My HOME-30-《完結》

2015年11月11日19:18  My HOME/スキビ!《完結》

My HOME-30-《完結》



キョーコと蓮が心を通い合わせた翌日。
その連絡は突然やってきた。


「…はい。わかりました。ありがとうございます。」

電話を終えたキョーコは、ハァと一つ大きく息を吐いた。

「そっか…そうよね…。いつまでもこのままなんて…無理だもんね。」

寂しそうにキョーコは呟く。

蓮と暮らし始めたのは下宿先のだるま屋の改装工事のためだ。
頼りにしていた奏江は長期の地方ロケで、行く当てなく途方にくれたキョーコに蓮が空いている部屋を提供してくれたのだ。

その改装工事がもうすぐ終わりそうだというのが、先程の電話でわかった。
元々一ヶ月ほどの約束だったのだ。

蓮との生活は居心地が良くてすっかり忘れてしまいそうになっていた。

「改装工事…終わったら帰らないと駄目、よね…」

キョーコは行儀悪くクッションをギュッと抱えて座り込んだ。
蓮と所謂恋人同士というものになったのは昨日のことだ。

ずっと片想いで実ることはないと思っていた想いが奇跡的に実ったのだ。
イルミネーションの煌めく中でされたキスは昨夜のことで、記憶に新しく目を瞑っただけで思い出してしまう。

恋人同士として迎えた初めての夜は、ゲストルームにキョーコが逃げ込むということで、あっけなく幕を引いてしまったのだが、それはキョーコの知るところではないのでただの補足という名の余談である。

何はともあれ、居候の身なのだ。
事実上の蓮の恋人になってしまったので、これ以上一緒にいてスキャンダルになりにでもしたら大変だとキョーコは変に気を回してしまった。

「うん。そうよね!改装工事が終わったら、敦賀さんの為にも早々にここから退去しなきゃ!」

それが恋人としてはちょっと寂しい考え方だとはちっとも思っていないキョーコは、その方向で決意を固めると、夕食の準備に精を出すのだった。



丁度そろそろ蓮が帰ってくるという時間帯に、チャイムが鳴った。
インターフォンに出ると、それは蓮でキョーコはいつもそのまま鍵を使って入ってくるのに何故蓮がわざわざインターフォンを鳴らしたのだろう?と不思議に思いながらも玄関までパタパタとスリッパを鳴らして迎えに出る。

「ただいま。キョーコ」

「きゃっ!あ、あの…。お、おかえりなさい。つる…じゃなかった。えっと、久遠…」

玄関を開けた瞬間、その手を引かれて抱き締められて、キョーコは蓮の腕の中で真っ赤になってしまった。

「逢いたかった…」

今朝もちゃんと顔を見て送り出したのに、気持ちをたっぷり込めて蓮に言われて、キョーコの中でじわじわと幸福感が湧き上がる。

「私も、お帰りを…お待ちしてました。」

キョーコも精一杯の気持ちを込めて照れ照れと答えると、蓮はとっても嬉しそうに顔を輝かせた。

「ほんと?!」

まるで無邪気な少年のようだ。

「嬉しいよ…。」

だけど、その後の熱っぽい視線に、少年のようだと思った思考をすぐさま撤回する。
そっと頬を撫でられて顎をくいっと固定されると、真剣な顔が近づいて来た。
キョーコは真っ赤になりながらもキュッと目を瞑って迎え入れた。

優しく重なった唇は中々外れず、「んん〜!!んんん〜〜!!」というキョーコの抗議が通じたのか、キョーコの息が止まりそうになった頃に漸く離れてくれた。

ハァハァッとまだ慣れず、キスに翻弄されてるキョーコを愛おしそうに愛でて、蓮はキョーコの存在を確かめるように再び抱きしめる。

「あぁ、家に帰ったらキョーコがいてくれるって本当に幸せだ…」

しみじみと言われる言葉にキョーコの胸にチクリと罪悪感が生まれた。

「あ、あの、その話なんですけど…」

「そうだ!アレ!アレ言ってくれない?」

「え…?アレ…ですか??」

「お風呂にする?ご飯にする?それとも…ってヤツ!」

「ええぇ?!」

話さなければと思っていたことが蓮の言葉を聞いて思考から吹っ飛ばされてしまった。
期待を込めた目で見つめる蓮。キョーコは真っ赤になった顔で口をパクパクさせてしまう。

「うっ…えっと、その…」

「うん。」

ウキウキと顔に書いてある蓮を前に、キョーコは勇気を持って言葉を絞り出す。

「ご飯になさいますか?お風呂になさいますか?それとも…あの…あのっ…わた…わたっ〜〜っ〜!!つ、敦賀さんのいじめっ子〜ぉ!!!!」

キョーコは涙目になって一目散に逃げ出した。
後にはぽかんとそんなキョーコの後ろ姿を見守ったのち、クスクスと幸せいっぱいというように笑う蓮が残されていたのだった。


蓮が着替えなどを済ませて遅れてリビングに入ると、テーブルにはカセットコンロと鍋が用意されていた。グツグツと煮立つなべからは美味しそうな湯気が出ている。

「今日はお鍋?」

蓮が問えば、キョーコはニッコリと微笑んで答える。

「すき焼きです。今日も寒いのでちょうど良いかな?と思いまして。」

「へぇ〜。それは楽しみだな。何か手伝うことある?」

「いえ、すぐに準備できますから、久遠は座って待ってください。」

「ん。ありがとう。」

蓮はキョーコに言われるまま大人しく待つことにした。
キョーコの働きを目に焼き付けるかのように幸せそうに見守る。
こんな時間がいつまでも続いてくれると良いなという思いを大切に抱き締めて、支度をするキョーコを優しい眼差しで見つめ続けるのだった。


