なくした記憶 20

2015年12月17日09:39  なくした記憶/スキビ!《完結》


まだ答えれてないリクエストいくつかありますが、なくした記憶のリクエストもあったので、少し話を進めてもう少し先で出そうと思います。
ということで、なくした記憶お楽しみ下さい☆


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なくした記憶 20


「お前…運転出来るのな?」

助手席に座った社が、何の違和感もなく運転する蓮を見て、呆れたように呟いた。

「まぁ、身体が覚えてるってことじゃないですか?」

そんな社をチラリと見た蓮は、しれっと最もらしく言ったが、社はほーぅと、疑わしげに白い目で蓮を見つめる。

「お前、免許取る前から運転してた口だろう。」

「…何、人聞きの悪いこと言ってるんですか。」

「お前老けてるからなぁ~。免許無しで運転してても、バレなかったんだろう?」

「………。」

「ま、いいけどさ。お前今は免許ちゃんと持ってるんだし、問題ないから。」

「…じゃあ変な事言わないでくださいよ。」

「はいはい。ま、なんにしても今日から忙しくなるからな!気合い入れろよ。」

「えぇ。頑張りますよ。」

蓮がいささか緊張気味に、社の言葉に応じた。


「敦賀さん入りまーす!!」

スタッフの声がスタジオに響くと何人ものスタッフや共演者に囲まれた。

「いやぁー!待ってたよ」

「敦賀君!大丈夫だった?」

「皆さん、ご心配おかけして申し訳ありませんでした。」

にこやかに挨拶を交わして、メイクルームに移動する。
役に入ってる時以外はニコニコとした笑顔を顔に張り付け対応をして敦賀蓮として違和感を持たれないように常に気を張って振舞っていた。


撮影の休憩中、楽屋に一度引っ込んだ蓮は椅子に突っ伏した。

「疲れた…」

「おいおい、大丈夫かよ?蓮…。どこでどんな奴に見られてるかわからないんだからな。ここはテレビ局だし、カメラが何処かに仕掛けられてることだってあるんだ。楽屋だからって気を抜いたらダメだよ。ほら。」

