My HOME-26-

2015年10月20日14:15  My HOME/スキビ!《完結》

My HOME-26-


『モー子さぁぁぁぁぁん!!助けてぇぇぇぇ!!!!』

キョーコからそんなSOSの電話が掛かってきたのは、ちょうど奏江が本日の仕事を終えて控え室に戻った時だった。

今夜泊めて欲しいというキョーコは何処か様子がおかしい。もう仕事がこの後入ってない奏江はキョーコの方も仕事が終わったことを確かめると、ラブミー部を待ち合わせ場所に指定した。

先日キョーコが奏江の家に泊まってから約二週間と5日振りだ。
その間もずっと蓮の家に同居してることを知ってる奏江は、全く仕方がない子ね。なんて思いながらも、好きな男と、そして恐らくキョーコのことを好いているであろう男と3週間以上も二人っきりで一緒に暮らしていて何もないはずはないのに、親友だと一方的に連呼する割には自分の重要な話は滅多にしてこないキョーコに少し焦れていたのだ。
漸く色々な話が聞けるかもしれないと、奏江は無表情を装い、ラブミー部があるLMEへとスピードを上げてせかせかと向かうのだった。




「で?敦賀さんには何て言って出てきたわけ?」

「えっとね…今日は帰りません。ってメールで…」

キョーコとラブミー部室で合流した奏江は、その後キョーコの作った晩ご飯を食べて、奏江のマンションのリビングでくつろいでいた。

キョーコはなかなか本題に入ろうとせず、最近受けた仕事の話ばかりしていたが、ご飯も食べ終わったしそろそろ良いだろうと、漸く奏江は蓮の名前を出したのだ。
キョーコはもごもごと答えにくそうに答える。

「メールねぇ。それで了承もらったわけだ。」

「う…えっと、了承…は…」

いつもはハキハキしているキョーコが蓮の話題になってからは急にしどろもどろになり始める。

「何よ?あんたもしかして、メール送りっぱなしで返事見てないわけ?」

「うぅ…だってその…うっかり場所言っちゃいそうで…」

「言わなくてもあんたの行きそうな場所くらいわかるんじゃないの?」

「そ、そうかもしれないけど…でも…」

クッションを胸に抱いて目を彷徨わせるキョーコをジッと観察して、奏江は本題に斬りかかった。

「で?何があったのよ?敦賀さんと。」

「う…その…」

カァァァと急に顔を赤らめたキョーコを見て、奏江はおや?と目を見張る。

「…告白でもされたわけ?」

ズバリっと容赦なく斬りかかった奏江にキョーコは益々顔を真っ赤にして狼狽えた。

「なっ?!あ、う…ぇ…な、何で?!」

「…されたのね。」

分かり易すぎるキョーコの反応に奏江はやれやれと溜息を吐く。

「ち、違っ!あ、あれは…つ、敦賀さんの気の迷いで…」

「ふーん?気の迷いねぇ〜…」

表情は素直なくせに、中々口から出てくる言葉が素直にならない親友を奏江はジトッと見つめる。

綺麗な奏江の目にジッと見つめられてキョーコはううっ…と身を小さくした。
キュウゥという効果音が聞こえてきそうだ。

「だって…あの敦賀さんだよ?何で私なんて…」

「…何て言われたわけ?」

「ぅ…あの、あの…ね、“最上さんが好きだ。いや、好きだなんてちんけな言葉に思えてしまうくらい愛してるんだ。”って…」

「うげぇぇ…」

思わず口から砂を吐きそうになってしまった奏江だが、蓮の声を真似て言葉にしたキョーコはカァァァと真っ赤になってしまって、クッションに顔を埋めた。

「それからずっと敦賀さんおかしくなっちゃって、過剰なほどのスキンシップと愛情表現をしてくるのよぉ…」

聞いてる奏江はもう、ご馳走様という感じだ。クッションに真っ赤な顔を埋めてるキョーコから出てくる言葉が惚気以外に聞こえない。
しかし、そんなキョーコが突然勢いよくガバッと顔を上げて縋るように奏江を見る。

「ね?!おかしいよね?!だってあの敦賀さんだよ?!どんな女性だってより取り見取りじゃない!!何でよりによって地味で色気のない私なんかにそんな…」

キョーコの自分を卑下した言葉に奏江はピクリと眉間に皺を寄せた。

「アンタ…まだそんなこと言ってるわけ?良い加減自覚しなさいよ。全く危なっかしいったら…。」

奏江は心底蓮に同情した。
ストレートなセリフをぶつけてアピールまでしているのに、本命には本心として受け取られていないのだ。
恋愛曲解思考が染み付いている親友にわからせるにはどうしたものかと痛みだした頭を抱える。

