My HOME-5-

2015年10月20日13:58  My HOME/スキビ!《完結》

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My HOME-5-


彼女が一緒に暮らすようになってから、部屋の中が明るくなったように思う。
キラキラと差し込む朝日の輝きも増したし、何より空気が優しく柔らかで暖かい。

「ただいま」と言って、答えてくれるのが愛しい少女だというのは何と贅沢なことなのだろう。

一緒に過ごせば過ごすほど、彼女への思いが募るばかりだ。

「蓮、顔!顔!!」

ーーーそういえば、こういう注意を受けることも増えた気がする。

内心の動揺は綺麗に隠して、シラを切ることにも慣れてしまった。

「社さん、顔がなんですか?」

「お前!!どれだけ幸せダダ漏れさせたら気が済むんだ!!一体今日だけで何回注意させるんだよ!」

「いいじゃないですか。もうこの際放っといて下さいよ。」

「放っといたらこの被害がもっと拡大するだろぉぉぉぉー?!」

社に言われて周りを見渡してみれば、顔を真っ赤にして目を回して倒れている女性たち。

「あれ?彼女達はどうしたんですか?」

「だーかーらー!お前のせいだろぉがぁぁぁ!!」

社の説明にもよれば、どうやら蓮がキョーコのことを思い出している時にとても甘やかな顔で微笑む為、その微笑みを目撃した女の子達が次々と心臓を撃ち抜かれて骨抜きとなり撮影どころではなくなっているらしい。

「どーすんだよ!このまま撮影が進まなかったらさ!!知らないぞ!今日、帰りが遅くなってキョーコちゃんに会えなくなってもさっ!」

ちょっとした意地悪で社が言ったのだが、その言葉に蓮の耳はピクリと反応した。

「ちょっと、立て直してきます。」

スッと立ち上がった蓮は、そのままスタジオを後にして、2、3分ほどで戻ってきたのだが、その時には既に俳優、敦賀蓮の顔に戻っていた。

「さぁ、サクサク終わらせて早く帰りましょう!」

ニッコリと微笑んだ蓮は共演者達に妙なプレッシャーを与えながらコントロールして驚異的な早さで仕事を終わらせたのだった。



「……恐るべし…キョーコちゃんパワー…。」

「え?何か言いました?」

「いや…じゃあ俺は一旦タクシーで帰るから…。蓮は折角早く終われたんだから真っ直ぐ帰れよ。」

「え?送って行きますよ?」

「いいから!明日早いんだし、そんな時間あったらさっさと休めよ!」

「わかりました。ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えて…お疲れ様でした!」

「あぁ、お疲れ!また“明日”なっ!」

「はい。明日。」

社の言葉に、蓮も苦笑して答えた。今の時間は20時15分を少し過ぎたばかりだ。急いで帰れば21時には帰り着くだろう。
本当は21時半に終わる予定だったのでかなり巻きで終わらせることが出来たようだ。
いきなり帰って慌てさせたらいけないと、ポチポチとメールを打つ。
一緒に住むようになってから、必要だろうとちゃっかりアドレスもゲットしたのだ。

早く車に乗り込みたいので、とりあえず帰り着く時間帯だけを知らせるため簡単なメールを作成し、送信する。
この作業で帰りが遅くなるよりは一分一秒でも長くキョーコの笑顔を見ていたいのだ。

浮かれた心のまま車を滑らせる。社はタクシーで帰った為、突っ込まれることもないだろう。

信号が赤になったところで、今日はどんな風に出迎えてくれるかな?と考える。
パタパタと駆けてくるキョーコ。
自分を見た途端、可愛い満面の笑顔になったキョーコが突然抱き着く。

『おかえりなさい!蓮さん♡』

『ただいま、キョーコ。どうしたの?』

『ん。蓮さんいなくて寂しかったの。』

『俺もだよ。キョーコがいなくて寂しかった…』

そして二人はそのままーーー




ーーーうん。無いな。


自分で想像しておきながら、あり得ないことだと無表情でバッサリ切り捨て、少し虚しい気分になる。でも笑顔で出迎えてくれることくらいはしてくれるだろうと、思い直してまた別の妄想が広がった。


