なくした記憶 15

2015年12月07日12:06  なくした記憶/スキビ!《完結》

なくした記憶 15


「やっぱり、思い出したいなぁ」

昔話を聞き終えた蓮がポツリと漏らした。

「え?どうしたの?コーン?」

「だって、俺の忘れてる記憶の中に、今のキョーコちゃんとの思い出がいっぱいあるでしょ?全部忘れてるの…勿体無いし、何だか悔しいな…。」

「コーン…。」

キョーコは思い出したいと言ってくれる蓮の言葉に嬉しいと思いつつも、今の蓮との距離の方が近くにいられるような気がして何となく思い出して欲しくないという、相反する複雑な思いを抱いていた。

何より、敦賀蓮には好きな人がいるのだ。それを思い出してほしくないとズルい考えが頭を過る。

「ねぇ、キョーコちゃんからみて、敦賀蓮ってどんな人物?」

蓮は今まで聞いてみたかったことを興味津々という目でキョーコに聞いた。
途端に固まるキョーコ。

「…へ?!」

聞こえてなかったのかな?と思いながら、もう一度問いかける蓮。

「だから、キョーコちゃんにとって、敦賀蓮ってどんな存ざ…」

「尊敬してます!!!!」

「え?!」

蓮がいい終わるより前に、ズバリ言い切ったキョーコに固まる蓮。

「崇拝してます!!」

とても崇拝してるように見えない形相のキョーコが言う。

ーーー顔が怖いよ?キョーコちゃん…

蓮はタジタジだ。

「えっと…崇拝?」

「はい!信仰してます!!!!」

何故か、キョーコの背後に、敦賀教の姿が見え、唖然とする蓮。

「あの…既に人じゃない気がするんだけど…。」

「もちろん!!敦賀さんは私にとって、神様みたいな人なんです!!」

真剣な顔で、言い募るキョーコ。

ーーーそうよ!そんな素晴らしい御方に恋心を抱くなんて、何て身の程知らずなの?!

心の中では、必死に気持ちを封印しようとする。

蓮はじぃっと、そんなキョーコの様子を見る。

キョーコはそんな蓮の視線に気付き、ドギマギと困惑する。

ーーーも、もしかして、私の気持ちバレバレ?!!

キョーコが頬を僅かに染めながら、冷や汗をダラダラかきつつ蓮を見ると、蓮が口を開いた。

「キョーコちゃん…」

いつもより若干低い声が響く。

ゴクリと喉を鳴らすキョーコ。

「俺が知りたいのは、そういう抽象的なことじゃなくて…その…もっと具体的な…ことなんだけど…。周りにどう振舞ってたとか、私生活の部分の敦賀蓮が知りたいんだ…」

蓮がやや落ち込み気味に話をする。
キョーコはハッとして謝ると、事故に会う前の蓮のことを思い出しながら話し始めた。

「敦賀さんは…どんな方にも優しくて…あ、たまに私には凄く意地悪なんですけど!うーん。…誰にでも親切で、仕事にも自分にも厳しくて、遅刻を一度もしたことがない無遅刻キングなんです!それに大人で、だからこそ本気で怒ると凄く怖くて、でも、心の底から謝ればどんなに怒っていても許してくれる。そんな人なんです。敦賀さんの怒りのツボは私もまだ良くわからないんですけどね。」

くすくすと懐かしみながら話をするキョーコを蓮はただジッと見つめる。

「いつもキラキラした笑顔で本音を隠してしまうんです。静かに笑顔で怒りをぶつけられたり、嫌味を言われるのは凄く困りますけど、とても後輩思いで、お忙しいのに演技指導までしてくださったりして…何度もご迷惑おかけしました。」

はにかむように笑うキョーコを見て、蓮は何故かモヤモヤとした思いが募る。

「キョーコちゃんってさ…」

蓮の空気が沈んでる事に気付いたキョーコは顔をあげて不思議そうに蓮を見上げた。

「もしかして、キョーコちゃんって、敦賀蓮のことが好きなの?」

蓮の探るような目がキラリと光りキョーコを見た。



ーーもしかして、敦賀蓮のことが好きなの?

今、蓮に言われた言葉が、キョーコの頭の中を回る。言葉の意味を理解した瞬間、顔がカァっと真っ赤になるのがわかる。

ーーーやっぱりバレたー!!しかも本人になんてぇ~!!!!

キョーコの顔が真っ赤になったのをみて、蓮は自分の考えが間違いでないことを確信すると、何故かわからないまま、自分の中でどす黒い感情が渦巻いたのを感じた。

ーーーキョーコちゃんが好きなのは、敦賀蓮みたいな完璧な人間なんだ…。俺とは全く違うあいつが好きなんだ…。

未だに自分と敦賀蓮が同一人物だと認識しきれていない蓮は、敦賀蓮に好意を寄せるキョーコを見て何故かムカムカしていた。
その感情は間違いなく嫉妬なのだが、本人にはこの感情が何かわからず、この気持ちを持て余していた。

キョーコは当然ながら、そんな蓮の怒りを敏感に察知してしまった。

ーーー何で怒ってるの~?!

蓮の怒りに恐れ慄き怯えるキョーコ。

ーーーやっぱり、私みたいなのが、敦賀さんに恋心を抱くなんて身の程知らずだと思ってるんだわ!!

キョーコは本人にまでそう思われてしまったんだとショックを受けて悲しくなった。

シュンと下を向いてしまったキョーコに、蓮は気付けないままキョーコから顔を逸らし、このわけのわからない感情が何なのかと困惑していた。

お互いに黙ってしまった為に、
ノロノロとただ時間だけが過ぎた。


(続く)

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敦賀蓮自分自身に嫉妬してしまうの巻。
今回短めになってしまいました!
こんな切り方してたら結構続きそうですね(笑)

※Amebaで2011/11/24に公開した話を若干訂正したものです。
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