なくした記憶 16

2015年12月13日08:46  なくした記憶/スキビ!《完結》


少しお休みしてしまいました!すみません。
何だか断片的に書きたいストーリーは次々浮かぶのですが、そこに繋げる為の話がなかなか難しく苦戦しております(笑)
ではでは、なくした記憶をお楽しみ下さい。


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なくした記憶 16


キョーコが収録の為に出掛けて数時間後、蓮の目の前には社が座っていた。

蓮の機嫌が悪いのを察した社が、蓮から事の次第を聞き出したのだ。

「ーーそれで、敦賀蓮のことが好きなのか聞いたんです。」

「うんうん。で??キョーコちゃんは何て答えたんだ?」

社の目はキラキラとしていた。

「何も…。肯定も否定もしませんでしたけど、彼女そう聞いた途端、真っ赤になって下を向いてしまったんです。」

「え?!それって…」

社は女子高生のようにキャーキャーと騒ぎたいのを胸の内に抑えて、蓮の顔を見るが、蓮の顔色は冴えないままだ。

不思議に思いながら社は蓮に問いかけた。

「なぁ?蓮…何でキョーコちゃんがお前のこと好きかもしれないってのに、そんな顔してるんだ?」

「わからないんです…。ただ、キョーコちゃんが敦賀蓮のことが好きなんだって、分かったら何故か凄くムカムカして…」

社の顔が引きつる。

「はぁ?!お前…まさか、自覚もしてない内から自分自身に嫉妬したのか?!勘弁してくれ!!」

「え?…何ですか嫉妬って…」

「お前な、自分以外の奴に目を向けるキョーコちゃんが面白くないんだろ?そう言うのを世間一般では、嫉妬って言うんだよ。ったく、寄りによって自分に嫉妬するなんて呆れるよ。」

社が呆れたように蓮に言うのだが、蓮は納得してなかった。

「確かに、キョーコちゃんは、俺にとって特別な思い出の女の子ですけど、嫉妬とかそんなの抱く対象じゃありませんよ。俺は大事な人は作らないって心に決めてるんですから。」

「は?!なんだよそれは!」

「それに自分自身に嫉妬って何ですか。そんな話聞いたことありませんよ。」

ーーーいや、俺もそんな話今まで聞いたことないから!

蓮の言葉に、社も心の中で突っ込んだ。

「はぁーー。お前はそうやって言い出したらなかなか素直に認めないからな。…まぁいい、とにかく、明日から復帰するんだから、キョーコちゃんとは仲直りしとけよ!そんな顔のまま復帰されても困るからな!」

「はい…。すみません。」

社は呆れたままマネージャーとしてしっかり釘を刺すことは忘れなかった。
蓮はシュンとしたまま、社に頭を下げた。


収録を終えたキョーコは浮かない顔のまま、テレビ局内を歩いていた。
何となく帰りたくなくてノロノロとした足取りになってしまうのは仕方がないだろう。

蓮に聞かれて答えなかったのは肯定しているようなものだ。
そして、その後の蓮から感じたあの怒りの波動の意味するところは…。

ボーッと歩いていたら、突然声をかけられた。

「あれ?京子ちゃん?」

ビクッとして背筋を伸ばす。

「あ!百瀬さん、お久しぶりです!」

「久しぶり~。京子ちゃんも今日は収録?」

「はい!私は今終わったので、これから帰るとこです…。」

Dark Moonで共演した百瀬逸美と会うのは実に数ヶ月振りだった。
久しぶりにお茶でもどうかと逸美に誘われ、二人はテレビ局内のカフェに入って、紅茶を二人分注文すると席に着いた。

「それで、京子ちゃん、何だか元気なかったみたいだけど、どうしたの?」

「え?」

逸美に突然問われて、キョーコは驚いた。

心配そうに覗き込む目を見て、キョーコは今更ながら、逸美がお茶に誘ってくれたのはキョーコに元気がないのを心配してくれたからだったのだと悟った。

「あ…その…」

答えないキョーコを見て、逸美が問いかけた。

「敦賀さんと何かあった?」

「え?!」

キョーコは驚いて顔を上げた。
その顔には『何でそのことを?』とデカデカと書いてある。
逸美はクスリと笑いながら言った。

「ふふ、京子ちゃん敦賀さんととっても仲が良かったから、今でも仲いいのかな?と思ったら、ついね。」

くすくすと笑ながら言う逸美の姿をみて、絵になる人だわ。と思わず見惚れてしまうキョーコ。

「違ったかな?」

「え…?!あ、いや…その…」

何と返事をしていいのか分からず言葉を濁すキョーコ。
逸美がクスクス笑ながら紅茶を口に含む仕草に再びつい見惚れてしまう。

「京子ちゃん?」

気がついたら、逸美から顔を覗き込まれていた。
逸美はキョーコを心配そうに見つめている。

「はっ!す、すみません!!あ、あの!百瀬さんが凄く綺麗だったので、つい見惚れて…」

真っ赤になりながら正直に言うキョーコに驚いた顔をして、クスクスと逸美は笑った。

「京子ちゃんも、充分魅力的だと思うけど…?」

言いながら逸美は、Dark Moonの時のインタビューを思い出し、少し淋しそうな顔になる。

ーーーだから敦賀さんも京子ちゃんのことが…。

蓮のことが気になってよく見ていたので、蓮の視線が自然とキョーコを見て、柔らかくなることに逸美は気付いていた。
悔しいなと思う時もある。あの時に逸美の役に向けていた蓮の眼差しの行先はキョーコなのだと気付いたからだ。しかし、キョーコ自身はそのことを分かっていないことにも、逸美は気付いていた。

