なくした記憶 14

2015年12月07日08:13  なくした記憶/スキビ!《完結》

なかなか進んでおりません(^_^;)


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なくした記憶 14



「え?!昨日の俺…そんな状態だったんだ…」

「やっぱり…覚えてないんだ?」

「いや…言われてみればそうだったかも…。夢だと思ってたんだけど…。」

シャワーを浴びて、身支度を整えた蓮に、朝食を用意しつつ昨夜の出来事を赤い顔を誤魔化すように軽く睨みながらキョーコが話す。
恨めし顔で蓮を見ていたので、蓮は罰が悪そうに苦笑していた。

「それでキョーコちゃんが俺のベッドにいたんだね?」

「うっ…。そ、そうです…。」

改めて確認されると何だか恥ずかしい!だって、敦賀さんのベッドに自分から入るだなんてー!!
顔が益々赤くなるのを感じる。

「でも、何であんなにお腹の虫が鳴くまで我慢してベッドにいたの?」

カァァっと頬が熱くなる。

ーーーこれは、私が説明しなきゃいけないの?と、言うよりコーンってば本気で言ってるの?

おずおずと蓮を見上げる。

「コーン、本当に覚えてないの?その、どこに…寝てたか…とか…寝ぼけてた時のこと…とか…」

流石に最後まで蓮の顔を見ながらは言えず、顔を反らし段々と声の音量も下がって最後の方は蚊がなくほどだった。

蓮は頭に疑問符をいっぱい浮かべて、記憶を辿る。

ーーーどこに寝てたか??…今朝は確か、暖かくて柔らかい何かを下敷きにしたまま抱き締めて寝ていて…。頬の辺りにあった柔らかい物が妙に気持ち良くて、鼓動が伝わって…心地よくて…って…あれ?…いや……まさか?!?!

そこまで思考を巡らしてハタと何かに気付いた蓮。

恐る恐るキョーコを見ると、顔を真っ赤にしたまま反らして、チラチラとこちらの様子を目だけで伺っている。

「あ、のさ、もしかして…なんだけど…」

キョーコの動きがピキョンと固まる。

「もしかして…あの、俺、キョーコちゃんを抱き締めて寝てた?」

今まで赤かった顔を更に赤くするキョーコ。

「それで、あの、もしかして…胸を…枕に…?」

流石に蓮も言葉にすると恥ずかしくて、言いながら真っ赤になってしまった。
キョーコはフルフルと握りしめた手を震わせている。

答えを待つ蓮をキョーコはチラリと見ると、すぐに顔を横に反らして、ぎこちなく小さくコクンと頷いて見せた。

「あ、あの、ご、ごめんね!キョーコちゃん!!あの、その…そんなことになってたなんて!お、起きてたなら、起こしてくれても良かったのに…!」

最後の言葉にキョーコが、真っ赤な顔のままキッと蓮を睨みつけて叫んだ。

「起こしたもん!!起こそうとしたら、その度に頬ずりしながら擦り寄って来るんだもん!!がっちり掴まれてるから、抜け出せないし、揺り起こそうとしてもますます抱きついてくるし、全然起きてくれなかったんだからぁーーーーー!!!!もう!コーンのばかぁ!!!!!」

キョーコは言い逃げするかのように、叫びながらゲストルームに逃げ込んで行った。

「あ!!キョーコちゃん!!!!」

バタンと勢い良く閉まるゲストルームのドアの音が響く。

「あの…ご飯は…いいの?」

俺の間の抜けた寂しい質問だけが独り言のようにこぼれて部屋に消えた。

ゲストルームに篭ったキョーコは20分ほどして落ち着きを取り戻したのか、まだ若干顔は赤いものの、何とかリビングに戻ってきた。

蓮はキョーコの用意した朝食の前に正座して、申し訳なさそうにキョーコを見上げた。

「あの、ごめんね?キョーコちゃん…。」

「もう!いいです!!それより、何で食べてないんですか?!」

蓮の前にはキョーコが用意したままの朝食が残っていた。

「だって…俺が一人で食べたらキョーコちゃんが食べるとき一人でしょ?一人で食べるより二人で食べた方が美味しいかな?って…。」

蓮がしょんぼりしながら答えた。

「うっ!」

キョーコはまたもやトキメキスイッチを押されてしまった。

ーーーか、可愛い!そんなことそんな顔で言われたら怒れないじゃないですか~~~!!なんでそんなに一々可愛いのよ~~!!

