なくした記憶 23

2015年12月18日20:52  なくした記憶/スキビ!《完結》

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なくした記憶 23


蓮がキョーコへの想いに自覚して数日。

蓮は事故で記憶を失ってるにも関わらず、完璧な敦賀蓮を演じれるようになっており、違和感なく皆から受け入れられていた。

蓮自身も、敦賀蓮を演じることに慣れて来たようだ。

その為、敦賀蓮としての活動の間だけは、"ある少女の出現"を除けば、よっぽどの事がない限り、敦賀蓮の仮面が外れることはなくなってきていた。

テレビ局内を楽屋へ向かう廊下で、蓮は共演中の女の子達に囲まれた。

社はちらりと蓮の様子を伺った。笑顔も爽やかで穏やかな口調は、暖かな春の陽射しと呼ぶにふさわしい敦賀蓮として合格点の顔だろう。

女の子達も蓮のそんな声音と微笑みに頬を染めながら楽しそうに話をしている。

しかし、社は蓮が時折ただ一人にだけ見せる本物の笑顔を知っている為、この笑顔が恐ろしくも作り物の笑顔であるということを知ってしまっていた。
蓮はこの会話を心から楽しんでいるわけではないのだ…。
上辺だけの、偽の仮面。


ーーその仮面が崩れるのは…。


社が蓮を見ていると、蓮の動きがピタリと止まって、一点に蓮の意識が向かったことに気づいた。

0コンマ何秒というその僅かな時間でそれに気付くことが出来た"奇跡の敏腕マネージャー社"は、その視線の先を素早く追った。

目に飛び込んだのは、紛れもない蓮の想い人であるキョーコの姿だ。

ーー敦賀蓮の仮面が崩れ、破顔を浮かべる五秒前…。

社は考えるよりも早く身体が動いた。

「あ、キョ……もが…「キョーコちゃん!!」」

蓮が言い終わるよりも早く、社がキョーコの手を握った。

「ふぇ?!社さん?!お、お疲れ様です!!」

「いやーー!!会いたかったよ、キョーコちゃん!!じゃあ、早速行こうか!」

「へ?!あの?社さん…??」

社は出来るだけ早くその場を抜け出すべくキョーコを強引に連れ出した。

呆気に取られてる女の子達の向こう側に見える蓮の目が、鋭く光った。

「社さん?」

キュラキュラと光る笑顔を浮かべ威嚇する蓮を、背中に感じながら社はひたすら歩く。

キョーコも社に引かれるまま歩くが、蓮の突然の怒りに驚き、顔を青ざめさせオロオロしている。

蓮は女の子達の輪を素早く抜け出すと、足早に、しかし優雅に二人を追いかけてきた。

まもなく闇の国の蓮さんが登場しようとしてる時に、社は楽屋の扉を開けてキョーコを中に促した。

二人きりにさせてたまるかと、慌てて追いかけ扉を開け滑り込む蓮。

蓮は既に笑顔の仮面を被る余裕など無く、鋭い怒りの波動を乗せて自身のマネージャーに睨みを利かせていた。

「どういうつもりです?社さん?」

キョーコは蓮と社をオロオロと見上げ、一人困惑していた。

「あ、あの…?」

しかし、マネージャーはやれやれと首を振ると、少し怒りを含んだ顔で蓮を見た。

「お前な、その顔を鏡で見たことあるか?!」

「は?!何のことです?誤魔化さないで下さい!」

社は一つ溜息をつくと、鞄から徐に大きな鏡を取り出し広げた。
それは美容室で使うような立派な鏡だった。

「お前のその顔は、敦賀蓮の顔じゃない。わかるか?」

社に言われ、蓮は鏡に映る自分を見た。

確かに、鏡に映る顔は世間に求められてる敦賀蓮とはかけ離れた怒りで歪んだ顔をしていた。

「これは…社さんがキョーコちゃんの手を握って連れて行くから…」

「言い訳はいらん!!いいか、蓮!お前は敦賀蓮だ。俺はその敦賀蓮を守るマネージャーなんだ。その顔のお前は人目がある所へは出せない。わかるか?戻せ!!」

社は蓮に厳しく注意した。

蓮は、不貞腐れながらも、顔を戻していつもの敦賀蓮にした。

「それとな…」

社は言いかけて、今まで背中に隠していたキョーコを蓮の目の前に突き出した。

慌てて支える蓮は、自分の胸に飛び込んで来た少女を、心底愛おしくて堪らないというような蕩ける笑みを浮かべて抱き締めた。

所謂破顔である。緩みきっているのだ。

社は再び鏡を開いて蓮に見せた。

「この顔も、敦賀蓮の顔じゃない!!!!キョーコちゃんの事を好きなのがもろバレだろ?!」

「…え?」

「ふぇ?!」

社に指摘され、鏡に映る自分を見て蓮はハッとした。

「戻せ!!」

社の言葉で、蓮はぺちぺちと頬を叩いて元に戻した。

「お前が、キョーコちゃんを見る度にそうコロコロ表情を変えてたら、お前をキョーコちゃんに会わせる事が出来ないぞ!!それが嫌なら、敦賀蓮のままキョーコちゃんと接するように心掛けろ!!」

社が真剣に言い募るので、蓮はキョーコを抱き締めたまま、心底申し訳なさそうに謝った。

結局休憩が終わるまで、キョーコを腕の中から解放することなく抱き締め続けた蓮は、これからもどこにいても堂々とキョーコといられるように、ちゃんと顔を引き締めるよう練習しようと緩んだ顔のまま誓うのだった。

一方、蓮の腕の中で最初は大人の対応を心掛けて真っ赤な顔で大人しくしていたキョーコだったが、楽屋という場所で、しかも、人がいつ入ってくるかもわからない状態の中、いつまでも抱き締め続ける蓮にとうとう痺れを切らして暴れだした。

「いつまで抱き締めてるんですかーーー!!」

恥ずかしさのあまり叫んだのだが、蓮は休憩時間きっかりしっかりとキョーコを抱き締めたままだった。

ーーーキョーコちゃんは、誰にも渡さない!!

蓮は、先ほどの社に手を引かれるキョーコを思い浮かべながら、心の中で決意を固めるのだった。


(続く)

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※Amebaで2011/12/16に公開した話を若干訂正したものです。


このお話をアップした頃に、アメンバー様100人を超えたようです。
あれから約四年。
時が経つのは早いですね〜!!
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