ーーーそうだ。敦賀さんと言えばあの噂は…。

逸美はふと先週耳にした噂話を思い出し、キョーコに確かめることにした。

「そういえば、この間敦賀さんが交通事故に遭われたって噂話を耳にしたんだけど…」

キョーコは一瞬ギクリとしたが、すぐに持ち直して逸美に答えた。

「えぇ、そうみたいですね。私もこの間事務所で聞いて…。」

「え?!大丈夫なの?!!」

「あ…はい!大丈夫そうですよ。外傷もほとんど無くて、しばらく様子見で休んでたようですけど、明日から復帰されるって聞きましたから…」

キョーコが蓮の記憶のことには触れずにニッコリと微笑んで言うと、逸美はほっと安堵の息を吐いた。

キョーコはそんな逸美の顔をみて、ふと思い当たってしまった。

ーーーもしかして、敦賀さんの好きな人って、百瀬さんなんじゃ…。

蓮と逸美は共演しただけあって、とてもお似合いだ。
逸美が蓮に恋心を持っているのはキョーコもなんとなく気付いていた。
もし蓮が想っている相手が逸美なら、きっとお互いが気持ちを伝えあったら誰もが羨むようなカップルになるはず。

もし、今の蓮が逸美に会ったりしたら、また再び恋に落ちてしまうのだろうか?だとしたら、自分はどうしたらいいのか…。キョーコは絶望的な気分になった。

今コーンとして接している蓮の側はとても居心地がいい。ここに居ていいと言われてる気分になる。
もしも、そんな存在を失ってしまったら…?
失いたくない。取られたくない!キョーコは自分の居場所を取り上げられる気がして怖くなってしまった。

「京子ちゃんは、敦賀さんとは最近会ってないの?」

「え?」

キョーコが思考の森を彷徨ってる時に不意に逸美から声をかけられた。

「事故にあった後の敦賀さんとはまだ会ってないの?」

「あ…会いましたよ。」

お世話するために、一緒に住んでるから毎日会ってます!…とは流石に言えない。
キョーコはドギマギしながら答えた。

「本当に見た感じ傷はないし、事故にあったとは思えないくらい普通に生活されてます。」

「そうなんだ。ここ一週間姿見せなくなったから心配してたのよ。あの噂が本当で、相当悪いんじゃないかって。京子ちゃんが大丈夫っていうなら大丈夫ね?」

ニコニコと笑う逸美を見て、凄く切なく胸が痛んだ。

ーーこんなに綺麗な人が自分を好きだと言ったら、コーンはどうするんだろう?嫌だ!そんなの嫌!コーンは…私の…わたし…の…?…何だって言うんだろう?今朝だって、私の想いを知って迷惑がられてしまったのに…身の程知らずだって怒ってたのに…。私のものでも、何でもないのに…。

キョーコは泣きそうになっていた。

「も、百瀬さん!すみません!私、ちょっと次の予定が入ってたの忘れてました!!」

「え?あ…そうなの?ゴメンなさいね。無理にお茶に誘ったりして…。」

「あ!いえ、私が勝手に忘れてただけなので…!すみません。そそっかしくて!!また誘って下さい!失礼します!!」

キョーコは慌てて告げると、逃げるようにその場を後にした。

自分が絶対に敵わないはずの逸美のような綺麗な人を相手に嫉妬をしている自分が信じられず、キョーコは泣きたい気持ちを無理矢理笑顔に作り変えて、出来るだけ早く逸美の側を離れた。


キョーコは薄暗い非常階段で、一人コーンを握りしめ、呪文のように唱えていた。

「大丈夫大丈夫大丈夫…私は大丈夫!…よし!!」

キョーコはしばらく下を向き呟いていた顔をガバッとあげた。
そして、複雑な微笑みを浮かべながら、優しくコーンを撫でる。

「また、頼っちゃった…。本物のコーンは側にいるのに…変だね?だけど、いつかはまた何処かに行っちゃうんだ。敦賀さんも…コーンも…こんなに近くにいるって思ってたのに…。」

ーーーだからこそ、私は強くならなきゃいけない。最初から分かってたじゃない叶わない想いだって。だけど、どこかで期待してた。もしかしたら…コーンと二度も出会えたのは運命なのかも…なんて。

「コーンのスキンシップはそう言う意味じゃなかったのに…馬鹿ね。私は…。」

ーーーでも、たとえ蓮が誰かと恋に落ちたとしても、このコーンのくれた石だけは…持っててもいいよね?

キョーコは手のひらの石を愛おしそうにギュッと胸元で握りしめたまま、祈るように目を閉じた。


(続く)

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敦賀蓮自分自身に嫉妬してしまうの巻。
今回短めになってしまいました!
こんな切り方してたら結構続きそうですね(笑)

※Amebaで2011/11/28に公開した話を若干訂正したものです。
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