。

「君のおかげで俺は、彼を…久遠を許すことが出来た。君がそばにいてくれたから、やっと乗り越えることが出来たんだ。」

BJを演じる時、苦しんでいた蓮を知っているキョーコ。コーンの昔の優しさと笑顔を知っているキョーコ。久遠を演じたことのあるキョーコ。演技に懸ける蓮の想いを知っているキョーコ。人の心の動きに敏感なキョーコ。そんなキョーコだからこそ、想像できてしまったのだ。

蓮の過去に起きたであろう苦しみと葛藤も、蓮がコーンであることを単なる意地悪で自分に正体を隠していたわけではないことも…。
そうしなければならなかった理由があって、苦しんで苦しんで、黙っていたことも。

ガラガラと心のバリアが崩れるのを感じながらも、それと同時に湧き上がってくる不思議なほど熱い想いがあった。

「乗り越え、られたんだね。自分の力で飛べるように…なれたんだ…」

父の手が大きすぎて飛べないと寂しそうに言っていたコーン。
その父の手はキョーコもよく知るクーのことだったのだ。

溢れ出すほどの熱い想いは、キョーコの頬をハラハラと涙に姿を変えて濡らしていく。

「違うよ。自分の力だけじゃない。君がいたから…乗り越えることが出来たんだ。」

「私…?」

涙を溢れさせた目で見つめてくるキョーコの手をとり、その場に片膝をつくと、請うようにキョーコの手の甲に蓮が甘く口づけた。
蓮の目がキョーコを見上げる。
甘く熱い想いがキョーコの中で嵐となって吹き荒れる。

「お願い。俺を受け入れて?キョーコちゃんを守る王子様を俺にやらせて。俺はもう君なしでは生きていけない。俺にも久遠にも他の誰でもない君が必要なんだ。」

「貴方は、ズルいです…。」

キョーコの心のバリアは完全に崩れ去り、消えてしまった。
替わりに全身を駆け巡る激しいほどの想い。

「ねぇ?俺たちの出逢いは運命だって思わない?」

目の前に会いたくて逢いたくてたまらなかったコーンが微笑んでいる。
キョーコはそんなコーンの、蓮の顔を熱い視線で見つめ続けた。
だが、言葉が思うように出てこない。
ポロポロと流れる涙をそのままにコクコクと頷いてみせた。

「だからね。俺のお姫様になって?」

「お、姫…様?」

「そうだよ。俺にとってのたった一人のお姫様。君のこと、心から愛してるんだ。俺の全部をあげる。誓うよ。君を決して手放したりしない。君のことをずっとずっと大事にするって。」

「こぉーん…」

「ダメ…かな?俺がコーンなのは嫌だった?」

蓮が子犬を背後に背負ってくぅーんと寂しそうに見つめてくる。
その顔に弱いキョーコは、やっぱりズルいと呟いて、一つ深く息を吸い込むと、その息を全部吐き出して、ゆっくりと目を開き、嬉しさに顔を綻ばせた。

「もう!ダメじゃないです!立ってください!!」

蓮を立たせて、キョーコは薔薇の花束を足元に置くと、蓮の身体にぎゅうっと抱き付いた。

「嬉しいです。敦賀さんがコーンで…大好きな二人がどっちも貴方だったなんて…もう、貴方に惹かれるのが当然のことだったみたい。」

「じゃあ、俺と付き合ってくれる?」

「絶対に私のことを好きでい続けて大切にしてくれるなら。」

「もちろん、大切にするよ。やった!!キョーコちゃん大好き!」

「ふふ。私も大好き!!大好き!!」

「キョーコっ!!」

「きゃっ!ふふ。苦しいです。敦賀さん…」

「絶対に離さないから…覚悟してね?」

「望むところです!!」

とても幸せに満ちた元気なキョーコの声が廊下に響いたのだった。


(続く)


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なんか色々詰め込み過ぎて違和感。
なんだこれはっ!!
ブランクを感じさせちゃうような文章になって本当すみません(>_<)
これが今の風月の精一杯でした。
漸くまとまった二人です!
My HOMEはあと2話の予定です。
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