社がそういいつつ、ペットボトルの水を差し出す。

「ありがとうございます。ちゃんと敦賀蓮になってましたか?」

「あぁ、まぁな。良くやってるよ、お前…。」

社の言葉に蓮は呟く。

「必死なんですよ…。俺も…。」

「まぁ、そのうち慣れるさ。それより、ほら弁当もらって来たから、ちゃんと食べなさい。」

社さんが、ロケ弁を差し出して来たが、蓮は申し訳なさそうな顔を社に向けた。

「ん?どうしたんだ?」

「あの…実は…キョーコちゃんが…」

そう言って、鞄から弁当箱を取り出した蓮を見て、社の顔が一気にニヤリした笑顔に変わった。

「そーかそーか!キョーコちゃんの栄養満点愛情弁当か!!それは残さず食べられるな!」

ニヤニヤと笑う社を無視して、蓮はキョーコの弁当を広げたのだった。


蓮と社が次のテレビ局に到着し、楽屋に移動してる時だった。

蓮の耳にキョーコの声が聞こえた気がして辺りを見回すと、三人の男に囲まれ、楽しそうに話をしているキョーコを見つけた。

「あはは!光さんも慎一さんも笑わせないで下さい。」

「ちょっとキョーコちゃん!違うよ!俺は…」

「まぁまぁリーダーいいじゃんかぁ。」

キョーコの笑う姿に、顔を真っ赤にしながら喚くリーダーと呼ばれた若い男と、宥める男。もう一人の男もそんなキョーコ達の姿を見守るように笑っている。

蓮はピタリと立ち止まると、社が気付いて蓮の視線の先を探った。

「れ、蓮?」

物凄い顔で四人の姿を睨み付ける蓮に、社が慌てて声を掛ける。

「社さん、あれは誰ですか?」

社は内心、あれ扱いかよ!と、思いつつ、蓮の問いに答えた。

「あぁ、彼らは俺たちと同じ事務所のタレントグループだよ。キョーコちゃんにとっては同じ部の先輩だ。確か、ブリッジロックって言ってたかな?」

「同じ事務所の…先輩?」

蓮はどこか引っかかる言葉に感じたが、何かは思い出せない。

ただ4人の楽しそうな姿を見て、イライラと共に湧き上がる焦燥感と、黒いドロドロとした感情が溢れ出す。

蓮はキュッと口を結ぶと、スタスタとキョーコ達の方へ歩き始めた。

「お、おい!!蓮?!」

社は慌てて追い掛けるが、蓮はあっという間にキョーコの背後に近付いていた。


キョーコがいつもの様にブリッジロックのメンバーと会話をかわしていると、後ろから怒りの波動が迫り来るのに、怨キョ達が反応した。

身に覚えのありすぎるその怒りの波動を感じ取ったキョーコは一気に固まった。

メンバーの一人がその波動の原因の人物を見つけ声を掛ける。

「え?!敦賀さんじゃないですか?!」

「うわっ!ホンマや!本物か?!」

「おまっ!それは失礼だぞ!」

「お疲れ様です!俺たち、敦賀さんと同じ事務所のタレントでブリッジロックっていいます!」

「やぁ、お疲れ様。」

キョーコの真上から降って来るような声とキュラキュラときらめく笑顔の雰囲気に、怒りの大魔王はキョーコの背後にいると言う事が嫌でもわかった。

「あれ?キョーコちゃん…どうしたの?顔色悪いよ?」

ダラダラと冷や汗を流すキョーコに気付いた光が、心配そうにキョーコの顔を覗き込もうと身体を屈めた瞬間、蓮の手が、キョーコを光から遠ざけるように、グイッとキョーコの身体を抱き寄せた。

「コ…、っつ、敦賀さん!」

後ろから抱き締められたキョーコが慌てて蓮を宥めようとするが、蓮は三人をギロリと睨み牽制を掛ける。

「キョーコちゃんに、近寄るな!!!!」

三人はそんな蓮の常にない怒りの姿に固まると、身を強張らせた。

「~っ!!もう!!敦賀さん!ちょっと…こっちに来てください!!皆さん、すみません。私はこれで…」

キョーコは、あわあわと顔を赤らめながら、蓮の腕をグイっと引き、唖然としてるブリッジロックのメンバーに頭を下げて、出来るだけ早いスピードで離れる。
蓮はキョーコに引き摺られるように着いていった。

後から追いかけて来た社とキョーコ達が合流すると、蓮の楽屋に三人で向かったのだった。



楽屋に着いた途端、蓮はキョーコを強く抱き締めた。

素直すぎる蓮の行動に、社は真っ赤になっていたが、キョーコは慌てながらも困ったように蓮を見上げていた。

「も、もー。コーン?どうしたの?何で怒ってるの??」

「…あいつら誰??」

蓮が低い声で問い掛ける。

「え?あいつらって…光さん達ですか?」

「光さん…?何で名前呼びなの?」

「へ?!」

「社さんのことだって、あんなに仲良くしてるのに、社さんって呼んでるじゃないか…。俺のことも、記憶を失う前は敦賀さんって呼んでたんだろ?何であいつらは名前呼びなの?」

拗ねたような言葉に、キョーコが慌てて弁解する。

「あの!それはですね、ブリッジロックのメンバーの皆様は、苗字が皆さん石橋さんっておっしゃるんです。だから、呼び分ける為に、皆さんの下の名前でお呼びしてるんです。特別な訳じゃありません。」

蓮は、子犬が縋るような目でキョーコを見た。

「……そうなの?」

「はい!そうです!!」

「じゃあ、俺は…?」

「はい?!」

「…俺は特別?」

蓮の寂しそうな表情の裏に捨てられた仔犬が見え隠れする。

途端に真っ赤になり慌てるキョーコ。

「は、はい!そりゃあもう!!」

力強くそういうと、キョーコは、落ち着きなくモジモジとしながら、蓮を遠慮気味に見上げた。

「コーンは…誰よりも、特別…です。」

常にないキョーコの様子に、社は衝撃を受けた。

ーーーえぇぇ?!キョーコちゃん?!!!

蓮はそんなキョーコに満面の笑みで無邪気に問いかけた。

「本当?!」

心底嬉しそうに言う蓮には、尻尾でも生えてたら振り回してるような無邪気さがあり、社は眩暈を起こしそうになる。

ーーーおいおい…これは…。敦賀蓮を守る為には、絶対誰にも見せれない姿だぞ…。

キョーコちゃんは、蓮の腕の中で大人しく蓮に語りかけている。

ーーーあんな蓮を見ても、キョーコちゃんは引いたりしないんだな。少なくとも敦賀蓮というブランドだけを見てる人間なら、絶対に引くはずだ。こんな人だとは思わなかったとか何とか言って…。

社は2人の姿をしばし見つめると、静かに部屋を出てドアを締めた。

ーーーあの2人は、きっと時間の問題だな。そっとしておこう。

社は2人のいる楽屋のドアを優しい目で見つめると、飲み物を買いに出掛けるのだった。


(続く)

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※Amebaで2011/12/07に公開した話を若干訂正したものです。
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