『おかえりなさい!敦賀さん♡』

『ただいま、もが…』

キョーコの声に顔を上げると、可愛い新妻用のエプロンを着用したキョーコの姿。
しかし、蓮はその姿を見て思わず固まってしまう。

『も、最上さん?!そ、その格好は?!』

動揺した理由は、キョーコがエプロンだけしか見につけていなかったからだ。

『ふふ。敦賀さん、ご飯にします?お風呂にします?それとも、わ、たー』

『最上さんでっ!!!!』

最後まで聞かずにすかさずキョーコの腕を掴むとぐっと引き寄せ、抱きしめる。

『敦賀さん…♡』

『最上さん…。』

そして二人はーーー


ーーーうん。ないないないない。

蓮はふるふると頭を振って自分の愚かな考えを振り払った。

その後は無心で運転するように心掛けながら、車を走らせていたのだが、やはりうまくいかないらしい。

エプロン姿のキョーコが浮かんでからと言うもの、そういえば、家で料理する時、キョーコがエプロンをしていないということに気づいたのだ。

「エプロン…か…」

思わず呟き思考を巡らせる。
裸エプロンは無理でも、キョーコが好きそうなエプロンだって沢山あるだろう。何時も料理を作ってくれるお礼といってエプロンを用意してみるのもいいかもしれない。しかし、それをキョーコが身につけてくれるとは限らないし、ましてや自分好みのエプロンを買って行って変な目で見られたくもない。

「今度…カタログでも取り寄せてもらうか…。」

カタログを見てもらってキョーコの好きなのを選んでもらってもいいだろう。
どんなエプロンでも、それを身につけてくれるだけで、勝手に新婚さんのような気分になれることは確実だ。

「エプロンなんかつけて出迎えられたら…思わず抱きしめたくなりそうだなー。」

そんな風に思いながら蓮は自分の車庫に車を収め、エレベーターに乗り込んだ。
愛しいあの子が待つあの家へーー。


「ただいま。」

玄関の開け、中にいるであろうキョーコに聞こえるように声を発すれば、キョーコはパタパタとスリッパの音を響かせながら玄関へ駆けて来てくれた。

「おかえりなさい!早かったですね。」

弾んだ声に嬉しくなりながら靴を脱ぎ、顔を上げてキョーコを見つめた。

「うん。今日はスムーズにいってね。」

そして、キョーコがエプロンを身につけているのに気付き驚きで目を見張る。
可愛らしいその姿に、今すぐ抱き締めたい衝動に駆られる自分を全力で抑え込む。
だけど顔だけは保つことが出来ずだらしなく崩して微笑んでいた。

「そのエプロン、似合うね。かわいいよ。」

「え?!あ!あ、ありがとうございますっ!!」

本音をしっかりと込めて言えば、彼女にもきちんと伝わったのか、顔を赤くして慌てて言葉を繋ぐ。

「料理、もうすぐで出来るんです!お先にお風呂にされますか?」

「うん。そうだね。そうするよ。ありがとう。」

さりげなく腕から奪われたカバンと上着。
にっこりと微笑んでお風呂を勧められれば、本当に新婚になった気分になる。細やかなそんな気遣いにいちいち惚れ直してしまう。

ーーー本当に、可愛いな。最上さん。

そんな風に思って見つめていたら、ふとキョーコの顔に影が落ちたのがわかった。
驚いて顔を覗き込む。

「最上さん?どうかした?」

距離の近さに驚いたのか、キョーコが飛び上がらんばかりに短い悲鳴を上げた。

「ひゃ!!つ、敦賀さん、近いです!!なんでもありません!!」

その慌てようも可愛くて、思わずクスクスと幸せな笑いが零れる。
抱き締めたい衝動を我慢する代わりに、その頭をくしゃりと撫ぜるだけに留める。

「お風呂、入ってくるよ。」

「はい…。」

そう宣言して、脱衣所の扉を背にして閉めた蓮は、赤くなった頬と緩んだ口元を隠すように片手で覆う。
蓮のその仕草が、鏡に映っていた。

「…やばいな…。」

最後のあの顔は反則だろう。
頬を染めて俯いて返事をするその姿は自分のことを好きなんじゃないかと思わず勘違いしそうになるところだった。
本当に抱きしめたくてたまらない衝動を抑えるのに必死になったのだ。