体が温まる美味しい食事も終え、キョーコと蓮が体を寄せ合ってソファの上でいちゃいちゃしていたところで漸くキョーコが大事なことを思い出した。

「あ、そうだ!忘れるところでした。」

「ん?どうしたの?」

「だるま屋の改装工事なんですけど、もう少しで終わるそうなんです。」

「え?…あぁ、そうなんだ。」

一瞬キョーコが何の話をしているのかわからなかった蓮は、取り敢えず相槌を打った。

「なので、私も5日後にはだるま屋に帰ろうかと…」

さらりと言われた言葉に蓮は目を見開いた。

「ええ?!何で?!」

キョーコの寝耳に水な話に大きな声を上げてしまう。

「え?いえ…、あの、いつまでもここにいても迷惑でしょうし…」

おずおずというキョーコの言葉に蓮はとんでもないと言葉を返す。

「迷惑だなんて…そんなわけないだろう?!やっと…やっとキョーコと恋人同士になれて、これからずっと一緒だと思ってたのに…!嫌だよ。キョーコ…出て行くなんて言わないでくれ!」

「え?!でもあの、一緒に住んでるなんて、スキャンダルになっても困るでしょうし…」

手をぎゅっと握り締められ蓮から行かないでくれと懇願されるとは思ってもなかったキョーコは困惑してしまった。

「スキャンダルになんてならないよ。なったとしてもキョーコとのスキャンダルなら問題ない!それに、恋人同士なんだから、一緒に住んでも何の問題もないだろう?」

「えぇ?!そ、それはそうですが…でも、あの…いいんでしょうか?」

キョーコも出来ることなら蓮と一緒にこのまま暮らしたいと思っていた。
食生活も心配だし、撮影現場が違えば何日も…下手すれば一か月以上会えない日もあるだろう。
一緒に暮らせば地方ロケでもない限りわずかの時間でも顔を見ることが出来るはずだ。
だけど、相手は芸能界でもトップクラスの人気を誇る俳優なのだ。
その俳優敦賀蓮の名前に傷を付けることになってしまったりしないだろうか?

「もちろん!良いに決まってるだろう?!キョーコが心配することは何もない。キョーコが出て行ったりしたら俺、寂しくて死んじゃうよ。」

「な?!そ、そんな…天下の敦賀蓮がそんなことで死ぬわけ…きゃ!」

キョーコは蓮に押し倒されて、ソファに縫い付けられた。

「だーめ。キョーコはかえさない。だって君の家はもうここだろう?」

「で、でも…」

キョーコが渋っていると、蓮は寂しそうな顔で仔犬モードを発動させてきた。

「ね?お願い…キョーコ…。出て行ったりしないで…」

押し倒したキョーコの身体にゆっくりと己の腕を巻きつける。

「や…く、久遠…」

「お願い…お願いだから…」

「ん…ふ…」

お願いと何度も呟きながら丁寧にキスを施す。

「ね?オネガイ…キョーコ…」

耳にも口を近付けて色っぽい声でしっとりと囁くと、キョーコの体がボッと熱を持ったのがわかった。
それに気を良くして、キョーコの耳の後ろから首筋にも唇を這わせる。

「〜〜〜〜!!わ、わかりっ!わかりました!!わかりましたからぁ!!た、大将と女将さんに、話してみますからぁっ!だからっ!んっ…やぁ〜〜やめ…」

「ん…ダメ。ちゃんと俺が愛してることをしっかりと教え込まなきゃ。身体にね?」

「ふぇ?!」

「そしたらちゃんと、ここに帰ってきたくなるだろう?他のところに帰る気なんて起こらないはずだよ。ね?」

「ちょ、ちょっと!久遠っ!!それ以上はっ!やっ…あんっ!ちょっと…やだぁ…」

真っ赤になって何とか蓮の腕の中から逃れようとするキョーコを蓮は難無く絡め取っていく。

キョーコの指と己の指を絡めて再びキョーコをソファに縫いとめると、蓮はその潤んだキョーコの瞳をしっかりと覗き込んだ。

「ほら、言って?キョーコ。君の家は?俺たちの家はどこ?」

「ここ…です。久遠の家が…ここが私の…私達の家デス。」

「うん。よく出来ました。」

極上に甘い顔をした蓮の顔がご褒美とばかりにキョーコの顔に覆いかぶさる。

「ん…」

二人の足が絡まり、キスも徐々に深まっていく。

ここは超高層マンションの最上階。厳重なセキュリティに守られた場所が二人のマイスイートルーム。
キョーコと蓮のためだけの部屋だ。

二人の愛は厳重なセキュリティ管理の元、順調に深まっていくのだろう。



この先も、ずっと…ずぅっとね。




END

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いつも応援ありがとうございます!!


*****


漸く、漸く完結させることが出来ました!!!!感無量です。

これもひとえに暖かく見守り応援してくださった皆さまのお陰です。

コメントやメッセージで応援してくださった皆さま、拍手でエールを送ってくださった皆さま、本当に本当にありがとうございます!!!!
皆さんのお陰で完結まで辿り着けました!!

My HOMEは一話だけのつもりで書き始めた話だったので完全ノープランで予想外の展開になりまくりで大変でしたが、最後まで何とか楽しく書くことが出来ました。

長いことお付き合い頂き、本当の本当にありがとうございました!!
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