なくした記憶 7

2015年11月27日12:34  なくした記憶/スキビ!《完結》

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ここまで話を持ってくるのに、苦労しました!
なかなか思うように進んでくれなくて、ハラハラしてます(笑)
では、なくした記憶7お楽しみ下さい。

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なくした記憶 7


「あ…れ…?なんで??」

リンゴをかじった蓮はただ某然と涙を流していた。

一筋だけ流れた涙は、静かに蓮の頬を伝った。
そんな姿も絵になる人だと、キョーコは思った。それと同時に切なくもなった。

やはり、蓮は不安だったのだ。
敦賀蓮らしからぬ言葉の数々は、もしかしたら、その不安から頭が混乱してきていたものなのかもしれない。

そう考えたキョーコは、リンゴを黙々と食べる蓮を見て、心が締め付けられるのを感じ、そんな蓮の心を少しでも軽くしたくて、蓮がリンゴを食べ終わったのを見計らい声をかけた。

「敦賀さん、手を出して下さい!」

蓮は、無意識に言われた通り素直に手を出した。
キョーコは蓮の手のひらに鞄から取り出した宝物のコーンを置いた。

蓮はそのコーンの石を見て、驚きで目を見開いた。

「っ!!これ……君の…?」

「はい。昔、ある人にもらったんです。」

キョーコははにかみながら笑った。

蓮は、その返事を聞き、石を信じられないものを見る目で凝視した。なんでこれがここに?!これは、昔、自分が思い出の女の子にあげたものだ。あの女の子からこの子の手に渡ったのか?!それとも…。

蓮はギュッと石を握りしめると、キョーコを見た。
鼓動が早鐘を打っているのを感じつつ、どうにか平静を保ってキョーコに問いかけた。
喉はカラカラだ。

「君…さ、もしかして、昔京都に住んでた?」

「…え?」

キョーコは蓮の問いかけに、奇妙な既視感を覚えた。

初めて蓮がこの石を拾った時にも、全く同じことを蓮から聞かれていたからだ。
そういえば、あの時ははぐらかされて、どうして京都に住んでたことを知ってたのか聞くことが出来なかった。

「…違った?」

蓮は即答しないキョーコに業を煮やして問い掛けた。

「いえ…違いません…けど?」

キョーコはデジャヴ?!と思いながらもそれに答えた。
キョーコが、注意深く蓮を見ていると、蓮はその言葉に驚きで息を飲み、目を見開いた。

「君に、コレをあげたのはーーー」

蓮が何か言いかけたその時、丁度タイミング良く病室のノックが響いた。

ーーコンコン

「蓮?入るぞ。」

そういいながら、社長のローリィと蓮のマネージャーの社が入室してきた。

「よう!蓮、調子はどうだ?」

「あ!キョーコちゃん!!良かった!また来てくれたんだね!もう、来てくれないんじゃないかと心配してたんだよー。」

ローリィと社が入って来たことで、気を削がれたキョーコが振り返って、社達を見やり挨拶を返していると、社の呼びかけを聞いた蓮が目の前の少女を、驚愕の表情で見つめながら、呆然と呟いた。

