なくした記憶 18

2015年12月15日09:17  なくした記憶/スキビ!《完結》

お待たせしました!なくした記憶UPです。
しばらく更新まばらになりそうです~。
ではでは続きをお楽しみ下さい。


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なくした記憶 18


「ねぇコーン?食べにくくない?」

「俺は全然大丈夫だよ。」

ニコニコとご機嫌に言う蓮の足の上に座った状態のキョーコは、蓮に後ろから抱きしめられるような形で座っている為、食べ辛くてしょうがなかった。

「あ!キョーコちゃんもしかして食べ辛かった?」

蓮がそれに気付いて、申し訳なさそうにキョーコに尋ねた。

「あ、うん。…まぁ…」

と顔を赤くして言うキョーコに、蓮は何の戸惑いもなく言い放った。

「じゃあ、俺が食べさせてあげるね。」

ニコニコとしながら蓮が言うと、キョーコのお皿から芋の煮っころがしを箸で掴むと、キョーコの目の前に持ってきた。

「はい。アーン。」

甘やかな声で耳元で囁かれ、キョーコは茹でダコのように真っ赤になってしまった。

「コ、コーン!お箸コーンのだよ?!」

「大丈夫だよ。口開けて?はい。」

芋でちょんちょんと口をノックされて、仕方なく口を開くキョーコ。

しっかり食べたキョーコを見て蓮は破顔して、緩んだ顔をそのままにキョーコを覗き込んだ。

「美味しい??」

「う、うん。」

カァーと顔を赤らめているキョーコを見て、蓮はニコニコと嬉しそうに微笑んだ。

「キョーコちゃん。可愛い!!」

無邪気に抱き付いてくる蓮に耐えきれず、キョーコはほとんど噛んでないまま、ゴクンと飲み込むと、急いで離れようと藻掻いた。

心臓が音を立てて壊れそう!

しかし、蓮はそんなキョーコを難なく片手で抱きしめたまま、嬉々として、次にキョーコに食べさせるものを選びはじめた。


キョーコの抵抗も虚しく、結局最後の一口を食べるまでは蓮から開放してもらえなかった。キョーコは食べ終わってからは、立ち上がるのもままならず、ソファーに突っ伏してしまった。

蓮はそんなキョーコに構わず、片付けは任せて!と、ご機嫌なままキッチンへ食器を片付けていったのだった。


一人残されたソファで先ほどのことを考えるキョーコ。

突然後ろから抱きしめられて、心臓が壊れそうで、気持ちが溢れて思わず蓮に告白してしまった。
しかし、蓮はそんな告白もあっさりと躱してしまった。

ーーー告白なんて、され慣れてるわよね?私なんかに告白されて動揺しないのなんて当たり前か…。

蓮はそんな告白の後でも気にせずにキョーコを膝の上に乗せてご飯まで食べたのだ。

まるで恋人のようなその行動なのに、蓮がそういうつもりでないことは充分わかっていたので、キョーコは胸が締め付けられ、近くにあったクッションを抱き込んで顔を埋めた。

ーーー私…もっと魅力的な女性に産まれてきたかった…。

キョーコの目には熱がじわりと集まっていた。


洗い物を終えた蓮がリビングに戻ると、クッションを抱えたままのキョーコがソファとテーブルの間にゴロンと転がり眠っていた。

クッションには涙が滲んでいる。

「全く相変わらず無防備だな…君は…。」

蓮は苦笑しながらそう漏らすとキョーコに近寄った。

そこでハタと自分が言った言葉に気付く。

「あれ…俺…?」

蓮はキョーコをじっと見つめて考えた。

ーーー相変わらず…無防備?

蓮は今までキョーコが可愛いとは思っても、無防備などとは思ったことはない。

今も別に無防備だとは感じない。

しかし、口から出た言葉は“相変わらず無防備”と、いつも思っていたかのような口振りだった。

暫らくキョーコの寝顔を覗きこんでいた蓮だが、それ以上は何も感じなかったので、考えるのを諦めキョーコを抱き上げようと手を伸ばした。

キョーコは浅い眠りだったのか、蓮が伸ばしてきた手で、意識が戻ってきた。

蓮のことを考えながら少し眠ってしまったらしいと自覚しながら、薄目を開けると、目の前には蓮の顔のドアップがあって、キョーコはびっくりして固まってしまった。

「あれ?起きたの?」

目を開けて固まっているキョーコを見て、蓮は首を傾げた。

「今、ベッドに運ぼうとしてたんだ。」

蓮の言葉にキョーコが完全に覚醒した。

「いやいや!いい!!運ばないで!!重たいから!!」

キョーコは真っ赤になって必死に言い募ったが、蓮は心底不思議そうな顔をして、ヒョイとキョーコを抱き上げた。

「きゃぁぁぁぁ!!」

目覚めたばかりの身体が急に持ち上げられたことで、キョーコは悲鳴を上げながら蓮の首にしがみついた。

蓮はニコニコとしながらキョーコに言った。

「キョーコちゃんは軽いよ?羽が生えてるみたいだね。」

「えぇえぇえ?!羽?!そんなことないから下ろして~!」

キョーコがジタバタと蓮の腕のなかで暴れるが、蓮はそんな抵抗をものともせず、キョーコをふんわりと笑ながら見つめた。

「本当のことだよ。キョーコちゃんは、天使みたいだね。」

蓮の言葉にキョーコはピタリと動きが止まりボボボボボっと、真っ赤になった。

「て、天使?!」

「うん。エンジェル。」

蓮がニコニコと言うので、深い意味があって言ったわけではないとキョーコにはわかった。

キョーコは寂しそうに微笑むと、目を蓮から逸らした。

キョーコの反応に気付いた蓮は心配そうにキョーコの顔を覗きこんだ。

「どうかしたの?」

そんなことを聞かれても答えられるはずのないキョーコは、首を振ると蓮の目を見もせずに静かに言った。

「なんでもないの…。そろそろ下ろして。」

蓮はキョーコの言い方が怒ってるように感じて、言われたとおりキョーコを恐る恐る降ろした。

「お風呂…入ってくるね。コーンは明日朝早いんだから、早く寝てね。おやすみ。」

キョーコは蓮に背中を向けたまま静かにそう言うと、逃げるようにバスルームへと向かった。

蓮は、常にないキョーコの反応に不安を覚えたが、そこから動くことが出来なかった。
キョーコを追いかけようと伸ばした手だけが、宙を彷徨っていた。


(続く)

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※Amebaで2011/12/03に公開した話を若干訂正したものです。
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