「自覚って言われても…」

もごもごと何を自覚したら良いの?なんて言いながら思考の渦に入り込みそうなキョーコを引き戻すため、奏江は声をかける。

「アンタはどう思ってるのよ?敦賀さんのこと。」

「わ、私…は…」

「釣り合うとかと釣り合わないとか別にしてよ。一人の男としてどう見てるわけ?」

「ひ、一人の男としてって…それはそう!そ、尊敬してるわっ!」

「………」

「や、優しいし、ご飯作ったら美味しいよっていつも言ってくれるし、応援してくれたり、疲れてるはずなのに演技の練習にも付き合ってくれたり…」

「もーーー!!だからそうじゃなくて、アンタ自身はどう思ってるのかって聞いてるのよ!!この間だって、敦賀さんに会いたくて帰ったんでしょう?」

「こ、この間はだってモー子さんが…」

「私が何よ?」

「か、帰りたい家に帰れって言ったんじゃない。」

「だから、帰りたい家が敦賀さんのいる家ってことなんでしょ?」

「う…そ、そう…なんだけど…」

奏江は深くため息を吐いた。

「良い加減素直になりなさいよ。じゃないと敦賀さんが可哀想じゃない。」

「へ?!なんで敦賀さんが可哀想なの?」

奏江は心底呆れたという目をキョーコに向ける。

「あんたね…意を決して本気でアプローチしてるのに好きな女の子に逃げられたらそりゃいくらなんでも敦賀さんだって凹むわよ。」

「す、好きな女の子って…」

カァァァとまた顔を赤らめるキョーコに、奏江は自覚させるため、容赦なく言葉を浴びせる。

「だって、好きだ。愛してるまで言わせたんでしょう?あの敦賀さんに。」

「う…」

「そして過剰なほどのスキンシップとってきたり、毎日のように甘い言葉を囁かれたりしてるわけでしょ?言っとくけどね、敦賀さんがアンタのことを好きなのは今に始まったことじゃないわよ?」

「へ?!」

「私は敦賀さんがアンタの誕生日と同時に薔薇を差し出した時から、敦賀さんのアンタへの思いを確信してたわよ。」

「ええぇ?!うそ?!」

「普通しないでしょ?ただの後輩に薔薇の花を一輪差し出すなんて、あんな気障なこと。」

「そ、そんなに前から?!」

「いつだったかアンタに私、聞いたことあったわよね?カラオケボックスで…敦賀さんアンタのこと好きなんじゃないの?って…」

キョーコはハッとして目を見開く。
確かにそんなことを言われたことがあった気がする。

「アンタはその時バッサリ否定してたけど、やっぱりそうだったんだって思ったもの。まぁアンタは全然気付いてなかったみたいだけどね。」

「どーして言ってくれなかったのよぉ〜!モー子さぁぁぁん!!」

「言ったところでアンタは本気にしないじゃない。」

奏江のピシャリとした言葉にキョーコはうっと言葉に詰まる。

「そ、それもそうかもしれないけど…」

目線をウロウロと彷徨わせ、まだ実感が湧いていないであろうキョーコに奏江は言葉を続ける。

「大体好きでもなければ家に上げるのを許したりしないわよ。特に敦賀さんみたいな人はね。」

「そ、それは多分、代マネでお邪魔したことあるからで…」

「さっき疲れてるはずなのに演技の練習にも付き合ってくれたって言ってたわよね?普通好きでもなければそんなことにわざわざ付き合ったりしないんじゃない?」

「で、でもそれは敦賀さんが演技にひた向きな人だからで…私だけ特別なわけじゃなくて…」

「アンタ…敦賀さんが他の誰かに演技指導してるの見たことあるわけ?」

「ない…けど…」

「そうよね…。あったらあっという間に噂が広がって、敦賀さんのところには迷惑も考えない女の集団が昼夜問わず押しかけるわよ。」

「えぇ?!」

「だってあの敦賀さんよ?敦賀さんに演技指導してもらっちゃったー!なんて話す人がいたら一気に広がるのわかってるじゃない。あの人はそんな危ない橋を渡ったりしないわよ。」

「確かに…そうかも。」

「だから、敦賀さんの中で、アンタは最初っから特別ってことなのよ。」

「………」

「で、それを踏まえた上で聞くけど、アンタにとっての敦賀さんはその辺の男と同列なわけ?」

「な?!そ、そんなわけないじゃない!!敦賀さんがその辺の男と同列なんて!!」

「ふーん?」

「敦賀さんは別格なの!神の寵児であらせられる方で…」

「あぁ、わかったそこだわ。」

「へ?!そこって?」

「あんた神の寵児とかなんとか言って、自分には手の届かない別次元の人だと思い込もうとしてるんでしょう?」

「思い込もうと何も…だって敦賀さんは…」

「好きなくせにそうやって逃げて…。全く素直じゃないんだから。」

「モー子さぁぁん」

縋るような目でキョーコは奏江を見る。
キョーコもわかっているのだそうやって逃げてしまっていることを。奏江は馬鹿な子ねと困ったように優しい顔で微笑んだ。

「アンタの気持ちを敦賀さんに素直にぶつけたら良いのよ。大丈夫。敦賀さんはアンタの幼馴染の馬鹿とは違うでしょ?ちゃんとアンタの気持ち…受け止めてくれるわよ。」

「そう…かな…?」

「何?アンタ、敦賀さんのこと信用してないわけ?」

「違っ!!そんなわけないじゃない!!」

「あのバカの時みたいになるのが怖いんでしょう?それって敦賀さんも同じことする人だって思ってるんじゃないの?」

「あのバカと敦賀さんを一緒にしないで!!違うわ!敦賀さんはそんな人じゃないもの!!」

「だったらぶつかってみなさいよ。好きなんて言葉に抵抗があるなら、ずっと一緒にいたいとかそんな言葉でもあの人には嬉しいんじゃないの?」

「…モー子さん…。」

キョーコは目をキラキラさせて奏江を見た。

「やっぱり親友ね!!モー子さん、大好きぃぃぃ〜!!」

「あー。はいはい。暑苦しいわね〜もーーー!!」

ガバリと抱きついてきたキョーコを宥めて、奏江は時計を見た。

「あ!もーこんな時間!!」

時計の針は1時半を指していた。

「さっさと寝るわよ!夜更かしは美容の敵!!」

「はぁい!」

「今日は泊めてあげるけど、明日はちゃんと帰って敦賀さんと話をするのよ?」

「うん。ありがとう。モー子さん、話聞いてくれて。」

「ま、話聞くくらいでよければいつでも聞いてあげるわよ。」

キョーコは奏江の言葉にえへへ。と嬉しそうに笑う。


その時、キョーコの携帯電話には何度も連絡が入っていたのだが、オフにされた携帯電話が震えることはなかったのだった。


(続く)


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