「…キョーコ…ちゃん?」

その言葉に驚いたキョーコが慌てて蓮に向き直った。

「…え??」

「キョーコちゃん…なの?!」

蓮が、キョーコに凄い勢いで詰め寄った。

「ど、どうしたんですか?敦賀さん?」

「「蓮??」」

社と、ローリィも驚きを隠せない。

「あの時の…キョーコちゃんなの?!」

「…あの時?」

キョーコは、心底訳がわからないという顔をした。

「この石、京都の河原でもらったんじゃないの?」

「え?ど、どうして今の敦賀さんがそんなことまで知ってるんですか?」

「…わからない?…俺のことなんて、忘れちゃった?」

蓮は寂し気に真剣な目でキョーコを見つめた。

キョーコはそんな蓮をじっと見つめ返した。

何故か、想い出の中のお別れの日の淋しそうなコーン少年と面影が重なった気がして、無意識にその名前を呼んでいた。

「…コーン?」

その言葉を聞いた三人は、面白いくらい全く異なる表情になった。

ローリィは驚愕の表情を浮かべてその場で固まり、社は疑問符が頭の中を支配し、蓮は心の底から嬉しそうに微笑んだ。

「っ!!やっぱり!キョーコちゃんなんだね!!…覚えてくれてたんだ!!」

蓮はそれはそれは嬉しそうに破顔した。

対するキョーコは混乱の渦の中に巻き込まれていた。

「…え?!…え?うそ…そんなはずは…だって、コーンは妖精で、…髪だって…目だって…えぇえ??」

蓮は、キョーコの髪に手を伸ばすと、優しく撫でて懐かしむように微笑んだ。

「大きくなったね。キョーコちゃんも、髪の毛染めちゃったんだね?全然わからなかった。髪も短くなって…この長さじゃ、ツインテールには出来ないね?」

キョーコはその言葉を聞いて目を見開いた。

あの頃のキョーコはツインテールがお気に入りの髪型だったのだ。
そして、コーンと会う時も必ずツインテールで会っていた。

それは、蓮にも一度も話したことがない、コーンとキョーコだけしか知ることが出来ないはずのことだった。

「本当に…?本当に、コーンなの?」

「うん!嬉しいな。キョーコちゃん、君も俺のこと覚えてくれてたんだね。この石もずっと大事にしてくれてたんだね。ありがとう。」

「だって…そんなこと…敦賀さんは一言も…それに、コーンは妖精の…はずで…」

キョーコは混乱していた。
蓮にもコーンの話はしていたのだ。なのに蓮は何も言わず、話をただ聞いていただけなのだ…。

しかし、目の前の蓮はコーンだという…。

妖精という単語がキョーコから出たことで、蓮は目を見開いた。

「あ…え?!キョーコちゃんもしかして、ずっと俺が妖精だって信じてたの?……それは…あの、騙すつもりはなかったんだ。あの時は…本当は妖精じゃなくて、人間だよって教えてあげなくてごめんね?」

蓮の言葉は申し訳ない気持ちがいっぱいの声になっていた。

ーーーコーンは、妖精じゃなくて…人間??

キョーコは、軽井沢で蓮をコーンと見間違えたことを思い出した。

ーーーあれは…見間違えたと思ってたけど、見間違えじゃなかった??じゃあこの人は本物のコーン?

「ずっと、会いたかったよ…キョーコちゃん!!」

蓮の瞳に嘘は見えなかった。
本当のことなんだと確信すると、みるみる内にキョーコの瞳に涙が溜まっていった。

「コーン…。コーン!!私も!私もコーンに会いたかった!!ずっとずっと会いたかった!!」

キョーコは感激の涙を流して、蓮の胸に飛び込んだ。
蓮もそんなキョーコを微笑んで抱き止め、愛おしそうにその髪を撫でていた。

ついていけないのは社とローリィである。
業を煮やしたローリィが口を開いた。

「おい!一体どういうことだ?!いい加減、説明しやがれ!」

「きょ、キョーコちゃん?!どうしたの?!」

蓮に抱きついたキョーコに驚いた社も声をかけたが、キョーコは感激し過ぎて、泣きじゃくっているので、話せる状態ではない。
代わりに、蓮が嬉々として口を開いた。

「ボス!キョーコちゃんは俺の恩人なんだ!キョーコちゃんとこんなところで再会出来るなんて夢見たいだ!もう二度と会えないと思ってたのに!!」

「だから、どういうことだ?二人は事務所以外で、どうやって出会ったんだ!一体、いつだ?!」

「俺が10歳で、キョーコちゃんが確か6歳の時だよ!京都に家族旅行でいった時に河原で出会ったんだ!数日間だけだったけど、二人で色んな話をしたんだよ。俺はキョーコちゃんが、俺がいなくなっても悲しいことから守ってもらえるように、この石を別れる日にキョーコちゃんにあげたんだ。」

蓮は、キョーコの髪を撫でてる方とは反対の手で握っていた石をローリィ達に見せた。

「なんと!」

ローリィは驚きすぎて空いた口が塞がらない。

「嘘だろ?!」

社もそれは同様だった。

二人が過去に出会っていて、時を超えて再び違う土地で再会を果たすなんて…!
運命じゃないか!!そう思わずにはいられなかった。


(続く)

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Amebaで2011/11/16に公開した話を若干訂正したものです。
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