鏡に映る自分をチラリと瞳に映して、甘いため息を吐く。

「はぁー。エプロン…してた…。」

キョーコの姿を思い出して、ふよ。と口元が緩む。
見たいと思っていた願望が一つ叶って、心が浮き足立った。

一緒にいればいるほど、益々深みにハマるようにのめり込むこの想い。

「本当に…なんて進行の早い病気なんだ…。」

蓮はそうこぼして溜息を吐くと、風呂に入るための支度を整えたのだった。



蓮が風呂から上がると食卓には彩りも鮮やかな料理が綺麗に並べられていた。

「美味しそうだね。」

「ふふ。たーんと召し上がってくださいね。」

エプロン姿のキョーコがにっこりと微笑む。

「うん。ありがとう。頂きます。」

「はい。どうぞ。私も頂きます。」

二人で向かい合って食事を楽しむ。

彼女の料理は暖かくて、とても心がこもっていて世界で一番美味しいと思う。

お腹だけではなく心まで満たされて、箸を置く。

「ご馳走様でした。本当に美味しかったよ。特にロールキャベツ。これ時間かかっただろう?」

「今日は、早く帰ってこれたので…あの、まぁ、時間があったと言いますか…。」

自分の言葉にカァァーと赤くなった彼女に、自分と同じ事を考えたのだろうか?と期待してしまう。

早く帰って来れたと彼女は言った。つまり、彼女にとってここが彼女の帰るべき家になっているということなのだろう。それがくすぐったくて嬉しかった。

「ずっと…ここにいて欲しいな。」

「え…?」

「あ、いや…ゴホッ」

思わずこぼれ出た本音。キョトンとした顔で聞き返されたので、慌てて咳払いで誤魔化した。

ーーー危ない危ない。

心の中で胸を撫で下ろす。
料理で心がほぐれすぎたようだ。

「あ、手伝うよ。」

少しでも彼女の近くにいたくて、蓮は手伝いを申し出た。

「え?そんな、お疲れなんですから敦賀さんは先に休まれてください。」

「いや、いいんだよ。君だって疲れてるだろう。お互い様だ。それに片付けは二人でした方が早いだろう?」

「…ありがとうございます。では…お言葉に甘えて…」

「うん。」

二人で並んでキッチンに立つ。キョーコが洗剤をつけて洗った食器を、受け取って水で濯ぎ、水をきって食器を重ねる。
カチャカチャジャブジャブという音までも楽しげに聞こえて、あっという間に時間が過ぎた。

蓮の入れたコーヒーとカフェオレで一息をついて、会話ん楽しむ。

「わっ!もうこんな時間!」

キョーコに釣られて時計を見ると、間も無く23時になろうとしていた。

「そろそろ最上さんもお風呂に入って寝ないとね。」

「はい…すみません。」

「うん。気にしないで。おやすみ。」

「はい。おやすみなさい!」

「うん。ゆっくりやすんで。いい夢を…」

蓮の言葉に、キョーコはふわりと笑って頭を下げると、リビングを出て行った。

その姿を見送った蓮は、ソファにごろりと横になり、腕で顔を隠すように覆い、目を閉じキョーコへ思いを馳せた。

クルクルと変わるキョーコの顔。エプロン姿で振り返る姿が脳裏に焼きついており、蓮は緩む顔を抑えられない。
そのまま目を瞑り、ごろりと横向きになった蓮はそのまま幸せな余韻に浸りながら、ゆっくりと眠りの波にいざなわれた。


「敦賀さん?敦賀さんっ!」

ゆっさゆっさと揺り起こされ、ハッと覚醒すればお風呂から上がったキョーコがパジャマ姿で蓮を覗き込んでいた。

「ん…。あ…」

覗きこまれていた為、ぼんやりと開いた目に、前かがみのキョーコの鎖骨が映って、思わずどきりと心臓が跳ねた。
今までなるべく意識をしてパジャマ姿のキョーコをみないように気をつけていたのだが、不可抗力で見てしまいその姿に体が熱くなる。
その姿は想像以上に可愛らしい。

「折角お休みだったのに、起こしてしまってすみません。でもここで寝てしまったら取れる疲れも取れませんから、ベッドで寝た方がいいと思って…」

申し訳なさそうに、眉を下げて言うキョーコのパジャマ姿に見惚れてしまい返事を忘れてしまった。

「…敦賀さん?大丈夫ですか?」

「え…あ、うん。ごめん。ありがとう。」

ゆっくりと起き上がるとキョーコがホッとした笑みを浮かべた。

「よかった。あまり無理なさらないで下さいね。」

「…うん。気をつけるよ。」

「お部屋まで行けますか?」

「ん?いけないって言ったら連れて行ってくれるの?」

「えぇ?!えっとお部屋の前まで…なら…」

モジモジというその姿がいじらしくて、つい無表情になってしまう。

「あの…敦賀さん?」

おずおずとみつめられてハッとする。

「あ…じゃあ部屋の前まで連れて行ってもらおうかな?」

「わ、わかりました!」

少し顔を赤らめながら彼女から腕を首にいざなわれ驚いた。
怪我人を補助するように蓮に寄り添うキョーコに、蓮は手を出さないように理性を手繰り寄せることに必死になった。
近付いてかおる、お風呂上がりの爽やかでほんのり甘い香り。
色付いたうなじとパジャマの薄い生地。

「ありがとう…。もうここでいいよ。お休み、最上さん。」

部屋の前まで来たところで、しっかりとキョーコの身を安全な場所へと遠ざける。
本当に部屋まで連れ込んでしまってはうっかり理性が吹っ飛んでしまいそうだ。

「はい。大丈夫ですか?」

「うん。大丈夫だから…」

「わかりました。では、今度こそお休みなさい、敦賀さん。」

キューティーハニースマイルに笑顔で答えながらも心の中は危険な考えと理性の戦いが続いていた。

挨拶を終えて去って行ったキョーコが部屋に入るとこまでを見届けると、蓮はふぅうとため息をついて、今日はもう眠れないなと悟ったのだった。


(続く)

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