心の中で身悶えてしまうキョーコ。

「それに、お腹空いてるキョーコちゃんを一人残して自分だけなんて食べれないよ。」

ーートクン。

蓮の優しさがキョーコの鼓動を跳ねさせる。

「も、もう!ありがとうございます!!じゃああの。冷えてしまったと思うので、お味噌汁温め直してきますね!」

そう言ってキョーコはバクバクとなる心臓を誤魔化す為に二人分のお味噌汁を持ってキッチンに駆け込むのだった。

ーーーダメ!!ダメよ!キョーコ!!今の敦賀さんは記憶を失ってるんだから!記憶を無くす前の敦賀さんには、ちゃんと好きな人がいるんだから!!優しいからって勘違いしたらダメ!!

キョーコはお味噌汁を温め直しながら、心の中で呪文のように繰り返した。

深呼吸をして、心を落ち着けてからキッチンを出て蓮の元へ戻ったのだった。


何とか落ち着きを取り戻し、食事を終えたキョーコは、蓮と二人まったりとした時間を過ごしていた。

学校にいくには中途半端な時間になってしまった為、キョーコは午前中は蓮とゆっくりすることにしたのだ。
その為、蓮はニコニコとご機嫌である。

ブラックのコーヒーを口にした蓮が盛大に顔を顰めたのをみて、キョーコが不思議そうに問いかける。

「どうしたの?コーン?」

「…苦い…」

どうやらブラックのコーヒーがお気に召さないらしい。

「ぷっ。」

キョーコは思わず吹き出してしまう。

「笑わないでよ。」

いじける蓮がキョーコにとってはたまらなく可愛い。

いつまでも笑い続けるキョーコを見ても、蓮には面白くない。

「キョーコちゃん?」

キュラキュラとした笑顔で、そろそろ笑うのを止めて欲しいな?と言おうとしたところで、不自然にキョーコが固まった。

キョーコは蓮が怒りのセンサーを発動させるときの笑顔に似ていたので固まったのだが、蓮は、クエスチョンマークを浮かべて固まったキョーコを不思議そうに見てくる。
キョーコは慌てて蓮の気を逸らそうと、誤魔化す様に話し出した。

「そ、それはそうと、昨日もDVD見たんですよね?どうでした?何か思い出しました?」

「いや、それが全然だよ。」

蓮はキョーコが笑わなくなったことに安堵して、それに答える。
心の中では、絶対にブラックのコーヒーを平気で飲めるようにしようと誓うのも忘れない。

「復帰…確か、明日からでしたよね?」

「うん。もう敦賀蓮を徹底的に研究するしかないよね。」

「ふふ、自分を研究ってどんな気分ですか?」

「凄く不思議。昨日はドラマを数本と、インタビューを見たけど、本当にこれが俺?って凹んじゃったし。」

「え?なんで凹むの?」

「だって、春の日差しのような人…って例え方されてるんだよ?!思わず赤面しちゃったよ。」

キョーコは蓮の赤面した姿を思い描いてクスクス笑った。

「もう!笑わないでよ。」

拗ねたようにぷいっと顔をそらす蓮が可愛くて、益々クスクス笑うキョーコ。

「そう言えば、昨日は社さんと新開監督の映画をみたよ。」

「あ!もしかして、あれですか?松内瑠璃子ちゃんが出てる…」

「そうそう!」

「うわぁ!懐かしいなぁ。」

キョーコはその時のことを思い出しながら言った。

「社さんから聞いたよ?随分無茶したらしいね。足に怪我したまま演技対決なんて…」

「ふふふ。でも、私それがきっかけで本気でお芝居の勉強がしたい!って思うようになったんですよ。」

蓮は目を丸くしてキョーコを見た。

「そうなの?」

「はい!!」

キョーコは微笑んで、その時のことを懐かしそうに語った。



(続く)

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※Amebaで2011/11/24に公開した話を若干訂正したものです。
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