なくした記憶 11

2015年12月01日13:37  なくした記憶/スキビ!《完結》


なくした記憶 11


蓮は記憶を取り戻す為に、ローリィから渡された過去の出演作品へ目を通していた。

しかし、頭の中は他のことに占拠されてしまっていた。

ーーーやっぱりキョーコちゃんって可愛いな…。

蓮はDVDを見ながらも、内容は全く入ってこず、考えるのはキョーコのことばかり。

ーーーちょっとスキンシップとっただけであんなに真っ赤になるんだもんな…。

蓮はキョーコの様々な顔を思い出し、どんどん顔が緩んでいくのだが、全く自覚などしていなかった。

結局、ドラマのDVDを見ても思い出すこともなく、3話ほど続けて見たところで、気持ちを切り替えようと、バラエティの番組が入ってるDVDを取り出して再生を始めた。

ーーー時期的には、これはまだキョーコちゃんに再会する前か…。

DVDに記載された日付を見て、再生した蓮は、そう考えながら見ていた。
しばらく見ていると登場のシーンで物凄い声援を受けてる自分がいて、驚きで目を見開いた。
ドラマとはまた違う自分の姿。立ち居振る舞いは絵に書いたような完璧な温厚紳士。
嘘くさい柔らかな微笑みを浮かべると、途端に客席から黄色い声援が飛んで来る。

ーーーこれが…俺か…?

蓮は信じられないという思いで、その姿を見つめた。

今の自分では考えられないような大人の余裕を醸し出していて、その動作の一つ一つの優雅さに、客席からはため息が漏れていた。

そして、自分でも知らなかった事実が明らかになる。

ーーー抱かれたい男No.1?!はぁ、何だか別人だな。そう言う風に世間に認められてるのは嬉しいことではあるけど…。

蓮がかじりつくように自分の姿を凝視していると、好きなタイプは?という質問が飛んでいた。

ーーー好きなタイプ…か…。

瞬間的に浮かんだのは、キョーコの顔だった。
画面の中の蓮が答える。

『そうですね…。優しくて、芯のしっかりした女性かな?』

途端にまた黄色い声援が客席から飛んできていた。



バラエティの入ったDVDの再生が終わった頃、若干落ち込み気味の蓮がいた。

ーーーなれるのか?俺は…アレに…。
おそらく、男として理想の姿だろう。だけど…。

蓮は、はぁーとため息を吐くと、ソファにもたれ掛かった。

ーーー抱かれたい男、No.1…か…。キョーコちゃんは、敦賀蓮のことを、どう思ってたんだろ?

蓮はキョーコが帰ったら聞いてみようと思いながら、まだ見ていないバラエティの入ったDVDに手を伸ばしていた。


まだキョーコが帰ってくるよりも早い時間に、部屋のインターフォンが鳴った。
インターフォンの画面をみると、敦賀蓮のマネージャーだという男が立っていたので蓮は部屋へ通した。

「やぁ、蓮!調子はどうだ?」

よく見ると結構な美男子で、マネージャーをしてるのが勿体無いくらいだ。
先ほどみたDVDを元に、少しだけ敦賀蓮を演じてみる。

「社さん。…でしたよね?」

「あぁ。そうだよ。…DVD見てたのか?」

「はい。あ、どうぞ、適当に掛けてください。」

「悪いな、蓮。」

人の良さそうな社は、ニコニコとソファに腰掛けた。

「それで?今日は一体…?」

「あぁ、復帰する前にまたしっかりと関係を作っておかないと不自然になるだろ?俺は、ここ3年ほど敦賀蓮のマネージャーやってきてるから、今のお前よりは、蓮のことをわかってるんじゃないかと思ってね。」

「そういうことでしたか。」

「うん。よしよし、受け答えは何とかなってきたな。初日のお前は酷かったからな…。ま、混乱してたのもあるんだろうけどさ。」

「いえ、失礼な態度ですみませんでした。」

「まぁ、気にするなよ。あれ?今日はキョーコちゃんはいないのか?」

「あぁ、キョーコちゃんは20時まで撮影のようですよ。」

「そっか。…あれ?この映画は…」

社は蓮が再生していたDVDを見た。

「あ!やっぱり!これ、新開監督の映画だろ?うわぁ!懐かしいなぁー!!」

「あ、そっか社さんはマネージャーですから、現場のことも覚えてますよね。」

「あぁ、俺はこの映画の撮影で初めてキョーコちゃんと会ったんだよ。」

「え?そうなんですか?でも、キョーコちゃん出てませんよ?」

「うん。だってキョーコちゃんは、このお前の相手役の松内瑠璃子ちゃんの付き人で来たんだからさ。」

「付き人?」

「あぁ、ラブミー部への依頼だったらしいぞ。」

俺は興味が湧いて、この撮影中に撮影裏で何があったのかを聞き出した。


「そんなことが…」

「そうそう、でも、そのおかげで瑠璃子ちゃんも心を入れ替えて、今までとは別人の様に演じられて、撮影もスムーズになったんだよ。」

「それにしても、足の骨にヒビが入ってるのに正座で演技なんて…」

「いやぁ!あれには皆驚いたよ!お前はその時初めてキョーコちゃんを認めたんだよ。なんてったって、新人のキョーコちゃん相手に本気で演技してたんだからな!」

そうやって話を聞いてから観ると、今まで只の映像だった物が、感慨深い物になってくるな…。と蓮は思い、社さんから撮影の時の話を色々聞くことにしたのだった。


社さんと会話をしながら過去の作品を見てる中、部屋のインターフォンが再び鳴った。

時計を見ると20時を過ぎたところで、すぐにキョーコだとわかった。

「あ!キョーコちゃん!」

今までの敦賀蓮の表情を脱ぎ捨ててウキウキと立ち上がったので、社さんがビックリした顔で見てきた。

「蓮…お前…!」

俺は社さんが何か言おうとしてることにも気付かずに、バタバタと玄関までキョーコちゃんを迎えにいった。

玄関を開けたキョーコちゃんを見つけると、すぐさま腕の中に閉じ込めた。

「おかえり。キョーコちゃん。」

「た、ただいま…コーン。」

ニコニコと抱きついて来た蓮にギュと抱き締められて、案の定下を向き真っ赤になってしまったキョーコ。そんなキョーコが可愛くて、蓮は極上の笑顔を浮かべてしまう。

「れ、蓮?!」

リビングから出て来た社がキョーコに抱きついて極上の笑顔を浮かべた担当俳優を見て、キョーコ同様顔を真っ赤にしてガタガタっと壁にぶつかっていた。


(続く)

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Amebaで2011/11/21に公開した話を若干訂正したものです。
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